深夜の川神の町をビルの上から飯塚健太、ホラー・ヂュポアは見下ろしていた。
「流石に我らが主の計画にはあいつらは邪魔だな~。ど~しよ?」
飯塚は逆立ちをしながら考える。
「一人一人倒すのは面倒だし・・・・・・やっぱ一掃するか。」
飯塚はビルから飛び降りると自身の翼を広げ、空を飛ぶ。
「いっちょやりますか。魔戒騎士一掃勝負!」
満天の星の下を飯塚は飛ぶ。
昼時の川神学園。S組にいた冬馬は小雪に頼み事をしていた。
「大和君のびこー?」
「そうですよ、ユキ。」
「でもトーマはどーしてそんなことしたいの?」
「実は直江君が夜な夜な歩き回っていると言う噂を聞きます。雪にはそれを確かめてもらいたいのです。」
「いーよー。でもあの直江君、一筋縄じゃいかないと思うよ。武神に勝っちゃっているんだし。」
「確かに。ですが私は知りたいのです。」
「わかったー。」
深夜の川神の町、今日は珍しく大和たち三人で巡回をしていた。
「しっかし猛竜の師匠が急に浄化しに元老院に戻るとはな。」
「ああ。何でも修行用の牙が急に暴走したみたいだから浄化しに行くんだそうだ。」
「邪気が溜まれば本人にも影響が出るからな。それより大和。」
「ああ。付けられている。」
大和は懐から鏡を取り出すと自分の後ろを移した。そこには小雪の姿が映っていた。
「どう見てもあいつ自身の意思じゃなく葵冬馬の差し金だな。」
「どーすっよ、大和?」
「そこの曲がり角に入って屋上まで一気に上るぞ。」
「「わかった。」」
三人は曲がり角に入ると壁を蹴りながら屋上へと登る。小雪が曲がり角を曲がったときには既にその場から姿を消していた。
「・・・・・あーあ、逃げられちゃった。」
小雪は自宅に戻る。
大和たちはとりあえず人気の無い廃ビルの近くにいた。
「なんとか撒けたな。」
「ああ。」
「だが何故葵は俺たちを・・・・・・・」
「僕が君たちの学園の生徒を操ったからだよ。」
『っ!?』
大和たちは武器を手に取りながら後ろを振り返る。そこには飯塚の姿があった。しかしいつもの姿とは違いスーツ姿であった。
「やあ。」
「挨拶どうも。で?さっきの話は本当なのか?」
「そーだよ、黄金騎士。ぼくは君たちを一掃しようと君たちの学園の生徒を操ったんだ。」
「まさか師匠はお前が!」
「あわよくば殺そうかと思ったけどそうはいかなかった。でも君たちと話せたから結果オーライだけどね。」
「なら・・・・・・・覚悟は出来ているのだろうな?」
「もちろんだよ、天弓騎士。そのためにわざわざこんな手の込んだ事をしたんだからさぁ!」
飯塚は翼を広げ、両手に剣を持つ。
「さぁ!始めようか!」
飯塚は翼を羽ばたかせ空を飛ぶと自らの羽を三人に向けナイフのように飛ばしてくる。
「散れ!」
大和たちが散開した後には無数の羽が刺さっていた。哀空吏が飯塚に向け矢を射る。飯塚は剣を使い矢を斬り落とす。
「おらぁ!」
猛竜が飯塚の左から魔戒剣を振り下ろすが飯塚は剣で防ぐと鍔迫り合いとなっている部分を軸に踵落としを猛竜に喰らわせる。猛竜は真っ逆さまに落ちてゆく。
「はぁああああ!」
飯塚の背中を大和が斬る。
「ぐぁ!」
飯塚は地面に落ちると翼を閉じ、剣を構える。
「はぁあ!」
哀空吏が弓を振るってくるが飯塚は左の剣で受け止め、右脚蹴りを喰らわせる。哀空吏が体制を崩した所を飯塚は殴る。
「がっ!」
哀空吏は弾き飛ばされるが哀空吏を跳び越え猛竜が右キックを飯塚に喰らわせる。飯塚はキックを顔面に喰らい後ろに弾き飛ばされるが翼を羽ばたかせ体勢を立て直す。
「そこだっ!」
大和は正面から魔戒剣を振り下ろすが飯塚は十字に剣を組み大和の剣を受け止め、大和を弾き返す。
「うらっ!」
「ふっ!」
哀空吏と猛竜が飯塚を左右から挟みこみ刃を振るうが飯塚は両手の剣で防ぎ、きりもみ回転で二人を離すと大和に向かい跳び大和に左の剣を突く。大和は魔戒剣でその剣を弾くが飯塚は右の剣を大和に振るう。
「させるか!」
ザルバが口を開き魔導火で焼く。飯塚は剣を捨てる。飯塚が捨てた剣は魔導火によって完全燃焼された。哀空吏が飯塚の後ろから矢を射る。飯塚は反転しながら矢を斬る。
「まだだ!」
哀空吏は矢を三本同時に連続して射る。
「くっ!」
飯塚が腕を十字に組むと羽が飯塚を包み込み矢から守った。哀空吏は飯塚の上を跳び飯塚に向け矢を射る。矢は飯塚の肩に刺さった。
「くそっが!」
飯塚の羽の結界が解除されると猛竜が飯塚に向かい掛け走り魔戒剣を振るった。飯塚は前転して回避すると翼を羽ばたかせて空へ飛ぶ。
「やっぱり本気でいかないとねっ!」
飯塚は自分のみを抱きしめると声を上げる。
