大和は数馬に向かい跳び魔戒剣を振り下ろすが数馬は左腕で魔戒剣を受け止める。そこへ哀空吏が大和の左後ろから低い位置で矢を射る。飛んでくる矢を数馬は右手で受け止めると大和に突き刺そうとする。大和は数馬の身体を蹴り距離を取ると猛竜が大和と入れ違いに数馬に接近し、左手に持った魔戒剣を振り上げる。数馬はそれを矢で受け止める。
「ぐぐぐ・・・・」
「ふっ・・・」
猛竜は押すが刃は届かない。数馬は右脚で猛竜の左手を蹴るとそのまま左反転回し蹴りを猛竜に喰らわせる。
「ぐお!」
跳ばされる猛竜を大和が駆けつけ受け止める。哀空吏は上から弓を振り下ろすが数馬は左に身体を反らすとその勢いを活かし右回し蹴りを喰らわす。会い空吏は姿勢を低くし回避をすると地面に仰向けになり数馬に矢を射る。数馬はバク転をし、矢を回避する。
「はっ!」
大和は数馬の後ろから接近し魔戒剣を左に振るう。数馬はバク宙をし、回避すると大和を蹴る。大和は受身を取りながら転がる。猛竜が縦に魔戒剣を振るうが数馬は反転し腕を十字に組み猛竜の攻撃を受け止めるとそのままオーバーヘッドキックを猛竜に喰らわせる。
「ぐぁあ!」
猛竜は背中から地面に落ちる。
「大丈夫か!」
哀空吏が猛竜に話し掛ける。
「なんとかな。」
「伊達じゃないようだな。」
三人は数馬に剣先を向ける。
「いやはや、こっちも驚かされたよ。若いだけじゃなく腕もいい。久々に楽しめそうだ。もっと私を楽しませてくれ。」
「ふざけんな!」
大和が正面から先行し魔戒剣を振るうが数馬は後ろに跳び回避すると大和は魔戒剣を振り上げる。数馬は右脚で魔戒剣を抑えると大和の顎に左脚蹴りを喰らわせる。
「ぐっ!」
『大和(さん)!』
百代たちは大和を心配し声に出す。
哀空吏は大和の左後ろから数馬に向かい矢を次々と射るが数馬は手刀で次々と落としてゆく。
「ホラーとは言えどすごいな。」
「関心すんな大和!」
猛竜が大和の右後ろから数馬に接近し魔戒剣を振るうが数馬は地面を力いっぱい踏み、道路のタイルを壊し猛竜の足を止める。壊れた破片が猛竜にぶつかる。
「って!」
気を失っていた橘と砂姫が起きた。
「ん・・・・・・」
「あ・・・・・」
砂姫はゆっくりと身体を起こすと警戒をする。
「砂姫。」
「橘さん!その姿は!」
「彼に負けたのだ。私達は負けた。それより手を貸してもらえないか?」
「・・・・・・・・・わかりました。」
砂姫は橘の身体を起こす。
「彼らは一体何をしているのだ?何故総理を襲っている?」
「それはこれから分かります、橘さん。」
百代の言葉に従い橘は大和たちの戦いを見る。
そこへ釈迦堂たちが来た。
「おーい!」
「釈迦堂!何しに来たのじゃ!」
「そんなこと言うなよ爺さん。とりあえずそっちに入れてくれ。」
「・・・・・・わかったわ。」
『李杏さん!』
「この状況よ。でもへんな真似したら承知しないから。」
「わ、わかってるよ。」
釈迦堂たちは李杏の作った結界に入る。
「すまねぇな。」
「別に。それより外に出られるようにしているはずよ。」
「そいつがどうも出れねぇんでな。なんか分かるか?」
「・・・・・・・アイツ、邪気を使って結界を張っているようね。」
「何言ってるんだ?」
「こっちの話よ。」
「はぁあ!」
大和は姿勢をきりもみ回転をしながら数馬を斬ろうとするが数馬は大和の上を飛ぶと大和を蹴る。
「がっ!」
大和は蹴飛ばされる。
「くそがっ!」
猛竜が右手を盾に変形させ数馬を殴る。しかし数馬は前宙をし、猛竜の後ろに付くと左エルボを猛竜に向けて放つ。猛竜は左に反転しエルボで受け止めようとするが数馬の方が勢い強く猛竜は押し倒された。
「はっ!」
哀空吏が弓をヌンチャクに変え数馬に左手で上から振るう。しかし数馬は右反転回し蹴りをしてヌンチャクの起動を反らすと数馬は腹部に拳を叩き込む。哀空吏は右手でその攻撃を受け止める。すると数馬は哀空吏に頭突きを喰らわせる。
「ぐっ!」
哀空吏は体制を崩す。そこに数馬は右拳を再度哀空吏の腹部に叩き込む。
「がぁあああああああ!」
哀空吏は弾き飛ばされ、地面に付いたときには腹に手を添えていた。
『はぁ!』
三人は一斉に数馬を囲い、斬りかかる。しかし
「舐めるな!」
