牙狼〈GARO〉 大和の輝き   作:ザルバ

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 深夜の川神の町の路地裏に一台のバイクが捨てられていた。そのバイクは陸王型であった。

 古来より、物には心があると言われており、痛みや悲しみを感じると言われている。そのバイクは主人に愛されていた。しかし、新しいのが手に入るとすぐに捨てられてしまった。バイクは主人を、人を恨んだ。そんなバイクに一体のホラーが語りかける。

『お前、人が憎いか?』

 バイクはその意をクラクションで表した。

『復讐したいか?』

 バイクは暗くションで叫ぶように答えた。

『ならば貴様の体を頂く。』

 文字のようなものがバイクの周りに纏わり吐くとバイクはひとりでに起き上がるとバイクは木偶人形を作り夜の町を走り出す。

 その日、バイクに乗っている何人もの若者が一夜にして姿を消した。

 

 夏休みに入って間もない日の朝、大和たちはまゆっちとワン子と一緒に朝の稽古を終え共に食事を取っていた。テレビは今ニュースが流れていた。

〈次のニュースです。昨夜、数十台のバイクがエンジンが掛かったまま乗り捨てられる事件が相次ぎました。警察は陰湿なイタズラとして捜査を進めています。〉

「なんだか変なニュースだよね。エンジンを掛けたまま乗り捨てるなんて。」

「そうですね。普通なら茂みとかに捨てる人が多いですのにね。」

 ワン子の言葉にまゆっちが共感する。

「確かに近代の人間はすぐに替えが有るからと言ってものをすぐに捨てる人が多い。だが日本自体は資源が元々少ない。だから昔、主に江戸時代頃からは「もったいない」と言われて他のものに応用する習慣があった。」

「哀空吏君ってたまにジジくさい事言うけど正しいね。アタシの薙刀も昔から愛用しているよ。直せるところは直して限界まで来たら刃の部分とかを保管しているわ。それ以外はじいちゃんが応用しているって。」

「私は手入れを怠りません。仮に刀が折れたとしてもまた打ってもらいますし。」

「お前たちって結構いいヤツらだな。そういうところって結構好きだぞ。」

 大和がそう言うと二人は顔を紅くした。その光景を陰で妬みながら京が見ていた。

「ワ~~~ン~~~子~~~~。まゆっち~~~~~~。」

「「ヒィッ!!」」

「?」

 

 午後になると京は島津寮の外でふてくされていた。そんな京のとなりに大和が座る。

「み~やこ。」

「っ!大和・・・・・」

「どうしたんだ?そんなにふてくされて?」

「・・・・・・ずるい。」

「へ?」

 京の言葉に大和は疑問符を浮かべた。

「まゆっちやワン子ばかりと話してるから・・・・・」

「そんなこと?」

「むっ!大和には分かんないよ。」

「う~ん、とりあえず寂しかったと捉えていいのかな?」

「・・・・・・うん。」

「そっか。でもまぁなんだ、話したいのなら自分から来ないと。昔は俺が声をかけてきたけどもうそんな歳じゃないだろ?」

「そうだけど・・・・・」

「たく・・・・・ほい。」

 大和は京の頭に手を置き撫でる。

「これで我慢してくれ。」

「・・・・・・・ありがと。」

 京は機嫌を少し直してくれた。

「あ、大和。」

「なんだ?」

「前々から気になってたんだけど・・・・・どうしてそのコートに蒼い花のポーチを付けているの?」

「これ?・・・・・・これは、母さんの形見なんだ。」

「え・・・・・・でも大和のお母さんって・・・・・」

「うん。昔死んだって聞かされていた符礼法師が俺にそう言ってくれてた。でも・・・・・二年前に会ったんだ。短い時間だけど、母さんに。」

「・・・・・今はどうなの?」

「もういないよ。」

「え・・・・・・・」

 京に衝撃が走った。

「母さんは・・・・・俺の腕の中で死んだ。時間も無かったけど・・・・・・その時に果たしたかった約束を果たせた。目は見えなかったけど、約束を果たしたんだ。」

「・・・・・どうして目が見えなかったの?」

「その時の俺の目と交換したんだ。俺が俺である為に。」

「・・・・・・そうなんだ。これ以上は今は聞かない。」

「・・・・・・・・ありがとう。」

「あっ!それとね、大和たちに渡しておいてってさっきこの手紙を持って人が来てたよ。」

 京は紅い手紙を大和に渡すと大和の表情が変わった。

「京、ありがとう。」

 大和はそう言うと急いで哀空吏と猛竜の下へと掛け走った。

 

「いいか?」

「ああ。」

「近くに人はいない。いいぞ。」

 大和は哀空吏の言葉を聞き手紙を魔導火で燃やす。すると文字が空中に浮かび上がる。

「『鉄の馬に宿りし魂にホラーが宿りて人々を喰らう。すぐに狩れ』・・・・・・か。」

「厄介な奴だな。鉄の馬ってようするはバイクってことだろ?」

「対策は魔導馬だな。だとしてもバイクだと行動範囲が広すぎる。」

 哀空吏の言うことは最もだった。バイクなどの類は人と違い何処へでも移動が可能。故に倒すことが難しいのである。

「少し頼むか。」

 大和は携帯電話と取り出しある人に電話を掛けた。

 

