金曜集会が行われる秘密基地では百代を除いた風間ファミーが集まっていた。
「しっかし大和の奴ヒーローだったんだな。」
「でもよ、なんで俺らに隠してたんだ?」
「それは秘密にしておくほうが僕たちを守ることに繋がるしそれにそっちの方がカッコよくない?」
「それもそうだな!んで大和は回復するまでしばらく休まないといけねぇから皆で変わり番子に介抱してやっか。」
キャップたちの話を聞かず風間ファミリーの女子達はソファーに座ってあの時の羞恥を思い出していた。
『うわーん!大和―、私好きだたのにー!』
(あ、あの時思わず言っちゃったよ~。で、でも大和は気を・・・・・あっ!ザルバってのが聞いているんだった!)
『じ、自分も愛していたぞ!』
(じ、自分はなんという事を言ったのだ!あんな土壇場で大和に告白するなんて!)
『大和さん、私も大和さんのことが好きです!』
(わ、わわ私如きが大それたこと言ってしまいました!)
(まさかここまで大和がライバルを作っていたなんて!油断出来ない!)
四人とも睨み合いになってしまっている状況。その光景にキャップたちも恐怖する。
(す、すげぇ恐ぇ・・・・・)
(俺たち、この部屋を出てもいいのだろうか・・・・)
(でも出たらなんか嫌な予感が・・・・・)
三人もその場に留まる以外他になかった。
「あ、あたしちょっと大和の様子を見にっ!」
ワン子が立ちあがり部屋から抜け出そうとするところをクリスト京が睨みつける。
(犬の分際で出すぎた真似を!)
(大和には近づかせない!)
「な・・・・・何でもないです。」
ワン子は諦め座ると京とクリスは微笑み、まゆっちは胸を撫で下ろす。
「あっ!そうだ!ちょっと散歩に!」
クリスが続きを言おうとした瞬間ワン子、京、まゆっちが睨みつける。
(お前いつも散歩なんか行かねえだろうがコラクリキチ!)
(大和のところに行くつもりでしょ!)
(抜け駆けは許さない!)
「ま・・・・またにしよう。」
「あー、あのちょっとお手洗いにっ!」
まゆっちをワン子、クリス、京が睨みつける。
(騙されないわよ!)
(自分の目は不死穴ではない!)
(おとなしい振りしたなんてふしだらな!)
「だ・・・・大丈夫みたいれふ。」
まゆっちは震えながら座る。キャップたちのその修羅場に恐怖し、モロに関してはガクトに身を寄せていた。
時計の秒針は一秒、また一秒と動く中四人は睨み合いをしていた。
(先には行かせない!)
(でも先に動いたらやられる!)
(でも行きたい!)
(こ、困りました!お手洗いにも行けません!)
まゆっちだけズレていた。
(怯むなまゆっち!みんなまゆっちが一歩リード警戒しているのを警戒しているんだ!)
(そうなのですか松風?)
(おうよ。弱気なところを見せたら喰われるぜぇ!ここは攻めの構えで先行逃げ切りだまゆっち!)
(はい、頑張ります!)
まゆっちはそう決意を固めるが目の前にいるワン子とクリスの殺気に押されたいた。
(しかしこの殺気パネェぜ。)
しかしまゆっちはプルプル震えていた。どうやら本当に限界のようであった。
(え?まずいまゆっち!今まだマズイぜまゆっち!あ・・・)
まゆっちは立ち上がると駆け出そうと動く。
(ま、まゆっち―――――!)
(い、行ける!)
