牙狼〈GARO〉 大和の輝き   作:ザルバ

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夏休みが終わり、中間試験が終わったS組みでは小雪が新作を発表していた。

「榊原小雪第25作目―、『真・アリとキリギリス』。」

「真・・・なんだかふかそうです。」

「だいたい駄作になるけどな。」

 小雪の作品に興味を抱いているマルギッテとは裏腹に準はどうなるかわかっていた。

〈あいついあつい猛暑の日のこと、アリさんは冬にそなえて働いていました。〉

「労働するのは当然のことと知りなさい。」

〈そんな中キリギリスは草かげで楽しそうに歌っていました。〉

「まんまイソップのパクリだな。」

〈アリさん、なんで君たちは働いているんだい?〉

「このキリギリスは秩序を乱す存在だ。狩るべきだな。」

〈えー・・・そんなこんなで時が経ちました。〉

「手抜きを覚えちゃった!」

〈この冬は暖冬で食べ物にも困りませんでした。〉

「食糧難が回避できてよかったじゃない。」

〈そして今日はアリさんの四十九日です。〉

「ってお――――い!」

 準が驚きツッコミを入れる。

〈アリさんは猛暑にもかかわらず働き続けたので死んでしまったのです。キリギリスはアリさんを散々バカにしながら道で拾った食べ物をお供えしましたとさ。〉

「お・し・ま・い。」

 小雪が発表を終えるとそれを聞いていたS組生徒は拍手を送る。

「オチは読めてたけど切ないねぇ。」

「努力はするべき人がすることだよー。」

 小雪は当たり前のようにそう言う。

「ほーほっほ!要はこういうことじゃな!」

「!」

 準は高笑い声がしたほうを向くとそこには不死川がいた。

「F組の山猿は努力するだけ無駄というわけじゃな。」

「またおまえさんはそういう・・・・。」

 準は不死川に呆れる。

「F組っても委員長や直江あたりはいい成績じゃない。今日あたりテストの結果も張り出されてるだろ?」

「そういえばそうじゃなよし、さっそくF組の猿を馬鹿にしにいくのじゃー。」

 準の言葉を聞いて不死川は実行に移した。準はそんな不死川に「ほどほどにしときなさいよ、ホントに・・・・」とささやいた。

 

 週間試験の結果が張り出されている掲示板には多くの生徒が自身の結果を見ようと集まっていた。

「ほーれ、道をあけるのじゃ一般人ども!」

 そんな中を不死川はズカズカと歩く。

「どれどれ・・・・・っ!」

 不死川はその結果を見て驚きを隠せなかった。

一位 F組 直江大和

二位 F組 楠神哀空吏

三位 F組 蛇崩猛竜

四位 S組 葵冬馬

五位 S組 九鬼英雄

「ほう・・・・まさかここまでの実力とは驚いたな。」

「おやおや、これはこれは。」

 冬馬と英雄もその結果を見て驚いた。

「あー、クッソ!哀空吏に勝てなかった!」

「俺は大和に勝てなかったがお前に負けなくてよかった。」

「俺は勝負と思ってないのだが・・・・・」

 冬馬は大和たちと風間ファミリーに気付く。

「おや、これは大和君じゃないですか。」

「どうも、冬馬さん。」

「そんな、冬馬でいいですよ。それにしてもすごいですね。英雄と私を差し置いて一位を取るとは。」

「うんにゃ。ただこの三人の中で一番下だった奴が何か奢るって賭けをしてたんだ。そしたらこんな結果になった。」

 その言葉を聞いた瞬間に周りがざわつき始めた。そんな時F組のヨンパチたちが話し掛けてくる。

「おい大和、何だってS組の奴と仲良くしてんだよ?」

「マジありえねーし。」

「そいつらがF組にどんな仕打ちしてきたと思ってんだ!?テストのたびに見下されてよう!下級だの低級だの言いたいほうじゃねーか!」

 ヨンパチがこれまでされた仕打ちを口にする。それを聞いた不死川はヨンパチを見下す。

「ほーっほっほ、唯一優秀な山猿にまで見捨てられたみたいじゃのう。ざまあみるのじゃー。」

「ぐっ!見ろ、この曲がった性格!こんな奴らと仲良くなりたいのかよ!」

「うん。」

 大和の回答にまたしても驚かされた。

「ヨンパチ、俺とお前って人だよな?」

「ああ。それがどうした?」

「じゃあ聞くけど人ってさ、皆同じなのかな?」

「は?」

「例えば男と女だと考え方も違う。これは当たり前だ。男同士でも好きな食べ物や好きな人、その他モロモロ人とは違う。人間にも個性があるんだからそこは仕方ない。互いにそこを理解しあうのも大事じゃないかな?」

