「なんだか分からんが今はこっちだ!」
百代は橘に殴りかかるが橘は百代の拳を片手で受け止める。
「どうやらこれはお前たちが用意したものではないようだな。」
「ええ。でも橘さん、そうしてアイツを庇ったんですか!」
「君には分かるまい。裏切られた者の気持ちが。」
「裏切られた?」
「今はコイツを試すのに利用させてもらうぞ!」
「くっ!」
橘と百代は戦闘を行いながら少しずつその場を離れてゆく。だが大和はそんれよりも目の前に出現しているゲートに警戒していた。
「大和、あれはなんなのだ!」
「いいかお前ら!ここから全速で逃げろ!」
「教えてください大和さん!」
「出来ないんだ!早く!」
大和がそう言った瞬間であった。ゲートから十数体の素体ホラーが現れる。ホラーは奇声を上げながら宙を舞う。
「なに・・・・・・あれ・・・・・」
「あんなの・・・・・見たこと無いよ・・・・・」
(駄目だ大和!あいつら恐怖で動けなくなってる!)
(くそっ!)
素体ホラーがワン子に襲いかかろうとしてくる。ワン子は恐怖で動けず、死ぬと思った。
「させるか!」
大和は模造刀を捨てると懐から魔戒剣を取り出しホラーを突き刺す。
「ふっ!」
大和はホラーを蹴り、魔戒剣からホラーを離すと魔戒剣を縦に振るいホラーを消滅させる。大和は懐からホラーの返り血がこびり付いた巻物を取り出し広げる。ホラーはそれに条件反射する。ホラーは本能に従い大和に集まってゆく。
「はぁ!」
大和は魔戒剣を振るい次々とホラーを狩る。二体の素体ホラーがワン子たちに向かい飛翔する。大和はその二体のホラーに向かおうとするが他のホラーが邪魔をする。ワン子たちは武器を構え応戦しようとした。
「お―――りゃ!」
猛竜が一体に飛び掛り魔界剣で斬ると哀空吏の矢がもう一体を貫く。
「猛竜さん!哀空吏さん!」
「よっ!まゆっちに皆!」
「猛竜、今はそれどころではないぞ。」
「わーてる・・・・よ!」
猛竜はホラーを斬りながら哀空吏と会話をする。
「おい大和、どうしてこうなったんだ?」
「前にオブジェの話をしただろ!今日は新月だ!」
その言葉を聞いて哀空吏はわかった。
「『新月の儀』!」
「そうだ!だからホラーの返り血で引き寄せてたんだがさっき取られた。」
「なにやってんだ!」
「仕方ないだろ!こんな数だ!ゲートはまだ開いている!」
「どうにかできないのか!」
哀空吏は空中で身体を捻りながら矢を射ると着地し、後ろに反転と同時にしゃがみながらホラーを斬る。
「どうする大和!」
猛竜は回し蹴りをし、ソウルメタルの手でホラーの顔を潰す。
「ぐっ・・・・・仕方ない!お前ら鎧を召喚してゲートとの元になるオブジェを壊せ!」
「本気かよ大和!」
「だがこの状況なら仕方ない。猛竜!」
「わーったよ!ぜりゃ!」
猛竜は地面に魔戒剣を向けると一気に振るう。魔戒剣によって咲かれた空間はやがて円となり猛竜を眩い赤の光が彼を照らす。ワン子たちもあまりの光に目を細める。光が晴れた途端に彼女達は驚いた。
そこにいたのは灼熱の竜を催した紅い狼の鎧。手には人をも軽々と斬れんばかりの青龍刀のような武器が左手に握られていた。その騎士の名は漸、炎刃騎士・漸である。
「おっしゃいくぜ!」
「俺もいくか。」
哀空吏は自分の身体の前に弓を縦に持つと右、左と自身を挟み込むように魔導弓に取り付けてあるソウルメタルの刃で空間を斬る。斬られた空間から青い光が彼を照らす。光が晴れそこにいたのは右耳が長い蒼い鎧の弓騎士、天弓騎士・牙射である。
