黄金色に輝いていたWの体が、急激にその光を失う。それと共に、姿も元のWのものに戻っていた。
勝った。その瞬間、確信した。
通常のWの攻撃では、このザンダクロスの装甲は傷付けられない。それは散々証明してきたことだ。そうであれば、負ける道理などどこにもない。
「凌ぎ切ったぞ……! 最後の攻撃とやらを!」
「ああ……、そうだな……」
相手の声は諦めたような響きを含んでいる。観念したか。
背面のブースターを使って、崩れた姿勢を立て直す。そして、大きく拳を振りかぶる。
「これで、終わりだ!」
「ああ……お前がな!」
『ルナ!』
『ジョーカー!』
メモリを挿し替えたのか。半身が黄金色、半身が黒の姿に変わる。まだ何か企んでいるのか。無駄なことを。しかし、次の瞬間、Wの腕が、脚が、まるで大蛇のように体に絡みついてくる。なんだ、これは!
「確かに堅い装甲だったよ。だが、これだけ集中して攻撃すれば、歪むくらいはしてくれたみたいだな」
なんだと……! 言われて、改めて気づく。胸の装甲が歪んでいる!
「構造的に、ここが心臓部だ。だが、どうやってもこいつが邪魔だった。そいつが、どうしても壊せない。なら、どうするか……邪魔者が壊せないなら、剥ぎ取ってやればいい!」
左の手が、歪んだ装甲の隙間に刺し込まれる。ベキベキという破壊音と共に、胸の装甲板が剥ぎ取られる。
「だからといって、何だと言うのだ!」
力づくで、絡みついたWを引き剥がす。そうだ。装甲板が一枚むしられたから何だと言うのだ。第一、こいつにはもう攻撃するほどの力も残されていないではないか。掴んだWの体を、思い切り地面に叩きつける。どうだ、もう碌々動けないではないか。
「無駄な抵抗をしくさって……手間ばかりかけさせてくれるなよ」
「無駄でもないさ……いいぞ、アル」
そう呟いた刹那、銃声が一発響いた。
俺の言葉を合図に、アルのライフルが装甲を剥がされた、無防備な胸に撃ち込まれる。
強化セラミック製の複合装甲……あの装甲を抜くのは、神姫の手持ち武器ではどうにもならなかっただろう。だが、その邪魔な装甲がなかったら? アルの手持ち火器でも、内部の機器には通じる可能性が高い。ならば、俺の役目は、その道を開くことだ。そして思った通り、アルは俺の意図を汲んでくれた。
「貴様、最後の攻撃だなんて……!」
「あれ、釣られちゃった? 駄目だよ、敵の言葉なんて素直に信じたら」
「くそっ、この餓鬼!」
ようやく着地したザンダクロスが、未だ立ち上がれない俺の腹を蹴りつける。胃の中がひっくり返るような衝撃が襲ってくる。
ザンダクロスの動きに、乱れはない。しかし、胴体には心臓部が格納されているはずだ。それが、動きにおかしなところが見られないのならば、その心臓部は、動力系ではない。つまり……。
「お前さ……もうゲームマスターに干渉出来ないだろう……?」
「……なんだと?」
動力系以外で、守らなければならない、心臓部。システムを妨害しつつ、単騎で暴れ回るコンセプトのザンダクロス。その、肝となる部分。それは、ゲームマスターへの干渉を可能とするシステムだ。どういう理屈なのかは分からないが、ザンダクロスが停止すればゲームマスターも復旧する、と奴は言っていた。ならば、そのシステムを物理破壊してしまっても、結果は同じだろう?
「この餓鬼……! やってくれたな……!」
「これで、後は真正面から戦うしかないぜ……?」
「もう碌に動けもしない癖に、気取るんじゃあない!」
目の前で、大きく拳を振りかぶるザンダクロス。もうそれを避けることも、受けることも出来なさそうだ。だが、次の瞬間、俺の視界には青い機影が横切った。その影は鋭い一撃で、ザンダクロスを吹き飛ばす。
「よお、どうだい、目覚めの気分は」
「最悪ですね。これ以上悪い目覚めなんて、ちょっとないと思いますよ」
「それはよかった。それじゃあ、俺は少し眠るぜ……」
「ええ、お休みなさい。次に目を覚ます時には、すべて終わっていますから、ご安心ください」
そう言うと、頼もしい俺の相棒は、背を向けた。
「よくも主をここまで痛めつけてくれましたね……許しません!」
「それは、ボクも同感だね」
もう一人の相棒も到着だ。これなら安心出来る。
「シャウラ、こういうときはなんて言うか、知ってるだろう?」
「ええ、こういうときは、こう言うんでしたよね、アルキオネ」
二人が、ザンダクロスの方に向き直る。
「「さあ、お前の罪を……数えろ!」」