「ふあ~。」
大和は深夜に行った巡回範囲の確認及びゲートへの退魔の札を貼って短い時間寝てから起きていた。魔戒騎士をやっているとこういうのにも慣れてくる。まさにナポレオンのような者である。
「少し早かったか。」
大和が時計に目を向けると時刻は五時二十五分。予定より五分早く起きていた。
「少し準備運動でもするか。」
大和はそう言うと運動しやすい服装に着替え魔戒剣を持ち外に出る。
「ん!なんだお前らもか。」
大和が外に出ると哀空吏、猛竜も外に出ていた。
「いつもこんな感じだしな。」
「てかもう職業病だな。」
「で、どうする?」
「三人で乱戦でもするか?」
「いやいやいや、流石にしないよ。軽く戦いの方をしよう。」
「そうだな。ここを担当することになったのなら基本が重要だな。」
三人は各々の武器に合わせた攻めの方、護りの方をする。
その光景を部屋から見ている者が一人いた。
黛である。
「あの人たち、ただなる気を感じ取れます。」
「まゆっち、あいつら一体何者なんだ?」
「解りませんが一つ言えるのは・・・・・・・・敵にまわしてはいけない程の人物です。」
三人は朝の運動を終えると部屋に戻り制服に着替え、食堂に足を運んだ。
「おはよう。」
「おはよ。」
「おはようございます。」
三人がそう言うと皆は返答する。
『ほらマスター!早く起きないと遅刻するぞ!』
「うぅ・・・・俺はもっと布団と友情を深めたかったのにー!」
階段の方からドガドガと音を立ててキャップと誰かが来る音が聞こえてくる。
『あんまりだらけていると電撃かますぞ!』
「わかった!わかったよ!」
「「「・・・・・・・・」」」
三人はキャップの後ろにいるロボットになんと言っていいのかわからずにいる。
「なあ二人とも、何に見える?」
「ロボットだな。」
「ああ、ロボット意外なんと表現すればいい?」
『ん!お前たち新入りか?』
「あ、うん。まあ。」
『俺はクッキー。よろしくな。』
「ああ。俺は大和。直江大和だ。」
「楠神哀空吏。」
「蛇崩猛竜だ。」
自己紹介を終えると丁度ガクトが朝の挨拶に来る。
「よう!俺様が来たぜ。」
「ガクト、おはよう。」
「昨日から見てるが鍛えすぎた筋肉だな。」
「女性にあまりにもモテないオーラ全開だ。」
「オイッ!お前ら何かとヒドイこと言ってね!」
「でも事実じゃん。実際にガクト女性をナンパしてもことごとくフラれるじゃん。」
「モロ、何か言ったか?」
「痛い痛い!質問しながら腕で首絞めないで!」
ガクトとモロがそんなことをしていると黛が立ち上がり声を張って言う。
「あ、あの!」
「なに?」
「・・あ・・・・あのですね・・・・わ・・・も・・・・ごいっし・・・ょ・・・」
「黛ちゃん、落ち着いて。」
大和は黛の頭を撫でる。
「あ・・・・ああああ・・・・・」
黛は顔を紅くする。
「おい大和。」
「なんだ、ガクト?」
「お前ってそれ狙ってやっているのか?」
「は?」
「ガクト、気持ちはわかるがこいつがこうなのは根っからだ。」
「ああ。いつもこんな感じだ。」
皆呆れた表情をしているが・・・・・・なんでだ?