「はぁあああ!」
牙射は走りながらオブジェに向かい走り出す。ホラーが後ろから来ると牙射は走りながらバク転しホラーを斬る。
「ふっ!」
牙射の放った矢が次々とホラーを射抜く。
「どらぁ!」
漸はきりもみ回転をしながらホラーを次々と斬ってゆく。
「どぉりゃ!」
漸は魔戒剣を大きく振り下ろしオブジェを破壊する。
「はぁああああ!」
牙射は一矢に魔導力を込める。魔導力が込められた矢は眩い光を発しする。牙射はその矢を放つ。牙射が放った矢はオブジェに向かい一直線に進む。矢はオブジェを粉砕する。
『後一つ!』
大和が残り一つのオブジェに向かおうとしたときであった。突如陰から長髪で白髪の榊原小雪が現れオブジェを蹴りで破壊する。その瞬間、開いていたゲートが消滅した。
「っ!どうしてお前がここに!」
「トーマに君のびこーを頼まれてたんだよー。そしたらこんな状況。トーマや準もこの光景見ているから。」
大和はその言葉を聞いた瞬間厄介者が増えたと思ったが気持ちを切り替えホラーを次々と狩る。漸も牙射もホラーを狩る。ワン子たちや板垣姉弟はだたその光景を見ていることしか出来なかった。
しばらくしてその場のホラーを狩った大和たちは少し気を抜いていた。
「大和、大丈夫だったか?」
「まあな。それよりあいつらに依頼した奴、こっちの世界の人間だ。」
「おいおい、それってどういうことだよ!」
「そのままの意味だ。それよりこの状況どうする?記憶を消すか?」
「いやいや、流石にここにいない冬間君の記憶は消せないでしょ。」
「あそっか。元老院にでも頼むか?」
「無理だな。ここにいる榊原小雪が邪魔をする。」
「ちょ、ちょっと!」
三人が話しているところをワン子がツッコム。
「何なの今の!いきなり光ったと思ったら鎧を身に纏っているし大和たちはさっきの化け物になんか知っているぽかったし!」
「まあそこに関してはあとで・・・・っ!」
大和が何かに気付いた!
「おい!板垣竜兵!そこから離れろ!」
「へ?」
竜兵が後ろを振り向くと地面に現れたゲートから大きな爪が出ていた。
「竜ちゃん!」
辰子が隆平を手押した突端大きな爪が辰子を弾き飛ばす。
『辰子!/辰姉!』
ゲートからホラー・クルスが現れる。辰子はクルスの攻撃によりまともに身体を動かせなかった。
「うう・・・・・」
「くそっ!」
大和は辰子に向かい走り出す。クルスはゆっくりと倒れている辰子に歩み寄る。
「させっかよ!」
竜兵がクルスに拳を振るうがクルスは尻尾で竜兵をなぎ払う。
「ぐおっ!」
クルスは辰子の前まで近づくとゆっくりと尻尾を辰子に向けると突いた。辰子は強く目を瞑る。痛みを感じなかった。辰子はゆっくりと目を開けるとそこにはクルスに背を向け辰子を庇うように立っていた。大和の腹部にはクルスの鋭い尾が刺さっていた。
『大和!』
クルスは大和から尾を抜く。その瞬間大和は崩れるが辰子が支えた。
「こんのっ!」
「よくも大和を!」
猛竜と哀空吏はクルスに向かい攻撃を仕掛ける。クルスはその場から逃げようと跳ぶ。しかしそれを儀流の魔界斧が遮る。
「はぁ!」
儀流はクルスに魔界斧を振り下ろす。その攻撃を喰らったクルスは地面に落とされる。
「師匠!」
「すまない遅れてしまって。状況は!」
「大和がやられた!」
「わかった!」