「だ、だがよ!」

 ヨンパチが大和に反論しようとするところを冬馬が仲裁する。

「待ってください。つまりこういうことですよね。S組との不仲が原因で大和君とF組の皆さんも不仲になりそうと。」

「そうなるね。」

「それは由々しき問題です。」

 S組とF組との間で火花が散った。その状況に冬馬は少し微笑んだ。

「どうでしょう英雄。」

「む?」

「私としては大和君には憂しくない場で過ごしてほしくないのですが。ここはF組委員長の甘和さんが持ちかけてきたという和平交渉など卓にあげてみては。」

『和平!?』

 冬馬の言葉にその場にいたのも全員が驚いた。

「うむ、庶民同士のいざこざは見るに耐えんな。許可しよう。」

「待つのじゃ九鬼!なせF組なんぞ対等に交渉など・・・」

「代表である我が決めたことは言わば宇宙の意思、従え。」

「ひぃ!」

 不死川が英雄に講義するが英雄の威圧に不死川は恐怖する。

(この坊主、リーダーとしてはいいがちょっと自信が過剰だな。)

(だがその分S組とのいざこざが少ない方だ。)

「大和君、そういうわけで甘和さんをS組までお連れ願えますか?」

「ああ。」

 大和は当間の言ったS組までという言葉が引っかかった。

「けど大丈夫なの?あっちの方は不満そうだけど。」

 大和が指を指すほうには不満で頬を膨らましている不死川の姿があった。

「ですから交渉です。折り合いがつけば収拾するでしょう。もし不安ならボディーガードに川神さんかクリスさんもご一緒に。」

 冬馬は大和の方に手を置き話した。その瞬間大和は何かを感じ取った。

「・・・・・・・・そうするよ。とりあえず委員長にきいてくるよ。」

「お願いします。」

 冬馬はそう言うと手で挨拶をして大和から離れた。そんな冬馬に準が話し掛ける。

「若も人がいいねぇ。まぁ俺もF組とはもめたくないから賛成だけどな。」

 順も冬馬の考えに賛成していた。

「ましてF組委員長が!喜ぶかと思うと!小さい子が!喜ぶかと思うと!」

「・・・・・・・」

 考えが若干違っていた。

「トーマー、僕29位だったー。」

 S組とF組との問題にお構い無しに小雪は自分の順位を見てきていた。

「あれ?」

 小雪は冬馬の表情を見て何か気付いた。

「なんかトーマ楽しそう?」

「そうですか?先ほど私は大和君の仲良くする考えに喜びましたが・・・・・・」

「ん?」

「まだ・・・・早いんですよね・・・・・」

 その瞬間冬馬の目の色が変わった。

「私はF組といる大和君ともう少し遊びたいんです。」

 

 一方その頃F組では大和が冬馬の言い出した和平交渉を委員長に話していた。

「S組と・・・・和平交渉・・・・・・?」

 委員長はその言葉を聞いて少し驚いたがすぐに現実に戻ってきた。

「行きます行きますっ!和平しましょうっ!」

 委員長は俄然和平に賛成の意を表すが親友の千花は反対であった。

「ちょっとマヨ本気?S組と仲良くなんか考えづらいいんだけど・・・」

「ああ。コレばかりはスイーツに同意だぜ。」

「アイツらアタイらナメきってるしー。」

「ありえん・・・ありえんぞぉ・・・・」

 千花の言葉にヨンパチ、黒子、スグルも同感であった。だがそんな仲でも委員長は自分の意見を声にした。

「きっかけが大事なんですっ。最初は無理でも交流はしていけばきっと仲良くなれますっ!!」

 委員長はそう言うと千花の手を握り「ね?」と言った。

「うーん・・・マヨがそこまで言うなら・・・・でも不安だわ。マヨはホラ・・・・ちびっ・・・・小動物的というか何されるか。」

「大丈夫です!お姉さんに不安要素などないですよ!」

 心配する千花を安心させようと胸を張る委員長。そんな委員長にヨンパチが声をかける。

「委員長、アメあげるよ。」

「わぁい。ありがとうごさいます~。」

「不安だわ!!」

 簡単に釣られてしまう委員長を見て千花は声を上げる。

「だったら俺たちが護衛に付くよ。」

 大和が哀空吏と猛竜と肩を組みそう言うとワン子が発言する。

「待って!私も行くわ!」

「私もだ!」

 ワン子に続きクリスも言いだす。

「いや、俺たちだけでいいよ。向こうは何かと策を考えてそうだし。」

『策?』

「こっちの思い過ごしでいいと思うことだけど。委員長、いい?」

「はい。そうと決まれば早速和平使節団行ってきますっ!」

 委員長率いる和平使節団はS組を目指した。

 

