暑い日差しが差す川神学園の校舎裏。そこに一人の女子生徒が目の前の人物に告白をしていた。
「私・・・・・本気なんです・・・・・。あなたが好きです!私の彼氏になってください・・・・・・・・お願いします・・・・・!」
その女子生徒は意を決してその人物の名を言った。
「モモ先輩っ!」
まさに百合であった。
「――――ということがあってな。」
百代は大和にそのことを川原を歩きながら話していた。
「そのうち起きるんじゃないかと思ったよ。てか彼氏って・・・・」
大和はそのことを聞いて呆れていた。百代は戦いだけでは満足せずたまに女性にまで手を出すことが毎回ある。いつかそうなるのではないかと思っていた矢先にこれであった。
「で?なんて答えたの?」
「私はノーマルだから取り巻き女子とは皆遊びだ、と。」
「バッサリ・・・・・・その被害に遭っている人たちが可哀想だよ。」
「そしたらなんか心のダメージで寝込んだらしくてな。困ったもんだ。」
百代はそう言いながら頭を抱える。
「その原因は百代姉さんだからね。後頭抱えたいのはこっちだからね。」
「うーん、その『大好き』って気持ちが今ひとつよく分からんのだなぁ。女の子はかわいいけどいろいろめんどいなーと可憐に悩んだりしているんだ。」
「その言葉ガクトが聞いたら泣き崩れると思うよ。てかそもそも百代姉さんが誰これ構わず襲うからそんなことになるんだと思うよ。」
「ともあれ、これからどう女の子に接したらいいか考えものだ。いっそはべらかすのはやめようかな・・・・・」
その時百代は気配を感じ気配のする方を振り向くとそこには二人組みの女子がいた。
「あっモモ先輩・・・・・!今日も美人―」
「こらっ、聞こえてるよ。」
「むっ!」
百代は自分を褒める方の女子に近づく。
「フフッ・・・・・遠慮は要らないぞ。もっと近くで見てみるといい。」
「キャー♪」
大和は呆れて溜息を吐きその場からそそっくさと去った。
金曜集会のある秘密基地に大和が着くと既に百代が来ていた。
「おお、大和。」
「よっす。あれ?皆は?」
「少し遅れるそうだ。おおそうだ。」
百代は何を思い出したのか鞄の中から一冊の本を取り出した。
「この川上に関する書物だ。お前が言ったガデラに関するものだが・・・・・こんなものを読んで面白いのか?」
「俺が興味あるからね。」
大和は百代からそれを受け取り本の中を読む。
ガデラは普段は温厚な人を演じているが野心家であり、影でこそこそとたくらみ自らを王位の座に着く様にする策士であった。ガデラは自らに不利となるものが現れては自身の真の姿をあらわにし、邪魔なる者どもを喰らっていった。
その姿は血のような赤と白のまだら模様であり、手と羽が一体化した腕を持ち幾つものとげとげとした牙を持っていた。
しかし、ガデラがその姿を表したのはたった一度だけである。
ガデラは自身の下までたどり着いたものに敬意としてその姿を見せたが、そこまでたどり着く前に二人の刺客が現れる。その刺客はガデラが気に入った者で、ガデラ自らが作り出した刺客である。故に人なるものにはあらず。
「おい大和!私が暇ではないか!」
「当たり前でしょ・・・・・・」
大和は呆れて溜息を吐く。もう百代のことで何回溜息を吐いたかと本人が思うほどであった。
「仕方ないでしょ。本は大抵黙って読むものなのだから。」
「私が読む本は笑いが出るぞ。」
「それはギャク漫画だ!」
大和の冷静なツッコミが入る。
「本はあとだ。お姉さんと遊べ。」
「何をしてですか?」
大和は本を閉じ百代に構う。
「んー・・・・・!よし。」
百代は何を思いついたのか立ち上がる。
「リアルクリハンをやろう。」
「リアルクリハン?何それ?」
「なんだ知らんのか?私がたった今思いついたリアル版のクリハンだ。」
「今思いついたのがわかるか!てかそもそもクリハンって何!?」
「なんだ知らんのか?クリハンはクリーチャーハンターの略名でハンティングゲームのことだ。」
「で?リアル版は?」
「私がお前を狩る。」
「はい!?!?!?!?」
そう言った途端百代は大和の上にまたがる。
「捕獲した。これで目的は達成したぞ。」
「じゃあ早くこの状況から解放して。」
「いーや、獲物を物色だ♪」
「ちょいちょいちょい、何ボタンを外しているの!」
「狩った獲物からは素材を剥ぐんだ。知らないのか?」
「ゲームも知らないのにわかるか!てかほんとなにがしたいの!」
「シャツを脱がされて組み敷かれて・・・・・これから何をなさると思う?」
「?ちょ・・・ま・・・・・にゃあああああああ!」
(この嬢ちゃん、恥じらいがねえのか?)