三人は共闘してクルスに攻撃を仕掛ける。そんな中大和を支えている辰子は大和に話し掛ける。
「な・・・・・・何で助けたの?」
「俺は・・・・・誰かが死ぬのを見たくないから・・・・・・やっただけだ。」
大和は出血しながらも立ち上がる。
「あ、危ないよ!そんな怪我で動いたら!」
「心配すんな。もう慣れてる。」
そう言うと大和は懐から魔導薬を取り出し、それを飲んだ。その後大和は魔導ライターを取り出し患部に魔導火を付け傷口を塞いだ。
「おおおおおおおおおお!」
大和は雄叫びを上げながらクルスに向かう。
「はぁ!」
大和はクルスに跳び蹴りを喰らわせると魔戒剣をクルスに突く。クルスは悲鳴を上げ、苦しむ。クルスがまた大和を尾で刺そうとする。そこへ哀空吏の放った矢がクルスの頭部を貫通する。更に猛竜と儀流が追い討ちを掛ける。
「おりゃ!」
「ふっ!」
クルスは悲鳴を上げながら百代たちの方へと逃げる。
「大和!」
「やってやれ!」
「ああ!」
大和はザルバに魔戒剣の刃を付け引くと一気に剣先を天に向け空間を斬る。斬られた空間から眩い光が漏れ、大和を照らした。光が晴れた瞬間ワン子たちは驚きを隠せなかった。
そこにいたのは過去から受け継がれてきた鎧、未来への希望。魔界騎士の中でその名を知らぬ存在はいない。かの始祖ホラーを封印し、約束の地から帰還した者の鎧。
黄金に輝く狼の鎧。
希望の象徴。
その名は、黄金騎士・牙狼。
百代と橘が戦っている最中クルスが雄叫びを上げながら二人に向かってきていた。
「邪魔をするな!」
「引っ込んでろ!」
百代は星砕き、橘はマシンガンをクルスに喰らわせる。喰らったクルスは地面に倒れる。
そこへ金属音を立てながら近づく者がいた。二人はその姿を見て驚きを隠せなかった。
クルスは奇声を上げながら牙狼に突撃すると牙狼は右拳でクルスを殴る。
「大和、一気に片をつけろ!」
「承知!」
牙狼は牙狼剣を抜刀すると魔導火を牙狼剣に纏わせる。牙狼は空中に十字の魔導火を刻む。十字の魔導火の刃は回転する。それを牙狼は牙狼剣で振り下ろす。十字の魔導火の刃はクルスを斬ると二手に別れ宙を舞う。
「はっ!」
新月の空を牙狼は跳び、その身に魔導火を纏う技・烈火炎装をする。
「うおおおおおおおおおおお!」
牙狼はクルスに向かい一直線に跳ぶび、そしてクルスを斬る。クルスは断末魔の悲鳴を上げながら消滅する。牙狼は剣を横にし、剣先を鞘に収めると剣を立て、剣を収める。その音と同時に牙狼の鎧が召還される。
「ぐっ!」
大和は片膝を地面につく。
「大丈夫か大和?」
「ああ・・・・・以外に身体に堪える。」
大和は息を荒くする。
「大和・・・・・」
牙狼の姿をしていた大和を見て百代は驚きを隠せなかった。
「どうやら君の知り合いはとんだ存在のようだな。今日はここで引かせてもらう。」
そう言うと橘は煙幕を作りその場から姿を消した。
「橘さん!」
百代の声に彼女は答えなかった。百代が去った橘の方を見ていると何かが倒れる音がした。百代は音のするほうを向くとそこには倒れている大和の姿があった。
「大和!」
百代は大和の下まで跳ぶ。
「おいしっかりしろ!大和!」
百代は大和の身体を掴むと百代の手には何か濡れた感触があった。百代はおそるおそる自分の手を見るとその手は紅く染まっていた。
「あ・・・・あ・・・・あ゛――――――――――!」
百代は行き場の無い感情声にすることしか出来なかった。