2-Sでマルギッテは机に両肘を付き手の甲に顎を置いて考え事をしていた。
遡る事今朝のこと、マルギッテはクリスと一緒に島津寮で生活をしいる。普段の朝ならばクリスを起こしているのだが最近のクリスは朝早くに起きていた。早起きするという点ではマルギッテは嬉しかった。しかしその理由を今日マルギッテは知った。
外から物音がするので中庭を覗いてみるとクリスとワン子、まゆっちに大和たちが朝の鍛錬をしていた。朝の鍛錬自体は問題ではなかった。問題はクリスがずっと大和の姿を頬を赤らめながら見ていることである。そのことに気付いたマルギッテに衝撃が走った。妹のようにクリスをかわいがっていたマルギッテが生きていた中で最大の衝撃と言っても過言ではない。
(クリスお嬢様が成長なさるのは嬉しい・・・・・・・・。だが、どうしてもあの直江大和はだけは!)
マルギッテは百代に勝った大和を警戒していた。マルギッテから見て大和は強かった。一人としての実力、集団としての実力。そして何より心の強さ。明らかに自分よりも経験を積んでおり並大抵の軍人では敵わない。
「どうしましたか、マルギッテさん?」
考え込んでいるマルギッテに冬馬が声を掛ける。
「葵冬馬・・・・・・・君になら少し相談してもいいだろう。」
マルギッテは自分の悩んでいることを冬馬に相談した。
(これは・・・・・・・相当なシスコンっぷりですね。)
冬馬ですら思ってしまうほどであった。
「マルギッテさんはどうしたいのですか?」
「直江大和が危険な存在ではないか確かめたい。」
「ならば決闘はどうでしょう?」
冬馬の案にマルギッテは驚いた。
「それならば問題も無いでしょうし彼とも戦えます。一石二鳥というわけです。」
「三鳥では?」
「はて?何のことでしょうか?」
冬馬としては大和の実力をこの目で確かめることが出来る。冬馬としても得であった。
「・・・・・・・まあいいでしょう。直江大和に決闘を申し込んで見ましょう。」
「というわけで私と決闘しなさい、直江大和。」
『へ?』
昼休みになってマルギッテは大和に決闘を申し込んだ。そのことに大和たち三人は間抜けな返事を出した。
「・・・・・・今からじゃないとダメですか?」
「何か問題でも?」
「今昼食中です。そんな後で運動したら身体に悪いです。」
「むっ!それは言える。」
「なので放課後でいいですか?」
「おい大和!」
大和の返事に猛竜がツッコム。
「いいのかよおい。」
「丁度いい修行にもなるのが表上の建前だ。」
「本音は?」
「これで断って夜の俺たちの行動まで監視させられたらホラー狩りに集中できなくなるからだ。」
「何をコソコソ話しているんだ。」
コソコソ話す大和と猛竜にマルギッテは話しかける。
「いえ、こっちの話です。放課後にルー先生に立会人になってもらうよう話しておきます。」
「わかった。では放課後を楽しみにしてるぞ。」
「ええ、こちらも。」
大和の言葉を聞くとマルギッテは2-Fを後にした。
「や、大和!」
「ん?」
大和にクリスが声を掛ける。
「本当にマルさんと戦うつもりなのか?」
「ああ。いい修行になるしマルギッテさんは百代姉さんに似ている点があるんだ。」
「それは・・・・・戦いを楽しむことか?」
「ああ。俺は闘いでそこを直したいと思っている。」
大和のまっすぐな瞳で言われた瞬間クリスは頬を赤らめてしまう。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫だ!問題ない!」
明らかに問題が大有りのクリス。何故そうなっているのか大和自身、気付いていない。
「両者とも、準備はイいか?」
「はい。」
「いつでも構いません。」
放課後になり川神学園のグラウンドでは大和VSマルギッテの対決を見ようとギャラリーが集まっていた。
立会人はルー師範代。マルギッテはリミッターの眼帯を外し、使い慣れているトンファーを両手に持ち、大和は鞘に収めている模造刀を左手に持っていた。
「では尋常に・・・・・・・始め!」
ルー師範代の開示の合図と同時にマルギッテは大和に向かい走り出す。
「Jagd!」
マルギッテは姿勢を低くして大和の懐に入ると右の手のトンファーを振り上げる。大和は模造刀で防ぐがマルギッテは右手のトンファーをハンマーのように持ち大和の右脇に打ち込もうとする。大和は右手でその攻撃も防ぐ。二人は力を腕に込める。大和は両腕を外側に向け回しマルギッテの手から離れると後ろに跳びながら小尻を振り上げマルギッテの顎に一発喰らわそうとする。マルギッテは身体を後ろに反らし回避する。
(一筋縄ではいかないな。いい修行だ。)
(だな。)
大和は模造刀を力を込め地面に挿すと構えた。
「っ!(攻めに特化した構え・・・・・・剣術ではなく格闘術で倒すつもりか?)」
マルギッテは左手のトンファーを持ち直し大和に急接近、右手のトンファーを警防の様に順手で持ち横に振るう。大和は身体を左に反らすと左、右、左と手を突き出しマルギッテの動きを止めると左手を右手に沿え、右拳をマルギッテの腹部に突く。
「はっ!」
「っ・・・・・・・・!」
マルギッテは防御出来ずその攻撃を喰らった。マルギッテは左手で腹部を押さえる。
(今のは・・・・・・相手の急所を的確に狙っていた。攻めではなく護り?いや・・・・・彼は何時どんな状況でも出来るように構えていたのか。)
マルギッテが考え事をしている隙に大和はマリギッテと距離を詰める。マルギッテが防御体制になると大和は跳び、左右交互にマルギッテの腕に蹴りを入れる。蹴り一つ一つは強く、的確であった。
「ぐぅ・・・・・・(腕が痺れる!)」
大和はマルギッテを踏み台にし上に跳び、右踵落としを喰らわす。しかしマルギッテは前転して回避する。大和が地面に右踵落としをした瞬間マルギッテは反転して両手のトンファーを順手で警棒の様に持ち大和に振り下ろす。
『大和!』
大和の試合を見ているクリス、ワン子、京は声を出す。しかし大和は地面に左手をつけるとそれを軸に回転してマルギッテに足払いを掛ける。マルギッテは脚を取られ倒れる。マルギッテが起き上がろうとした瞬間マルギッテの目の前には大和の拳があった。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ふっ、私の負けだ。」
「勝負アリ!勝者、2-F、直江大和!」
ルー師範代の言葉を合図に歓声が湧いた。大和はマルギッテに手を差し伸べる。マルギッテはその手を取って立ち上がる。
「見事だ。私の負けだ直江大和。」
「マルギッテさんも強かったですよ。」
「君に気を使ってもらうとはな。」
「気なんて使ってません。本心で言っているんです。」
その言葉を聞いた瞬間マルギッテはキョトンとしたがすぐに吹いた。
「なるほど。だからなのか。」
「はい?」
「いや、なんでもない。直江大和。」
「はい。」
「あまり人に優しくさせすぎるなよ。」
「はい?」
マルギッテの言葉を理解していない大和であった。