かと思った瞬間目にも止まらぬ速さでワン子、クリス、京が踏み押さえる。
「す、すみません!スミマセン!御免なさい!見逃して下さい!漏れそうなんです――――!」
修羅場の光景にキャップ立ちは身を寄せ合っていた。
少し前の病室では百代、大和、揚羽、燕が一緒にいた。
「それで?あの人、橘さんはどうしてあんな身体に?」
「気付いていたのか、大和君。」
「ええ。それに邪気があった。」
「ホラーの格好の獲物だ。早く何とかしないと憑依されてしまう。」
「大和、憑依された後で救う方法はないのか?」
「ない。過去の魔戒騎士、魔戒法師が何度も試みたがどれも失敗に終わっている。たまに人間の魂がホラーに勝ることが歩けど人間を食べる本能だけは逆らえない。」
「そうか。では大和君、橘天衣。元四天王で川神百代、及び黛由紀江に破れそのザを奪われた彼女の本職は何か知っているか?」
「自衛官でしたか?」
「そうだ。天衣はとある極秘作戦の作戦指揮を執っていたそうだ。そして作戦中、敵の攻撃を受け不幸にも・・・・・殉職した。」
『っ!?』
その言葉に大和と百代は驚く。
「我は卒業後、九鬼財閥にて軍事部門統轄となり、その職務に就いている。二本の兵器産業というのは実に面容な業界でな。輸出が出来ない上に国が競合させないのでまともなライバルがおらず、数社による独占状態が何十年も続いている。部品が外れたり、作動異常を起こす銃、被弾すると現地で修理の出来ないハイテク車両、爆走するとまともに旋回出来ない攻撃機。そんな実戦経験のない粗末な武器でも天下りの小遣いのために高い音で売られる上手い商売だ。だが、その割を喰っているのは兵達だ。予算が無駄に使われるほど兵たちに必要な装備が行渡らなくなる。それに加えて政治家の建前だ。その出来が悪い武器ですらも持たせてもらえないまま海外派兵で本物の戦争の町中に配置され、命の危険にさらされる。たまったものではないだろう。」
「何が言いたいのですか、揚羽さん?」
「兵と言えど、国の民に変わりはない。民の命を粗末にする国など栄えた試しは無い。我は、九鬼財閥軍事部門をもって世界的に披見を取らない世界一の兵器を開発することにした。兵の命を粗末にせぬ武器、誇りを持って職務に装備を開発し供給する。これぞ力を持って正義を全うする者の勤め。」
「・・・・・・・・」
大和も揚羽の言いたいことは分かっていた。力には力が必要であるが国はその力を極端な方向で求めている。危険にさらされる兵士を救うには強い力しかないと。
「そう考えていた我は、開発室でかねてより開発中だった一つのテーマに手を止めた。」
そう言うと揚羽は大和に一枚の丸められた紙を差し出す。
「それは、サイボーグ義手、戦闘強化孤高だ。これは元々、戦や災害で負傷した兵や民の生活を助ける民開発されてた。兵器の中で一番金が掛かるのは何か分かるか?」
「人ですよね。機械なんかはプログラムを組み込んだり手順どおりのままに動く。でも人は機械じゃない。思うように成長する者もいればいない者もいる。」
「そうだ。費用や時間が掛かる上に負傷や戦士をすると保守金もかかる。負傷した兵士をリタイヤさせるのは経済的にだけではなく、人材的にも効率が悪い。だが、負傷した肉体を機械の身体で補い再び戦える身体に戻せるのなら経験豊かな優秀な兵士を再起させることが出来る。そこで我は従来から開発している義手義足にクッキーの技術を投入し、新たな戦闘装備を挿入した。」
「それってまさか・・・・」
「橘は、極秘作戦で負傷し、生死の境をさ迷っていた。機密保持のため、訓練中の事故で死亡で偽って処理されたところを九鬼の情報網が拾ってな。裏から手を回し、戦闘用孤高の実験用ドナーとして回収したのだ。」
「おいおい、酷い話だな。」
「放っておけば死んでいた。四天王を外れたとはいえ、野にさらすには惜しい才能。助ける術があれば助けてやりたかった。」
「俺様が言いたいのはそこじゃねえ。全く人間は肝心なところが分かってねぇな。」
「ザルバ。」
