夏休みに入って少し経った日の夜、大和は風間ファミリーに大事なことを話していた。
『お墓参り?』
「ああ。俺たち三人明日墓参りに行くんだ。」
「でもなんで明日なのだ?」
百代が聞いてきた。確かにまだ夏休みになって間もなく、お盆休みには早い。子オジキにならお盆休みに普通は行くのが当たり前だ。
「実は明日が命日なんだ。」
「そうか。なら仕方ないな。」
ゲンさんは納得してくれた。
「もし遅れるようなら俺に連絡しろ。ケータイ持ってんだろ?」
「ええ。ありがとう、ゲンさん。」
「気にすんな。」
そういい終えると三人は明日の準備のため自室に戻った。
「なあお前たち、明日はどうする?」
百代がそう聞くと皆して同じことを言った。
『もちろんあの三人の尾行!』
その言葉を聞いてゲンさんは溜息を吐きながらこう思った。
(こいつら本当うにガキ集団だな。まあ、一子と黛とクリスと京は別みたいだが。)
何でも見抜いているゲンさんであった。
翌日の朝、三人は鍛錬の時間を短めにして切り上げると準備に取り掛かった。とは言えど準備にはそれ程時間も掛かっていない。ほとんどの荷物は魔導衣の中に納められているためほとんど手ぶらだ。
「じゃあ行ってくるから。」
「少し遅くなるかもしんねけど。」
「なるべく早くに帰ってくる予定だ。」
そう言って三人は島津寮を出ると風間ファミリーは尾行を始める。
「大和の奴、もしや墓参りと言う名の名目の密会を!」
「ガクト、そんなこと無いって。合ったとしたらこのカメラに収めるから。」
「モロも何かと腹黒いね。」
「・・・・私はフィルムカメラ。」
「京は本気だな。」
「で、でもこうしているのってなんだか罪悪感を感じませんか?」
そんな感じで尾行をし始めた。
「なあ大和、どうやってボルシティに行くつもりだ?」
猛竜が大和に聞くと大和はザルバに尋ねた。
「ザルバ、魔戒道は今日使えるんだろ?」
「ああ、使えるぜ。」
「じゃあ決定だな。」
三人は人気の無い裏路地に入るとザルバを壁にかざす。すると壁に魔戒道が現れた。
「じゃあ・・・・・行くか。」
大和がそう言うと二人は返事をして魔戒道に入った。
三人をつけていた風間ファミリーは魔戒道前に立ち尽くした。
「どうするんだよ?」
「入ってみる?」
「いいじゃん!なんだか楽しそうだわ!」
ワン子が一目散に入ると皆はついていくように入って行った。
「なあ大和、俺たち毎年こうやって来ているけど・・・・・・・最初はどこに行く予定だ?」
「ん?そらやっぱ李杏のところに行ってからいつもの花屋に行くに決まってるだろ。」
「で、その買出しって・・・・・・」
「お前以外誰が務まる。」
大和と哀空吏の意見は一致していた。猛竜にあの花屋に買いに行かせる予定だ。
「なあ・・・・・・・俺じゃないとダメか?」
「「ダメだ。」」
「やっぱりか。まあ分かっていたけどな。」
「お前以外誰が行くんだよ。」
「だな。花に関してはお前が専門だからな。」
「いやいやいや!お前たちもう花を何にするのか分かってんだろ!」
「それでもその花無かったら意味がないだろ。ここはお前に譲る。」
「お前らなぁ~~~~~~~!!!!!」
ボルシティーの人気の無い森に現れた魔戒道に大和たちは出た。
「着いた~~~~~~~~!」
猛竜が身体を伸ばす。
「だな。一時間歩いたが案外楽だったな。」
「元老院からだと転送術が使えるがその際に生じる光で目立ったことがあったな。」
「んだよ。まだいい方じゃねえか。俺なんか魔戒道でも三時間かかったぞ。」
「そうなのか?まあそれより早く李杏の所に行こうぜ。」
三人は李杏の元へ歩き出した。
「や・・・・・・」
『やっと着いたぁあああああ・・・・・・・・』
