川神院。いまここで百代に挑戦しようと二人の外国人が向かい合っていた。外国人の一人は身体をムキムキに鍛えているカラカル=ゲイル、その肉体の動きをバックアップするのは弟のカラカル=ゲイツ。頭脳派に頼っている戦法である。
「う~ん・・・・・哀空吏、猛竜。」
百代の戦いを風間ファミリーと大和たちは見に来ていた。大和としては結果がわかっているが二人の意見を聞いてみようと考えた。
「なんだ大和?」
「どれくらいで負けるか考えるかって話か?」
「ああ。どう思う?」
『瞬殺。』
「だよな。」
「ワタシのコンピューターが計算するにゲイル兄さんが勝つ確率99.9パーセント。」
「くくく、余裕だなゲイツぅ。」
川神院の銅羅が鳴り響き、川上鉄心が立会人として前に出る。
「西方、川神百代。」
「ああ。」
「東方、カラカル=ゲイル!」
「オーケー!」
「ククク・・・・・兄さん、データによるとモモヨはまず右ストレート気味のパンチを放ってくっるよ。」
「オーケー。それさえわかればワタシの必殺技・ゲイルカウンターで終わりだNA!」
「それではいざ尋常に!まじめいっ!!!」
鉄心の合図と同時に百代は前に出る。
「よぉし、いくぞっ。」
「フフ・・・・・・・右ストレートですね。わかりマース。必殺!ゲイルカウン・・タ?」
ゲイルが疑問に思った瞬間はほんの一瞬だった。自分の顔面に百代の拳がめり込み、そのまま吹っ飛ばされ壁にクレーターを作った。
「ぢょふずっ!」
「なにィ!?」
ゲイルは開いた口が塞がらなくなった。
「そこまで!勝者、川神百代!」
「そんなバカな!いったいナニがっ・・・・」
「右ストレートだな。」
「だな。早かったが正確に顔面を捉えていた。」
「だが本人は満足していないぞ。」
ゲイツはショックを受けたままである。
「デハ予測は当たっていたのカ。なのに、ワタシが勝率を間違えるなんて・・・・・USAに帰ってコンピューターの作り直しデース!」
「ほれ、礼だ礼。」
「・・・・・・・」
百代は不本意ながらもしぶしぶ礼をする。
「川神さん。」
「ん?おお、大和か。おっきくなったのう。」
「どうも。ところで少し聞きたいことがあるんですけど・・・・・いいですか?」
「いいが・・・・・お主いつもその服装なのか?後ろの二人も。」
二人の服装は皮のコートを上に羽織っている服装。明らかに熱そうである。
「ああ、これいつも来ているんで。」
「そうなのか?まあいいわい。それより聞きたいこととは何じゃ?」
「小さい頃に話してくれた川神にまつわる昔話です。」
「おお、あれか。」
「何なのだそれは?」
クリスが聞いててくる。
「昔聞かされた大和、つまり昔の日本の話。」
「おお!それはぜひとも聞きたいな!」
「では話す可能。じゃがこの話が何時作られたのか、また本当にあったのかは確かではないぞ。」
その昔、大和の国は光で溢れていた。しかし時が過ぎるにつれて戦いは広がり、闇が生まれた。
闇のうごめく時代にまか不思議な事件が起こった。その事件はある一人の猛き者の邪魔になる者が突如として次々姿を消していった。その者に歯向かう者は、皆殺された。
しかし、その者は人ではない闇の者であった。
皆はその者をこう呼んだ。闇の化身、ガデラと。
誰もが絶望し、その者に服従する以外救いは無いと思った。しかし、そんな絶望の中一筋の希望が生まれた。
それは黄金色に輝く狼、希望の象徴。
その者はガデラに挑み、倒れるまで戦ったが勝てずに負けようとしていた。
しかし神は彼を見捨てなかった。大和の日輪の輝きがその者に力を与え、大和の力を纏わせ、そしてその者はガデラを消し去った。
人々はその者の名を聞こうとするがその者は名乗らずに去ってしまった。
その者はガデラとの戦いの際に自らをこう名乗った。
我が名は牙狼、黄金騎士と。
「これが川神に伝わる昔話じゃ。どうじゃ?」
「すごく感動した!日本にも騎士がいるのだな!!」
「黄金騎士・・・・・」
「まさか歴史に知れ渡っているとはな・・・・」
クリスはその話に感動し、哀空吏と猛竜は顎に手を当てる。
「それでは私はちょっとシャワーを浴びてくる。」
百代は皆に笑顔でそう言って後ろに振り向くとどこか物足りない感情にあった。
「いかんのう。」
大和は心配をした。戦いを求めすぎる百代を。ホラーに憑依されてしまうのではないかと。