数馬は両腕を皮膜と一体化した翼に変化させた。数馬は両腕を広げながらきりもみ回転し、大和たちを弾き飛ばした。
その瞬間橘と砂姫は驚きを隠せなかった。
「あの腕・・・・・」
「まさか・・・・!」
数馬は二人に気付き不気味な笑みを浮かべる。
「思い出したか?この腕、お前たちを襲った化け物の腕だ。」
橘が両腕両脚を失うきっかけになった極秘作戦。
その日の深夜、総理直々の命令によって橘の部隊は人気の無い山岳地帯に来ていた。
『隊長、こちらA班、異常ありません。』
『B班も異常ありません。』
通信機越しに連絡を取りあう部隊。その時は何も起こらないと思っていた。だがその時であった。
『た、隊長!こちらA班!謎の化け物と交戦に入りました!攻撃きょ・・・・・ぎゃああああああああああああああああああ!』
「どうした!A班応答しろ!」
橘は呼びかけるが全く反応が返ってこなかった。
「B班!そちらの状況を報告しろ!」
『た、隊長!なんですかこの化けもぎゃああああああああああ!』
「B班!B班!」
橘の耳には仲間の悲鳴しか聞こえなかった。
「隊長!」
「落ち着け!通信兵、通信機を貸せ!」
「はいっ!」
通信兵は橘に通信機を貸す。
「総理、聞こえていますか?自分の部隊が奇襲を受けました。交戦許可を!」
『・・・・・・』
「総理!聞こえていないのですか!総理!」
橘は何度も語りかけるが反応はなかった。橘は唇を噛み締める。その時であった。突如空から赤と白のまだらの化け物が姿を表した。
「総員撤退!何が何でも生き延びろ!」
橘はそう言うと化け物に突っ込み拳を振るった。しかし化け物にその拳はあまりにも無力であり、すぐに弾き飛ばされた。弾き飛ばされた橘は気に頭を打ち付けられ意識が朦朧になる。そんな橘に砂姫は駆け寄る。
「大丈夫ですか、橘さん!」
「う・・・・砂姫・・・・・っ!」
橘が見たのは砂姫の後ろで無残にも喰い殺されてゆく仲間の兵たちであった。
「や・・・・ヤメロ――――――――――――――――――――――」
砂姫を押しのけ橘は化け物に向かった。
数分後、橘は両腕両脚を喰われ、砂姫は片目を失った。
「あの時の・・・・・・・化け物はお前だったのか!」
「ああ!お前はいい器だったよ。気が強く、精神面のガードは固かったがコイツの身体を利用して日本の総理大臣になったんだ。なんだってし放題だ!」
「お前なんかの化け物のために私の部下は・・・・・」
「ああ!そうだよ!絶望した瞬間は美味かったな~。ホント人間はいい味がする!」
「おい・・・・」
数馬は後ろを振り向くと大和たち三人が再度武器を構えていた。
「なんだ、まだくたばってなかったのか。」
「生憎ね。お前を倒すまでくたばるつもりは無いよ。」
「はっ!冗談も対外にしろよ魔戒騎士!黄金騎士でも無いかぎり俺を倒すことは出来ない!」
数馬は国会議事堂の方まで飛ぶと両腕で身を抱きしめる。
「せめてもの敬意だ。見せてやるよ、俺の真の姿を!」
数馬は化け物のような雄叫びを上げながら身体を変化させてゆく。ぶくぶくと身体は膨れ、身体を覆う皮が破れるとそこにいたのは尻尾があり、皮膜と一体化した翼の前足を持ち、と一体化した腕を持ち、頭部は歪んだ六角形をし後頭部両側後方が尖っている四足歩行の赤と白のまだら模様の魔獣・ガデラの姿であった。
「これが私の真の姿だ。どうだ?驚いたか?」
「ああ。でもな、俺達はそれを見たからって引き下がるわけにはいかねぇんでな!猛竜!哀空吏!本気で行くぞ!」
『応!』
大和は魔戒剣の刃をザルバに付け、引き、剣先を天に向け空間を裂き、円を描く。
猛竜は魔戒剣を地面に叩きつけると自分の身体を中心に円を描く。
哀空吏は弓矢を身体の前で立てると右、左と身体を挟むように円を描く。
三人が描いた円から眩い光が漏れ、三人を照らした。百代たちは目を細める。光が止むとそこには驚くべき光景があった。
黄金の鎧を身に纏った魔導馬・轟天に乗馬している牙狼、烈火の如き炎の色の鎧を身に纏った魔導馬・竜漸に乗馬している漸、両太股部分に尖った突起物を付けている葵鎧を身に纏った魔導馬・蒼天に乗馬している牙射の姿があった。
「貴様!黄金騎士だったのか!」
「あいつらから聞かされていなかったようだな。」
「だが関係ねぇ!」
「ここで貴様を倒す!