「構わない。だが流石は元四天王。橘天衣を体力はすさまじく、改造手術を行うとみるみる回復していった。戦闘強化孤高の融合も融和性が高く、まるで自分の手足だと言わんばかりに馴染んでいった。そして、十分に回復した先日、初めて兵器としての評価試験を行った。するとなぜか、天衣の手足は設計時のスペックを超える戦闘力を持っていたのだ。」
「おそらく気だな。気は人間の体内から生成されるが送り込むのは物質でも出来るからな。」
「そうだ。九鬼の最先端技術を次ぎ込んだ超人を超える力に四天王クラスの武人が気を注ぎ込んだのだ。その力は計り知れぬものがある。強力な力を得た天衣は何を思ったのか部下を連れて評価試験中に逃亡した。」
「おそらく国に対する復讐だな。そしてその日は川神大戦の日だろう。」
「そうだ。そしてその転移が一昨日、再び来た富士演習場に現れ、思索戦車を破壊し逃亡した。そして、昨日の横浜港のあの騒ぎ。」
「だがあのお嬢ちゃんはホラーに関しては素人だった。事実、結界の魔導札くらい持っている気配はない。むしろホラーを見た瞬間恐怖心と復讐心を持っていた。なにかわかるか?」
「そういえば・・・・・・回収した際に私に言っていたんだ。」
『私は・・・・・国に裏切られた・・・・・・・。国はあの化け物の存在を、化け物の存在を知っていながら・・・・・・・。仲間が喰われ、私と紗姫以外の部下が喰われた。』
「―――と、言っていた。」
それを聞いた瞬間大和は手を顎に持っていき考える。
「どうかしたのか?」
「そいつの特徴は?」
「確か・・・・赤と白の斑模様に両腕が羽と一体化している3m以上の化け物だと聞いた。それがどうかしたのか?」
「・・・・・揚羽さん、これはただの復讐じゃない。全て仕組まれています。」
「どういうことだ?」
「まだ確証は言えません。ですが、俺は橘天衣さんを救うつもりです。」
「それは困る!これは政治的事情が絡んで『関係ない!』っ!」
「今の彼女の陰我を断ち斬らなければいけない状況にあります。まして今の彼女はゲートそのものになっている。一刻も早く救わないと取り返しがつかなくなる!」
「・・・・・・・まるで君に後悔があるようだな。」
「・・・・・ええ。止められる運命を止められなかった後悔があります。ボルシティのことなんですけど俺たちのことを調べているジャーナリストがその頃にいたんです。彼は恋人をホラーに喰われました。しかし彼は知りすぎたが故にホラーに喰われました。抵抗もむなしく。」
「どうしてそんなことが分かるんだ?」
「俺、昔からものに耳を傾けたりすると声が聞こえるんです。残留思念と言ったらいいんでしょうか?それが聞こえてくるんです。」
「・・・・・・そうか。」
「それより・・・・・少し三人とも外に出てもいいですか?」
『・・・・・・・・は?』
「どうやらお客さんがいるみたいだけど・・・・・・入れないみたいなんで。」
「・・・・・・わかった。百代、燕。」
「分かってます。ああ大和、ザルバを貸してもらえないか?少し聞きたいことがある。」
「はい。」
大和は百代にザルバを渡す。
「それじゃあ私達は少し散歩しよっか。」
燕がそう言うと三人は立ち上がり大和の部屋を後にした。
大和はしばらくするとベットから立ち上がり窓を開ける。
「よくそんなところいられるね。」
大和は窓枠下を覗き込むとそこには大和の模造刀を持っている辰子の姿があった。
「あ・・・・・」
「入って。」
大和は辰子に手を差し伸ばす。辰子は大和の手を取り部屋に入る。
「あの・・・・これ。」
辰子は大和に模造刀を差し出し大和はそれを受け取った。
「わざわざありがとう。」
「ううん、俺を言うのは私の方。私を助けてもらった。」
「俺は俺の職務を全うした。それだけです。」
「でも・・・・・」
「それに、俺は守りし者として戦った。それ以外の理由は無い。」
「守りし者?」
「人の希望を、笑顔を救う者のことだ。それに、俺たちは自分か傷つく変わりに誰かが救えるのはむしろ誇るべきことだ。」
そう言うと大和は辰子の頭を撫でる。辰子は何故か顔を紅くする。
「早く戻れ。すぐに誰かが来るから。」
「うん!」
辰子は元気な声で窓から飛び降りた。
