魔法少女リリカルなのは、始まりません!   作:日λ........

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※また別の時代、別の場所に産まれた転生者が出てきます。しばらく原作キャラはほぼオリキャラと化した過去の姿しか出てきませんがご了承ください

時代的には、原作の140年位前の旧暦の時代となります






旧暦、戦後のミッドチルダにて

ズガン、という乾いた音で目が覚めた。即座に仕掛けていたトラップを起動させ、窓から飛び降りる。ああ、結局この拠点は3日も持たなかったかくそったれ。

 

個人用の光学迷彩装置を使いつつ、飛行魔法を起動させ、低空を縫うように飛びこむ。そのまま近くの他の廃墟に飛び込んだ。

 

轟音が辺りに響き渡る。拠点にしていた廃墟の支柱に仕掛けていた爆薬が爆発して、刺客ごと崩れ落ちたのだろう。これで、魔法が使えない奴等は少なくともお陀仏だろう。数の暴力で削り殺される心配は少し減った。

 

もしも魔法が使える奴がアレの中に居たのなら──ああ、そりゃ一人はいるか。魔力光って奴は派手にギラギラ光って目立つから丸わかりだ。少しは削れてるといいが。

 

(殺るか)

 

静かに殺意を高める。今となっては皮肉にしか思えない名称を持った短杖型デバイス『ピースメーカー』を起動させ、バリアジャケットを戦闘時の物へと切り替える。

 

もはやこの世界……ミッドチルダに法などというものは何処にも存在しない。様々な世界を巻き込んだ次元世界規模の戦争はミッドチルダに秩序の崩壊を引き起こさせた。弱者は貪られ、力ある強者だけが生き残る。地獄とは今この場であるとそう言い切れた。

 

だが、それでもだ。前世で見た西部劇の主人公に昔から憧れてて、本当に『保安官』なんてもんになった俺はこんな状況でも生き残った市民を守るために今も『保安官』なんてもんをやっていた。周りにいた同僚は全員先に殉職しちまったので正規の訓練を受けた生き残りは俺一人だ。ここまで来たらもう後に引けなかった。この廃墟群に居座り続け、奥に居る避難民の集落を守るために暴徒と化した集団や、組織化された襲撃者をこうやって仕留め続ける日々が、日常となりつつある。

 

かつて軍で習った工作活動やトラップの作成能力がこんなに役に立つなら、先の戦争で死んだであろう教官殿にもっと酒奢っておくべきだったと後悔しながら、瓦礫から這い出て来た魔導師を殺すため設置型のバインドを起動した。

……素人め、まんまと掛かったか。かつて軍でも使用されていた拘束魔法であるバインドは優秀な捕縛魔法である。特にこの手の設置型は設置する時間はかかる分強力で、掛けた相手の魔力の使用を一時的に押さえ込む能力がある。つまり現状シールドを唱えるにもそれを解くまでの時間が数秒でも必要だった。

つまり、掛かった時点で積みである。

早撃ちなら、誰にも負けない自信がある俺にはピッタリの魔法だ。

 

「スティンガーレイ」

『Stinger Ray.Fire』

 

バインドに対象が掛かって即座に対象を撃ち抜いた。胸に一発、デバイスを持つ手に一発、喉に一発。合計三発を放ち、それらは当然のように命中し、バリアジャケットを貫いた。スティンガーレイは貫通力と速度に優れた優秀な魔法だ。その代わり直線にしか放てないがそれなら当てられるようにしてしまえば良いだけの話だ。

信じられない、そんな表情で襲撃者は崩れ落ちた。まあこれでもうこいつは助からないだろうが、念には念を入れる事にしよう。

 

「スティンガーブレイド」

『Stinger Blade.Fire』

 

形成した魔力刃を倒れた襲撃者の首に放つ。凄まじい切れ味を誇る魔法の刃は簡単に地に伏せた襲撃者の首を刎ねた。

魔導師というのは確実に殺しておかないと痛い目を見る。自分と同期だった保安官が死んだ理由は、とどめを刺したと思っていた魔導師から不意打ちで放たれた収束砲撃だったのだから。

 

 

「サーチャーに敵影無し……周囲にトラップは無い……よし、移動するか」

 

血臭が漂うこの場から、バリアジャケットのダスターコートを翻しこの場から離れた。本来なら埋葬するか燃やすべきなのだろうが、生憎一人ではそんな余裕はない。

こんな最悪な日々に慣れつつある自分に嫌気を感じる。が、背後にいる守るべき者のことを考えればこうせざるを得ない日々が続いていた。

 

次元を超えて、様々な世界が滅んだ大惨事。人々はそれをただ大戦と読んだ。もはやなんの為に戦い、傷付けあったのすら覚えていないほどに戦乱の傷跡は凄惨なものであったのだ。

 

 

(……しまった……水、さっき吹き飛ばした拠点に置いてきてたな。仕方ない。一度集落へ戻ろう)

 

 

それでも尚、生き残った人達はこの絶望的な状況でサバイバルを続けていた。

かつての文明を食い潰しながら……

 

 

 

