ある病院の一室。風間ファミリーはベットに寝ている一人男を見ていた。直江大和である。
「うっ・・・うっ・・・・!」
ワン子たちは泣いていた。大和はあのときから一向に目を覚まさない。
「おい大和!目を覚ませよ!」
「そうだよ!僕たちに説明してよ!」
「おい大和!」
キャップ、ガクト、モロが声を掛けるが大和は反応しない。
「うわーん!大和―、私好きだったのにー!」
ワン子の泣きながらの告白に百代たちは驚く。
「じ、自分もお前を愛していたぞ!」
クリスも涙目で告白をする。
「大和さん、私も大和さんのことが好きです!」
「大和―!」
まゆっちも告白し京は大和の名を叫ぶ。
「大和!あの時の姿やお前が私たちの前から姿を消した理由を私達は聞いてないぞ!何とか言え大和!」
百代も大和に声を掛けるが大和は反応しない。そんな時哀空吏と猛竜が入って来る。
「おーす。」
「大和の容態は?」
哀空吏の言葉に百代は機微を横に振る。
「そうか。厄介だな。」
「だな。この状況大和が上手く収めてくれると嬉しいんだが・・・・・・・あん時の傷が開いちまったんだから仕方ねぇな。」
二人は壁に背中を付ける。そんな二人に百代は声を掛ける。
「なあ、お前ら。大和のあの姿は・・・・・いや、お前たちは何なんだ?あの化け物についても何か知っているんじゃないか?」
百代の質問に二人は答えようとしない。
「何か言ったらどうなんだ!」
百代は叫ぶ。
「百代先輩、病院でそんなに騒いではいけませんよ。」
『っ!』
聞こえてきた声の主は葵冬馬であった。後ろには準に小雪、そして何故か英雄とあずみもいた。
「まず三人は分かるがなんで英雄君も一緒なんだ?後メイドのあずみさんも。」
「うむ、それについては我が答えよう。先日の闘いの映像を我も共に見ていた。だからこの場にいる。もし他の者に見られて無いかと心配をしているのなら安心しろ。我が他の者には見せてはいけないと思い個室で見た。」
英雄のその言葉を聞いて二人は安心した。
「さて、この状況で話さないわけにはいかなくなりました。どうしますか?」
この状況に二人しかいなくてはもう言うざるしかなかった。
その時、またしても病室の扉が開けられた。入ってきたのは揚羽と燕であった。
「姉上!」
「揚羽様!」
「揚羽さん!燕さん!」
百代と英雄は驚き、あずみは揚羽に礼をする。
「堅っ苦しい挨拶はいい!大和君は!」
「今は昏睡状態です。大和の奴、応急処置をまともにしないで戦ったため傷が開いたんです。」
哀空吏が答えた。
「そうか。」
「ひとまず死んでないことが救いだね。」
二人は安心する。
「揚羽さん、貴女は大和が何をしているのかを知っているのですか!だったら教えてください!」
百代は頭を下げた。ザルバはその姿を見て諦めたのか口を開いた。
「やれやれ、厄介なことになったもんだ。ま、いずれはこうなることは予想できたんだ。折れるより曲がれ。」
『・・・・・・へ?』
百代たちは突如聞こえてきた声に驚く。
「こっちだ。」
百代たちが声のする方を向くとそこには大和の寝ているすぐ側に置かれている指輪立てに立てられているザルバを見る。
「腹話術か何かでしょうか?」
「おいおい、そいつは違うぜ、小僧。川神百代、お前なら俺の気が分かるだろう。」
「あ、ああ・・・・・・確かにお前からは気を感じる。生きているのか?」
「まあな。俺の名はザルバ。よろしくな。」
ザルバがそう言うと何故か皆して(猛竜と哀空吏以外)お辞儀をする。
「さて、二人ともこっちに来い。」
「あいよ。」
「わかった。」
二人はザルバの方へ歩み寄る。
「さて、小僧。」
「私のことは葵と呼んでも構いません。」
「葵、まず何から聞きたい?」