三人は同時に魔導馬の胴を蹴り、魔導馬を走らせる。
「「はぁああああああああああああ!」」
牙狼と漸は魔導馬をガデラに向け走らせる。牙射は旋回しながらガデラに矢を射る。
牙狼と漸は魔導馬を跳ばさせるとガデラとすれ違い様に剣を振るった。花寺の身体は傷つく。轟天と竜漸四足全てを使い踏ん張り反転ドリフトをすると前足を高く上げ再度踏み込む。牙狼はガデラの後ろから斬りかかろうとするがガデラは尻尾を振るい牙狼と轟天を弾き飛ばす。漸は竜漸をガデラの左の方まで走らせると竜漸を跳ばせる。竜漸がガデラの真上を通りスグル瞬間漸は片手で手綱を掴むとそのまま宙釣りになりながらガデラの背中を斬り、手綱を引っ張り再び乗馬する。
「はっ!」
牙射は矢を三本同時にガデラに向け、連続して射る。ガデラは四つんばいで牙射の方まで飛ぶ。
「させるか!」
牙狼は轟天を走らせながら牙狼剣を牙狼漸馬剣に変えガデラに向け剣を振るう。ガデラは牙狼斬馬剣を叩きつけられ体制を崩す。
「今だ!」
「ああ!」
牙射は魔導火を矢に集中させるとガデラに向け射る。ガデラは咆哮を上げ矢を落とす。
「なんだと!」
「んなのありかよ!」
「ちぃ!」
牙狼は轟天の上に立つと牙狼斬馬剣を構える。轟天は前足を高く上げ、勢いよく前足を地面に叩きつけると後ろ脚を大きく上げ海老反りになる。その際に後ろ足で牙狼を蹴り、ガデラまで飛ばす。
「おおおおおおおおおお!」
牙狼は牙狼斬馬剣を振りかざす。しかし、ガデラは左羽を大きく振るい牙狼を弾く。
「轟天!」
牙狼が轟天の名を叫ぶと轟天は雄叫びを上げながら画廊の下まで走り牙狼を乗せ、走る。
「にゃろ!」
「はぁあああああ!」
漸と牙射は魔導馬を走らせガデラを挟み込むと同時に接近し魔戒剣を振るう。しかしガデラは両方の羽を広げながらきりもみ回転をする。牙射と漸は魔導馬と共に弾き飛ばされる。二人の魔導馬はダメージの限界を超え召喚された。
「だったら!轟天!」
大和は轟天から降りると轟天の名を叫ぶ。轟天は雄叫びを上げながら前足を大きく振り上げ、そして地面に叩きつける。すると轟天の蹄から波動が発せられ牙狼斬馬剣が更に大きくなる。
牙狼は魔戒剣を水平に構えると牙狼斬馬剣の上に轟天が乗る。牙狼は牙狼斬馬剣に魔導火を纏わせ轟天に烈火炎装をするとハンマー投げの投げ方でガデラに向け轟天を投げる。轟天は牙狼斬馬剣と共にガデラに向かい飛び、そして直撃する。
「ふっ!」
牙狼は烈火炎装により魔導火を全身に纏い、ガデラに向かい跳び、そして殴る。大きな爆発と共に牙狼は宙を舞いながら地面に落ちていくところを牙狼剣を咥えた轟天が乗馬させ、口に咥えていた牙狼剣を牙狼に渡しながら走る。轟天は四足に力を込め反転ドリフトする。
「やったか?」
爆炎で視界が遮られ、ガデラの姿は見えなかった。漸と牙射は牙狼に駆け寄る。
「大丈夫か、大和?」
「全くお前は相変わらず無茶をするな。」
「仕方ないだろ。それよりアイツは・・・・・」
縛円の方を向く三人。徐々に爆煙が晴れ、ガデラの姿が見えた。ガデラは雄叫びを上げる。
「嘘だろ・・・・」
「マジかよ・・・・」
「これは、骨が折れそうだな。」
牙狼は轟天の胴を蹴りガデラに向かい走らせる。
「はぁあああああああああああ!」
牙狼はガデラとすれ違い様に画廊残馬剣を振るう。それに対しガデラは地面を両手で叩き、石柱を出現させ牙狼と轟天にぶつける。
「がぁあああああ!」
牙狼と轟天は悲鳴を上げながら攻撃を受ける。牙狼はその際に轟天から離れてしまった。石柱の攻撃を受け倒れている轟天をガデラは踏みつける。轟天は悲鳴を上げる。
