「ふひ~、いい湯だな~。」
「そーだな。結構疲れが取れるぜ。哀空吏も今日今から疲れたらいいのにな。」
「しばらく無理だろ。巡回に言って終わった頃にはもう皆寝ている頃だろうし。」
「だな。昔ならこんな所でくつろげないが転移術が開発されてからは出来るようになったしな。」
大和たちは一時川神から少し離れたところで風呂に浸かっていた。
「おいおい大和。」
「なんだ?」
「あれ。」
「ん?」
猛竜が指を指すほうを見るとそこには覗きをしようとしているガクトといやいや言いながらも覗こうとしているモロの姿があった。
「猛竜、あいつらの今後の展開を予言しよう。」
「ほほう。」
「まず塀にへばりついて覗こうと顔を上げます。」
「はい。」
「すると突如強力な水鉄砲が二人を襲う!」
大和がそう言った瞬間に二人は何かに吹っ飛ばされ山の方に落ちていく。
「・・・・・百代さんか?」
「その通り。」
「学習能力ない奴が多いな。」
翌日、ごつごつとした石の足場で風間ファミリーと大和たちは一緒に集まっていた。
「と!いうわけで!」
キャップがノリノリで言い出す。
「来たぜ!風間ファミリー山ごもり夏合宿!」
『イエー!』
キャップの言葉に風間ファミリーは歓声を上げる。だがそんな風間ファミリーでひと際怪我をしているガクトとモロが目立った。
「最近どうにもS組と勝負することが増えてきたし、この夏でちょいと気合を入れなおそうって算段だ!さあ!気ィ引き締めていけよ、おまえらっ!」
そうは言っているキャップだが釣竿に虫網、虫かごクーラーボックスにサッカーボールと遊ぶ気満々である。
「キャップは違う方向に気合が入っているな。」
「遊ぶつもりだな。」
「だが実際旅行だぞ。」
大和、猛竜、哀空吏の順に心境を言った。そんな時ゲンさんが舌打ちをした。
「ったく、何で俺まで来なきゃいけねぇんだ。」
「まあまあ、そんなこと言ってるわりに来てるでしょ。ワン子のことも心配でしょうがないお兄ちゃんなんだし。」
「そんなんじゃねえよ。第一、大和たちのやる鍛え方が変わってんだよ。」
「そう?」
「そうだよ。」
大和が首を傾げるとゲンさんは即答した。
「じゃあワン子、はいこれ。」
大和はワン子におわんを二つ渡す。
「なにこれ?」
「あそこに目印の赤い旗がある。大体片道2kmだな。あそこまで走っておわんに水を汲んでここにある壺に汲む。途中で毀れても気にせずここまで来ること。この壺一杯に出来たらOK。」
「今日はそれだけ?」
「まあな。これの意味は後で教えてやるよ。やってみ。」
「わかった!」
ワン子はそう言うと赤い旗のある場所まで走り出した。猛竜は大和に話し掛ける。
「おいおい大和、大丈夫なのかあのペースで?」
「ん?俺らがとやかく言うことじゃないだろ。」
「それもそうだな。じゃあ俺らは俺らの訓練するか。」
「よしきた!」
そう言うと猛竜は足元の小石を掴み大和に目掛けて投げる。大和はそれを避けたり鞘に収めた状態で弾いたりする。
「俺も始めるか。」
そう言うと哀空吏は石を三つ積み上げると距離を取り魔戒弓を構え弦を引き矢を一矢射る。矢は真ん中の石に刺さりそのまま真ん中の石を抜き取った。上にあった石は綺麗に積み上げたように落ちた。
「・・・・・・・判断までの時間がまだだな。」
そう言うと哀空吏は矢の刺さった石から矢を抜き取り別の石を積み上げる。そして同じ訓練をし始めた。
そんな光景を見ている百代はワン子の成長に少し微笑み、大和たちの持つ力に興味を持っていた。だがそんな感情はすぐに消えて百代はまゆっちをイジル。
ワン子はおわんの水をこぼしながらも少しずつではあるがツボに水を入れていった。
そんなことをしているとガクトが全速力で大和たちの方に走ってきた。
「大和~~~~~!助けてくれ~~~~~!」
「どうした?また女子風呂でも覗いたか?」
「チゲェ!イノシシと出くわしたんだ!ほら!」
ガクトが指を指す方向にはこっちに向かってくるイノシシの姿があった。
「猛竜、任せた。」
「おう。」
猛竜は右手を盾に変形させるとイノシシに正面から向き合い、そしてイノシシの突進を受ける。
