「それでは、今回の順位の方を発表させて頂きます」
結局、全勝で俺とシャウが優勝した。対戦と、大会優勝でもらった神姫ポイントは、普段のゲームセンターでプレイするバトルロンドに比べると、かなりの量だった。参加するだけでも一定量のポイントは付与されるそうで、これを一年も真面目に続ければセカンドリーグの参加資格には届くのだろう。
「これでセカンドに出れるようになるのか?」
「一応、センターで登録したら、な。どうせすぐセカンドに上がるんだろ? だったら、今一緒に手続きしてやろうか」
「ああ、それじゃお願いしようかな。いいだろ、シャウ?」
「そうですね、お願い出来ますか」
受け取ったばかりのプレイヤーカードを、花道に渡す。それを持って受付カウンターの中に入り、コンソールで操作をしている。
「あと、公式大会での優勝ってことになるから、今期の上位大会への出場も出来るようになったね。まあ、そんな暇があればだけど」
「何の嫌味だよ、日野……」
上位大会というのは、公式で行われている大会の一種で、出場に資格や条件のいるものを総称して言う。単に出場機種や装備を限定したものや、公式大会の優勝経験などの実績が必要なものなど、条件は様々だ。その中でも実績を必要とする上位大会は種類も資格も複雑だ。確か、ファーストリーグに参加するためには神姫ポイントの規定を満たすだけでなく、そういう実績面でも資格が必要だったはずで、プロの神姫プレイヤーを目指すためにはそういうことを把握しておくのも必要だと聞いたことがある。何でもトッププレイヤーを目指すのは大変なのだ、と思ったものだ。
「ほらよ、登録、終わったぜ。これでセカンドリーグの試合にも出られるようになってる。手続き的には普通にやれば出来ると思うけど、まあ、分かんなくなったらここで参加すりゃあその辺はやってやるよ」
「おう、ありがとう」
「それでよ、これで三人ともセカンドの試合に出られるようになったろ。卒業するまでに、三人でおんなじ大会に出られるんだよな」
「なんだよ、急に」
俺は受け取ったプレイヤーカードをしまいながら答える。
「ああ、それは俺も思った」
「だろ? どっかで日程合わせてよ、一緒に出てみねーか? 例えば、来年の鳳凰杯の春の陣なんかだと、ちょうど三月で試験やなんかも終わってるだろ?」
鳳凰杯というのは、四年ぐらい前から始まった、鳳条院グループが主催する大会で、毎年春と秋に大々的に行われている。神姫関連企業の出展ブースなどもあり、TV中継も入る、かなり大 掛かりなイベントだ。そういえば高校に入った年の秋にも、この二人に連れられて見に行ったことがあったっけ。確か二人は、鳳凰杯を見に行って本格的に神姫の道にのめり込み始め、バイト代をはたいて当時最新型だったアーク型とイーダ型を買ったんだった。
「懐かしいな、お前達と鳳凰杯を見に行ったのも、もう二年も前か……」
「去年の春には、俺と花道は参加したんだよ。どっちも本戦までは残ったんだけど、一回戦で負けちゃったんだよね」
「鳳凰杯はファーストリーガーまで無制限で参加出来るからなー。秋は高校全国大会の準備で、日程的に参加出来なかったしよ」
「……そんなこともあったのか」
日野と花道は高校全国大会にも参加するレベルだ。それに対しても、競技人口百万人と言われる武装神姫競技の中でも数百人しかいないと言われているファーストリーガーはやはり強いらしい。
「確かに、俺も参加したいな。リベンジってわけじゃないけど、今の俺があの舞台で、ファーストリーガーと当たったら、どこまで通じるのか。それは試したい気がする」
「だろ? 記念ってわけじゃねーけど、そういうの、一回くれーあってもいいと思わねーか? どうよ」
「そうだね、それに確か、鳳凰杯は全試合バーチャルだったはずだ。それだったら気兼ねなく参加出来るんじゃない?」
日野は花道の提案に乗り気のようだ。二人は揃って俺の顔を見る。
「シャウ。シャウはどうしたい?」
「えっ、私ですか?」
突然話を振られたシャウが、驚いたような顔を向ける。
「うん。実際に戦うのはシャウだし、ファーストリーガーってのは、今聞いた限りでも大分強そうだ。それでも、やってみたい?」
「はい、もし機会を頂けるのなら、今の自分がどれほどの場所にいるのか、確かめたく思います」
シャウも強い相手との戦う機会を求めている。なんともまあ、勤勉なことだ。こういうところは我が神姫ながら、まったく感心してしまう。
「んじゃー決まりだ。申し込みが始まったら、三人分手続きしちまって構わねーよな」
「悪いね、よろしく頼むよ。それじゃあ俺も、それに向けてリハビリくらいはしておかないとね」
「それなら目の前にちょうどいい相手がいるじゃねーか」
「俺か?」
「そうだね。俺はエスパディアと当たったことがないから、どんな程度のものか、楽しみだ」
「……しばらく神姫から離れてたのに、勝てる気でいるのか、日野?」
「あら、聞き捨てなりませんわね。私が起動して一年程度の神姫に負けるとでも仰りたいのですか?」
「それはこちらも聞き流せませんよ、リリィ。やってみなければ分からないではないですか」
花道の提案は、ついには互いの神姫まで巻き込んで、やる気に火をつけたようだ。リリィとシャウも、静かな火花を散らしている。
「ほれほれ、もうちょいしたら俺も上がりだからよー、それまでに決着つけといてくれよな。俺も混ざりてーからよ」
「セカンドリーグがどれほどのものか、見せてやるよ、新米」
「面白い、ブランク明けでどこまで動けるのか、見せてもらおうか」
そう言うと、互いに筐体に向かった。後ろでは花道が笑顔を送っている。