魔装姫士アマネ   作:James6

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 思ったよりも早く投稿できただろうか。後書きはふざけました。後書きでは、第十三研究室の二人の隠された本性が。


第三話『感謝』

「はぁあ!!」

『■■■ァァァ!?』

 

 

 黒塗りの装甲を手足に纏った少女が装甲のブースターを全開に噴射し、茜射す空で通り抜けざまに鴉の異形(ゴーレム)を斬首する。

 首を失った巨躯の鴉は力を失いながらくるくると墜ち中空で爆発。ネフィシュを広く飛散させて、亡きものとなった。

 

 

『お手柄です、天音さん!』

「⋯⋯」

 

 

 その下手人である篠宮天音は、インカムから聞こえてくる馴れない明るい声を煩わしく思い、そんな風にしか思えない幼稚な己に嫌気が差した。八つ当たり気味にインカムの電源を落とすことで接続を切断する。

 そして、己の愛機である黒く塗ったチャリオッツを操作して桑原重工本社へと帰路についたのであった。

 

 

 ▽

 

 

 桑原重工備え付けのメテルドレス管理ガレージへと帰還した天音を出迎えたのは、瓶底メガネが印象的な西園と、茶髪を後ろで纏めたできる女といった風貌の未子。そして、桑原重工のロゴが入ったぴっしりとした社員服に身を包んだ黒髪の二十歳かそこらの妙齢の女性であった。

 

 

「篠宮天音様! 今回も素晴らしいお働きでございました、ええ、ハイ!」

「⋯⋯ありがとうございます」

「もう、主任⋯⋯もう少しテンション落としてくださいませんか?」

「そうは言われましてもねぇ⋯⋯ワタクシ、こういう類の人間でして。それに、なんだかんだ言ってこの方が落ち着く日がいつかきますよぉ」

「くっ⋯⋯反論出来ない。これで通常語を使われたら気持ち悪い⋯⋯」

 

 

 妙な茶番を始めた二人を尻目に、天音は一言別れを告げるとその横を通って通路の方へと歩き出す。

 その背に待ったを掛ける者がいた。

 

 

「天音さん!」

「⋯⋯何ですか」

「一緒にお夕飯食べましょう! 天音さん、一人暮らしだって聞きました。人と一緒に食べるご飯は美味しいですよ! あ、ご両親と連絡が必要なら」

「遠慮しておきます。おひとりでどうぞ」

 

 

 篠宮天音は、黒髪の女―――彼女(篠宮天音)のオペレーターとして着任した曙橋(あけぼのばし)瑞乃(みずの)が大の苦手であった。

 別に嫌いだとかそういう訳ではなく、単純に煩わしく思ってしまうのだ。天音自身もこれがただのわがままだと分かってはいるが、割り切れるほど彼女は大人じゃなかった。

 そもそもどちらかと言えば彼女自身が静かな方であり、必要以上の関わりを好まないようなタイプ。当たり前のことであるはずのゴーレムの討伐を終わらせたくらいで騒ぎ称え、その上、他人の水嶺までズカズカと入り込んでくる曙橋瑞乃という女は煩わしいのだ。

 これで、クズであったりするなら彼女も清々するのだが、そんなことも無い。

 この曙橋瑞乃という女は、どこまでも少女のことを思っている優しい人間だからこそ、天音は余計に苛立ちを感じているのだろう。己の狭量さ含め。

 

 

「そ、そんなこと言わないで一緒に⋯⋯」

「だから、遠慮しておきます。未子さんや西園主任と食べたらどうですか?」

「それは⋯⋯」

 

 

 段々と剣呑な雰囲気になりつつあるガレージ内。空気に気が付いた整備士や、他の社員の視線が集中する中で、そんな二人の間に割り込む人影があった。

 

 

「こら」

「あうっ⋯⋯赤坂先輩⋯⋯」

「はいはい、二人共。そこまでにして。瑞乃、あんたちょっと執拗いわよ。天音ちゃんも少し突き放しすぎ。この子が悪いけど、もうちょっと⋯⋯ね?」

「⋯⋯はい、分かりました。ごめんなさい、曙橋さん。それでは」

「こ、こちらこそごめんなさい⋯⋯また明日よろしくお願いします⋯⋯」

 

 