 S組に着くと委員長がS組の教室の戸を開けながら「失礼しますっ!」といってS組みに入る。S組生徒はそれに気付きザワつく。その中で準だけ鼻息が荒くなった。そんな中冬馬が歓迎する。

「やぁやぁF組の皆さん。お待ちしていました。ようこそ!」

(表面上は歓迎しているな。)

(問題は他のヤツらが余計な事言わなければいいな。)

「コチラヘどうぞマドモアゼル。勉強好きの多いムサ苦しいところですが。」

 準が紳士に委員長の座る椅子に布を被せる。そんな準を見た委員長は顔を赤らめる。

(この坊主、ロリコンなんだよな。)

(そう聞いてるよ。でもノータッチ、つまりグレーゾーンだそうだ。)

(ちゃんと境界線は引いているんだな。安心だ。)

だがそんな中でもS組の生徒は非難の言葉を発する。

「ふん・・・本当に来おったのじゃ・・・・・忌々しい。」

「F組の蛮族どもに交渉なんてできるのかねっ。」

(おいおい、こいつら人を見下すしか脳がないのか?)

(ザルバ、それ間違っても発言するなよ。気持ちわかるけど。)

「な・・・・・なんだか緊張しますね。さすがに少しギスギスした空間で視線が痛いです。」

「大丈夫。喧嘩はしないから。」

 ギスギスした空気の中、冬馬が進行を務める。

「では英雄、クラス代表として和平案の確認と調印を―――」

「うむ。」

 明らかにどこぞの王様とも言わんばかりの椅子に座っている英雄に委員長は和平案の書かれた紙を差し出す。

「九鬼くんおねがいしますっ。」

 委員長は丁寧にお辞儀をして渡す。英雄はそれを受け取り内容を読み上げる。

「ふむ・・・・F組とS組の交流による恒久和平の実現――――か。特に異議はないぞ。まぁ、このような書面を見ずとも・・・・」

 話がわかる人だと思った大和たちは揚羽さんの弟だけはあると思った。

「私はもちろん賛成です。」

「トーマが賛成ならサンセーイ♪」

「F組委員長の望みとあらば以下略!」

 冬馬、小雪、準の三人も賛成してことは簡単に済むかと思った。

「いや・・・待つのじゃ!」

 不服がある不死川が発言をする。

「九鬼が決めたことじゃ。調印は仕方ないがないとしてそこには大切な一文が必用なのじゃ。」

『一文?』

 不死川の言葉に大和たちは疑問符を浮かべる。

「『F組はS組より劣っています』とな。」

 その言葉にS組の教室は静まり返るがその後から来るものは思いもよらぬものだった。

「ははは!そりゃいいや。力関係がハッキリする!」

「奴隷としてなら仲良くしてやるよ!!」

 その言葉を聞いた瞬間大和たちは怒りが心底からこみ上げてきた。

(大和、怒るなよ。)

(わかってる。でも一回懲らしめたくなえる連中だ。)