「っ!川上のイノシシって意外と力強いんだな。」
「感心してないでそいつをどうするか考えろ。」
「なら簡単だ。コイツは怪我がひどいから殺すしかないな。」
「ならせめて、一瞬で終わらせろ。」
「あいよ。」
猛竜の言葉にクリスは驚きを隠せなかった。
「ま、待て!治療するという選択はないのか!」
「無理だな。」
哀空吏が否定する。
「クリス、アレだけ怪我がひどいと治療しても苦しむ。ならせめて殺して楽にするのがせめてもの償いだ。」
「それは戦士としての思いやりか?」
「まあそうだな。情けは戦士にとっての侮辱のようなものだからな。」
クリスと哀空吏が話している隙に猛竜がイノシシの眉間に一撃入れ倒した。
「ほんじゃこれを旅館の方まで運んでおくわ。」
「おお。頼むわ。」
大和がそう言うと猛竜はイノシシを抱えて旅館の方に向かった。
「大和。」
「ん?」
クリスが大和に歩み寄る。
「大和はその・・・・ためらいは無かったのか?」
「う~ん・・・・・救えるなら救いたかったよ。でも・・・・・ああいう救い方しかなかったから。」
そんな大和は少し悲しそうだった。そんな空気を壊すかのようにキャップが元気よく大和のほうにやってくる。
「お~い、や~まと~!」
「キャップ・・・・」
「なんだよ暗い顔して。早くバーベキューしようぜ。」
そんなキャップを見て大和の口元は微笑んだ。
「どうして大和?」
「いや、キャップのような人が皆だったらいいなーって思ってさ。」
「?」
キャップは大和の言っていることはわからなかったがそのまま皆をバーベキューに促した。
そして時間は過ぎてゆき日も沈み空には星が見えていた。遊んでいた皆は満面の笑みで寝転がり、ワン子は少しぐったりしていた。
「大和~、この訓練の意味を教えて~。」
「ああ、それか。」
「まさか意味が無いってワケじゃないよね?」
「んなわけないだろ。ワン子、お前は薙刀を使って戦うときに重心がばらついていかにも投げてくださいといわんばかりだった。だが今回の訓練は重心を保ちつつ移動できる訓練並びに体力も付いたんだ。」
「なるほど!」
ワン子は納得した。
「お二人さんよ、お前らは真面目に修行してたけど結局俺らあそんでてちっとも気が引き締まってないぜ。」
「ガクト、それがわかってんならちゃんと修行をしようとする姿勢を見せろよ。まあこんなことのためにセカンドプランは練っているがな。」
大和のその言葉に皆は反応する。
「どんなことをするつもりなのだ、大和?」
クリスの問いに大和は答える。
「肝試しだ。といっても墓地には寄らずここに表記されている道を通ってね。」
「あの、大和さん。」
「なんだまゆっち?」
「何でこの道を通るんですか?この道を見るかぎり遠回りですよ。」
「ああ、それ。確かに遠回りになるけど月明かりがあって足場も安全な道だから。」
大和がそういうのは表面上の理由。真実はホラー対策用の結界を張っている安全な道である。
「大和は優しい。そんな大和が好き。」
大和は京のことを気にせずクジを準備する。
「じゃあこのくじを引いて。二人一組が六組出来るから。」
「よっしゃ!俺様のクジ運を発揮するぜ!」
「ガクト、そう言ってるやつに限って大抵本人の希望とは反対の結果になるぜ。」
「うるせぇ猛竜!俺はそんなもんを壊してやる!」
クジの結果
大和・百代ペア、ゲンさん・哀空吏ペア、モロ・ガクトペア、キャップ・京ペア、ワン子・猛竜ペア、クリス・まゆっちペアとなった。モロとガクトとはショックのあまり床に手を付いた。
ゲンさん・哀空吏ペア
「たく、何でこんなことしなくちゃいけねぇんだよ。」
「そういいつつもやっているということは優しい証拠ですね。」
「そんなんじゃねえよ。大体お前ら夜中にこそこそ動き回ってるが何してんだ?」
「ちょっと。」
「ちょっとっておい・・・・・まあいいか。」
ゲンさんは溜息を突く。
「とりあえず前に進みましょう。」
「・・・・・そーだな。
モロ・ガクトペア
「たくっ、何で俺がモロなんかと。」
「それ僕も言いたいんだけど。でもガクトと一緒だと幽霊が出そうでも安心っちゃ安心だね。」