「では・・・・・彼方達は一体何者なんですか?」
「そこからか。ます俺は魔導輪のザルバだ。そして大和を含むここの三人は・・・・」
「「俺たちは魔界騎士だ。」」
「まかいきし?」
葵を含む一同疑問符を浮かべる。
「聞いたことがありませんね。」
「それはそうだ。今まで表に出たことは滅多に無い。闇に生き闇を狩る。それが魔戒騎士だ。」
「ザルバさん、何故それを公にしないのですか?」
「公にしたらどうなる?人のやったこともホラーの仕業として処理されて悪人がのうのうと街中を歩き、更なる陰我を生むことになる。」
「因果?」
「おそらくお前が思っている因果ではない。陰我とは人間の邪心のことだ。人間の邪心がホラーを呼び寄せ、ゲートとなるオブジェなどから人間に憑依する。それが昨日お前たちが見た化け物、ホラーだ。」
「アレをホラーと呼ぶのですか。」
「ああ。太古の昔から、人間の邪心に反応しホラーは出現している。ホラーは人間に憑依し、人を喰らう。好みはホラー一体一体違う。絶望した人間を好む者、希望を抱く人間を好む者、家庭を望む者などそれぞれこの身が違う。
だがホラーは何も全て人を殺すことを望む奴だけではない。実際に俺もホラーだが人間側に協力する立場にある。」
「彼方もホラーなのですか?」
「ああ。だが安心しろ。俺は力を封印されている。力を封印した奴が解除しなかぎり俺の持つ力はせいぜいホラーを感知することだけだ。」
「なるほど。ではホラーを倒す方法はないのでしょうか?」
「そのために魔戒騎士と魔戒法師がいる。魔戒法師とは最初にホラーに挑んだ者たちのことだ。彼らは持てる力でホラーを封印していった。しかしホラーが強くなるにつれて魔戒法師たちの手には負えなくなってきていた。
そこで生まれたのが魔戒騎士だ。魔戒騎士はソウルメタルと呼ばれる金属でできた魔戒剣を手にホラーを狩る。ホラーにソウルメタル以外の通じる武器は魔戒法師が使う魔導具以外に無い。百代お嬢ちゃんの気や一般の武器ではホラーに傷を付けることさえできない。また、ホラーを狩る者にとって一般の人間がこっちの世界に関わることは関わろうとする人間が死ぬ可能性が高い。一番の理由はホラーに喰われることだが二番目に厄介なのがホラーの返り血を浴びた『血に染まりし者』だ。」
『血に染まりし者?』
ザルバの言葉に揚羽たちも疑問符を浮かべる。
「それについては俺たちが説明するよ。ホラーの血には人間を死に追いやる呪いがある。その血を浴びた者を『血に染まりし者』って言うんだ。」
「ホラーの返り血を浴びた者は百日後に気絶すら許されぬ苦しみと異臭を放ちながら溶け崩れて死んでゆく残酷な死に方だ。掟では血に染まりし者たちを騎士は殺さなければならない。」
『なっ!』
「だがしかし、俺の知っている奴でその死を回避した騎士がいた。」
ザルバがその者の名を言おうとした瞬間であった。大和の魔法衣の蒼い花が光りながら消えていった。それと同時に大和が意識を取り戻す。
「あれ・・・・・」
大和が目を開けるとそこには草原にポツリと建つ一軒の家があった。
「ここって・・・」
大和はその家の中に入る。すると家の中は見覚えのあるもので溢れていた。そんな時大和に後ろから声をかけてきた人がいた。
「大和。」
「っ!」
大和はその声の主を知っていた。夢とでも思った。しかしそれでも大和は後ろを振り向いた。
「・・・・・・母さん?」
「ええ。また大きくなったわね、大和。」
声をかけてきたのは波奏であった。大和は波奏に抱きついた。
「あらあら、大和は大きくなっても子供なのね。」
「母さん、俺、川神の町で頑張ってるよ。」
「ええ。彼方が造ってくれたお墓から見てたわ。でも遠くからしか見えないから教えてくれない?」
「うん。」