百代は大和の上着を強引に脱がすと大和を仰向けにした。その時百代は大和の背中を見て驚愕した。
獣の爪にできられたかのような傷、鋭利なもので刺された傷、肉を裂く様な傷。
それらは並大抵の人間では耐えられないほどの大きさであった。
「・・・・・・」
百代は静かに背中をマッサージする。
「大和、最近お前を構ってたのは私が最近ストレスが溜まっているからだ。」
「どうしたの姉さん、そんなお通夜見たいな口調して。」
「お前の背中を見てこう思わないものはいない。」
「そっか。で、ストレスは自分と張り合いのある人が現れないから?」
「・・・ああ。早く戦える機会が欲しいな。」
「それは俺が手を焼きそうだ。」
夜になり、人気が無くなった工場の角材置き場で哀空吏はホラーの気配を感じ取りホラーを探していた。
「一体何処にいるというんだ・・・・・・・ん?」
哀空吏は気付いたその場所に山積みのようになっているものがあることに。哀空吏がそこに向かうと山は突如動き始めた。哀空吏は警戒し弓を構える。山は徐々にその姿をあらわにし、やがて本来の姿になった。パンプティであった。
哀空吏は矢をハンプティンに射るが矢はハンプティンの硬い皮によって弾かれてしまう。
「くっ・・・・・・・・・・・!」
哀空吏は角材を跳び、矢を何度もハンプティンに射るが全く傷が付かない。
パンプティンは胸部から目玉を哀空吏に向け放った。哀空吏は弓の刃を使い跳んでくる目玉を弾く。大きな足音を立てながらハンプティンは哀空吏に接近してくる。哀空吏は鎧を召喚しパンプティに斬りかかるがその刃は届かず、皮膚によって防がれてしまう。
「何ッ!」
パンプティは身体を振り牙射を宙に浮かせるとそのまま右腕を振り哀空吏を地面に向け叩きつける。
「ぐぁああ!」
牙射は背中を強打する。ハンプティは身体を収縮させるとその場から跳び去った。
哀空吏は鎧を解き立ち上がる。
「・・・・・・・・っ!」
背中に強烈な痛みが走る。哀空吏はヨタヨタと歩きながら島津寮に戻った。
翌日の登校日、大和たちは昨日出現したハンプティンについて話していた。
「厄介だなそいつは。」
「ああ、昨日俺の矢も届かなかった。」
「つーことはよ、強い矢を放てばいいんじゃねえのか?」
「猛竜、そんなこと・・・・・・・出来るかもしれないな。」
大和の言葉に二人は反応する。
「確か今日は満月。だとしたら・・・・」
「月下一射(げっかいっせき)の術か。」
哀空吏がそう言うと大和は頷いた。
「確かそれって月から放たれる魔導力でボルシティのホラーと似たような方法だったよな。」
「確かにそうだが少し違うんだ。」
「どういうことだ?」
猛竜が哀空吏の言葉に疑問符を浮かべる。
「アレは術符をあの場所まで届かせる方法だが今回は結界の中にホラーを捕らえてから月光を矢に当て魔導力を溜め込む方法だ。だがこれには少し欠点があるんだ。」
「この術はで溜めた魔導力はすぐに放たないと消えてしまう。ついでに結界の外から打てば効力は薄まってしまうため結界の中から放たなければならない。」
大和の説明に哀空吏が捕捉する
「つまり・・・・・・チャンスは一回ってことか?」
「まあそうだな。今回は揚羽さんに協力をしてもらわないと難しい。」
猛竜の問いに大和が答える。ふと猛竜は思ったことを口にする。
「ザルバは無理なのか?」
「坊主、ハンプティンは邪気を普段からあわらにしない厄介なホラーだ。俺でも探知するのは至難の業だ。」
「そっか。あんまり揚羽さん達を巻き込みたくないんだけどな。」
「坊主、その気持ちを持っているのなら大丈夫だ。それそろ学校だ。切り替えろ。」
ザルバにそういわれ大和たちは気分を切り替える。
大和たちが百代たちと一緒に下駄箱の方に行くと見るからに寝不足のS組担任の宇佐美先生の姿があった。
「ぉいーす。」
「おはーヒゲ。」