 そんな中S組の一人の男子生徒が委員長に囁く。

「しかし、うまく考えたよな甘和。」

「?」

「おまえん家、貧乏なんだろ」

「ッ!!」

「交流で僕たちの誰かに取り入れれば玉の輿狙えるもんな。」

「そんなこと!」

「いいって、隠すなよ。」

 その瞬間S組の生徒が委員長を笑いものにする。

「和平交渉成立で仲良くなったらごちそうしてやるよ!」

「おれん家のドッグフードだけどおまえ家には高級品だろ?」

「何それウケるー♪」

 委員長を笑いものに仕立てた生徒の後ろをトントンと誰かが突いた。

「あ?」

 その生徒が振り向くとそこには笑顔のワン子のがいた。

「おっ!」

 ワン子は急にしゃがみこむ。

「おぉ!?」

 ワン子はそのままS組の男子生徒を一本背負い投げする様に投げるとその生徒が地面に叩きつけられる前にワン子は左足を大きく振りかぶり左脇に一発入れる。

「せやぁ!!!」

 男子生徒はそのまま吹っ飛ばされ机にぶつけられた。

「な・・・・な・・・な・・・」

 不死川は驚きのあまり口がうまく回らなかった。

「て・・・・手を出したな山猿がッ!!これが蛮族のやりかたか!!!」

「そっちの人も手出しまくりじゃないのよ。」

「にょっ!?」

 不死川がワン子の指を指す方向を向くとそこには準に容赦無く踏みつけられているS組男子生徒がいた。

「うるぁ!てめぇ委員長をバカにしやがって!!小さい子をっ!!」

「あ―――ッ!スミマセンスミマセン!」

「い、井上はともかく!何が恒久平和じゃ!!しょせん蛮族!此方らが教育してやるわ!」

「友達がバカにされておとなしくしている義理はないのよ!その曲がった根性を叩きなおしたげるわ!」

 ワン子が不死川に攻撃しようとした瞬間ワン子の後ろ髪を誰かが引っ張った。

「あいだ――――ッ!!」

 ワン子は引っ張られて後ろ髪を押さえながら後ろを振り向いた。

「何をするのだァ―――!!ってクリ!みんな!」

「まったく、勝手に行って暴力を振るうな。」

 ワン子が向く頬うにはクリスと風間ファミリーであった。

「クリスも飛び出したけどね。」

「じ・・・自分はこらえたぞ!!」

 京の言葉にクリスは顔を赤くして講義する。

「ハッ。」

「笑うな!ハナで!!」

 ワン子はクリスを鼻で笑った。

「ともあれ・・・だ。」

 クリスの目が変わりS組の方を向く。

「今のはおまえが正義だ。決して許せる言動ではなかった。」

 クリスは自分の信じる正義の名の下に発言する。

「マルさん。マルさんはなんでこいつらを止めないんだ?クラスメイトとはいえどちらかに非があるのは明白だろぅ?」

「・・・・子供の喧嘩に大人は口出しをしないものです。」

「子供・・・?では、ここにいる自分も子供か?」

「え・・・・いえ・・・・そんなつもりは・・・・」

 マルギッテはしどろもどろに答えてしまう。

「なんにせよ交流の場に乗り込んでくるとは輪をかけて蛮族!交渉は決裂じゃ。無事で帰れると思うな!!」

「上等よ!かかってきなさい!」

 F組とS組がぶつかり合おうとした瞬間冬馬の口元が緩み笑みを浮かべた。

 今にも泣きそうな委員長を見た大和は委員長に話し掛ける。

「委員長、少し俺の服の端っこ持ってて。」

「え?」

「お願い。」

「・・・・・わかりました。」

 委員長は大和の言うことに従ってくれた。

(大和、ちょっと大人しくしてやれ。)

(ああ。)

 大和は一呼吸置くと一気に殺気を放った。

『ッ!?!?』

 その殺気に三年校舎にいた百代は微笑み、一年校舎にいたまゆっちは恐怖する。

(これは・・・・・・・大和か?なかなかの殺気だ。)

(コレほどまでの殺気を発するなんて・・・・・)

 九鬼財閥にいた揚羽も燕も、大和の発した殺気に気付く。

「これは・・・・・大和君だな。」

「凄い殺気・・・・・正直勝てる気がしないよ。」

 S組の英雄も冬馬も驚いていた。

(なんという殺気!姉上と同等、いやそれ以上か!)

(これは驚きましたね。F組委員長が大和君のいう事を聞いていなかったら気絶していたかもしれません。)

 皆が静まり返ると大和は殺気を解いた。

「ふぅ・・・・・皆一旦落ち着こ。」

 大和がそう言うと自然と皆は大和の指示に従った。

「九鬼くん、ゴメンね。」

「いや、構わん。こちらにも非があったのは事実だ。それと我のことは英雄と呼んで構わん。」

「いいの?」

「ああ。貴様ほどの男ならば許そう。そこの二人もな。」

「どうも。」

「一応感謝します。」

 猛竜と哀空吏は軽くお辞儀をする。

「正直言うとね、今俺はS組の一部の生徒を除いて軽蔑するよ。」

「なんじゃと!何故貴様にそのような扱いを受けなくてはならないのじゃ!」

「いい加減にしろ。」

 大和の殺気をこめた言動に不死川は恐怖する。

「いい歳こいてイジメするなんて恥ずかしいと思わないのか?自分より貧しいからってその人をいじめていいのか?委員長はお前らに何を言われようとも決して泣かず、騒がず、怒りもしなかった。今この場で大人といえるのは委員長と言っても過言ではない。まあ、他にも英雄君や井上君も別視点で大人だ。」