大和は川神のこと、風間ファミリーのこと、川神学園のこと、川神大戦のことを話した。
「へぇ、そんなにあったの。」
「うん。いろんな人に出会って、仲間になる人を見つけて、守りたい人たちも増えた。」
「そう。大和、貴女は今ここにいるべきでは無いわ。分かっているでしょ?」
「・・・・・・うん。ここって狭間の世界なんだよね。」
「ええ。」
波奏はそう言うと大和の手を握る。
「でも、私達は何時でも彼方と一緒よ。忘れないで。」
「うん。分かったよ母さん。」
大和の身体が青く光り、徐々にその場から姿を消していった。
「もう戻ったか。」
「あら。いたのなら声を掛けてあげれば良かったのに。」
「いや。俺が見守る必要は無い。あいつは立派な黄金騎士だ。」
「そうだな。あいつは守りし者として立派な騎士だ。」
「彼方からもそう言ってもらえるなんて大和は幸せ者ね。」
「もしまたここに来たときは今度は俺が出迎えよう。」
「程ほどにね、尊士。」
波奏の後ろにいたのは符礼、尊士、そして冴島鋼牙であった。
「ん・・・んん・・・・」
大和はゆっくりと身体を起こした。
『大和(君・さん)!』
「あれ?これどう状況?」
大和の目の前には哀空吏に猛竜、風間ファミリーにS組の生徒五人、そして揚羽と燕の姿があった。
「大和。」
「ザルバ!なんで普通に喋ってるの!」
「まあ言うより俺を填めろ。お前に大体の流れを頭の中に流す。」
「はいはい。」
大和はザルバを手に取ると左手の中指に填める。大和の頭の中にここまでに至る経緯が流れてくる。
「あ~、あれ録画されてたんだ。」
「まあな。さて葵、ここまでで他に何が聞きたい。」
「では・・・・・先ほどの話とは別で貴方たちの使うソウルメタルと言いましたか?それを一般の人が使うことは出来ないのでしょうか?」
『絶対無理!』
大和たち三人が口を揃えて断言する。
「ソウルメタルを持てない理由を聞くより実際に持ったほうが早いな。哀空吏、練習用の持っているか?」
「ああ。だが誰に持たせる?」
「そらガクトだろ。」
「おう。俺様に持てない物は無いぜ!」
「女子にはモテないのに?」
「うるぜぇぞ大和!」
ガクトは騒ぐ。そんなガクトを無視して哀空吏は床に練習用のソウルメタルを置く。
「持ってみろ。」
「こんなちっこいのをか?楽勝だぜ!」
ガクトは練習用のソウルメタルを手に取る。
「あ、言い忘れてた。ソウルメタルは地球上のどの金属よりも比重が重いから簡単に持てないぞ。」
「それを早くいぇ~~~~~~!」
ガクトは顔を真っ赤にしている持ち上げようとしているが全く持ち上がらない。
「どいてみ。」
大和はベットから立ち上がる。
「大和、あまり無理をするな。」
「大丈夫だよザルバ。これくらいなら。」
大和はソウルメタルに手をかざす。するとソウルメタルは念力にでも持ち上げられたかのように浮き上がった。
「ソウルメタルは心で扱う物質。だからこれを使いこなすには並ならぬ鍛錬が必要なんだ。」
大和は訓練用のソウルメタルを手のひらに乗せると哀空吏に還す。
「まあ、最もソウルメタルを扱えるのは男だけだ。禁術で女が使える方法があるがその際使用者には相当負荷が掛かる。元老院ですら使うことを注意している。」
「禁止にしてねぇのか?」
準が疑問に持った。
「ホラーはどれも侮れない。魔戒剣を使わなければ勝てない敵、術でなければ勝てない敵などいるからね。」
そう言った途端大和は少し体制を崩す。
「おっと。」
「言わんこっちゃない。早くベットに戻れ。」
「ああ。」
大和は再びベットに戻った。
「さて、他に聞きたことはあるかな?冬馬君。」
「では・・・・・・・・彼方達が持っている鎧がソウルメタルでできているのは察しが付きます。」