「おうよ!俺様の前では俺など霊などもはやギャラリーでしかねぇ。」
「ははは、とはいえ喰らいとやっぱ少し・・・・怖いかな・・・・」
モロは両手の指先を合わせながらそういう姿は少し可憐に見えた。
「・・・・・おまえ、ときどきものすごく色っぽく見えるよな。」
「は?」
モロはガクトの言葉に間抜けな返事をする。
「俺様、おまえの妙に生白い首筋を見てるとこう・・・・・ために変な気を起こしそうに・・・・・」
ガクトとは頬を赤らめながら言う。そんなガクトにモロは恐怖する。
「怖い!幽霊よりガクトが怖い!」
キャップ・京ペア
「なあなあ京、俺的には小豆洗いあたりがでると嬉しいぜ。河童なんかじゃメジャーすぎて逆にウソ臭いもんな。」
「どっちもそんなに変わんないよ。たぶん出ないし。」
その時二人の後ろの茂みからガサゴソと物音がした。
「お?お?なんだッ?」
「何かいる。気配が無いけど。」
その時しろ四本足の何かが二人の前を通り過ぎた。ウサギでも犬でもない何かである。
「待ちやがれ!」
「えっ・・・・ちょ・・・・・キャップ!」
京の言葉に耳をも傾けずキャップは追いかけて行った。
「・・・・・仕方ない。ひとりでいこう。」
ワン子・猛竜ペア
「ねえ、猛竜。」
「なんだワン子?」
「前々から思ってたんだけどどうしてその右手はそんなになってるの?」
「これか?まあ名誉の負傷ってとこだな。てかこの手自分で斬り落としたし。」
「えっ!?」
ワン子は驚きを隠せなかった。
「実は手に強力な酸の刃物が刺さってな。腕を侵食する前に自分自身で斬ったんだ。」
猛竜は右手を見ながら言う。だが実際は魔導ホラーのプラントが刺さったとは口が避けてもいえない。
「なんで・・・・」
「ん?」
「何でそんなこと出来たの?怖くなかったの?」
「まあ・・・・・・・怖かったが、死ぬよりマシだって思ったわ。やっぱさ、死より怖いものって無いじゃん。死にたくないって心からそう思ったんだわ。だからその時迷わず自分自身で斬ったんだわ。」
「・・・・・・・・羨ましい。」
「へ?」
「猛竜って強いんだね。心も身体も。私なんか叶わないよ。」
ワン子は夜空を見上げながら呟くと猛竜はワン子の頭に左手を置いた。
「ん・・・・・」
「お前も強いところあるじゃねえか。あの時負けたがあの場で泣こうとせず大和の前だけで泣いた。お前だって心が強いじゃねーか。」
「でも・・・!」
「でもじゃねえよ。それにな、俺は自分が弱いって思うぜ。」
「え・・・・」
「俺が強いって思うのは大和だ。あいつは一回は絶望の淵にまで落とされたが這い上がってきた。あいつのように強い奴はいねぇ。」
「大和が・・・・強い・・・・・」
「創造つかねぇか?」
「・・・・・うん。大和は昔から優しい。優しすぎるほどだから。」
「ま、確かにあいつは優しい。だから強いんだ。その優しさが誰かを護る強さになる。だからあいつは何度でも立ち上がると思うぜ。」
「・・・・・・・あたしも大和のように強くなれるかな?大和とは違う強さを持って強くなりたい。」
そんなワン子を見て猛竜は微笑む。
「なったらいいんじゃねぇか。お前なりの強さを見つけてみろ。」
「うん!」
その時のワン子は笑顔で答えた。
クリス・まゆっちペア
「や、大和が選んでくれたコースとはいえやはり夜は怖いな。」
「まだいいほうであると思いますと。」
クリスはまゆっちの後ろ髪を手に撮りながらまゆっちと一緒に歩いていた。
「でも今は百代さんが羨ましいです。」
「むっ、それはどういう意味だ?」
「ヴぇっ!あっと・・・・その・・・・・」
まゆっちは顔を赤らめながら両手の人差し指を合わせる。
「・・・・・・もしやまゆっち、大和のことが好きなのか?」
「な、ななななななにをいっていりゅのでひゅか!しょんなひょほおもっへいるほへもおもっへるんでひゅか!」
「おいまゆっち、言葉が変になっているぜ。」
松風が冷静にツッコム。そんなまゆっちを見てクリスは溜息を吐いてしまう。
(全く、大和は誰にでも優しすぎる。こんなにも女たらしな奴は始めてだ!だが・・・・そういう優しさも大和のいいところだ・・・・・。ああもう!私はどうしたら言いのだ!)