「私は入ってないのか?」

「マルギッテさんは自分は大人だからと言って口出しをしないを言い訳にしていた。でも、大人がやるべきことってその場その場で変わってくると思うんだ。さっきマルギッテさんがするはずだったことは見下すことを止めさせることだ。どんなきれいごとを重ねても、自分がやった過ちは消えない。それを分からせるべきだったんじゃないのかな?」

「確かに君の言うことは正しい。だが、そんな甘い考えが通るとでも思っているのか?」

「甘いかどうかは置いといて、俺は今そう思うから言っているんだ。九鬼君、そこにいる学園長の意見も聞いてみる?」

『は?』

 大和の言葉に皆疑問符を浮かべた。

「なんじゃ気づいておったのか?」

 学園長がS組の扉からヒョコッと出てくる。

「当たり前でしょ。てか100M離れてた所から聞いてたなら走ってきてもいいでしょ。」

「いやねー。結構この歳で走ると腰にくるんだよねー。」

『地獄耳だ!そしてコイツはヤバイ!』

 学園長は委員長に近づき頭を撫でる。

「分かり合えんのは悲しいの甘和・・・。だが、話し合いで分かり合えずとも他の手段はある。」

「他の手段?」

「勝負するのじゃ。」

「勝・・・・・負?」

 学園長の言葉に委員長は疑問符を浮かべる。

「うむ、我も同じことを考えていた。互いの力を認めねば敬意も生まれまい。そのためにぶつかるもまた一興。」

「左様。おまえたちは全力でぶつかるべきじゃ。その先にこそしいの和平が望めよう。」

 雨振って地固まる・・・・・か。確かに、話し合いで語ることが出来るなら拳で語り合うことも出来るというわけだな。伊達に歳は食っていないね、川神さん。

「そしてそのための舞台はワシが用意しよう。60年かけて編みだした究極の決闘法!!その名も・・・」

「この人何歳だ?」

「計算が合わないってのはよくある話だ。」

 学園長に猛竜と哀空吏は呆れる。

「川神大戦!!!」

『川神・・・・・・大戦・・・・!?』

「学園長、どういったルールで?」

「うむ。大和よ、そう早まるな。ルールはシンプルに双方の大将首を狙って全員で戦闘する。それだけじゃ。」

「つまりこれは・・・・・・」

「そう。ただの・・・・・・・・・・・戦よ。」

「細かいルールは次のとおりじゃ。」

一、 尖った武器は禁止。武具はレプリカまたは峰打ちで戦うこと。屋は先端に指定の処理をするれば許す。

一、 銃・爆弾などの下記の使用は禁止。

一、 捕虜への尋問・拷問はご法度

一、 校内のものならば何人でも助っ人にしてもよい。

一、 郊外の者のも助っ人にしてよいがその枠は50人まで

「以上じゃ。」

「つまりほぼ校内全てを使用できるわけですね。」

「助っ人を多く引き入れる政治力も必要ってことか。」

 冬馬と大和が納得をする。

「うむ。最終的には二分する大戦になるぞい。」

「そんな・・・・」

 委員長はそのことを聞いて驚愕する。

「そんな大勢で喧嘩なんて・・・!」

「喧嘩にあらず!真剣勝負のぶつかり合いじゃ。これが終わった後ならばきっと相手を理解できるはずじゃ。」

「フハハハハハ!!面白いではないかその勝負受けたぞ!!」

「英雄!?」

「何を驚く我が友トーマ。これがお前の望んだ展開であろうが・・・・存分に知略を尽くせ。」

「・・・・・!(お見通しですか・・・・。かないませんね英雄には・・・・)」

 冬馬は英雄に考えを見透かされていたことに参った。

「うう・・・・F組の皆さんはそれでいいです・・・・・・かっ!?」

 委員長が皆の任意を確かめようとした瞬間後ろを振り向くと見るからに戦う気満々のFクラス全員がいた。

(このガキども・・・・何時の間に?)

(最初からいたんじゃないのか?)

「やる気みたいです・・・・・すごく。つくづくウチの子たちはは決闘好きばかりなのです。」

 委員長が瞳から涙を流す。今なら同情を買える気がする。

「では双方合意で良いな!?これより学園長の名のもとにF組とS組の決闘・死闘を禁ずる!一月後に思う存分戦うが良い!両大将ワッペンを!」

 学園長がそう言うと委員長と英雄はワッペンを手に持ち、互いに面子のように地面に叩き付けた。

 

 

 川神大戦勃発ッ!!