「ん!黛ちゃん、一緒に登校したいの?」
「ふえ!な、なんでわかったんですか?」
「え?普通に髪止めから聞こえてきたけど。」
『・・・・・・え?』
「あ・・・・・・今の無しで。」
『ちょっと待て!』
大和の言葉に風間ファミリー全員がツッコム。
「急がないと遅れるぞ。ほら、黛ちゃんも。」
大和は黛の手を引っ張る。
「は、はい。」
「哀空吏、猛竜も。」
「お、おお。」
「急ぐか。」
二人は立ち上がり川神学園に登校する。
昼休憩。大和、哀空吏、猛竜はグラウンドで巡回のシフトについて話していた。
「なるべく法則性が無いように見せかける必要がある。」
「だがいつかは気付かれるぞ。」
「その時はその時じゃね?第一わかりきってることだろ。」
猛竜がそう言うと二人は「そうだな。」と返す。
「あとここの生徒からの情報収集だ。案外学生に限って噂話が話題になる。」
「そうだな。ん?」
三人は気配を感じ後ろを振り返るとそこには百代の姿があった。
「おお大和。丁度いいところに。」
「なんだよ百代姉さ「金を貸してくれ。」よし。正座。」
「何故だ!」
『当たり前だ!』
百代の後ろには十数人の女子生徒が仁王立ちで立っていた。
「川神家は高貴な家柄と思うて安心して貸していたらこの体たらくじゃ!」
「間もなく返済期限にて候。」
「こう見えて私は九鬼家のメイド長☆取り立てはきっちり!」
「・・・・・・・百代姉さん。つまり借金に首が回らなくなりそこで助けになると思う俺に来たと?」
「ああ。」
『借金地獄にあう現代人か!』
その通りである。
「どうする大和?」
「哀空吏、猛竜。すまないが人数分のパイプ椅子と机一つ大至急頼む。後紙とペンも。」
「「わかった。」」
二人は急いで大和から頼まれた物を取りに行く。
「皆さん、少しお待ちになってください。一人ひとりにちゃんと借金を返しますので。」
「ほう。なかなか肝が据わっているな。お主名はなんと言うのじゃ?」
「直江大和。昨日引っ越して来た。」
「そうか。」
「お~い、や~ま~と~。」
「持ってきたぞ。」
二人は鮮やかにパイプ椅子を並べ机を一つ置く。
「では順番に私の前に来てください。一人一人の金額を窺った上でちゃんと返済いたしますので。」
大和の対応に百代に借金を返している者たちは感心する。
「百代さんとは大違いだな。」
「しっかりしている。」
大和は百代の借金を立て替えると同時に情報収集を行った。
「少しいいですか?」
「なんで候?」
「最近変な噂とか聞きませんか?ちょっとそういうのに興味がありまして。」
「そうで候。そういえば最近夜に遊び歩いている不良どもが急にいなくなるという話を聞いたで候。場所は外灯のある場所と聞いているで候。」
「そうですか。ありがとうございます。これは情報料です。返済と一緒にお受け取りください。」
「こんなにいいので候?」
「ええ。少しこっちの仕事で必要なものの情報なので。」
「そうで候。」
そして十数分後。大和は全ての借金の返済を終えた。
「す、すまないな大和。」
「百代姉さん。」
「な、なんだ・・・・」
「ここに座って。」
「いや、しかし・・・「スワッテ!」・・・・はい。」
「哀空吏、猛竜。すまないが後で片付け手伝ってくれ。」
「いいぜ。」
「やれやれ。」
「姉さん、これに署名して。」
「ん!これにか?」
百代は大和の提出した書類にサインする。
「はい。これで姉さんは今年以内に俺に借金返さなかったら年利10%の利子が付くことを承諾したことになるよ。」
「なに!」
「ちゃんと契約内容読んで。これで成立だから。」
「うう・・・・」
「それとこれ。」
大和は机に積み重ねられた書類を置く。
「・・・・・・・これは?」
「バイトの募集。この中から自分にあったバイトを選んで借金を返してください。」
「お前、何かとえげつないな。」
