何かを守るのなら、何かを壊す覚悟をせよ。
大切な何かを救いたいのならば、どれだけ傷付いても足を止めず、それに手を伸ばす事だ。
学園1階・廊下
『支配、最下位がルームを出ました。フィアンセを4階牢屋に収容出来ています。』
『よし…1.2.3階の幹部に通達、罠と武器を駆使して奴を生け捕りにせよ』『はっ!』
「面倒だな…この上まで突っ込むか。
ステータスチェンジ・脚力!」
〔警告、何者かによる妨害〈ジャミング〉を感知。能力使用不可状態です〕
「ちっ!…なんにせよ行くしかねえ!」
『今だ。罠〈トラップ〉発動、最下位を捕らえろ!』
「どけええぇ!!」
まるで暴れ狂う獣のように斬り進むアキラ、一見無敵に見えているが…罠と能力妨害により着々とダメージを追わされていた。
学園2階、3階用階段手前
『支配、1階は壊滅しました。ですが最下位に3割程度の傷は残せたかと』
『ああ、彼らは多いに役立ってくれた。だがお前の能力は他の皆まで巻き込んでしまうとは…贅沢は言わんがもう少し何とか出来ないか?』
『さすがにデメリットは消せませんので…そろそろ最下位が上がって来ますので失礼します』
「(くっそ…まさかトラップとはな、致命傷は避けたが足と左腕を少し削られた…だが行くしかない!)」
『全員陣形を整えろ!罠も展開だ!』
「同じ手に掛かるかよ!」
壁に張り付けられたトラップから来る魔弾を斬り落とすが、どうしても捌ける数には限界がある。
やはり傷をおって階段前に辿り着いた。
『来たか最下位、いや…紅谷アキラと呼ぶべきか』
目の前の眼鏡を掛けた男は、本を読みながら俺を待っていたようだった。
「誰だアンタ、今ちょっと忙しくてな…」
『私はNo.2・アオト。能力阻害を起こしたのはこの私だと言ったらどうする?』
「今すぐ斬る。」
『まあ待て、能力は今解除してやる。支配には内緒だが3階にトラップは掛けていないし誰も配置していない。安心して通れるぞ』
「…何で俺に味方する、アンタに得なんて」
『人間誰でも損得で動く訳では無いのでな。
それに私は読者であり、語り手だ。
私は君…紅谷アキラと言う主人公を応援する読者なのさ。』
「アンタ変わってるな、俺みたいな奴のファンなんて」
『お互い様だよ。…神崎優魔は屋上用階段のすぐ近くの牢屋にいる。早く行くと良い』「……」
『…大切な物は何かを失っても守れ、か。
さて、この先はどんな楽しい展開なんだろうね』
アオトと名乗った男は階段を上がって屋上に向かった。
殺伐とした玉座だけの屋上は、王のみぞ座る事を許される。
学園4階、屋上用階段前
「優魔!どこだ~!」
『!…ここだよアキラ!こっちの牢屋!』
「……ここか!待ってろ優魔、今出してやる。」
鎖と扉を斬り倒し、斬月と秋月を納刀する。
この時に初めて自分が重症な事に気付いた。
そういえば身体が心無しか重いような…
『ちょっと君血だらけじゃないか!今手当てを…』
「俺は大丈夫、優魔こそ…」
『大丈夫なもんか!僕のせいでここまでボロボロになったのに…なんで助けに来たんだよ……うぅ!』
涙をこらえる優魔に、俺はありのまま本心を伝えた。
「確かに人助けなんて、俺がもっとも嫌う事だよ」
『じゃあ尚更…』
「でもさ、好きな奴を助けるのは別に良いんじゃないかってさ。今までここで暮らして来て、ずっと一緒にいて、いつの間にか神崎優魔って人間が好きになっちまったんだよ。だから助けに来たんだ」
『き、君…何言ってるんだよ!///す、好きってそんな///真顔で言われても…』
「俺はまだまだコンビでやって行けると思ったんだがなぁ…」
『違う違う!僕だって前からずっと…いや初めて会った時から好きだったよ!一人称変で根暗で一人な僕と歩き続けてくれたアキラ君を好きになってたよ!!』
不思議だ。
人間を好きになる事なんて無いと考えてた俺が、こんないつ死ぬか解らない状況で告白なんて…まあでも、良いもんだな。
「よし、治療もメンテも終わったし行くか!」
『うん!』
人間とは儚き者、弱き者である。
だが死の淵に立たされた時にこそ、獣としての本性を露にする。
次回、最下位〈紅谷アキラ〉