クリスは頭を両手で掻く。
「く、クリスさん!少し落ち着いてください!」
「あ、ああすまない。少し考え事をしてな。」
「それって大和さんのことですか?」
まゆっちの言葉にクリスは拭いてしまう。
「ま、ままままゆっち!」
「・・・・・」
まゆっちも溜息を吐く。
「何で大和さんはこうも女性を落とすのが上手なんでしょう?」
「そ、それは私も同感だ。大和は所構わず誰にでも優しすぎる。も、もう少し節度というものをわきまえてもらいたいものだ。」
「そうですね。あの~・・・・」
「なんだまゆっち?」
「私達以外に大和さんを好きな人って知っていますか?」
「ああ・・・・・」
クリスは思い当たる節があった。
「・・・・・京だな。あいつは小さい頃にイジメられているところを助けられて惚れてしまったらしい。」
「大和さん・・・・・・」
二人は同時に溜息を吐く。
「なんだかんだで皆大和に惚れてしまうものだな。」
「ですね。これ以上惚れさせたらなんだか嫌な予感しかしませんね。」
「そうだな。」
二人は互いに顔を合わせ、笑った。
大和・百代ペア
「こうして肝試しをするのもたまにはいいね。」
「ああ、そうだな。」
大和は百代の方を向くと百代の顔は青く、目は若干涙目になっていた。
「・・・・・今なら誰もいないから正直になってもいいんだよ。」
「そ、そうか。」
百代は辺りを見回し誰もいないことを確認すると安堵を吐いた。
「怖い!怖いぞ大和!」
百代は泣きながら大和に抱きついてきた。
「はいはい。」
大和は百代の頭を撫でる。
「百代姉さんは相変わらずこういうのが苦手だね。嫌なら嫌って言えばいいのに。」
「私は仮にも四天王最強だぞ。そんなことが出来るはずがないだろ。」
「無駄なところで意地を張るよね、百代姉さん。自分の弱さを知るのもまた強さってものじゃないの?」
「むっ!それは違うな。力で相手を屈服させることが強さだと私は思うな。」
そんな百代の言葉を聞いて大和は溜息を吐いてしまう。
「やっぱそこは変わらないんだ。」
「当たり前だ。大和、いつか戦うと言っていたな。」
「まあね。でもここでしないよ。」
「ほう・・・・・何故だ?」
「う~ん・・・・・・まだその時じゃない気がするから。近いうちに叩くかもしれない直感はする。」
「ではその時は・・・・・・お前は私を倒すのか?」
「・・・・・いや、違う。」
「なに?」
「救うんだよ。闇に堕ちる前にね。」
「ではその時まで少し待ってやる。ところでだ・・・・・」
「ん?」
「もう少しこのままで言いか?」
大和と百代は話しているが百代は大和にずっと抱きついたままである。
「・・・・・皆に見られる前には離れてね。」
「・・・・うん。」
一方その頃川上では儀流が川神を巡回していた。
人気が多い道を歩いているとふと視線を感じ後ろを振り返った。その瞬間その場にいたはずの人々はいなくなっていた。ただ一人、緑色の生地に白の三本線が入ったジャージを来た茶髪の男がいた。
「始めまして、魔戒騎士さん。こんな格好でゴメンね。」
「貴様・・・・・・何者だ?」
「おっとこれは自己紹介が遅れて申し訳ございません。俺は飯塚康太、ホラーで言うとヂュポア。」
「ヂュポア・・・・・・羽を武器とするホラーだな。」
「そ。それで今回は軽い挨拶をしに来たんだ。」
「貴様・・・・・・このままのこのこ変えれるとでも思っているのか?」
「だよね。」
ヂュポアは右の人差し指を立てると自身の周りに無数の黒い羽を浮かせる。儀流は斧を構える。
「えい。」
右の人差し指を立てに振ると羽は儀流に向かいまるでナイフのように飛んでくる。儀流は斧の柄を伸ばすと両手で斧を回し全てを叩き落そうとした。しかし、一部の羽は儀流の後ろに回る。
「く・・・・っ!」
儀流は身体を横に一回転させる。その際に生じる風圧で羽は行き場を失う。
「へー、以外にやるみたいだね。でも今日はここまでにしておくよ。」
「待て!」
儀流がヂュポアに接近しようとするが黒い羽が儀流の周りを飛び交う。
「くっ!」
「それではこれにて。」
ヂュポアはお辞儀をするとその場から姿を消した。それと同時に儀流の周りを飛び交っていた羽はその場からなくなり、再び人々が道を行き交っていた。
「・・・・・・・」
儀流は斧を懐に納め再び巡回に戻った。
旅館に戻るとキャップが自分の見たことを大和たちに話した。その時は分からなかったが後々調べてみると空間と空間のみに生きる精霊の一種であると分かった。