「ヒゲ、眠そうだねー。寝不足?」
ガクト、百代、ワン子の順に宇佐美先生に挨拶するが全く敬意の欠片もない。
「おーぅ、今日も一緒かおめーら。まあオジサン最近加齢臭に悩んでてよぉ。夜、自分の枕の臭いで目が覚めるんだ。」
「リアクションしづれぇボケやめろよ。」
「引くわー。」
「カレー?」
ワン子は意味がわかっていなかった
「おまえら・・・・突っ込むとしても先生に経緯的なものをだな。」
「宇佐美先生、いいですか?」
「なんだ直江?」
「そんなに気になるのならファ○リーズを掻けた上で枕を干すかで風呂で身体を洗うときに耳の裏をよく洗うといいですよ。それだけでも幾分かは改善されますから。」
「直江・・・・お前イイヤツ。」
宇佐美先生は大和の方に手を置いた。そんなところに小島先生が来る。
「みんな、おはよう。」
「おはようございます、梅先生!」
ガクトとは明るく敬意を払い挨拶する。
「オジサンのときとあきらかにノリが違うな、オイ。」
ガクトに突っ込むと宇佐美先生は咳払いをして小島先生に話し掛ける。
「小島先生、おはようございます。」
「宇佐美先生、おはようございます。」
「いやぁ、いい天気ですね。」
「そうですね。」
「こういう日は遠出に限りますな。」
「それもいいですね。」
「どうですか?生き抜きながらドライブで―――」
「生憎ですが、最近の休みは全て予定が入ってまして。」
さらっと宇佐美戦背の誘いを遠回しに断った小島先生。
「それではHRがありますので。」
「はい!今日も一日頑張りましょう!」
宇佐美先生は満面の笑みで手を振っていた。そんな宇佐美先生を見て大和たちは哀れと思った。
「宇佐美先生・・・・・とりつく島も無いな。」
「そして10年後のガクトはああなるのか。」
「おい猛竜!んなわけないだろ!」
「そうだぞ。ガクトはナンパしまくったあまりストーカー行為によって刑務所行きだ。」
「ヴオオオオイ!哀空吏、酷さが増しているぞ!」
大和は思い出したかのように宇佐美に話し掛ける。
「宇佐美先生、放課後にちょっといいですか?」
「あん?」
放課後の準備室で大和と宇佐美先生は将棋を打ちながら話していた。
「お前さんもマメだな。オジサンから何聞きたいのよ。」
パチ・・
「S組の様子です。最近うちのクラスとモメすぎて委員長がかなり困ってんですよね。」
「F組委員長が?そりゃうちのハゲが悲しむな。S組はエリート意識がつえぇからな。目立つF組は鼻につくんだろ。」
パチ・・
「そっちの原因の心当たりは?」
「うちの組は喧嘩全買いだけど売らないほうなんで。」
パチ・・・
「ただ・・・先導されている空気を感じていますんで。心当たりありますか?」
「・・・・・・オジサンも心当たりが無いわけじゃないけどな、受け持ちクラスなんで意図はともかく悪くは言わんよ。ま、ここは川神学園だ。せいぜい戦って解決しろ、若者。お前ならできんだろ。」
「・・・・・・」
大和は顔をしかめる。
「あり?なんかまずかった?」
「・・・いえ。先生の番ですよ。」
「お、おう・・・・」
パチ・・・・・
「で、オジサンのほうの悩みどう思う、直江?」
「悩み?」
「児島先生との故意についてだよ。脈はありそうか?」
「無いですね。全く眼中に入ってません。」
「難易度高いよねな。初心な処女は・・・・・・・オジサンの憧れだぜぇ。」
「へー・・・・・・・て、マジ?」
「マジマジ。」
「結婚指輪無いからまさかと思ったらマジでしたか。」
「いいだろ別に。オジサンなんかもう35でそろそろ老眼開始だぜ。」
「どうでもいい情報をありがとうございます。」
「小島先生お堅いからな。だが確かな筋からの情報だ。オジサン貯金が溜まったら清純な児島先生と結婚するんだ!」
「・・・・不可能な挑戦を白い目で応援します。」
