爆発が収まった。咄嗟に横にいたネイキッドを引っ掴み、盾にしたので直撃は免れたが……。
「これを連続してやられると、大分しんどいッスな……」
そうぼやきながらも、近くに寄ってくる敵から順に処理し続けている。だが、飛び道具、それも高威力武器を抱えてくる相手に関しては、正直お手上げだ。
それでも自分はまだましな方だろう。自分より防御性能の劣るアルキオネさんは、もっと厳しいはずだ。と、背中越しにばきん、と硬質なものの折れる音が聞こえる。視線を投げると、アルキオネさんの銃剣が、折れていた。先端を欠いた剣で必死に応戦しているが、もはや時間の問題だった。
「アルキオネさん! 今、行くッス!」
両手に一体ずつ抱えたネイキッドを放り投げ、少しでも道を作る。だが、そんなか細い道は殺到する群れの前では何の意味も持たない。視界は文字通り、ネイキッドに埋め尽くされている。その海に、アルキオネさんが呑まれる。
「くっそ! どくッス! 邪魔すんじゃねッスよ! アルキオネさん!」
返事はこない。それどころか、亡者のように寄ってくるネイキッドの海に、自分も引きずり込まれそうになっている。
「アルキオネさん!」
もう、声が届いているかも分からない。感情のないネイキッドの顔が、無数に寄ってくる。
「うわああぁぁッ!」
叫んだ。それは、恐怖だっただろうか。その声は誰の耳にも届いていないようにさえ感じられた。
『おおおおおおあああああぁ!!』
再度、スターバスターが放たれる。その余波だけでも、今の私が受けるのは相当負担がかかる。
「どうするつもりだ嬢ちゃん、策があると言ったな。どうやってあの装甲を抜くつもりでぇ?」
「装甲の薄い眼窩に、GNソードが突き立っています。あれを、もう一段深く突き刺す。ジュダイクスを鎚にして、叩き込みます」
「成程、完璧な作戦だな。相手の対空砲火が完璧だってことに目をつぶればよ」
周囲に隠されていた対空砲は、まるでハリネズミのようだった。一基一基の攻撃力はさほどでもないようだが、それでも無数とも思えるほどの火線が私の行こうとしている道をふさいでいる。
「それでも、行くしかありません。シロ、シールドはどれくらい保ちますか?」
「いいとこ二秒か三秒か……期待する方がどうかじてるぜ。裸で突っ込むのと変わりねえ」
「後は、物理装甲でどうにかするしかない、ということですね……」
あまりもたもたしてはいられない。既に、砲口部分には次のスターバスターのチャージが始まっている。
「主、今、参ります……!」
足場を蹴る。無数の弾幕の中に頭から突っ込む格好だ。張られたシールドは途切れ途切れで、いかにも頼りない。それでも、左肩の物理シールドを重ねて、何とか誤魔化そうとする。バチバチと、シールドを引き裂き、その下の装甲にまで攻撃が通ってくる。後三〇〇。それだけのわずかな距離が、これまで感じたことがないくらいに遠い。
「シールド、ロスト! 限界だ、嬢ちゃん!」
「だからと言って、引けません! 突っ切ります!」
嵐の中に、小舟で向かうような心地だ。無数の弾が、私の体を叩く。それでも、前に進まなければ。残っていたアイシールドの半分も、砕ける。
主、今、参ります――。
「さあ……そろそろ終わりかな、ツクヤ?」
シャドームーンの左手から放たれていた、雷光が収まる。支えを失ったが、俺の体は重力に逆らってその場にあった。俺の体は、柱の中ほどに半分ほど埋め込まれてしまっていた。
「なんだ、返事をする元気もなくなったのかい? しっかりしてくれよ、ツクヤ。まだショータイムはこれからなんだぜ?」
ロストマンの軽い口調が、耳に障る。だが、腹立たしいほど、体が動かない。
「ふむ、そうだな。あんまりお楽しみを先送りにするのも悪いし、一部先行公開といこうか。ツクヤ、顔を上げてごらん」
俺は、何とか顔を持ち上げる。視線の先に映し出されていたのは、ミーシャとアルだ。周りには無数のネイキッドが、獲物にたかるカラスのように群がっている。
「こいつら、どこにいると思う? このバーチャルフィールドに向かって回線をこじ開けようとしているんだ。君を助けるつもりなのかな? たったこればかりの数で、ご苦労なことだよ。もっとも、ここに繋いでくれれば、サーバーごとデータを消してしまうのも簡単だ」
「なんだと……ロストマン!」
「ああ、大丈夫、心配するな。順番としては君の方が後だ。君にはそこで、彼女達が壊れていく様を楽しんでもらわなけりゃならんからな。」
「やめろよ……やめろよ!」
俺の声に、シャドームーンは満足げにうなずく。だが。
「それが通ると、思うのかよ、ツクヤ?」
ロストマンは、半ば笑いながらそう言った。その声は、どこまでも無慈悲だった。