 意気消沈した様子の瑞乃の様子を見て、何か締め付けられるような奇妙な感覚を覚えながら、天音はその場を足早に後にした。

 

 

 ▽

 

 

 どうにも家に帰る気分でなかった天音は、太陽も沈み、随分と暗くなった家への道――から大分逸れてはいるが、家へと帰れる道をゆっくりと歩いていた。

 

 

「家族なんて⋯⋯」

 

 

 思い返すのは、先の瑞乃の言葉。

 家族が云々であったり、人と一緒に食べるであったり。思い出すだけで苛立ちが募る。

 

 

 篠宮天音は、天涯孤独(・・・・)である。

 

 

 両親は海外を飛び回るやり手の事業家だった、らしい。天音は、それを祖父伝えに聞いただけだ。彼らは、天音が生まれて間もない頃に原因は不明だが帰らぬ人となった。だから、両親のことはほとんど記憶にない。

 祖母も天音が産まれる前に死んでおり、当時まだ一歳にも満たなかった己を祖父は一人で育ててくれた。それは齢八十にもなる祖父にしてみれば、大変なことであっただろう。天音にとって祖父とは、不器用で厳しい人ではあったが最愛の最後の身内だったのだ。そして、その祖父は憎きゴーレムによって彼女が十四の時に死亡した。

 それから二年間は、魔装姫士になって祖父の仇であるゴーレムを殲滅することを胸に秘めて生きてきた。

 

 

「⋯⋯ッ」

 

 

 自然と握った拳に力が入る。

 その手の話題はタブーなのだ。

 知らないとはいえ彼女(曙橋瑞乃)は、何の遠慮もなくそこに踏み込んでくる。それは、苦手にもなろう。はっきり言って嫌いであった。まだ二週間も経っていないのに、である。

 特に彼女は、天音の姿勢について時々苦言を呈する。それが、天音の意識を増長させた。

 

 

「⋯⋯はぁ」

 

 

 あの初陣から一週間が経った。天音は、一週間のうち土日を含め平日放課後全てに常駐するという熱心さとも狂気とも取れるシフトで、ただひたすらにゴーレムを狩り続けていた。

 それは、あの西園すらも心配する程であった。魔装姫士になって未だ一週間と少しの内に、彼女は平均的な魔装姫士の月間ゴーレム討伐数を上回る活躍をしていた。

 はっきり言って異常だ。だから、西園としてもそれで壊れられたら堪らないのだろう。天音はそう思うことにした。単純な心配なんてしなさそうな人である。

 

 

「だけど、私は止まらないよ」

 

 

 そう。身体が壊れた程度では止まれない。

 それくらいに、彼女のゴーレム殲滅への妄執は強かった。

 魔装姫士の主だった仕事は、もちろんゴーレムの討伐である。だが、言ってしまえば人の為に貢献することこそがその本懐だ。それは、ゴーレムを討伐することによって結果的に人々を助けることになる、ということも含めて。小隕石群の激突などによって起こる災害救助であったり、テロリストから民間人を守ることであったり、魔装姫士が人々を守護し貢献することは多々ある。元来はゴーレムの討伐こそが魔装姫士の運命であったが、近年では魔装姫士の役目はそうした人助けに代わりつつあった。

 世間的には、ゴーレムを倒せば良いというわけではないのだ。ゴーレムを倒すことで、人々を護る。それこそが、魔装姫士の存在意義になりつつあった。

 

 だとしても、篠宮天音は人々の守護を二の次に考えてしまうくらいにはゴーレムが憎かった。人々を護るのは、彼らが死ぬのを見ていられないだけで自らの義務ではない。そんな考えすらあった。それを間違いだとは、思えなかった。だから、曙橋瑞乃による彼女の姿勢への指摘は自分達エクィテスに対するものしては見当違いだとすら思っている。

 

 

「⋯⋯⋯⋯はぁ」

「そんなため息なんて吐かれて、どうかなさったんですか?」

「!?」

 

 

 唐突にかけられた声に天音は驚き振り返る。

 そこに居たのは、目元を黒髪で隠した少女。年の頃は天音よりも一つ二つ年上であろうか。別段、根暗とかそういう類の印象は無かった。後は、見慣れない白い杖のような棒を手にしていることは少しばかり気になったが、一見して身体が不自由そうには見えなかった。