 

 

 

廃墟街の奥。崩れた建物が続くその先に、廃材を利用して作られたバリケードの中に粗末な掘っ立て小屋が並ぶ。

いつ崩れるか分からない廃墟で暮らすよりはマシと、まだ人手がある頃に建てた物だ。最低限自給自足が可能なように、畑等が見受けられる。人の営みが確認できるものの、その人数は大戦前のかつてに比べれば少ない

 

 

「あっ!お帰り保安官!!」

「おう、戻ったぜ坊主。いい子にしてたか?」

「うん!この前貰った本、実践出来るようになったよ!!」

「マジか?」

「本当だよ。ほら!」

 

そう言うと、魔導式のテンプレートが掌に現れ赤色の小さな魔力弾が形成された。掌の上でクルクルと回るそれは、たしかに魔法の教科書に書かれていたアクセルシューターだった。

 

「はー……この前来たのが二週間前だろ?それで覚えるとかお前筋が良いな坊主!ご褒美に貴重なアメちゃんをあげよう」

「へへへ、俺も保安官みたいに皆を守れるようになりたいんだ。かーちゃんも、とーちゃんも死んじまったけど……ここにいる皆は、今度は守れるようになりたい」

「……そうか。お前は強いな、坊主。その思いは大切なもんだ。忘れないようにしろよ」

 

頭を撫でて、廃墟から見つけたポケットに入れていたアメ入りの缶を渡す。飴と言ったが、コイツは防災食の氷砂糖である。長持ちする分砂糖の味以外はしないのが玉に瑕だ。それでも、甘いものが少ないキャンプでは喜ばれるものだった。

 

ここにいる避難民は、皆大なり小なり訳があってここから離れられない。子供をもつ親子。親を亡くした孤児。老人、妊婦、足を失った軍人……この集落は、そんな見捨てられた弱い立場の人達がなんとか生き延びる為にお互いを助け合った結果産まれた場所だ。

 

俺達は、この場所の元となった街を守る保安官……もっと詳しく言うならおまわりさんや民兵隊みたいな立場の人間だった。地球で言うならアメリカのテキサス・レンジャーが一番近いだろうか。代々、ピストルベルトや銃やバッチの代わりにデバイスを受け継ぐ関係上皆それなりに才能と実力のある魔導師が着任する立場だった。俺のように軍人上がりの者も多い。

……今俺が持っている『ピースメーカー』がその受け継いで来たデバイスの最後の一本だ。殉職した仲間のデバイスをバラしたり、廃墟から見つけたパーツをなんとかニコイチしてだましだまし使っている。

受け継いだ時は現行のデバイスと違って小型だし、大した容量も無いストレージデバイスなので予備として扱う物と考えていたが……とうの昔に元々自分の持っていた方のデバイスは壊れ、単純な分壊れにくい『ピースメーカー』はそんな大雑把な運用でもなんとか使えていた。

小型で頑丈で、ストレージデバイスなので余計な処理速度も無く、誤作動も起こりにくく即座に必要な魔法を発動できる。代々保安官達が先達から受け継ぐのには意味があるのだと思い知った物だ。お陰でまだ戦えている。

 

 

「おや、保安官殿?帰っていたのですか」

「あ、爺ちゃん。保安官からアメ貰っちゃった!」

「おお、これは申し訳ありませんな保安官殿。甘い物など、貴重な品では?」

「教えた事をちゃんと覚えていたこの子へのご褒美なので。ちゃんと大切に舐めるんだぞ?」

「うん、皆と分けて来るね!」

 

そう言うと、坊主は集落の方へと駆け足で走っていった。一人で食べても良かったんだがなぁ……本当にこのご時世には珍しい真っ直ぐな坊主だ。それだけにいつか騙されたりしないか少々不安でもある。

まあ、この目の前にいる老人がいる限りは大丈夫だとは思うが。

彼はこの集落の長をしている方だ。かなりの高齢ながら、かつて軍人であった為か姿勢はピンとしている。衰えとは無縁そうに見える方だ。

 

 

 

「それでは中にお入りください。この前あの子が見つけてきたお茶がありましてな……話はそれを飲みながらいたしましょう」

「はい。それでは失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

お茶を頂き、一息ついたあとに話を切り出した。二週間前に来たときは食料品の補充の為でなく、集落の様子を伺う為にやってきた為に農作業中だった集落の長とは顔を合わせていない。

 

 

「改めまして、お久しぶりです。何か困ったことはありませんか?」

「いえ、保安官殿がここを隠してくれているお陰で無法者達に見つかることもなくなんとかやれておりますよ。正直な所、我々は貴方に対して報いるべき恩を返せていないと思うのですが……」

「いいえ、あなた方が無事に過ごせていることが私にとって最大の報酬です。それに、ここには同僚達の墓がありますからね……もう戦えるのは俺しか居ませんから。やれる事を、やってるだけです」

「……そう言われたら、我々としてはこれ以上何も言えませんな。では、我々も貴方に可能な限りやれる事をするとしましょう。いつものように食料品や水を用意してあります」

「では、こちらを受け取ってください」

 