「驚いた。そこまで考えている奴は始めてだ。」
「恐縮です。そこで改めて思ったんですが鎧に名前などはあるのでしょうか?」
「鎧というより俺たちにはそれぞれ称号がある。まあ最も、称号を持てる騎士って数少ないから。」
「ちなみに俺は炎刃騎士・漸だ。」
「俺は天弓騎士・牙射。」
猛竜と哀空吏は自分の称号を堂々と話した。
「なるほど。で?大和君の称号はなんですか?」
「・・・・・・・・牙狼。」
『・・・・・・・・へ?』
大和の言葉に皆(揚羽、燕、猛竜、哀空吏以外)は間抜けな声を出す。
「俺の称号は、黄金騎士・牙狼。」
「・・・・・・・・・・え。」
誰かが言ったすぐ後で
『え~~~~~~~~~~!!』
おそらく人生最大に驚いた瞬間であったであろう大声を皆して上げた。
「や、大和!今のは本当か!」
「が、牙狼ってじいちゃんが話していた・・・・」
「あの昔話の!」
「自分は大和が私と同い年にしか見えないぞ!」
「大和さんって不老不死なんですか!」
「ヤベーよまゆっち!年の差ありすぎるよー!」
「おいおい、随分勘違いをされたもんだな大和。」
「いや、仕方ないじゃん。皆も何か勘違いをしているのかもしれないけど俺は現代の牙狼だから。」
『・・・・・・へ?』
「牙狼ってのは称号であって受け継がれるものだから。」
「な、なんだ・・・・そうだったんか。」
皆は胸を撫で下ろした。
「まぁ、俺が牙狼を受け継いだのは五年前なんだけど。」
「ねえねえ大和君。」
「なんだ、小雪さん。」
「牙狼ってこの絵本に出てきてる?」
小雪はそういいながら自身が持っている黄金騎士シリーズの絵本を見せる。
「おいおいユキ、それは流石にないだろ。直江の言うことがホントだったらありえ「うん。」ないだろってオイ――――――!」
準は大和にツッコミを入れる。
「まあその作者は先代の牙狼と夫婦になった人だから。」
「おいおい、どんなことがあったらそうなんだよ。」
「小雪さんの持っている『暗黒騎士と希望の翼』って本に描かれているから。後で読んで。」
「はぁ・・・・・」
準は納得した。
「でも大和君、さっきの話を聞くかぎり魔戒騎士は誰でも鎧を持てるってことだよね。」
『いや、全然。』
「え?」
小雪の言葉を大和たちは否定する。
「いくら魔戒騎士の家系だからって必ずしも魔戒騎士になれるわけじゃないんだ。」
「魔戒騎士は幼い頃から修行を積んで一歩ずつ近づいてゆく。」
「その中でくじけたりして魔戒法師の道を選ぶ者、記憶を消してもらって一般人として生きる人もいる。」
「だから鎧を持てるのは本気で魔戒騎士を目指す者だけなんだよ、お嬢ちゃん。」
「へぇ~、そーなんだー。」
「と言っても、俺がこの黄金の輝きを取り戻したのは二年前なんだけどね。」
「どういうことだ、大和よ?」
大和の言葉に英雄は疑問を持つ。
「俺が牙狼の鎧を受け継いだときには牙狼の黄金の輝きは失われて、一部分だけ輝いていたんだ。」
「だがそれは過去の歴史の闇に埋もれて誰もその真実を知らない。俺もあまり憶えてないし思い出そうとも思わない。面倒だからな。」
「俺が牙狼の鎧が置かれている無人島で牙狼を受け継いだ日、俺はこいつを斬った。」
そう言うと大和はペンダントを手に取る。
「羅号って言って俺が唯一無人島でずっと一緒だった魔導具なんだ。俺が受け継ぐ日に符礼法師が羅号を斬れって言ったんだ。」
『っ!』
「当時の俺には考えられなかった。ずっと家族のように一緒に過ごしてきた羅号を斬る理由が。符礼法師はその時俺に言ったんだ。『魔戒騎士になるならやさしさを切り捨てろ。』ってね。でも俺は今も優しさを大事にしようと思っている。」
「こいつは自覚ないんだがな。」
「どういう意味だザルバ?」