 バイク乗りが集う山道。一人の黒いレザーコートを着た人が乗っているバイクが走っているがその人以外全くいなかった。バイクに乗っている人はおかしいと思いながら走る。

 ふと周りを見ると藍色のコートを着た者の姿、哀空吏の姿が見えた。バイクに乗っている者は微笑み、近づく。

だがその時であった。バイクが近づこうとした瞬間下から電撃が走った。バイクに乗っている者は下を向くと枝や木の実で作られた結界があった。バイクは半分ホラーの状態になり、ふらつきながらその場を去って行った。

「作戦は第一段階成功だな。すみませんね、協力してもらって。」

「礼には及ばない。」

 茂みの中から揚羽が出てくる。

 この作戦は九鬼財閥の揚羽を通して協力してもらった作戦である。交通規制並びに人払いをして被害者を最小限に抑え、大和たちが昼間でも動きやすいようにしてホラーを倒すと言うことである。

「それより、作戦は上手くいくのか?」

「わからない。ただでさえ厄介な敵だ。あの機動力は固定概念を捨て、独創的な考えでなければ倒せないかもしれない。」

「ならどうやって倒すのだ?」

「ここからはあいつらが要だ。これが失敗すれば被害は拡大する一方だ。」

「なぜ昨日倒せなかった?」

「その時に低級ホラーを狩っていた。しかも約十体。明らかに人為的工作があったとしか考えられない。」

「つまり日本は今・・・・・」

「だれかがホラーの住処にしようとしている。」

 

 バイクは山道をよろつきながら走っていると目の前に右手に青龍塔を持っている紅いコートの男が目に入った。男の姿を見るとバイクは微笑みすぐさま喰おうとする。

「よっしゃ。作戦第一段階精巧だな。」

 猛竜は地面に青龍刀を叩きつけると自身を中心に円を描く。描かれた円から光が漏れ炎刃騎士・漸の鎧が召喚される。

 バイクはホラーの姿となり漸に襲いかかろうとする。漸は右手の剣を左手に持たせると左手を立てに変形させバイクを叩く。バイクは悲鳴を上げながら弾き返される。

「竜漸(りゅうぜん)!」

 漸が叫ぶと烈火の如き炎の色の鎧を身に纏った魔導馬・竜漸が現れる。漸は竜漸に乗馬すると竜漸を走らせバイクに立ち向かおうとする。しかし、バイクは岩壁を走り膳の裏手に回ると逃げるように走り出す。

 しかしそれを大和が許しはしない。大和は魔戒剣を抜刀し剣先を天に向け円を描き振り下ろす。描かれた円から光が漏れ牙狼の鎧と魔導馬・轟天が召喚される。

「はっ!」

 牙狼は轟天を走らせるとバイクに立ち向かうように攻め寄る。牙狼が牙狼剣を振るうとバイクは刃の付いた触手を牙狼剣にぶつけ身を守る。すれ違い様にバイクは牙狼の後ろを走る。

「大和!俺が抑えておくからお前は先に行け!」

「わかった!」

 牙狼は山道の中を轟天で駆け抜けるように走らせる。漸はバイクを竜漸を走らせバイクを追いかける。

 漸がバイクに近づくとバイクは刃の付いた触手を漸に振る、漸は剣でそれをなぎ払うも本体にまでは届かない。その時、バイクの頭上から一本の矢が飛び、バイクを貫通する。その矢を飛ばしたのは蒼い鎧を身に纏い、両足の太股部位に後ろ向きに尖っている突起物のある魔導馬・蒼天(そうてん)に乗馬している牙射であった。牙射は崖道を蒼天を走らせ、漸と共にバイクに攻撃をする。

「こいつ・・・・・なかなかやるぞ!」

「厄介だな!」

 漸は矢を放ちながらバイクの速度を殺し。漸は持てる力と剣で刃の付いた触手を切り落としてゆく。バイクは後ろに目をやりながら進んでいると目の前に黄金一色に染まっている騎士が現れた。牙狼であった。

 二人は牙狼の姿を見るとバイクの前に出て自身の魔導馬の手綱を持ちながら己の武器でバイクを前から抑える。

「大和!」

「頼むぞ!」

 牙狼は牙狼剣の地肌を左甲に置き、ホラーのコア部分であるライトに目掛けて牙狼剣を突き刺す。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 バイクは悲鳴を上げながらコアを突き刺される。二人はバイクから離れ、牙狼は牙狼剣を後ろに振るうと牙狼剣がバイクから抜け、そのままライトから地面に落ちていった。

