ダメだ。目を、開けなきゃ……
「……」
どれだけ時間が
どうしてこんな所にいるのかもわからない。
けれど多分…、なんとなく、
味方もいなければ敵もいない。彼は、一人ぼっちで
「ウッ……」
他人の色を
それとも、
施設の
「…痛い。」
頭はフラフラするし、手足を動かすと…。ううん、息をするだけで全身が痛い。
こんな
一つは、あの恐いおばあさんと戦ったのが夢じゃないってこと。
もう一つは、僕の
雪山に長く
痛くて寒くて熱くて
自分の体なのにどれが本当の感覚なのか分からない。
僕の怪我がどれくらいひどいのかもよく分からない。
…でも多分、このままお医者さんに
だけど僕の足じゃあもう、一人で山を下りることもできない。
「……」
もはや口を動かすことも
動かす足はぎこちなく、見える世界も夢か。はたまた現実か。
少なくともこれが、少年を
そこに
夢見心地のお
「……」
少年は広く
「……」
初めて目にする、どこか子どもたちを
そして、確信した。
……ここにお姉ちゃんがいる。
しばらく歩くと、少年は
「…あれ?……痛く、ない?」
「え…、なんで?」
誰にも
それなのに、傷は
しかし、少年の感覚はこの短い間に
手当てはあくまで
まだ、肉と肉の間に刃物が
そう思えるほど、痛みに
しかし、そのお陰で今は怪我に気を取られずに動き回ることができた。
「……」
いつ誰に何をされたか分からない。
だけど彼にはその
無視して進むにしても
なぜなら今の彼は、身の振り方一つでいつ死んでもおかしくない状況にいるのだから。
彼はそれをハッキリとは
けれども無意識に、彼は前に進み続けた。本来の目的の
それにしても、
「……」
施設内は
相変わらず気配は感じられない。
けれども
なのに不思議と「敵」と出くわさない。
彼が気付いていないだけなのかもしれない。
いよいよという
「……」
「……」
進行方向に、いかにも
レバーに
恐る恐る近付き、赤に点灯するレバーを動かしてみる。
あまり手入れされていないのか。思ったよりもレバーの
ようやくの思いでレバーは動き、赤のランプが緑に変わる。
すると―――、
ズズズッ
「……」
通ってきた方から、
「……」
何かが
「…え?」
音の正体を確かめに引き返してみると、「鉄の道」の一部が変形していた。
「もしかして…」
彼は考えた。そしてそれは正しかった。
どういう仕組みなのかは分からない。
しかし、レバーには特定の組み合わせがあり、組み合わせに
多少時間は掛かったものの、
「……」
そうしてできた新しい道の先に、嫌な空気は感じられない。
けれど、そこに自分のすべきことが待っている。そんな予感がした。
「……」
初めて覚える確信的な第六感が、彼に決意を取り戻す切っ掛けを
「……」
道は研究室の
そこに
ギョロギョロと、魚のように
未完成の悪魔たちの視線は、
「……」
たかだか10年生きたかどうかという
それだけでも十分過ぎる勇気を
そこから逃げることを誰も
……いいや、
むしろ、そうすべきなのだ。
彼の想い人らはただの子どもじゃない。ただの人間でもない。
渡り鳥でもない町の小鳥が、はたして海を
今、彼がしていることはそういうことだった。
海を渡ってしまった小鳥はもう引き返せない。二度と、「町の小鳥」には戻れない。
それを知ってか知らずか。
たとえ一歩一歩に一分、二分掛けようと、彼は足を止めなかった。
彼の目はただ、
そして、
「……」
「……」
なぜか分からない。それでも彼はそこにいる隠れた敵を見抜くことができた。
ハッキリと見えている訳ではないけれど、それは狼でも魔女の
でも、目を
それはカメレオンのように壁に
「……」
別の道を選んだって、
……ここで引き返したって何も変わらないんだ。
だったら、進まなきゃ。
僕は自分の「弱さ」を知らなきゃいけない。
どんなに心の底から「あの人」を護りたいって思っていたって、体の強さは
僕の
僕はただ、意地っ張りで
雪山で出会った狼と魔女の紛い物が彼を変えてしまった。
そこに少年らしい「後先考えない
「
あそこからなら…、
見上げると一つ、
子どもの体重を
それだけのお
「……」
ダクトは子ども一人がようやく入れるサイズ。
その上、施設内を
呻き声は
ともすれば、それらの「呻き声」を
「……」
うっかり「薄闇」に
けれども、
「……」
彼はソレから目を
「……」
そんな彼の
「……?」
そうしていくつかの部屋を通過すると、不意に「呻り声」に
…間違いない。
「人の話し声」だ。
「……」
だけど、それが本当に「人間」だったとしても、この施設にいる以上、簡単に気を許してはいけないことを彼は
なぜなら、彼がリーザという『魔女』に助けを求めたそもそもの理由が、教会の人間と悪魔が手引きしている現場を目撃してしまったから。
日曜日が
出来が良いとは言えない彼の兄も、教会の教えにだけは
教えの
それに、悪魔との
「もう、誰を信用していいのかわからない」
そんな思いを抱きながら、ここ数日で初めて彼の中に生まれた感情に―――悪魔に
彼は今、教皇の語る「人間の敵」に心を
命の恩人だから?