「うううう・・・・・・・・・うぎゅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
飯塚の化けの皮は弾け跳び、ヂュポアの姿が現れる。その姿は身体を羽で覆われ、脚は鷲、顔の半分は羽が生えている姿であった。
「さあ!鎧を召喚しなよ!」
「ああ、そうさせてもらうよ。行くぞ皆!」
『ああ!』
三人は鎧を召喚する。
『はぁ!』
牙狼とヂュポアは跳び、互いに剣を振り鍔迫り合いになる。
「ぐぅうううううう!」
「かぁああああああ!」
二人は同時に離れる。そこを牙射が射る。ヂュポアは剣で矢を弾く。そこを漸が壁を蹴り、ヂュポアに斬りかかる。
「お~りゃ!」
「ちぃ!」
ヂュポアは反応が遅れ腹部を斬られる。体制を崩したヂュポアは羽を収め地上に下りる。
「はああああ!」
牙射がヂュポアまで跳び弓を振り下ろす。ヂュポアはバク転をし回避する。
「はぁあ!」
牙狼がヂュポアの右から接近し剣を横に振るってくるがヂュポアは剣で受け止める。そこを漸が左から斬りかかってくる。ヂュポアは漸の攻撃も剣で受け止める。ヂュポアはバク転をすると翼を広げ、きりもみ回転をし二人を弾き飛ばす。
「ぐぁああああ!」
「がぁああああ!」
牙狼は地面の倒れ、漸はビルに打ち付けられる。
「喰らえ!」
牙射は矢を射る。ヂュポアは矢を弾こうとするが牙射が放った矢は徐々に分裂し、ヂュポアの体中に刺さる。
「小童が!」
ヂュポアは羽を牙射に向け放つ。牙射は弓を回し防御を行うが羽の量は予想以上にあり防ぎきれる量ではなかった。
「がぁ!」
牙射の鎧が解除される。
「もらった!」
ヂュポアが哀空吏に斬りかかろうとする。
「させっかよ!」
漸が盾の右手を使いヂュポアの斬撃を受け止めると哀空吏が至近距離でヂュポアに矢を射る。矢はヂュポアの腹部に刺さる。
「ぐぅ!舐めるな!」
ヂュポアは班を羽ばたかせ二人に突風を食らわせる。二人は壁に打ち付けられ、漸の鎧が解除される。
「はぁああ!」
牙狼がヂュポアの上を身体を捻りながら跳び、斬りかかる。牙狼剣がヂュポアの左翼を斬り落とす。
「むああああああああ!」
ヂュポアは怒りと痛みを込めた声を上げながら牙狼に斬りかかってくる。牙狼は牙狼剣と鎧の腕の刃で受けながら防ぐがヂュポアの勢いに押されていた。
「ぐぅ・・・・くっ!(やはり強い・・・・・・だが!)」
牙狼は左脚を一歩踏み込むと牙狼剣を振り上げる。振り上げられた剣はヂュポアの左腕を斬り落とした。
「くそったれが!」
ヂュポアはバク転をしなが牙狼を蹴り、距離を取ると右翼を拳に変形させ牙狼を殴った。
「がぁあああああああ!」
鎧が解除され大和は地面に倒れる。ヂュポアは剣を逆手に持ち、大和の真上まで跳ぶ。
「終わりだ!黄金騎士!」
「っ!」
ヂュポアの剣が大和を誘うとしたときであった。一本の矢がヂュポアの前を通り過ぎる。哀空吏が放った紐付きのただの矢であった。
「はっ!外したようだな!」
「いいや!」
「彼は外していないよ!」
『っ!』
大和とヂュポアは驚いた。その声の主は燕と揚羽であった。二人は哀空吏が放った矢の紐を掴むと二人は入れ違いになる様に走りヂュポアの動きを封じる。
「ぐっ!こんの!」
ヂュポアは剣で斬ろうとするが二人は紐に気を込め簡単には斬れないようにしていた。
「今だ大和君!」
「コイツの陰我を絶ち斬って!」
その言葉を聞き大和は立ち上がり魔戒剣を突きながら鎧を身に纏う。
「ぐっ!」
牙狼剣がヂュポアの身体を貫いた。ヂュポアは右手で牙狼剣を抜こうと掴むが掴んだ手が石化するように崩れた。
「・・・・・・・ここまでか。」
ヂュポアは悟り、人間の姿に戻る。
「黄金騎士、最後にお前に倒されてよかった。」
「ホラーから礼を言われるとはな。」
「・・・・・・飯塚だ。」
「ん?」
「俺の名は飯塚健太だ。」
「そうか。俺は直江大和だ。」
「そうか。これでもう後悔は無い。殺れ。」
「・・・・・・ああ。さようなら、飯塚健太。」
―――――キィン!
牙狼は牙狼剣を傾け飯塚を牙狼剣に封印した。大和は鎧を召還し、魔戒剣を鞘に収めた。
「燕さん、揚羽さん。ありごとうございます。」
大和は二人にお辞儀をする。
「いいよ別に。」
「気にしなくてもいい。ただならぬ邪気を感じたのできてみれば君たちがホラーと戦っていた。そして君が殺されそうになったので私達が助けに入った。それだけだ。」
「それに、私は恩返ししたかったしね。霊獣の件とか。」
「私もだ。」
その後の後始末は揚羽に任せ、大和たちは巡回に戻った。
この日、ガデラの下僕の一体を倒した。