風間ファミリー一同歩き疲れていた。流石に一時間歩き続けると誰でも疲れる。ましてや魔戒道は魔導火で照らされた一本道。精神的にきつい。
「あんな道を通ってよく平気だな。」
「お姉さまの言う通り・・・・・・・お腹空いた。」
「なにか食うか?」
「クリスさん、それよりまずここはどこかわかりますか?」
「ちょっと待って。今GPSで現在地見てみるから。」
モロがスマホを手に現在地を調べる。
「え・・・・・・・・」
モロは驚きを隠せなかった。
「どうしたんだモロ?」
「ここ・・・・・・・・あの有名なボルシティーだよ!」
『ええ!』
川神からここまでは数十Kmの距離がある。一時間で歩いていける距離ではない。
「・・・・大和たちを追おう。」
京の言葉で風間ファミリーは尾行を再開した。
「確かここで待ち合わせてるんだが・・・・・・いた!」
大和は待ち合わせの噴水の周りを歩いていると李杏の姿を見つけ駆け寄る。
「李杏!」
「大和!哀空吏に猛竜も久しぶりね。」
「久しぶりだな。」
「頑張っているか?」
「アンタ達が心配するほどあたしも弱くないわ。でも流石に私一人で倒せる敵ばっかりではないわ。今はちょっと私用でいないんだけどパートナーの魔戒騎士が協力してくれているわ。」
李杏は遺跡を護ることを元老院から命を受けいまもこうして遺跡を護り続けている。
「相方の騎士ってどんな騎士なんだ?」
「う~ん・・・・・なんていうか気を使ってくれる優しい感じの人。鎧もイメージぴったりの侍って感じかな。」
「侍か・・・・・・一度会って一戦交えてみたいな。」
「止めなさいって猛竜。あんたの戦いかただとすぐに負けるのが目に見えているから。」
「酷くね!」
「おい、大和の奴女と会ってるぞ。」
「大和・・・・・・許すマジ!」
「待て!あいつらは知り合いのように話しているぞ。もうちょっと様子を見てからにしてはどうだ?」
クリスの言葉に風間ファミリーは賛成し、もう少し様子を見ることにした。
「そういえば花はもう買ったの?」
「いや、まだだ。さっき着いたばかりだからな。と言うわけで猛竜、お前行って来い。」
「おい!結局そうなるのかよ!」
『当たり前だ。』
皆以心伝心しているようで。
「まあいいけどさ・・・・・・で、最初はやっぱあの場所か?」
「そらそうだろ。」
「最初にあそこに行った方が正しいわ。私達の最初の後悔の場所よ。いくら魂を弔ったとは言えど行かないわけにはいか無いでしょ。」
「だな。行くぞ、猛竜。」
四人はある花屋に向かって歩き出した。
ボルシティーにある花屋。そこで一人の女の子が働いていた。その子はここに元々は家族四人一緒にきていた。
しかし、あの日に自分以外の家族を全て失った。彼女は幸いにもあの時の記憶を思い出したため助かったが一人取り残された。記憶を上書きしても家族がいたときの感覚はまだ彼女の中に残っている。一人の騎士は彼女の家族を助けられなかった悔しさと悲しさを忘れることはなかった。
彼女の名は、洲崎類。
「っ!いらっしゃいませ。お久しぶりですね。」
「お、おう。元気にしてたか?」
「はい。そちらもお元気そうですね。」
類に猛竜は話し掛ける。猛竜は類に対して罪悪感があるため少々話すのをためらいがちになってしまう傾向がある。
「今日はお墓参りですか?」
「お・・・・・おう。大事な人の命日だからな。この花とこれとこれとこれを。束三つずつで。」
「はい。」
類は猛竜に指定された花を密の花束にする。猛竜はその光景を見て少し安心した。ここは誰もが描く理想郷。陰我もあながち少ない方だ。こういう子が過ごすにはいい場所なのかもしれない。
「はい。2,500円です。」
「はい。」
猛竜は御代を類に渡し、類は猛竜に三つの花束を渡す。猛竜はその花束を受け取り去ろうとした。
「あのっ!」
「ん?」