 学生服であるところを見るに学生であろう。というより、そんなに前髪が長いのにどうして見えてるのだろうか、といった疑問を覚えた。

 

 

「どうもしてない」

「本当ですか? 何か、思い悩んでいるようでしたけど⋯⋯」

「関係無いでしょ。じゃあね」

 

 

 この少女も瑞乃と同じ手合いか。 直感的に悟った天音は、面倒臭さを覚えてその場を離れようとする。寄り道をしようと考えたのが失敗だったか。

 少女は、天音の前に回り込んで彼女の行く手を塞いだ。

 

 

「問題無くないですよ。見ず知らずとはいえ、目の前で誰かが困っていたら助けてあげたくなる、そういうものです」

「⋯⋯何それ」

「だから、ほら。何か力になれるかもしれませんし、お話だけでも」

 

 

 話さなければ梃子でも付き纏ってくるだろう。それはそれで面倒臭い。力になれることなんて何ひとつ無いのだと、目の前の少女にわからせた方が早いだろう。天音はさっさと判断すると仕方なさげに溜息を吐いて、街灯に照らされたベンチの方へと向かった。少女も、ほっとしたような顔を見せて、天音の後を追いかけた。

 

 

 ▽

 

 

 そうして、どうせこの少女も自分の意見を否定するのだろう、人命を優先しろとご高説でも垂れるのだろうと考えながらの天音の身の上話は、思わぬ展開に合っていた。

 

 

「ゴーレム討伐は、とても素晴らしいことだと思います」

「何で?」

「確かに人助けというのも大切なことです。でも、私も、ゴーレムは憎いですから。天音さんの意見にも頷けるところは多分に」

「⋯⋯ふーん」

 

 

 まさか同意されるとは思わなかった。

 天音は、生まれつき人の機敏に敏いところがあった。そして、目の前で何処とも知れぬ場所を向いて話す少女は、自分とは違う類だと信じて疑わなかった。

 それが、同意されるわけもないと諦めていた己の意見が、誰かに認められるとは思いもしなかった。

 

 

「ふーんって⋯⋯まあ、確かに見捨てられるほど人の命は軽くは無いですよ? だけど、ゴーレムを討伐することによって巡り巡って人の命は救われるのですから、別に良いではありませんか。勿論、目の前でそんな憂き目に合う人々が居れば率先して助けますが」

「⋯⋯それは、まあ、私だって⋯⋯」

「なら、悩む必要は無いのではありませんか?」

 

 

 少女の言葉は、やけに心に通った。

 少なくとも、今まで賛同を得られたのが魔装姫士としての教官だけであったが為に、こうした同年代の少女からの同意というのはそれだけで浮き足立つものがあった。

 すると、件の少女が徐に立ち上がって、街灯に照らされる歩道を数歩歩いて立ち止まる。

 

 

「私、目が見えないんです」

「⋯⋯え⋯⋯?」

「今、そんな風には見えないって、思ったでしょう? でも、さっきから目を開けてません」

 

 

 少女は天音の方に振り返ると、勢いで前髪が履けたことで顕になった己の瞑った目を指差して口を開く。

 

 

「私も、ゴーレムを殲滅したい⋯⋯そういうことです」

「⋯⋯あっそ。⋯⋯憎いなら、アイツら皆殺しにしないとね」

「ふふ⋯⋯そうですね。確かに、そういうことです」

 

 

 天音にとっては、『ゴーレムが憎い』というただこの一言だけで十分理解に事足りた。皆まで言われなくとも、どういう事なのか分からないほど、天音は疎くないつもりであった。

 言わば、この少女もゴーレムに大切なものを奪われた被害者にして、復讐者なのだろう。そんな同族意識すら芽生えた。

 

 

「それでは、私はこれで」

「うん。じゃあね」

「⋯⋯それと」

 

 

 立ち上がり、天音の方を向いて立つ少女の横を通り過ぎた時、彼女は何事かを言伝た。

 

 

「人として、大切なことだけは量り違えないように⋯⋯」

「⋯⋯?」

 

 

 その言葉の意味は、天音には分からなかった。

 いつか分かるか、天音はそう考えて思考の隅に置く。そうして、月明かりすら暗くなってしまった夜道を、肌寒い春の風に吹かれながら、帰路に着くのであった。

 

 

 ▽

 