「分かってないならいい。大和は羅号を斬ったすぐ後に放浪者としてあちこちを回っていた。それから二年の月日が経ったある日、コイツに指令書が届いた。そしてこいつが配属されたのがかの有名なボルシティだ。」
「ちょ、ちょっと待って!」
モロがザルバの言葉にツッコム。
「ボルシティって税金が比較的安くて治安も良くて誰もが住みたい町って有名だよ!なのになんで!」
「いいところに気付いたな。だが良く考えてみろ。負の感情を持たない人間がこの世にいるとでも思うか?いや、ないな。少なくとも人間には欲望が必ずある。ボルシティも例外じゃない。当時の元老院はそこを無法地帯にしていた。だが符礼は元老院に頼んでそこを守らせてもらうようにしてもらった。」
「その頃符礼法師と一緒だったのが哀空吏、猛竜、そして李杏だったんだ。まゆっちやあずみさんはもう会っているから分かるよね?」
「ああ、あの人!」
「あいつが強かった理由が分かったわ。」
「ああ。李杏は法師が育てた唯一の弟子だからな。で、俺が配属されたボルシティでは予想を遥かに超えることになっていたんだ。人間二人分の大きさのホラーに魔導ホラー、そしてゼドム。」
「魔導ホラー?ゼドム?」
クリスが疑問符を浮かべる。
「順を追って説明するよ。ゼドムはかつて他のホラーを自身の持つプラントを植え付けて下僕にしようとした。そこで当時の魔戒騎士たちによって体を分割され世界各地に封印されている。その内の一つがボルシティにあったんだ。ゼドムのプラントは牙狼の黄金の輝きを取り戻すことも出来れば、そのプラントで魔導ホラーを作り出すことも出来る。
魔導ホラーは通常のホラーと違って魔導火なんかの感知が聞かない。ザルバでも無理なんだ。」
「だが、魔導ホラーは他人の意思によって生み出された言わば被害者だ。無自覚で過ごしている奴も少なくない。大和が仲間と思った奴も勝手に魔導ホラーにされていた。」
「でも、始まりは俺がこの川神を離れる少し前からあった。あの頃母さんは法師と一緒にボルシティにゼドムのプラントを得るために符礼法師率いる三人と、一人の魔戒騎士と儀式を行っていた。ゼドムからプラントを得るためにはどうしても封印を少し解除しなくてはいけない。だけどリスクもある。そのため滅多に封印は解かない。ゼドムが暴れないようにレクイエムを捧げることでゼドムを鎮め、二人の魔戒法師、母さんともう一人の魔戒法師の中にゼドムの種を入れ、そして二人にプラントを出してもらい回収して牙狼に黄金を取り戻す予定だった。」
「だがそこに邪魔者が入った。そいつは元魔戒法師の息子でこっちの世界の知識を持っていた。そしてそいつはプラントのうちの一つを魔戒騎士に挿し、自身の下僕にした。」
「同時にゼドムの封印が解かれていたため母さんの中にゼドムの種が何十個も入った。」
「そして波奏はそいつ、金城滔星のプラントを生む材料になった。」
「俺がそれを知ったのは大分後だった。俺たちはボルシティにいる魔導ホラーを次々と狩っていった。だけど・・・・」
「ああ。その町を治めていた金城一族、滔星以外の奴は魔導ホラーによって全員食われた。それだけじゃねえ。その前にも奴らは人の魂を小瓶の中に入れて携帯食にしていた。」
『なっ・・・!』
「俺たちは滔星を守る三体の魔導ホラーと戦った。その中に最初の魔導ホラー、尊士もいた。ワン子、俺たちが一度徹底的に負けた話をしたよな。」
「うん。」
「それが尊子だったんだ。俺たちは二度目の挑戦をしたがその時に猛竜は右手を、俺は両目を失った。」
「でも大和、今は見えているんじゃ・・・・」
「そうだよ、京。この目は正確には俺の眼じゃない。母さんの目なんだ。」
「え・・・・」
「俺たちが負傷した際に母さんを法師が救った。」