「・・・・・・ありがとうございました。」
「・・・・・おう。」
猛竜は大和たちの方へ戻った。
「どうだった、猛竜?」
「結構精神的に疲れたわ。」
「でも会ってよかったでしょ?」
「まあ・・・・・な。」
「素直じゃないのは相変わらすだな。」
哀空吏に言われたことが見事に猛竜の心に刺さった。
「思いっきり言うな!おい!」
「いいじゃないの。それより早く行きましょう。」
「ねえ、なんか猛竜あの子に気がある感じじゃなかった?」
「モロ、俺様も思ったところだ。」
「お前たち、半分合っているが半分間違っているぞ。」
百代の言葉にモロとガクトは間抜けな声を出す。
「あいつは罪悪感を心の内秘めている。何があったかは知らないがな。」
「以外だな。あいつはそういうのを全く経験していないような雰囲気だったぞ。」
「普段から感情を偽ってるのかしら?」
「わからない・・・・・」
「ですね・・・・・」
「・・・・・・」
大和も、他の皆もこの場所にくるときには少しためらいがある。ここは類の家族が亡くなったボルシティーの入り口の場所。類の家族はここで皆魂を小瓶の中に納められた。
猛竜が花束を置き、皆して手を合わせた。
「・・・・・よう。また来たぜ。俺たちはアンタ達を救えなかったあの日から、一人でも多くの人を救う決意をした。これからもアンタ達のことも、救えなかった人たちのことも忘れない。それが俺たち魔戒騎士の決意だ。」
猛竜が代表して大和たちの決意を言った。
「猛竜、次に行くぞ。」
「・・・・ああ。」
「・・・・・泣くな。」
猛竜は目から涙を流していた。あの日の後悔は今でも彼の心に、記憶に刻み込まれている。猛竜は涙を拭きながらその場を後にした。
「・・・・・・墓参り?」
京が誰もが思っていることを口にした。
「墓じゃないよな。」
「うむ。どうやら別の意味での墓参りのようだな。仮にあの場にいても私達は何も聞かない。あいつらが話したいときに話させるな。」
「百代さんの言うことに賛成だ。」
場所は変わりとある港。船の汽笛が海から聞こえてくる。大和はそこに花束を置き、手を合わせた。そこはかつて、魔戒騎士であった男が魔導ホラーとして死んだ場所。彼がいたおかげで今の大和たちがある。その者の名は、尊士。
「尊士、貴方の魔戒剣は俺が哀空吏に頼んで元老院で預かってもらっている。あんたは魔導ホラーになってたけど、元老院はあんたの働きに敬意を表してた。毎年言うが、ありがとう。あなたのおかげで俺は今ここに黄金の輝きを手にしている。俺はあんたを師のように思うよ。」
大和は立ち上がり、その場を去った。
「今度は港・・・・・・全くもって関係性が見えないな。」
クリスは大和たちの行動に疑問を抱く。
「だよねー。あっちこっち歩き回ってるけど何処にも寄ろうとはしないよね。」
「もういいんじゃねえか?ここまで来たら。」
「待ってください。まだ一つ花束が残っています。」
「まゆまゆの言う通りだな。もしかしたらどこかで女にでも渡すのではないのか?」
『っ!?』
百代の言葉にワン子、クリス、まゆっち、京が反応した
「そ、そうだよね。そうかもしれないよね。」
「百代さんの言う通り誰かに渡すかもしれないな。」
「び、尾行を続けましょう。」
「賛成!」
俄然やる気を出す女子一同に男子は何も言えなくなった。
誰にも見つけられることの無い裏道を通り大和たちは近い席にたどり着いた。ここは大和が目を失った場所であり、自分が改めて魔戒騎士になるきっかけをくれた場所であり、符礼法師との最後の場所であり、そしてこの場にいる四人全員がゼドムと戦った場所である。そんな場所に金色の女神像が置かれていた。女神像の増したにはドリームキャッチャーが付けられている。大和の母、直江波奏の墓である。大和は波奏の墓に花束を置き、手を合わせた。他の皆も手を合わせた。