 

 その翌日、もはや当たり前となりつつあった放課後の出勤。

 いつも通りに、ゴーレムを討伐した直後のその帰り。昨日の少女の言葉について考えている時に、それは起こった。

 

 

『天音さん! 緊急事態です!』

「⋯⋯何?」

 

 

 やけに焦った調子の瑞乃の声に弾かれるようにして、天音は思考を引き上げる。いつも慌ててたりと大袈裟な彼女だが、少しばかり毛色が違った。

 

 

『救援要請です! 天音さんの場所から数キロ圏内で、宙間シャトルがゴーレムの攻撃にあっています!』

「⋯⋯ッ」

『最速で駆けつけられるのが、天音さんしか居ないんです! 残弾も大丈夫ですし、ネフィシュ残量も』

「分かってる、助けに行くよ」

『へ?』

 

 

 あれこれと理由を挙げ始めた瑞乃を無視して了承の意を示す。

 まるで自分が非人間であるかのような反応に、天音は苛立ち混じりに応えた。

 まさか二つ返事で救助に駆け付けてくれるとは思ってもみなかったらしい瑞乃は、しばらくの間思考を停止し、そして気を取り直す。

 

 

『オペレート、開始します!』

「⋯⋯」

 

 

 多分、昨日の少女が言っていたのはこういうことなのかもしれない。だとすれば、あの少女も、やはりお人好しの部類なのだろう。

 しかし、そんなお人好しの助言に素直に従ったなんて思いたくもない。そう思ってしまえば、何かが微妙におかしくなりそうで。

 あくまで、ゴーレムが現れたからさっさと殲滅する、その序でだ。別に見ず知らずの人命救助こそ本懐だと考えたわけじゃない。そう、序でなのだと言い聞かせて、天音はブースターを吹かした。

 

 

『天音さん⋯⋯』

「何?」

『ありがとうございます』

「⋯⋯何が?」

 

 

 なんで礼を述べられたのか全く持って理解ができない。そんな様子の天音に、インカムの向こうの瑞乃は苦笑を零しながら、なんでもです、と誤魔化した。

 

 

『接敵までもうすぐです! 天音さん、戦闘準備を!』

「了解」

 

 

 目の前には、もう既にナニカから逃げ惑うシャトルの姿が捉えられていた。

 そのナニカは、まるで岩石に細長い人の手足が生えたかのような歪な見た目をしている。ファンタジー小説なんかで度々登場するゴーレムもこんな感じの岩の巨人だろうな、などと考えながら、天音は思考を切り替えた。

 まだ、致命的な損傷を負っているわけではないが、早急に倒さねばシャトルも持たないだろう。それは火を見るより明らかであった。

 

 

『■■■■ッ!』

『物質変異タイプですね。中型で良かったです。天音さん、こういう時は』

「削り取るッ!!」

 

 

 直後、チャリオッツの正式武装であるアサルトライフルから、ズガガガッという心地好い音を立てて弾丸が吐き出される。

 それは、ゴーレムの岩のような体表を抉るようにして直撃する。そして、その下から虹色に輝く胎児(・・)が露出した。それは、まるで心臓のような、そんな印象を抱かせた。

 

 

『天音さん、今です!』

「分かってる⋯⋯よッ!!」

『■■■■ッ!!』

 

 

 トドメを刺さんと引き金を引けば、アサルトライフルは弾ではなく空振りの音だけを吐き出す。

 仕方無しに投擲されたチャリオッツの剣は、ゴーレムの本体(胎児)目掛けて真っ直ぐに突き進んだ。

 しかし、ゴーレムとてただでやられる程には弱くなかった。

 

 

「ッ、この程度じゃ防がれるか」

『■■ッ』

 

 

 金属音を立てて剣は弾かれる。見れば、ゴーレムに空いた穴は既に無く、露出した胎児の光も欠片も見えなかった。

 

 

「⋯⋯強い」

『修復が早いですね⋯⋯厄介な』

「シャトルは?」

『もう暫くで戦域を離脱します』

 

 

 横目でシャトルの方を見れば、全速力で宙域を離脱しようとしているのが見える。しかし、宇宙でゴーレムが叩き出す速度に比べれば、その進行速度は微々たるもの。

 

 

「さっさとしてよ⋯⋯ッ」

『■■■■ッ!!』

 