シャワーを浴びている百代は感情を壁にぶつけていた。
「物足りない・・・・・!あんなのじゃダメだ・・・・。もっと・・・・、もっと強いヤツを連れてきてくれ!でないと、でないと私は―――」
退屈で死にそうだ。
百代がそう思っていると何かの気を感じ取った。
「ん?」
日本上空をロシアの飛行機が飛んでいた。
「まもなく川神上空です。」
「ああ。」
パイロットの言葉に答える眼帯を賭けた紅いかにの女性は窓を見ていた。
「さて・・・・武神の住まう国。どれほどのものか・・・・もしくだらない連中しかいないなら、そのときは・・・・」
「ほう。なかなかの殺気・・・・誰の関係者だ?」
百代は微笑んだ。
「まんざら退屈・・・・・ってわけでもにか・・・・」
「おーい大和―。実は今日来客があるんだが玲子さんを見かけなかったか?」
クリスは大和の部屋をノックして部屋を覗く。
「あれ・・・・・いない。」
「クリス。」
「わっ!なんだ京か。」
「驚かしてゴメン。どうかしたの?」
「いや、大和に今日来客があることを伝えようと思ってな。」
「・・・・・どうして大和に?」
「そ、それは・・・・他の男子は頼りがいが無いからだ。哀空吏や猛竜にも声を掛けたがいなくて他の男子で頼れるのは大和しかいないからだ。」
「・・・・・・・クリスは大和のことをどう思ってるの?」
「どう・・・・とは?」
「とぼけないで。貴女、大和のことが好きでしょ?」
「なっ///////」
クリスは耳まで紅くする。
「な、何を言うんだ!」
「嘘をつかなくてもいい。でも私も大和のことが好き。小さい頃の、あの日から。」
「金魚が死んだぞ!」
「椎名菌のせいだ!」
クラスの生徒皆が京が飼育委員であるため金魚が死んだといっている。
(金魚に空気を送る装置が壊れたんだな。ん!)
大和はその中でただ1人彼女が殺したのではないと確信をした。その理由は明白である。彼女が攻められているのを見て笑っている女子の集団が目に入ったからである。
(あいつら・・・・・・・)
大和は心の奥底から怒りが込みあがってきた。
(命を・・・・・・・・なんだと思ってんだ!)
大和はその場にいればすぐに自分自身を制御出来ないと思いその場を去った。
放課後、京は泣きながら金魚を埋葬していた。
「おい、椎名菌!」
京の後ろから同じクラスの男子三人が京を上から見ていた。
「お前のせいで死んだんだろ?だったら死ねよ!」
「そうだ!死ね死ね!」
都はその言葉に怯えて何もいえなかった。
「ねーねー。」
「ああ?」
男子三人が振り返るとそこには大和の姿があった。
「どうしてそんなこと簡単に言えるの?」
「それは簡単だよ。こいつが死んでいい人間だからだ。」
「なに?」
「ああ。こんなやつなんか人間と思わなくても良いんだ。むしろ死んでくれた方が世の中のためにな――」
ドンッ!
大和は怒りのあまり左裏拳で壁を叩いた。大和が叩いた壁には無数のヒビが入る一部が崩壊した。
「ふざけんな!命をたやすく扱って良いものじゃない!何も知らないガキが偉そうに言うな!」
「な、なんだと!」
男子三人は大和に殴り掛かってきた。京は自分のせいで大和が傷突くと思った。だが・・・・・・
「うう・・・・」
「い、いたい・・・・・・」
「お、覚えてろよ!」
男子三人はあっけなくボロボロの濡れ雑巾にされ、その場を去っていった。
「椎名ちゃん。」
「っ!」
大和は京に近づき片膝を突くと、ポケットからハンカチを取り出し椎名の涙の後を拭いた。
「え・・・・・」
「椎名ちゃん、あの時死にたいって思った?」
「う・・・・・・・うん。」
「そっか。でも約束があるんだ。自分で命を絶とうとしないで。命ってさ、結構奇跡の中から生まれるって法師が言ってたんだ。俺、軽々しく死ねとか言うやつダイッキライでさ。だから死のうなんて思わないで。もしなんかあったら風間ファミリーに頼るといいよ。皆言い人たちだから。」
大和は京の涙の後を拭き終わると京の頭を優しく撫でた。
(温かい・・・・・・・・大和君・・・・・・・)
京はその時大和を好きになった。
後日、京を笑っていた女子グループは先生と保護者にこっぴどく叱られた。なんでも、水槽に付いていた指紋が照合したからである。普通は信じられないが飼育委員意外誰も触らないところに指紋があり、それを誰かが照合した結果わかったそうだ。