 三人は同時に鎧を解く。

「ふう・・・・・」

「終わったな。」

「疲れたが・・・・・・・いい経験になった。」

 そんな三人の下へ歩み寄る。

「ご苦労だったな。」

「いえいえ、俺たちの仕事ですから。このバイク、後始末の方をよろしくお願いします。」

「わかった・・・・・・・・だがなぜこのバイクにホラーが憑依したのだ?」

「昔から、物には心が宿るって言いますよね?多分、それなんじゃないかと思います。」

 大和はバイクに歩み寄り、バイクのライトを手に取り耳元に近づける。

『こいつと一緒に全国一周とかしてみて~。』

「・・・・・・・・・そっか。それで人を恨んじまったんだな。」

 大和はそれをビニール袋に入れると懐に仕舞った。いつもやる大和たちの光景に揚羽はふと大和に問いかける。

「聞いてもいいか?」

「なんでしょう?」

「いつもその・・・・・敵の戦利品と言っていいのか分からないが・・・・・・何故そのような行動をするんだ?」

「・・・・・三日後の満月の深夜0時に、話したあの場所に来てください。」

「わかった。」

 揚羽は大和たちと別れ、その場を去った。

 

 大和たちが島津寮に戻ると時刻はもう夕方。大和たちはクタクタになっていた。

 そんな大和たちと百代は偶然にも出くわした。

「ん!おお大和たちか。どうしたんだそんな疲れた顔をして?」

「ああ・・・・・百代姉さん。ちょっとバイトが急に入ってね。」

「三人で行っているのか?感心するな。」

「それはそうと姉さん。」

「なんだ?」

「借金は?返済一円も貰ってないんだけど。」

「あ・・・・・・あ~、それは~その~・・・・・」

「バイトはしているがすぐ自分のために使っているんだね。」

「・・・・・・・・はい。」

『このマダオ(全くダメダメな女)!!』

「お前たち酷くないか!」

「何言ってんの!」

「そうだぜ!」

「むしろ将来闇金にでも手を出すのじゃないか心配します!」

 大和、猛竜、哀空吏が痛烈な一言を言う。百代はその言葉に心が折れる。

「うう・・・・・お前たち、罪悪感は無いのか?」

『むしろあなたに無いのかと疑問に思います。』

「グハァッ!」

 心が折れた百代を置いて大和たちは島津寮に戻った。

 

 そして三日後の深夜0時。川神学園の裏山にある波奏の墓は仮の墓とは言えどちゃんとした墓なので大和たちはちゃんと手を合わせている。

 そこへ揚羽と燕が来る。二人は墓の前に立つと手を合わせた。祈り終えると大和たちの方を見る。

「さて、今日ここに来たのは先日のことに答えてもらうためだ。教えてもらうぞ。」

 揚げ羽がそう言うと大和たちは懐に入れていた物を取り出した。指輪にピアスに歯車、そしてライトなど様々である。

 大和たちはそれを木の枝で作られた簡易的ピラミッドの下に置くと距離を置き。横一列に並ぶ。大和と猛竜は魔戒剣を抜刀し、哀空吏は魔戒弓を懐から取り出すと三人とも武器を立てに構え、頭上に剣先で空間を突く。疲れた空間から光が漏れ、三人の鎧が召喚される。

「ほえ~、驚いた~。」

「燕、静かに出来ないのか?」

 牙狼は左手の甲に牙狼剣の地肌を滑らせ、牙狼剣に緑色の魔導火を剣に纏わせる。

 漸は魔戒剣の峰に手を当て滑らし、剣に魔導火を纏わせる。

 牙射は魔導矢に魔導火を纏わせる。

 牙狼と漸は牙射の魔導矢に自身の剣に纏われた魔導火を移し、魔導闇三つの魔導火を一つ見まとめる。牙射はその矢を弓に掛け、ゆっくりと引き、ピラミッドに射る。魔導火はピラミッドに燃え広がり、白い光が一つ、また一つと空へと上がっていった。

「これは・・・・・」

「なんなの・・・・・」

 二人の疑問に牙狼が答える。

「これは、弔いの炎です。」

『弔いの炎?』

「はい。俺たちは、救えなかった人たちやホラーになった人たちの命を弔う。月に一度行っているんです。たとえ俺たち三人がそろっていなくても、満月の夜に俺たちはその人たちを弔います。それが俺たちに出来る・・・・・せめてもの償いです。」

「だけど・・・・・君たちがそんなに思うことは無いと思うよ。誰にでも出来ることで気無いことがあるんだから。」

「燕の言うことも最もだ。何故このような行動を?」

 揚羽がそう聞くと三人は鎧を解く。

「・・・・・俺たちは・・・・・・二年前に担当していた場所でたくさんの人を死なせてしまいました。」

「その中には・・・・・・必ず救えるはずの家族を一人残して殺させてしまったんです。」

『っ!!』

「あの日から俺たちは誓ったんです。殺された人も、ホラーになった人も弔おうと。」

 三人の口から告げられた衝撃の言葉に二人は言葉を失った。

 五人は静かにその魂を見送った。

 たとえホラーに取り付かれて言おうとも、その魂に敬意を表し。

 

今ここに、魂の眠りを。

 

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