 

 川神大戦のことはすぐに学園中に知れ渡った。

「ねー聞いた?2-Sと2-Fで戦争だって。」

「聞いた聞いた!2-Fもムボーよねー。」

「なんでも生徒全員が参加できるんだって。」

「あー、それでF組必死にビラ配ってんだ!」

 グラウンドでは委員長と千花が一緒になってビラを配っていた。

「2-Fでーす。参戦おねがいしまーす。」

「おねがいしまーす。」

 千花はビラに描かれたイラストを見て驚く。

「しかし意外な才能あるわね、羽黒。プロっぽいわ。」

「ダテにネイル描いてねーし!」

 そんな光景を大和は一人フェンスのある屋上で見ていた。

「さっそく勧誘合戦スタートしてる。」

「だがS組は余裕をチラつかせている。しかし川神大戦か。交渉から開戦までどうにもあの坊主にしてやられたな。」

「ああ。だがこれを聞いてあの人が参加しないわけが・・・・・・」

「おお。ここにいいたか大和!」

「姉さん。」

 ザルバと話していた大和に百代が声を掛ける。

「随分と面白いことになってるじゃないか。それに先ほどの殺気はなかなかだったぞ。」

「あんがと。で?」

「ん?」

「とぼけなくていいよ。どうせ俺と戦いたいから・・・・・」

「そうだ。S組のほうに入った。いやはや、なかなか面白いくどき文句をもらった。」

《風間ファミリーのみなさんと、本気で闘ってみたくはありませんか?》

「あいつは人の心を読むのが上手い政治家向きだ。」

「なんとなく言ったことは分かるよ。説得するつもりはこっちにはない。だから・・・・・」

「?」

「俺は姉さんを全力で倒す。S組も一緒にね。」

「っ!」

 百代は大和の言葉を正面から受け止めた。その決意を聞いた瞬間、百代は微笑んだ。

「言ってくれるな。ならばその期待に応えてもらうぞ。」

「ああ。て言っても俺はみんなの希望になる。それが俺の思いであり、誓いだ。」

 そう言って大和は百代に背を向けた。その瞬間百代は幻覚を見たかと思ってしまった。

 黒いマントに金色の模様が施された黄金に輝く鎧を着た大和の姿を。

 

「というわけで川神大戦で私はお前たちの敵だ。」

『!?』

 夜になり島津寮の女子全員は一緒に風呂に入っていると百代が自身が敵になることを発表した。

「・・・・・なんというかモモ先輩らしい・・・・」

「だね。」

 溜息を突くクリスに京が相槌を打つ。

「だってそうだろ。こんな機会でもなければ・・・・・お前たちと戦うことなどなさそうだからな。」

 その言葉にワン子は反応するが、その前にするべきことがあった。

「お姉様。私、本当はお姉さまと戦いたいわ。でもその前にやらなきゃいけないことがある。」

 ワン子はそう言って立ち上がり百代の方を向く。

「だから今回は戦えないかもしれない!でも絶対お姉さまと戦って見せるから。」

 そんなワン子を見て百代は微笑む。

「ああ、がんばれよ。」

「成程。普段戦えない相手だからこそ――――――か。ならば自分にも戦う相手がいるな。」

 クリスは湯船に浸かりながら自分の手を見る。

「いつかは越えたい壁だ。この機にぶつかるのもいいかもな。」

「まゆまゆは当然F組に入るんだろ?」

「はい。先ほど大和さんに仲間になってくれと言われました。」

《まゆっち、俺は皆の希望になるから力を貸してくれないかな?》

「大和さんの背中を見てると自然と託したくなってしまいます。」

 まゆっちは若干頬を赤らめていた。

「ん?」

「だ、だから私も大和さんに負けないように頑張って役に立って見せます!」

「ふむ。京は?」

「私は大和に尽くす。よってモモ先輩には勝たせない。」

「だよな。」

 京に関しては当たり前の答えが返ってきた。

「よし、みんな気構えは出来ているな。ワン子、クリス、まゆまゆ、京―――――」

 百代は一呼吸置く。

「遠慮は要らない。」

 

――――真剣で私にかかってこい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い魔法衣を身に纏った大和の左肩を鋭く尖った尻尾が貫いた。

 

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