そう言ってピースメーカーを振るい、展開した魔導式のテンプレートから収集した物を取り出していく。先ほど渡したアメ缶や燃料、それに頼まれていた農作物の種や肥料なんかもある。

集落から離れた廃墟で防衛線を張っている関係上、この手の今でも使える戦前の品を見つけたらデバイスの収納領域にしまってあった。こうして食料を調達する時に物々交換を行う為である。政府が機能していない現状では貨幣の価値なんて0に等しい為、物々交換が今の取引の基本だ。

 

まだ他に保安官がいた頃から続いている取引だが、俺一人になってからは集落を守っている報酬として水は無償で受け取っている。皮肉にも保安官の数も、住人の数も少なくなってしまったせいでそれでも水はある程度行き渡るようになってしまった為だ。掘った井戸が枯れるか、浄水装置が壊れない限りは水不足に陥る可能性は低いだろう。なので今出した収集品は食料と交換する為の物だ。

 

「おお、肥料や種がこんなにも……いつもありがとうございます。畑を増やすべきですかな?」

「こちらこそいつも水や食料をありがとうございます。安全な水は現地での確保が難しいので、ありがたいです。それで、話が変わるのですが……あの子が魔法を覚えようとしていることは、ご存じですか?」

「……ええ。ここ最近何度も何度も練習している姿をよく見てましたので。知っての通り私は魔法は扱えませんので、あまり詳しいことは分からないのですが……アレが、銃や兵器に相当する程の力であるということだけは分かっております」

「……申し訳ありません。彼の熱意に負けた私の責任ですね」

 

魔法は使える者にとっては兵器以上の力を持つ武器にもなりうる。それ故に魔法の使用はかつてのミッドチルダでは資格や責任を問われた物だ。

子供に武器を渡すと同然な行為を行うなど、言語道断だろうに。かつての頃なら保安官の資格取り消しになっていたであろう暴挙である。

だが、あの真っ直ぐな瞳に俺は勝てなかった。魔法を教えるというのがどういうことなのか知っていながら、俺は直接ではないにしろその方法を教えてしまったのだ。

 

 

「いえ、こんな時代です。自分の身を守る手段を覚えるのは良いことだと思うのですよ。ですが、ね……やはり、両親の敵討ちの為なのでしょうか……そうだとしたら、止めなければ……」

「たしかに、それは否定できません。ですが彼は、ここを守りたいとそう言っておりました。俺は、その言葉を信じてあげようと思います」

「……!! そう、ですか……」

 

あれは本気の目だった。何か後ろ暗い目的があるのであれば、あんな表情にはなれんであろうと思ったからこそ、俺はあの子に魔法の教科書を渡したのである。

 

 

「……そうですね。私もあの子を信じましょう。他でもない貴方が信じたのです。保護者の私も、あの子にとっていい変化だと信じる事にします」

「……ありがとうございます」

 

 

そう言った後、俺は先ほど受け取ったお茶の残りで口を潤した。

……その味は、彼の気持ちと繋がったかのように渋かった。

 

 

 

 




今回の転生者


保安官

イメージCV 小山 力也氏(あくまでもイメージ例なのでお好きな方でご想像ください)

黒いダスターコート、黒いウェスタンハットに保安官のバッチを胸につけたバリアジャケット姿の大男。戦争前は20代で保安官になった才能ある若手として扱われていた魔導師。現在は三十代後半。
戦時中も街を守るために治安維持活動を行っていたが次元戦争による大破壊が起こり、ミッドチルダの政府は壊滅。軍も派遣先で大体が壊滅し治安は崩壊。そんな中でも彼ら保安官達は必死に避難民の救助を行い、彼らを襲う暴徒や襲撃者を鎮圧してきたがどんどん数は減っていき彼が最後の一人となった。
その為、その避難民達の生き残りが営む集落を襲撃者から守るためにあえて一人集落から離れブービートラップを仕掛け廃墟を移動しながら過ごしている。なんとか無法者達から集落の存在を隠せているものの、正直限界を感じつつある。
魔力的にはAAランク位だが、状況が状況な為相手を殺すことに一切の躊躇がない上、軍人上がりで保安官になった為に教官から習っていたトラップ制作設置の技能を持っている。
軍事基地からパクってきた個人用の光学迷彩装置を使ったり、魔法はあくまでも手段と割り切って使うタイプの修羅。一方的に相手を始末する手段に長けている。

使用デバイスは戦争前の時点で旧式のデバイスだった短杖型のストレージデバイス『ピースメーカー』
見た目は古いが中身の消耗部分は交換が効くようになっていた事、単純故に頑丈な事、殉職した仲間たちも同じ物を扱っていた事など様々な状況が噛み合って大破壊による治安崩壊から十数年近くたった今でも安定して動いている貴重なデバイス。元々別のデバイスをメインに使っていたが壊れてしまいそれっきりである。



※今回の話に原作キャラが一名居ます。一応これ、リリカルなのはのSSだからね……()
※よく見たらCVのイメージがデバイスの方にくっついてたので修正
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