「お前・・・・・まあいい。女がらみといやもう一つ、お前に聞きたいんだけどよ。クソッ・・・・・・どうにかこの状況から奪回しないとな。」
パチ・・
「なんですか?ほい王手。」
「ギャアアアアア!ええっと・・・・・・ダメだ、降参だ。まあお前に聞きたいのは風間ファミリーの誰と付き合っているんだ?」
「はい?」
大和は疑問符を浮かべる。
「もしかしてお前さん・・・・・・・恋をしたことないのか?」
「はい。」
あっさりと答えた大和に宇佐美先生は頭を抱えながら溜息を吐く。
「お前さんって・・・・成績はいいが馬鹿なのか?」
「はい?」
「わかってねぇんならいいわ。」
「そうですか。じゃあ俺はここで。それとここ、こうしたら勝てるようになりますよ。」
パチ・・
「あ〝!」
「じゃあそういうことで、さいなら。」
そう言って大和は準備室を後にした。
そして夜になり、満月が夜空を上っていた。
「お前たちに頼まれて調べてみたらここにいた。」
「すみません、揚羽さん。こんなことに付き合わせてしまって。」
大和たちは揚羽と共に港近くの工場屋上にいた。
「ところでその矢に付けている術符はなんだ?」
「結界用の術符です。これである程度の時間は稼げます。」
「だがよ、これは雀の涙程度だ。結局は俺たちが時間を稼がないといけない。」
「後はこの魔鏡を使って月の光を矢に集中させる。時間は掛かるが。」
そういいながら哀空吏は魔鏡を設置していた。魔境は銅鏡のような形をしており、一本の矢を囲むように配置されていた。
「時間は限られている上に敵も厄介だ。お前ら、やるぞ!」
大和の言葉に二人は頷いた。
大和と猛竜はハンプティンに歩み寄る。
ハンプティンは身体を変形させ人型になると大和たちに近づこうとする。大和たちは魔戒剣を抜刀し構える。
「猛竜、いいな?」
「おーよ。」
パンプティンは腕を振り下ろしてくると二人は左右に飛び回避する。大和はハンプティンに向かい魔戒剣の剣先を突く。しかしハンプティンの皮は硬く剣先は硬い皮に弾かれてしまう。
「くっ・・・・・・!」
ハンプティンは腕を振るい大和を飛ばす。
「ぐあっ!」
「にゃろ!」
猛竜はハンプティンに向かい走り、跳び、魔戒剣を振り下ろす。しかし猛竜の魔戒剣も弾かれる。
「クソがっ!」
猛竜は後ろに跳ぶと魔戒剣に魔導火を纏わせハンプティンの股下まできりもみ回転をしながら跳び、きりもみ回転切りをする。ハンプティンは脚の間接部にダメージを喰らうがすぐに身体を後ろに回転させ猛竜を潰そうとする。そこへ大和がハンプティンの頭部に魔導美の刃を飛ばす。ハンプティンは怒り、胸部から大和に目玉を飛ばしてくる。大和は後ろに跳びながら魔戒剣で相殺する。
その時ハンプティンは月光の魔導力を一本の矢に集めているところを目撃した。
「ヤッベ!」
「させるか!」
二人は鎧を召喚しハンプティンの注意を逸らそうと攻撃するがハンプティンは身体をきりもみ回転させ二人を弾くと眼球を連続して哀空吏の足場に向けて放った。哀空吏の足場は崩れ、矢と共に哀空吏と下に落ちてゆく。
だが同時に矢に月の魔導力が溜まっていた。チャンスは今しかないと思った哀空吏は矢を掴み、そして鎧を召喚し矢を弓に掻ける。落ちてゆく瓦礫の中にあるわずかな希望の通り道に牙射は掛けていた。そしてその希望の道が開かれた瞬間、彼は言い放った。
「楠神流の・・・・・・・・名に掛けて。」
一矢、希望の一矢を牙射をハンプティンに向け放った。希望の矢は瓦礫の間を通り抜け、ハンプティンの頭部に刺さった。刺さった矢から魔導力が一気にハンプティンの中に流れハンプティンは飽和状態になり。そして爆発した。
「よっしゃ!」
「やったぜ楠神流!」
哀空吏が鎧を解くと揚羽が哀空吏をお姫様抱っこでキャッチする。
「すみません。」
「なに、気にするな。」
こうしてハンプティンとの戦いが終わった。