誰が、どうやって調べたのかは不明のままである。
「これが私が大和を好きになった経緯。」
「そうか・・・・・本当に大和は誰にでも優しいのだな。」
「逆に優しすぎてライバルを増やしそう。」
「だな。」
「クリスお嬢様を惚れさせる男とは一体どのような奴なのですか?場合によっては・・・・・Jagd(狩る)!!」
二人は後ろを振り向くとそこにはドイツの軍服を着た左目に眼帯を賭けた赤い髪の女性が立っていた。
「マルさん!」
「クリス、この人は?」
「ああ。この女性はマルギッテ・エーベルバッハ。父様の部下で私の姉のような人だ。」
「マルギッテ・エーベルバッハだ。ところでクリスお嬢様、その大和とか言うやつは何処に?」
「すまないマルさん。今出かけているんだ。」
その時であった。京が何かを感じ取るように反応した。
「どうした京?」
「大和の気配。」
『なに!!』
京は窓から大和の部屋から島津寮に入るところを見る。そこには大和、哀空吏、猛竜の三人が一緒にいた。
「あの男ですね。ならば!」
マルギッテは大和の部屋の窓を開け大和に向かい跳ぶ。
「今日の巡回は楽だったな。」
「まあ、昼間に出るホラーなんかいないしな。」
「だな。・・・・・っ!」
三人は自分達に向けられている殺気に気付き模造刀を準備する。
「はぁあああああああ!」
大和の右斜め上からキックが来る。三人は散開し回避する。
「ほう・・・・・なかなかいい動きをするな。貴様が大和とか言うやつか?」
「まあね。で?あんたはどっから見ても軍人だよね?」
「ああ。自己紹介がまだだったな。私の名はマルギッテ・エーベルバッハだ。」
「覚えておく。俺は直江大和。」
「そうか。少し実力を試させてもらぞ。」
マルギッテはトンファーを取り出す。
「何なら三人でもいいぞ。かかって来い。」
「哀空吏、猛竜!ご期待に添えるぞ。」
『ああ!』
大和はマルギッテに接近し、跳び蹴りを喰らわせようとする。
「甘い!」
マリギッテは右腕で塞ぐ。
「おおお~・・・・りゃあ!」
猛竜が脚払いをしようとするが、マルギッテは身体を右に半回転させながら上に跳び、二人を流す。
「ふっ!」
哀空吏が後ろから弓を二つに分離させ、ヌンチャクのように扱いながら攻撃を繰り出す。
「くっ!」
マルギッテは前に前転し回避する。
「なかなかやるな。今度は本気で来い!私も本気を出す!」
そう言ってマルギッテは眼帯を外す。
『っ!』
三人は感じ取った、彼女が殺る気で来ることを。
「はあ!」
マルギッテは大和に姿勢を低くして接近し右アッパーを繰り出そうとするが、大和は回避のためにバク転を三回行って距離をとると構えなおす。
「うおっ!なんだ!」
「おお新キャラ!誰よ、あれ!?」
ワン子とガクトが四人の戦っている光景を見る。そこへ京とクリスが駆け寄る。
「大変なことになってしまった。」
「でも互角に渡り合ってる。」
「ねえねえクリ。あの人誰?」
「自分の関係者でマルギッテと言う。」
「ほう、マルチーズ!チーズの仲間だっけ?」
「「・・・・・・・・」」
「でも大和結構強いね。」
「しかもマルさんの動きを読んで動いている。」
マリギッテはトンファーを反転させ大和に連続して突くが大和はそれを右手で流す。
「無視すんな!」
猛竜が右手でマルギッテを後ろから殴ろうとするが、それに気づいたマルギッテは反転して左足で猛竜に蹴りを繰り出そうとする。しかし、猛竜はマルギッテの左足を左手で掴むと片手で彼女を持ち上げる。
「なっ!」
「にぃ。おりゃ!」
猛竜は笑みを浮かべるとマルギッテを強引に投げる。
「ぐう・・・・・っ!」
マルギッテは地面に倒れる。
「お前ら!武装して戦うぞ!あの人より弱いとはいえ本気で行くぞ!」
「ああ!」
「その言葉を待っていた。」
大和と猛竜は模造刀を取り出し抜刀し、哀空吏は二つに分かれた弓をドッキングさせて弦を強く張る。
「なかなか見所のある三人だな。」
大和たちとマルギッテが戦おうとしたときであった。
「そこまでだよ、あんたたち。」
島津寮寮母の玲子さんが止める。
「アンタ達、もう夕暮れだよ。」
「あ、すいません。」
三人は武器を納める。