「何言ってんの。まだ情報料をその中に含めてないだけありがたいと思ってよ。」
「むぅ・・・・」
「じゃあ片付けるね。二人とも、手伝って。」
「おお。」
「やっとか。」
三人は出した者を元の場所に戻しに行った。そこに残された百代はただそこで大和に書かされたアルバイト募集の紙を見ていた。
「はぁ~・・・・金が無いとは切ないな。」
時間は過ぎ、深夜の公園。夜の人気の無い公園を若い者数人がたむろって歩いていた。
「ははは。ん!」
若者の一人が街灯の側に一人の若く色気を出している女性が目に付く。
「結構美人じゃね?」
「ああ。そそられるな。」
若者達はその女性に近づく。
「なあ姉ちゃん、俺らと一緒にいいことしない?」
「・・・ええ。いいわよ。貴方達を喰うのを、ね。」
『へ?』
女性の口が化け物のように開き、若者達は恐怖する。
「ば、化け物!!!!」
「ほほ、酷いわね。」
女性の手が木の根のように変化し、若者達の足から胴体へと這いずり上がってくる。
「な、なんだよこれ!」
「だ、誰か!誰か助けてくれ!」
若者たちが叫んだ瞬間、緑色の炎が刃の様な形で飛んでくる。その火は根っこのようなものを焼き斬る。若者達はそれから開放され情け無い声を上げその場から逃げる。すれ違った黒いコートを来た大和にも気付かずに。
「酷いわね。せっかくの食事の邪魔を。」
「あいにく、俺はあんたらを刈るためならあんたらに何を言われても痛くないんでね。」
大和はホラーに接近しようとする。ホラーは地面から無数の鋭く尖らせた根を大和に向け襲おうとする。大和は身体を捻りながら回避し、時に魔戒剣を抜刀して根を切る。
「はあああ!」
大和は剣先をホラーに向けるがホラーは根のカーテンを作り剣を身体まで届かせなくする。
「くっ!」
根のカーテンは砲丸の様に根を纏めると大和の腹部に向け勢い良く発射する。
「ぐぅっ!」
大和は飛ばされた後、腹に手を当てる。
「こいつは厄介だな。」
「わかってる。」
大和は魔導ライターを取り出し魔戒剣魔導火を纏わせ、再度ホラーに斬りかかる。ホラーは根で防ごうとするも魔導火を纏った魔戒剣に刃が立たずに次々と燃え斬られてゆく。
「くっ!」
ホラーは根を大量に生やし、大和から逃れようとする。
「逃がすか!」
大和はホラーに跳びながら魔戒剣で空間を裂き、円を描く。
「うおおおおおおおおおお!」
大和はそのホラーに徐々に近づくにつれて大和は牙狼の鎧を身に纏ってゆく。
グォオオオオオ!
牙狼の鎧が咆哮を上げると同時に大和は牙狼剣を両手で握り、ホラーに目と鼻の距離まで近づく。
「おおおおおおおおお!」
牙狼剣によりホラーは二つに斬り分けられる。牙狼が地面に着地し、牙狼の鎧を解くと同時にホラーの上半身が地面に落ちる。
「・・・・・まさか黄金騎士に斬られるとは思わなかったわ。」
「何を今更。ホラーならいつかは魔戒騎士に斬られるとわかってんじゃないのか?」
「・・・たしかに。でもホラーになっても死にたく無いという感情はあったわ。」
「もう魂も死んでいるのにか?おかしな奴だよ。」
「・・・ええ。こんな姿になっても思い人を探す私は、馬鹿よね。」
ホラーはそう言うと消滅した。そこに残されるもの女性が身に着けていた指輪だけがあり、大和はその指輪を拾うと耳まで持って来て声を聞く。
『・・・・・・いつか、あの人に会えると信じてる。・・・・・・・・国が行方不明と言っていても・・・・・』
大和はその声を聞いて涙を出す。
「愛しい人を亡くして、精神が正常じゃなかったのだろうな。」
「ああ。ザルバ、人ってのは弱いな。」
「皆同じもんだ。誰しもが弱い。たとえ力で強くても、肉体的に強くてもな。」
「ああ。ホラーはそこに付け込む。」
「そうだ。陰我を利用してな。」
大和とザルバはその場を静かに去ってゆく。