「母さん、俺頑張ってるよ。母さんのくれたこの目で人々に希望を写しているよ。母さんがくれたこの目と牙狼の鎧を持ってホラーを狩り、人々を護っているよ。母さんの墓をたくさん作っているけど、これは癖だから仕方ないね。でも母さんに世界を見せたいんだ。そっちから見える世界と、こっちから見える世界の両方を。
符礼法師、あんたが俺をあの無人島に連れて羅轟と一緒に連れて行ったくれたおかげで今の俺がある。ありがとう。俺はあんたを父親のように思っているよ。だからこれからも、見守ってて。」
大和は左胸につけている波奏の蒼い花に右手を添えてそう言った。
「・・・・・大和、あんたも成長しているのね。」
「李杏だって成長しているよ。聞いたよ、獣型ホラーを魔弾銃と魔導筆を組み合わせた術で倒したそうじゃないか。」
「まあね。でも正直ギリギリだったわ。倒せたのは本当に奇跡的よ。」
「だがよ、それでもすごくないか?」
「確かにな。獣型は人型と違って考えなしに動くため動きも読めなく、攻撃方法も雑だ。倒すのは一筋縄では行かないしな。」
「まあ李杏がそれ程強くなったのなら少し安心かな。俺たち実を言うと少し心配してたんだよ。ここ二年間は顔を合わせてなかったけどこの様子なら安心だよ。」
大和たちは今の李杏に安心していた。魔戒騎士がいなくて大丈夫なのかと思っていたがその心配は無用のようだった。
「それはそうとあんたが川神出身だったのは驚いたわよ。」
「誰から聞いたんだよ。」
「もう魔戒騎士や魔導法師の間じゃすごい噂よ。それで牙狼の鎧が継承できたのかって言うバカもいるけど。」
「おいおい・・・・・それはないだろ。」
「でも、あんたの強さは私達がよく知っているわ。安心しなさい。」
「ありがとう、李杏。少し頼みたいことがあるんだがいいか?」
「いいけど・・・・・何を頼むつもり?」
「実は・・・・・」
「なんだ、あの墓?」
「女神像?」
ガクトとモロは波奏の墓が墓なのか分からなかった。
「あれって・・・・・」
「まゆまゆは何か知っているのか?」
「あれ、大和さんのお母さんの墓です。」
『っ!』
まゆっちの言葉に皆は驚愕する。
「あれをわたし川神水上体育祭の時に一緒に作りました。大和さん曰く、“母さんにいろんな世界を見て欲しい”だそうです。」
「大和・・・・・」
京は大和を見つめる。辛いことがあったのにも関わらず、強く生きている大和の姿は神々しく、そして遠い存在の様であった。
「李杏、今日はありがとう。」
「おかげで助かったぜ。」
「感謝する。」
大和たちは李杏にお礼の言葉を言う。
「いいのよ。それに符礼法師に四人揃ったところを見せられたんだから。」
「そうだな。じゃあ頑張ってやれよ。それと頼んだことも頼むな。」
「ええ。書類で送るわ。郵送方法は番犬所を使ってね。」
「相変わらずだなおい!」
「まあ李杏だしな。」
「仕方ないな。」
大和たちはそんなやり取りをした後その場を去り、魔戒道で帰った。風間ファミリーも魔戒道を通って帰ったが散々歩き回った故に大和たちより帰りが遅くなりくたくただったのは言うまでも無い。
深夜のボルシティーのアジト。李杏が魔導筆を使って大和から頼まれたことを調べていた。
『実は川上で不審な動きがあるんだ。どんな些細なことでもいい。政治家の中で不審な動きをしている人を見つけて欲しいんだ。』
『そんなこと調べるのはいいけど・・・・・・どうして?』
『こっちの出ているホラーが意味深なことを言ってたんだ。きっと何かある。』
『・・・・・・わかったわ。任せといて。』
「・・・・・と入ったものの・・・・・・結構政治家って不審な動きばっかするのね。」
李杏は怪しい政治家を調べるのに悪戦苦闘していた。