「全く。まあ庭を壊さないように気を配ってくれたのが幸いだね。百代ちゃんだったら所構わず破壊してたろうしね。あんたもだよ。」
玲子はマルギッテに指を指す。
「いきなり攻撃してくるなんてどんな神経してんだい。」
「す、すみません。」
「まあ、今度するならなるべく人気の無い川辺にしてくれよ。」
玲子はそう言うと寮に戻っていった。
ある部屋の一室。マルギッテはカーテンを閉じ、ノートパソコンに映像通信でクリスの父と通信会話していた。
『で?どうだねクリスの様子は。』
「学生生活には問題ないでしょう。」
「そうか。それはよかった。」
「ただひとつ・・・」
『なんだね?』
「クリスお嬢様が恋をしました。」
『・・・・・・なんだと!』
「ですが本人は気付いてないようです。」
『相手は誰だ!』
「直江大和です。」
『あいつか!』
「ご存知ですか?」
『以前、ワタシの所持していた拳銃の弾を抜いた若者の話をしたであろう。』
「はい。」
『それが直江大和だ。正直、私も肝を抜いた。』
「お察しします。私もあいつと戦ってわかりました。彼は底知れぬ何かを兼ね備えています。そして彼自身力の使い道をわかっています。私としては彼もことを良く調べたいと思っています。」
『そうか。ではこうしよう・・・・・』
マルギッテはその提案を聞くと納得し、回線を切った。
「ふう・・・・・」
マルギッテはカーテンを開け、ふと月を見る。
「今日の月は・・・・・・・・大きいな。」
マルギッテはシャワーを浴びようとしたときであった。遠くで人並みに大きな何かが恩でいるのと、それに立ち向かって光の何かを放っているのが見えた。
「なっ・・・・・・・・・・っ!」
マルギッテは眼帯を外し、自分の目に疑いが無いかとその光景を見る。誰がどう戦っているのかはわからない。だが明らかに人間業ではなかった。
「はあ!」
哀空吏は魔導弓から矢を三本同時に放つ。放たれた矢は怪鳥ホラー・カティンの羽を貫く。カティンはビルの屋上に落ちる。
哀空吏は魔導弓を自分の前に出すと、自身を挟むように円を描き、空間を裂く。哀空吏は眼鏡を外し、余所に投げる。描かれた円から天弓騎士・牙射の鎧が召喚される。
牙射はゆっくりと弦を引き、光の矢を放つ。
カティンは奇声を上げながら牙射を睨む。放たれた矢は無数の矢に分裂し、カティンに風穴を開ける。カティンは消滅し、ボディーとなった人間の持っていた蒼い羽だけが残された。
哀空吏は鎧を解くとその羽を手に取り懐に収め、ビルから飛び降り島津寮に戻った。
「・・・・・・・・」
マルギッテはその光景を見て驚かずに入られなかった。
「どうやら・・・・・・この地にはまだ、隠されていることが多そうだな。
マルギッテはそう言ってシャワーを浴びに行った。
翌日、大和は会い空吏が倒した昨日のホラーについて話しているとヨンパチがダッシュでFクラスに入ってきた。
「おい!大変だ!2-Sに新入生が来たぜ!」
「ん!どんな名前の人?」
「マルなんとかって言うドイツの美人さんだ!どーみてもクリスがらみだ!」
三人はその言葉を聞くとズッコケる。
「マルギッテ・エーベルバッハさんが!クリスの過保護に!」
「しかも転入するのかよ!」
「まあ、高校生は年齢関係ないからな。だが軍服で入るのか?」
「ああ、そうだ。」
『マルギッテ・エーベルバッハさん!!』
「名前を覚えていてくれてどうもありがとう。マルギッテで構わない。」
「マルさんだ~♪」
「おはようございます、クリスお嬢様。」
クリスはマルギッテを見て喜んでいる。
「で、どうして川神学園に?」
「直江大和。その問いには答えよう。私はクリスお嬢様のお目付け役として正式に派遣された。わたしの優秀のせいでクラスが違ってしまいましたがまめに見にくるので憶えておきなさい。」
「はい、わかりました。」
「では、よろしくお願いします。」
Sクラスでマルギッテが転入してくることを聞いた冬馬はくすくすと笑っていた。
「あっはっは。タキシードに着物にハ・・・・・の次は軍服ですか。F組みに負けずうちのクラスも濃さが増しましたねぇ。」
「そうですね、若。ていうか今ハゲって言いかけたよね!」
そこへクリスが入ってきて一目散にと馬に目が行った。
「!」
冬馬はぺこりと軽いお辞儀をするとこういった。
「楽しくなりそうです。」