川神大戦が宣告され百代たちが風呂に入っている頃、大和は一人川神の町を巡回していた。大和はザルバに邪気を感じるといわれ裏路地に入ったときであった。
「あれ?大和君?」
大和は声のするほうを振り向くと燕の姿があった。
「燕さん!」
「いやー、こんな所で会うなんて奇遇だねー。」
「いや、いま少しこの・・・・・っ!危ない!」
「きゃっ!!」
大和は燕の肩を左手で掴むとそこから払いのける。刹那、大和の左肩を鋭く尖った何かが貫いた。
「大和君!」
「ぐっ・・・・・・・・!」
大和の左肩を貫いた主は影から姿を表す。その姿は紫色の皮膚をしており長くしなやかに鋭い尻尾と両手にカタール状の武器を持っている目隠しをしているホラーであった。
「プーシャだったのか!セコイ手を使いやがって!」
プーシャは尻尾を振るい大和を壁に地面に叩きつける。
「大和君!」
「来るな!」
「っ!?」
今までと違う大和の言動に燕は驚く。
大和はプーシャの尾を掴むとそのまま自身の両手で尾を伝いプーシャに近づいてゆく。
〈愚かな!抜けばよいものを!〉
プーシャはカタール状の刃を大和に突いてくる。
「大和!」
「頼む!」
大和はザルバをプーシャに向けるとザルバは口から魔導火を吹く。プーシャは魔導火を喰らい悲鳴を上げる。大和は魔戒剣をザルバに当てると一気に引き、牙狼剣だけを召喚する。
「はぁああああああああ!」
大和は一気に牙狼剣を振り下ろし尾を切り落とすとプーシャに牙狼剣を突き刺す。プーシャは悲鳴を上げる。
「はあああああああああああぁあああああああああぁあぁあああああ!」
大和は一気に牙狼剣を奥へと突き刺しプーシャの身体を貫通させると一気に引き抜き、そして上から一気に振り下ろした。縦に真っ二つに斬られたプーシャは消滅した。
大和は牙狼剣を召還すると膝から崩れる。燕は大和に駆け寄る。
「大丈夫!大和君!」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」
大和は方で息をしていた。貫かれたかた肩からは出血していた。
「お嬢ちゃん、コイツのコートから蒼い小瓶を出してくれ。」
「う、うん!」
ザルバの言葉に燕は頷き大和の魔法衣から蒼い小瓶を取り出す。
「そいつをコイツに飲ましてくれ!」
「うん!」
すると燕は瓶に栓を開け自分の口に含むと大和に口移しする。
「ぷはぁ・・・・。」
「・・・・・・・おいおい、最近の子は随分大胆だな。」
ザルバは呆れた。
その後ザルバの指示で魔導ライターで大和の傷口を塞いだ。
燕は大和を背負って人気のない電灯の真下にあるベンチに大和を寝かせていた。自身の膝の上で。
「すまねえな、お嬢ちゃん。」
「ううん。元々は私が悪いんだから気にしないで。」
「だが口移しは驚いた。」
「あ、あれはその・・・・・・・わ、忘れて!」
燕は赤くしながらザルバに言う。
「ふっ・・・・・・まあいい。黙っといてやるよ。それに大和はあの時意識はなかったしな。本人に言わなければわかんねえよ。」
「ありがと。あなた指輪なのに人に優しいのね。」
「俺はホラーだ。と言っても大和と契約してるがな。」
「契約?」
「ああ。俺様がホラーを察知する代わりにこいつは俺に一日分の命を俺に契約料として払う。」
「なっ・・・・!」
燕は驚きを隠せなかった。
「こいつの一日分の命が俺様の一月分の命になる。本人も承諾している契約だ。」
「それって・・・・・・・一瞬で終わるの?」
「最初のときはそうしていたが本人の負担も兼ねて一日だけ仮死状態になる様にしている。まぁ、今は川神大戦が始まりそうだから早めに契約料をもらうようにする。」
「・・・・・・・・・」
「どうした、急に黙り込んで?」
「どうしてそこまでして助けるの?人によっては助ける価値もない人がいるかもしれないのに。もちろん、それは私の一存で決められるものじゃないってのは分かってるんだけど・・・」
その言葉を聞いた瞬間、ザルバはふと昔を思い出した。
「あるホラーを封印しようと一人の魔戒騎士がその地に下りた。」
「?」
「そこにはそこに人々を陰から守る魔戒法師が二人いた。一方は温厚な男、一方は男勝りの女だ。女の魔戒法師は自身が誰よりも強いと過信していた。そんな女の魔戒法師の前に一体のホラーが現れた。女の魔戒法師はそのホラーに立ち向かったが、力の差が大きすぎたあまりその女の魔戒法師は殺されそうになった。
だがしかし、そんな魔戒法師を一人の魔戒騎士が身を盾にして護った。そのホラーは逃したが後で倒した。そのホラーを倒す前に女の魔戒法師は魔戒騎士に聞いた。
『何故俺を助けた?』とな。
魔戒騎士はこう答えた。
『俺が救ったのはお前だけではない。お前に未来の希望を護ったのだ。』とな。」
「未来の・・・・・・・希望・・・・・・・」
「ああ。だから気に病むな。」
「・・・・・・うん。ありがとう。」
そこに猛竜と哀空吏が掛け付けてきた。
「燕さん。」
「おっ!おーい、こっちこっちー。」
燕は手を大きく振って応える。二人は歩み寄って行く。
「スミマセン、こんなことになってしまって。」
「ううん、私が迷惑掛けたようなものなんだから。」
「貴女がそういうのであれば・・・・・・そうしておきます。」
「んん・・・・・・・」
大和はゆっくりと身体を起こす。
「起きたか。全く無茶をしすぎだ。」
「スマンなザルバ。燕さんもスミマセン。」
「いいよ。それに私が悪いんだし・・・・・・・・今度何かお礼させて。」
「じゃあ一つ頼みがあるのですが・・・・・・・」
大和は燕と話した後分かれ、二人に支えられながら島津寮に戻った。
「悪いな、二人とも。」
「気にすんな。しかしこうするのもあの日以来だな。」
猛竜の言葉子に二人はあの頃を思い出す。
「あの頃はボロボロだったな。」
「だな。だがこうして今があるんだ。法師には感謝だ。波奏さんにも。」
「ザルバにもな。」
「おっ!俺に感謝か。面白いことを言いやがる。」
三人はそんな話をしながら島津寮に戻り、共に風呂に入った。