「戻れ!轟天!」
轟天は償還された。
「こんにゃろ!」
漸は石柱を跳び台にしガデラに魔戒剣を振りかざす。
「舐めるな!」
ガデラは跳ぶと尻尾で漸を叩き落す。
「ぐあああああっ!」
牙射はガデラを横から移動しながら射る。しかしガデラは自分の周りに石柱を出現させ矢を防ぐ。ガデラは牙射の足元に石柱を出現させ牙射を攻撃する。
「ぐっ!」
三人とも倒れ、ガデラは見下す。
「こうなったら!」
外は烈火炎装をし、漸に向け魔導火の刃を飛ばす。
「猛竜!」
刹那、牙射に向けガデラは石柱を連続して叩きつける。ダメージが限界を超え牙射の鎧は強制解除された。
「大和!」
漸は牙狼に魔導火の刃を飛ばす。その刃は漸と牙射の魔導火が合わさっていた。牙狼がそれを受け取った瞬間漸はガデラの石柱の攻撃を喰らい、鎧が強制解除される。
「おおおおおおおおおおおおおお!」
烈火炎装の牙狼は雄叫びを上げながら接近し、跳び、空中でバク転、そして牙狼剣を振るう。牙狼剣の刃がガデラの頭部に叩きつけられる。
「はああああああああああああ!」
牙狼はガデラを斬ろうと剣に力を込める。だが―――
「小賢しい!」
「ぐあああああ」
ガデラは頭を振り上げ牙狼を振り払う。牙狼の鎧が強制解除され、大和は地面に叩きつけられた。大和が立ちあがろうとした瞬間ガデラに右手が大和を叩く。
「ぐあっ!」
『大和(さん)!』
大和はガデラに叩かれた際に魔戒剣を手放してしまう。手放した魔戒剣は李杏の結界の前に突き刺さった。
ガデラはゆっくりと近づきながら大和に語りかける。
「ここまで私を楽しませたことを褒めてやろう。だが、ここまでだ。貴様に敬意を表し苦しまずに殺してやろう。」
「ぐっ!」
大和は立ち上がろうとするがダメージによって立ち上がれない。
「どうした?何故絶望しない?」
「俺は最後まであきらめたく無いんだ。俺は、希望を捨てない!」
「そうか・・・・・・ならば死ね!」
ガデラが右腕を大きく振りかざす。
元老院の魔戒騎士を弔う墓。そこの墓でただ一つ、墓に刺さっている魔戒剣が自ら抜けようと動いていた。小刻みに動く魔戒剣は墓から抜けると黄金に輝きその場から姿を消した。
李杏たちが大和を見守る中、一人、結界を通り抜け走ってくる男がいた。男は走りながら李杏たちに目もくれず突き刺さった大和の魔戒剣を抜き取り、ガデラに向かい走る。
大和にガデラの手が振りかざされた時、二本の魔戒剣がその手を受け止めた。
「何ッ!?」
「なっ!」
「おい!」
「嘘だろ!」
「どうして・・・・・・・彼方達が・・・・・」
大和たちは驚きを隠せなかった。ガデラの攻撃を防いだのは白い魔法衣を着た男と、スーツ姿の男であった。二人は息を合わせガデラの手を押し返すと同時に魔戒剣を振り、その衝撃刃でガデラを跳ばす。
「おい!あの二人は誰なんだ!」
血相を変えた百代が李杏に尋ねた。
「・・・・・二人は既に死んでいる存在よ。でもこんな形で出会うとはね。スーツ姿なのは尊士。大和に弱さを分からせた男。でももう一人は・・・・・」
李杏は息を飲んだ。大和はおそるおそるその名を口にする。
「・・・・・・冴島・・・・・・・鋼牙さん?」
大和の言葉に二人は振り向く。
「こんな所で何をしている。」
「早く立て。」
二人は大和に手を差し伸べる。大和はその手を取り立ち上がる。
「どうして彼方達が・・・・・・」
「さあな。だが、気が付けば貴様がガデラに倒されそうになっていた。それを助けたまでだ。」