「おいおい、どんだけ元気なんだよ。ま、元気になったんだからいっか。」
そう言うと大和はベットに戻った。
百代たちは屋上にいた。
「ザルバ、大和の背中の傷について教えてもらえないか?」
「ん?ああ、あれか。」
百代はザルバに問う。
「まあ、知らなくてもおかしくねぇな。と言うよりお嬢ちゃんは憶えてなくて当然だ。記憶を消すことは出来ていないが奥底には収めている。」
「どういうことだ?」
三人はザルバの言葉に疑問を持つ。
「過去にお嬢ちゃんは暗い森に度胸試しで無闇に入った。その時運悪くホラーが現れた。大和がいいところで駆けつけお前さんを庇った。その際にアイツの背中にはホラーの爪跡が残った。」
『っ!』
「その直後符礼が来てホラーを封印した。大和はもうろうとする意識で符礼にお前さんの身に起こった記憶を消して欲しいと頼んだ。あいつは自分よりも他人を優先してしまう。だが、そこが大和のいいところでもある。」
「そんなことが・・・・・・」
「だがお嬢ちゃんは気が強いから完全に消すことは出来なかった。まぁ、俺様が言わなきゃ気づかないことだが・・・・・」
ザルバは続きを言おうとはしなかった。ザルバから見る百代の顔は暗かった。
「何を今更。人間は過去を穿り返されるとすぐこれだ。」
「だが大和は・・・」
「大和自体は気にしていない。むしろ誇りと思っている。あいつは誰かを守るために自分か傷つくことは恥ずべきことじゃないと分かっているんだ。いいか?」
「・・・・・・ああ。」
「よし。そろそろ戻るとしよう。」
誰もいない病院の陰。猛竜、哀空吏、儀流は一通の手紙を目にしていた。
「師匠、これが大和宛に来てたものです。」
猛竜は儀流に手紙を渡す。
「『決闘を申し込む。明日の深夜零時に川神の北にある噴水の公園にて待つ。もし来なければ人間を多く喰らう。』か。」
「ええ。でも今の大和では・・・・」
「分かっている。二人とも、いけるな?」
「おうよ!」
「もちろんです。」
深夜の病室、大和はザルバと共に川神にある書物を調べていた。
「『黄金騎士はいくつもの光の輪に照らされ大和の光り得たり。』か。」
「おそらく魔戒剣で斬り裂いた空間だろうが・・・・・どうも分からん。鎧の召喚は騎士それぞれによって違うがそんなに多くの輪は見た事が無い。」
「ああ。ん?」
大和は病室の外からの気配を察知した。
「こんな時間に五人・・・・・英雄君たちかな?」
「・・・・・・お前は鈍感だな。」
「は?」
「なんでもない。それよれよりを指輪立てに戻してくれ。」
そう言われると大和はザルバを指輪立てに立てる。そして大和は魔導筆を手にすると書物を魔法衣に戻し、扉を術で開けた。すると京、ワン子、クリス、まゆっち、百代の五人が倒れこんだ。しかも何故かナース姿で。
「・・・・・・どういう状況これ。」
「そ、それについては自分が説明しよう。」
クリスが立ち上がり説明をし始めるがナース服姿なのかいつもより脚の露出が多い気がする。
「面会時間を過ぎたので皆で大和の看病をしようと思ったのだ。」
「なるほど。でなんでナース服?」
「面会時間を過ぎたら病院に入れないのでな。そこでナースに変装したのだ。」
「ああ。」
大和は納得したがそれにザルバは頭を抱えた。
(符礼、あっちの方も教えてやらなかったことが今仇となっているぞ。)
ザルバはあえて口にしなかった。
「それでだな大和!自分はさっき稲荷寿司を買ってきたのだ!食べてくれ!」
「ちょっとクリス!抜け駆けは許さない!大和、今身体拭くから。」
「いや、汗掻いてないし。」
「いいからいいから。」
「よくないって!」
「おーい、大和―。まゆっちの弁当受け取ってクレー。まゆっちが丹精込めて作ってくれた夜食だぜー。」
「よ、よかったら食べてください!」
「ちょーと待ったー!大和は病人なんだからちゃんとしたもの食べないと!」
皆して大和を気遣ってくれる中、百代だけはそこに立ちつくしていた。
「どうしたの百代姉さん?」
「いや・・・・その・・・・・すまない。」
百代は大和に頭を下げた。
「どしたの急に?」
「ザルバからお前の背中の傷の事を聞いた。」