「まぁ、俺も知ったのはコイツが目の見えない状態で街中を走って牙狼剣を再び手にし、俺様と契約をした後なんだがな。」
「俺はその時嬉しかった。死んだと言わされていた母さんに会えた。そして母さんは俺と自分の目を交換した。牙狼のために自身の体を犠牲にするのが昔からの定め。それを知ったときのショック大きかったけど、それよりもやるべきことがあった。」
「残り三体の魔導ホラーの封印。それによって牙狼に黄金の輝きを戻すこと。」
「ちょっと待って!」
「どうしたワン子?」
「どうして魔導ホラーを封印することが牙狼の輝きを取り戻すことに繋がるの?」
「さっきも言った通りプラントには牙狼の黄金を取り戻せる力がある。それは魔導ホラーになっても残るんだ。母さんはゼドムに捧げるレクイエムを町中に届くように設置された女神像を伝って魔導ホラーの黄金の輝きを取り戻す作用を強くした。それは同時に魔導ホラーを強くすることでもあった。でも、それは俺が魔導ホラーを封印し黄金の輝きを取り戻すと信じてたから。」
「そしてコイツは二体の魔導ホラーを封印し、残る尊士と戦った。三人とも本気で戦ったが一筋縄ではいかない。大和は尊士と肉弾戦で互角以上に戦った。」
「俺は尊士がいなかったら今の俺はいなかった。俺は自分の力を知り、弱さを知った。一度はボルシティから逃げ出そうとしたけど、昔の自分との約束を思い出したんだ。強くなって黄金騎士になるって。」
「そしてコイツは尊士を倒し、お前らが見た黄金騎士・牙狼に戻った。だがそれと同時にゼドムが復活をした。」
「どういうこと?」
京が疑問符を浮かべる。
「俺が目を潰された時、李杏が滔星に捕まっていた。滔星は自分の欲望のままにもう一度ゼドムの封印を解いた。李杏の中にゼドムの種を入れようとした。俺はそれを防いだが同時にゼドムの封印を解いた。それは母さんの身体にも影響した。」
「長い時間プラントを身体に宿した波奏の身体はゼドムの復活と同時にホラーになりかけていた。」
「そこで母さんは俺に刺すように言った。」
その言葉を聞いた瞬間一同驚きを隠せなかった。
「母さんを人として死なせるにはその手しかなかった。そして俺は・・・・」
「大和。あの時波奏はお前の手を自身の身に寄せて刺した。俺はお前が殺したんじゃない。それにアイツはお前に救われたんだ。最後に人として死ねた。それが何よりのアイツの願いだ。」
「・・・・・ああ。そうだな。」
大和は口ではそう言うが暗い表情をしていた。
「ゼドムは厄介なホラーだ。だからこいつらは持てる力でゼドムに全力で挑み、そして封印した。やっぱり受け継がれてゆくもんだな、牙狼の継承者は。」
ザルバはそう言うと少し笑った。過去の牙狼の継承者は何かと生きているうちに誰にも出来なかったことをする。大和もその一人となった。そんな大和を見ているとザルバはいける伝説といわれた魔戒騎士を思い出す。
「一応母さんの形見の品があるんだけど・・・・あれ?」
「どうした大和。」
「ザルバ、誰か俺の魔法衣のブローチ外した?」
『へ?』
皆して大和の魔法衣を見ると大和の魔法衣につけていた蒼いブローチが無くなっていた。
「なるほど。『蒼花の術』か。」
「どういうことだザルバ?」
「愛する者が死の瀬戸際に立たされたとき発動する術であの世に行きそうな奴と会うための術だ。」
「ああ、俺夢じゃなかったんだ。」
「おい大和。」
「なんだ、猛竜?」
「符礼法師には会ったか?」
「いいや。母さんとしか会ってないから。」
「そうか・・・・」
猛竜は少し残念そうな顔になる。
その後、大和は疲労が残っているのか眠った。身体自体は一日休めば回復することで一同一安心する中、哀空吏と猛竜だけは別のことで気に掛けていた。