「しかし、お前はこんな所でやられる器では無い。お前には、俺たちがいる。」
「そうだぞ。」
大和は後ろからかけられた言葉に驚き振り返るとそこには符礼法師がいた。
「符礼法師・・・・」
「久しぶりだな、大和。」
「符礼法師。」
「久しぶりだな符礼、それに鋼牙も。」
「久しぶりだな、ザルバ。」
「ああ。あの時分かれて以来だ。」
「全くだ。お前たちのように過去の相棒を見送るのは心が痛いぜ。」
ザルバが愚痴を言うと四人は笑ってしまった。だがそんな時間はすぐに去る。ガデラが身体を起こした途端、四人は気を引き締める。
「大和、やれるか?」
「やれるかじゃなくてやるんだ。それが俺たち魔戒騎士の使命だから。」
「そうだ。俺はホラーと化したがお前は誰よりも多くのホラーを封印しろ。」
「それが、魔戒騎士として、黄金騎士・牙狼としての使命だ!」
鋼牙と尊士は大和に魔戒剣を差し出す。大和はその剣を受け取る。
大和は瞳を閉じ、深呼吸をすると瞳を開け魔戒剣の地肌同士をぶつけるとゆっくりと頭上に持って来て剣先で空間を裂き、二つの円を描く。二つの円が一つになった瞬間大和は両方の剣を振り下ろした。その時であった。いくつもの空間を裂いた円が大和の周りに現れ、大和を囲む。
「はっ!」
大和は頭上の円に向かい跳ぶ。描かれた空間を突き破り、牙狼の鎧が召喚される。だがその牙狼の鎧は先程までとは違っていた。背には左右に取り付けられた金色の帯と大きな金色の輪に囲まれている太陽、牙狼の周りには弥生時代の銅剣の形をした黄金の刃が358本、二つの円で作られた十字を描くように浮かんでいた。
その姿こそ古来より伝えられし伝説の姿。
牙狼・大和大帝の姿である。
「あれは!」
「じいちゃんの話しに出てきた!」
「黄金騎士!」
「大和が今その姿になっているのか!」
「すごいです!」
「まゆっちー!おいら達今とんでもねーもん見てるぜ!」
百代たちは声に出して驚いた。
「なっ!まさか私を葬ったその姿で戦うというのか!」
ガデラは両腕の羽を広げ牙狼に向かい飛ぶ。牙狼は右の人差し指と中指を立てると左に振るう。刹那、黄金の刃がガデラに向かい飛ぶ。黄金の刃の半分はガデラに突き刺さる。ガデラは悲鳴を上げるが牙狼は容赦なく右手を左に振るう。するともう半分の黄金の刃がガデラに向かい刺さる。
「ふっ!はぁあああああああ!」
牙狼は右手を左肩の前で握り、下に振り下ろすと牙狼剣が握られていた。
「ふっ!おおおおおおお!」
牙狼は左手を右肩前で握り、下に振り下ろすと左手には金色の七支刀が握られていた。
「何故だ!何故我が貴様なんぞに負けるのだ!」
「俺のこの左手には過去の英霊たちの思いが!右手には未来への希望がある!貴様なんかのもっている覚悟とはワケが違う!」
牙狼はゆっくりと両手の剣を頭上に持って来て合わせる。すると黄金の光の刃が天高くに伸びる。
「永遠に滅びろ!魔獣・ガデラ!」
牙狼は光の刃を振り下ろした。光の刃はガデラを真っ二つに切り裂いた。
「なんなのだ!なんなのだ貴様は!」
ガデラの問いに大和は答える。
「俺は!・・・・・・いや――――」
大和は訂正する。
ここで叫ぶべき名の呼び方がある。
大和はその呼び方で自身の名を叫ぶ。
「わが名は牙狼!黄金騎士だ!」
牙狼がそう宣言した瞬間ガデラは消滅した。
こうして、国をも巻き込んだ戦いは終わりを告げた。人々には橘を百代が倒したとして報道された。というよりもそう記憶を書き換えた。大和たちの戦いを見ていた一般人には百代たちが戦った擬似記憶が植え付けられた。これで全てが丸く収まったはずなのだが・・・・