「・・・・・・ザルバ。」
「スマンな。だがあの状況じゃ言うしかなかった。」
「大和、背中の傷のこととはなんのだ?」
クリスを始めとする皆が気になっていたため大和は背中の傷について話した。
「――――と言ったことがあったんだ。別にそのことでどうこう言うことも無いよ。」
大和はそうい言うが重たい空気だった。そんな皆を見てか大和は魔導筆を取り出すと百代たちを術で十分の方に寄せ、皆の頭を撫でた。百代たちは大和のその行動に驚いた。
「心配してくれたありがとう。その気持ちだけでも俺は嬉しいよ。」
大和は本心からそう言った。そんな大和の言葉を聞いて百代たちは嬉しかった。
深夜零時の噴水公園。哀空吏、猛竜、儀流の三人はそこにいた。
「あら、今日は黄金騎士はいないのね。」
噴水の頂上に清水瞳が立っていた。
「生憎今日は御休みなんでな。」
「だが、貴様の相手は俺たちがする。」
「勝てると思うな。」
三人は己が武器を構える。
「・・・・そう。でも残念だわ。飯塚を倒した牙狼と戦えるかと思ったけど・・・・ここで彼方達を倒せるのだから。」
「寝言は寝て言え!」
哀空吏は矢を射る。清水は噴水の水を操り水の壁を作り哀空吏の矢を弾いた。
「ならこっちも本気で行くわ!」
清水はトライデントを持つと三人に向かい跳びトライデントを振り下ろす。三人は散開し回避する。
「おら!」
猛竜が清水に接近し魔戒剣を振り下ろすが清水は柄で受け止めると力技で魔戒剣を下に下ろし左裏拳を喰らわせる。
「ぐぁ!」
清水は猛竜を石突で突く。清水の後ろから儀流は魔戒斧を振り下ろすが清水はトライデントで受け止める。トライデントの先から勢い強い水柱を放ち儀流の魔戒斧を弾くともう一度水柱を清水は放つ。
「ぐっ!」
儀流は攻撃を受け後ろに飛ばされる。
「はっ!」
哀空吏は清水に向け矢を射るが清水はトライデントで次々と叩き落す。
「だったら!」
猛竜は哀空吏とアイコンタクトをすると猛竜は魔導火を魔戒剣に纏わせ魔導火の刃を飛ばす。清水は身体を反らし回避する。
「惜しかったわね。」
「そいつはどうかな。」
猛竜が微笑んだ瞬間魔導火を纏った矢が清水の腹部に刺さった。
「ぐっ!」
先ほどの魔導火が哀空吏の矢に纏われ、その矢を哀空吏が放った。
「くそっ!」
清水は矢を抜き自身の作り出した水で魔導火を消す。
「おいおい!」
「そんなのアリか!」
「厄介だな。」
三人ともその光景に驚きを隠せなかった。しかし清水はそんなことお構いなくトライデントの石突を地面に突き刺す。
「本気で行かせて貰うわよ!」
清水を水が包み込みセーレンへと姿を変える。
「いくぞ!」
『応!』
三人は鎧を召喚する。
「おらぁ!」
漸がセーレンに向かい正面から斬りかかってくるがセーレンは水柱を放ち漸を倒そうとする。漸は脚を踏ん張り魔戒剣で水柱を受け止めると戯牙が柄を地面に叩きつけ 岩柱をセーレンに向け放つ。セーレンはトライデントを手に取り岩柱を折る。
「はっ!」
牙射が漸の背より高く跳び矢を射る。セーレンは横に飛び回避するとトライデントの先に水のドリルを形成し牙射に向け投げる。そんな牙射を儀流はトライデントに向かい跳び魔戒斧で一刀両断する。
「おら!」
漸は魔戒剣を逆手に持ちセーレンに近づき振り上げるがセーレンは下に十字を組み攻撃を防ぐとその腕を軸に漸に右踵落としを喰らわせる。そしてセーレンは左脚を漸の鎧に付けると脚から水柱放つ。
「ぐわぁああああああ!」
漸は勢いよく弾き飛ばされる。
「猛竜!よくも!」
戯牙はセーレンに接近すると魔戒斧を横一線に振るう。セーレンはバク転をし、回避する。
「はぁ!」
儀流は石突を地面に叩きつけるとセーレンを岩柱が囲む。
「今だ!」
「はぁああああああ!」
牙射が岩の上を跳び、矢を射る。放たれた矢はセーレンに眉間に刺さろうとしていたがセーレンは水の壁で防いだ。
「師匠!」
漸は戯牙に魔導火の刃を放つと戯牙はそれを受け取り、そしてセーレンを取り囲んでいる岩柱ごと横一線に斬った。
「ぐぁ!」
セーレンは胴体を真っ二つに切り裂かれ、岩柱と共に倒れた。