 

 天音の視線を追ったらしいゴーレムは、本来の標的が後ろ背を向けて逃げ出したことに気が付く。天音の方へと突進すると、逸れた彼女を無視してシャトルを追いかける。

 

 

「くっそ⋯⋯!」

『■■■ッ!』

 

 

 急いでマガジンを装填するが間に合いそうにはない。

 これでは、シャトルはゴーレムの突進を後ろから受けて大破するだろう。それは、非人間ではないと自負する彼女としては許容出来なかった。というよりも、後味が悪いことを許容出来るほど大人ではなかった。

 天音は、盾を構えるとブースターを全開にしてゴーレムの後を突撃する。

 そのまま突撃しては、硬い体表に衝突するだけでともすれば自殺行為だ。だが、この姫士甲冑の()は違う。

 

 

『天音さん!?』

 

 

「───間に合えぇぇぇぇえ!!」

 

 

『■■■■ッ!?』

 

 

 思わぬ後ろからの痛撃に、ゴーレムは驚き振り返る。全速力の盾による突撃で岩の塊に近い構成の身体は崩れ、再三、ゴーレムは虹の本体をさらけ出した。

 今度こそ、それを逃す少女ではない。

 

 

「これで、終わりだぁ!!」

『■■ッ!?』

 

 

 銃口を突きつけられた本体と目が合う。己に向けられるその黒々とした眼(・・・・・・)に、その生き物のような仕草に、一瞬だけ戸惑いを見せる。

 だが、天音は目を瞑り無心に引き金を引いた。それが正しいのだと、無意識に言い聞かせて。

 

 

 ▽

 

 

「ありがとう、お姉ちゃんっ!」

「昨日は、本当にありがとうございました」

「⋯⋯へ?」

 

 

 翌日の土曜日。昼間から出社した彼女を待っていたのは、小学生にも満たないであろう少女と、その母親らしき女性。

 正直言って、天音は自体が飲み込めていなかった。

 己は、借りたマンションよりも居る時間が長いであろう第十三研究室に出勤しただけである。それがどうして、このような感謝の言葉を述べられているのか。全く持って分からなかった。

 見兼ねた西園が、いつも通りの調子で状況を説明し始める。

 

 

「篠宮天音様、この人達、昨日のシャトルの乗客だったらしくてですねぇ? 一時間前くらいから、こちらで貴女のことを待っていたのですよぉ」

「⋯⋯はぁ⋯⋯」

「まあ、貴女の功績ですから。素直に受け取っておくことをオススメ致しますよぉ?」

「⋯⋯まぁ」

「ねね、お姉ちゃん、かっこよかったぁ!」

 

 

 少女が天音に抱き着く。母親がそれを諫めようとするが、天音はそれを視線で制して少女の頭を撫でた。

 これ()を、助けることが出来た。まあ、成り行きではあったが、自分の力で助けられたことであるのだ。多少は、良い行い、というやつだったのかもしれない。

 そんなことを考えながら、天音は微笑んだ。

 

 

「⋯⋯まあ、助けられたんだし⋯⋯良いかな」

「? どーしたの、お姉ちゃん?」

「⋯⋯ううん、なんでもない。なんでもないよ」

 

 

 西園は、少女が初めて笑みを見せた瞬間を、いつも通りの顔で眺めるのであった。




 天音帰宅後の第十三研究室。

 瓶底「ふふふ、妄想が爆発しますよぉ⋯⋯!」
 助手「今度は何のフィギュアですか⋯⋯って、それは!?」
 瓶底「くくく、赤坂くん! 見ると良いですよぉ。私は、ついに形にしたのです!」
 助手「1/10天音ちゃんプラモデル!? なんて業の深いものを!?」
 瓶底「それだけではないですよぉ。私の多機能瓶底メガネが激写した篠宮天音様の笑顔も表情パーツで完全再現ッ!!」
 助手「なん⋯⋯ですって⋯⋯!?」
 オペ「何やってるんですか、二人とも⋯⋯」
 瓶底「次はチャリオッツ装着時も作りましょうねぇ。くふふ、メカ少女とは、滾るッ!」
 助手「付いていきます、主任ッ!」
 オペ「⋯⋯!」

 こんな感じです。このノリでやると、次回を書くのが辛い。
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