「・・・・・・・・・・何でこうなってんの?」
大和は頭を抱えながらしゃがみこむ。そんな大和に猛竜と哀空吏は手を置く。
「わかるぞ、その気持ち。」
「同感だ。」
大和に同情する二人の後ろで百代たちが大和を呼ぶ。
「おーい、大和―。早くしろー。」
百代の周りには風間ファミリーと板垣姉妹がいた。
彼女達を含めあの場にいた全員に記憶消しの術が効かなかった。さらに釈迦堂たちを銅処分するものか検討した結果、竜兵を除く三姉妹を川神学園に生徒として通うようになった。何故か達子は三人の中で最も嬉しそうであった。ちなみに釈迦堂は主犯は自分との一点張りで弟子四人を庇った。ちなみに竜兵は何処かにとんずらしたそうな。手紙をちょくちょく書いてくることもある。
「まぁ、俺たちは今頑張るしかないか。」
「だな。」
「しっかりやらないとな。」
三人が並んで歩いていると一人の執事服を着た男が現れた。百代たちは警戒するが大和たちはなだめる。
「警戒しなくていいから。どうも。」
「これをどうぞ。」
大和は執事服の男から紅い封筒の手紙を渡される。
「ありがと。」
「いえ。」
執事服の男が一礼するとその場から煙のように姿を消した。
「大和、それはなんなんだ?」
皆が大和の周りに集まる。
「これは指令書。でも・・・・」
大和は手紙の裏を見る。そこには魔戒文字があった。
「元老院のグレスからだ。早く読んでみろ。」
「おう。」
大和は魔導筆で外から見えないように結界を張ると魔導ライターを懐から取り出し、指令書を燃やす。すると魔戒文字が空中に浮かび上がる。百代たちは驚くが大和たちはお構い無しに読み上げる。
「『直江大和、楠神哀空吏、蛇崩猛竜の三名に命ずる。
ガデラは消滅したがガデラの残したオブジェやゲートは今も残っている。
そこで三人に命ずる。この地で人々を守り続けろ。』だって。」
「えっと・・・・・・どういうこと?」
ワン子は頭を傾げる。
「つまり、まだこの地で使命を果たせってこと。」
その言葉を聞いた瞬間百代たちの顔が明るくなった。
「さて、学校に行きますか。」
大和が学校に行こうとした瞬間目の前に橘が現れる。
「橘さん、どうかしたんですか?」
「なに、君に早めの挨拶をしようと思ってな。」
「挨拶?」
「ああ。このたび私は川神学園の体育教師になった。よろしく頼む。」
「それそれはどうも。」
大和は頭を下げる。
「砂姫は校務員として学校で働くことになった。」
「へー。でもなんで川神学園に?揚羽さんのところでもいいのでは?」
「そ、それはその・・・・君といる方が私としてもいいのであって//////」
橘は顔を紅くする。
「何か言いました?」
「な、なんでもない!?!?!?」
橘は大和から顔を反らす。大和は首を傾げたがそのまま素通りして学校に向かおうとする。
これからいろんなことが彼らには降りかかるであろう。ガデラよりも強い魔獣やホラー、闇に落ちた魔戒騎士が出るかもしれない。
だが彼らには守るべき人々、助けてくれる仲間がいる。その支えがあればこれから待ち受けているであろう困難にも立ち向かうことが出来る。
そう信じ、彼、直江大和は進んでゆく。
そんな大和の背中を見て百代、クリス、京、ワン子、まゆっち、辰子、橘は大和の名を呼ぶ。
『大和(さん/くん)!』
「?」
大和は後ろを振り向くと息を揃えて大和に言った。
『真剣で私に恋しなさい!』