「陽乃には留学して貰います」
その言葉は俺たちの胸に強く突き刺さってきた
これからは、2人で楽しく生活出来ると思っていた。同じ時を共有できると思っていた。
だけれどそんな幻想はたった一言で塵となってしまった
陽乃「ちょっ、ちょっと待ってよ!!なんで急にそれも私に相談もしないで決めるの!」
勿論陽乃さんは否定しようとした…だが
「雪ノ下家の為です。この前に結婚の話…あれを断る事で雪ノ下家は多大の損額を出しています。今現在のみでは、そこまでですが、数年後数十年後のことを考えると この損額は中々に大きいものです」
「それでも、私は貴方の幸せを願いました。だから申し出は断りました。なら、次は貴方が雪ノ下家の為に尽くす番ではないでしょうか?次期当主として、海外で経験を積み、日本へ帰ってくる。」
陽乃「そんな、勝手に…」
「雪ノ下家だけではないのです。貴方には雪ノ下建設の従業員全員分の責任があるのです」
ままのんが言っていることはド正論だった。だから俺は何も口出しする事が出来なかった。理不尽ではない、ただ自分が受け持つ責任をしっかりこなせというものであった
「それに、長期休暇はこちらに帰ってきてもよし、今の時代海外にいても連絡が取れる時代…会えなくなるのは寂しいかもしれませんが、それくらい我慢しなさい。それとあなたの実力なら3年あれば帰って来れるでしょ?」
それはままのんからの挑戦のようにも聞こえた
陽乃さんの火をつけるため、成長させるために
陽乃「…分かった でも2年よ…絶対に2年で帰ってくるわ!」
そう言い陽乃さんは部屋を出ていった
客間に残された俺とままのん
少し気まづいふんいきで、動くことが出来なかった
「八幡さん、ごめんなさいね…私にはこういうやり方しか出来ませんから」
口を1番に開いたのはままのんだった
その表情はどこか柔らかく
いつものあの雰囲気からでは想像しにくい姿であった
八幡「いえ、俺は待っているだけなので」
「案外1番辛いのは、ただ待つことしか出来ない事なんですよ…」
それはよく知っている…役に立つことも出来ずに、ただ事柄がすむまで何もせずに待つのは意外と辛いものだ
以前の結婚の件でそれはよく分かった
「残りの数ヶ月、陽乃と悔いのないように二人の時間を大切に過ごして下さい」
八幡「……はい」
そう返事をし俺は部屋を出ていった
食事中に席を立って部屋を出る行為は
世間一般的に礼儀が悪いと言われるものなのだが、今の俺は陽乃さんと一分一秒長く一緒に過ごしたかった