「ぐほぁ!・・・・・・・申し訳ありません、我が主・・・・・・。私の命は尽きますが、どうか、どうか彼方の野望だけは叶えてくだ―――」
セーレンが最後の言葉を言う前に魔導火が彼女を焼き尽くした。三人は鎧を召還する。
「大丈夫か、猛竜!」
「ええ、なんとか。」
「ともかくこれで残るはあと一体だ。」
哀空吏の言葉に二人が頷いた直後、電波ジャックが発生した。
大和たちのいる病室にクッキーが血相を変えて入ってきた。
「どうしたんだクッキー?」
「み、皆これを見て!」
クッキーがテレビを付けるとそこには橘天衣の姿が映っていた。
『私は元四天王の橘天衣。この放送を通じて私はこの放送を見ている全ての国民に通達する。
私はこの国を破壊する。私はこの国の国民を抹殺する。例外は無い。容赦は無い。私の目的はこの国の破壊、そして総理大臣の抹殺だ。私の顔を見ろ。私の声を聞け。私の存在を脳裏に焼き付けろ。これがお前たちの敵の姿だ。この姿を間近で見たときは命尽きるときだ。誰にも止めることは出来ない。ただ座して終末の時を待て。」
橘はそう言い終えるとテレビから姿を消した。
「・・・・・・・急がないとな。」
大和はそう言うとみんなからの食べ物を次から次へと食べてゆく。
「大和、本気であの人を救うつもりか?」
「ああ。あの人の陰我を俺が絶ち斬る。そうでもしないあの人がホラーに憑依されるから。」
「でもなんで大和が救うの?モモ先輩でも・・・・」
京がそう言うと大和は手を止める。
「京、俺はただ見たく無いんだ。誰かが悲しむ姿を。もう、二度と。」
大和の言葉には覚悟があった。百代たちはそんな大和の姿に圧倒された。
「大和、おそらくこれに便乗するバカなやからがいるはずだ。」
「だろうね。そこは結界の札で何とかして。」
「だがそれ以前に少し問題がある?」
「なんだよ問題って?」
「お前の魔法衣、下に着ている物だが使い物にならないぞ。」
「なっ!」
大和はザルバの言葉に驚いた。
「どうして!」
「あの時お前がホラーの攻撃を受けたときに魔法衣の魔導力を受け取る力が消失した。直すことは出来ない。」
「そんな・・・・」
「だがな、俺とてお前が寝ているときに何もしなかったわけじゃない。明日李杏が島津寮に来る。そこでお前が受け取れ。」
「・・・・・・わかった。」
そして大和は再び食べ始め、夜中に勝手に病院を退院した。律儀に金を払って。
翌日の島津寮、風間ファミリーと大和たちは一緒に朝食を採っているとインターホンがなった。
「大和。」
「李杏、すまないな。」
李杏が大和のために来てくれた。
「これをザルバに言われて持ってきたわ。元老院も納得してくれたけどこれは正直もつだけで緊張したわ。」
そう言うと李杏は魔導札で厳重に守られているアタッシュケースを大和に渡し、札を魔導筆ではがした。
「開けてみなさい。」
風間ファミリーと猛竜、哀空吏、儀流が覗き込むとそこにあったのは黒の魔法衣であった。胸の部分には装飾が施されており、薄い鎧ともいえる物であった。
「これって!」
「そうよ。彼方が憧れているあの人のよ。」
「ザルバ!」
「お前さんにこれを使う資格が今あるってことだ。早く着替えろ。」
「・・・・・・・・ああ!」
大和は自室に向かい黒い魔法衣を着用。白い魔法衣を羽織る。その姿は正に『生ける伝説』といわれたあの人の姿の生き写しとでも言わんばかりであった。
大和は皆にその姿を見せる。
「お前は似合うな。」
「でも、そっちの方が正しいのかもな。」
「アンタ、本気で行くつもりでしょ?」
「私達も協力する。」
「大和、姉として私も行くぞ!」
「私も大和の助けになりたいしね!」
「私は大和が行くならついていく!」
「自分も同じだ!」
「大和さん、共に行かせてください!」
「オイ大和、おいらも行くぜ!」
「大和、今まで陰で皆の平和を守ってくれた分俺も行くぜ!」
「俺様も力を貸すぜ!」
「僕も微力ながら行くよ。」
「俺はおめーらが心配だからついていってやるだけだ。」
大和の目の前には心強い仲間がいる。そんな光景に大和は嬉しかった。
「ああ。行こう、皆!」