敵を
町の人々に
…彼女が、
……
化け物を従え
それが
彼はその
彼女の、
「……」
もしも、この先にいるのが彼女の仲間だったら……。
彼女は彼らを助けるためにこの地獄のような巣穴に乗り込んでいる。
だったら…、
でも…、
どうやってそれを確かめればいいの?
先にお姉ちゃんを探した方がいいのかな?
…どうして?
今しかチャンスはないかもしれないのに?
今、まさに助けを求めているのかもしれないのに?
あの時の、町でお姉ちゃんが
だったら…、
「……」
彼は声のする方へ進んだ。
敵味方を
ただただ、「生きることを
「……誰?そこに誰かいるの?」
「なんだ、どうかしたのか?」
女の様子に気付いた男たちもざわめき始める。
「…おばさんたちは、ホルンの人たちなの?」
男の声に
聞えてきたのは
その声色から
「そうだけど、アナタは?町の子なの?」
「…うん。」
「どうしてこんな所に?」
その問いに、声は
「お姉ちゃんを助け…、力になりたいんだ。」
女たちは少年を
「ここには人間用の
女たちは優しく嘘を
…誰かと同じようなことを言っている。
少年は彼女たちの声を聞いて、それだけで十分な「理由」になった気がした。
「帰らないよ。だって、お姉ちゃんは闘ってるんだもん。」
言葉にすると、彼を追い返そうとした彼女の姿が頭に
声色は大人びた低い調子になり、少し
「戦ってる?悪魔たちと?なんてバカな
「お姉ちゃんは負けないよ。お姉ちゃんは良い
その「人種」の名が部屋に響くと、格子の中の人々は
「そんな、まさか…」
「誰なの?」
「だったら坊やは…、何のためにここまで来たんだい?」
「そんな、ありえない。」
人々は口々に今までの「現実」を思い返した。
そして、
「……」
魔女の村よろしく、彼の『変化』を感じ取った女が少年に
「ごめんなさい。
「…僕は、おばさんたちを助けに来たんだ。」
女たちは見詰め合う。
そこにいるのが本当に「少年」なのかわからなくなっていた。
「私たちを?どうして?」
「…だって、お姉ちゃんの大切な人たちだから。」
人々の半数は彼を
「私たちのことを知ってるのに?おかしいわ。」
「もしかすると、教会の差し金なんじゃないか?」
「じゃあ、これも実験の一つなのか?」
「お前たち、少し落ち着きなさい。」
「村長…、」
子どもとはいえ、町の人間が彼らに手を差し伸べるなんて
「……」
一人の老いた男が
「すまない、坊や。一つだけ、教えてくれないか?君の言う”お姉さん”はなんという名前なんだい?」
「……」
…仕方がない。
この状況の中に飛び込んできただけでも異常な「意志」を
その上、こんなにも
「…いいや、やはり、何でもない。
しかし、これはこれで良かったのかもしれない。
これで少年は私たちを見捨てて町に引き返すだろう。
でも、できることなら―――、
「でも、これだけはその子に伝えて欲しい。今すぐここから逃げなさい。できることなら、フォーレスからも。
老爺は言いきることができなかった。
「自由」、その中に少年の言う「姉」を思い描くことが、どうしてもできなかった。
それでも、いや、だからこそ老爺は願った。
「お願いだ、坊や。その子を、助けてあげてはくれまいか…。」
「……」
天井からの返事はなく、『気配』だけが遠のいていく。
「…なんであんなこと。私たちはどうでもいいんですか?」
何人かが少年を行かせたことに不平を
けれども、その「何人か」と老爺、そして女たちは同じ表情をしていた。
「
「少なくともあのくらいの子は、こんな
「……」
鉄格子の中に、子どもの姿はない。
彼らはその
天井の気配が
「……え?」
女たちは聞こえてくる『足音』に驚いた。
その子の未来を想って一度は手放した「希望」。それが、
「…坊や!どうして!?」
そこに、彼らが思い描く理想の「少年」の姿はない。
「僕は…坊やじゃない…。」
カチリ、と
「僕は…、リッツだよ。」
彼らは知った。
呪うべき敵を。
信じるべき勇者を。
※それはカメレオンのように壁に擬態して侵入者の有無を窺っていた
原作の「シードレイク」のことです……が、原作の特殊能力(魔法)に『擬態』の意味合いを持つものはありません。
ただ、モンスターが登場する際、「影の中からヌルリと現れた」と取れるような演出を度々使われているので、これを「擬態」と取ってもいいんじゃないかと思って書かせていただきました。
※夢精(むせい)
正しくは、「眠っている間に射精する生理的現象」のことですが、
ここではリーザに操られる人間(動物)の本能的、性的な意味合いを含んだ、「信頼」や「期待」、「希望」などといったリッツの「心」が(”夢”の部分)、
それら全てを満たすかもしれない「リーザ」という「万能薬?」「神様?」「片思いの人?」に乞い願う様子(”精”の部分)
という意味も含めて表現したつもりです。
……要は、「リーザのことがもっと知りたいっ!」「好き好きっ!」って感じ、です(^_^;)
イミフ過ぎて、本当にごめんなさいm(__)m
※老爺(ろうや)
「おじいさん」のことです。
※リッツ・ヴァイフン・ダ・カルトン
――――最高級のバカンスをアナタに。
世界規模でチェーンを展開している某ブランドホテル……ではなく(笑)
ラムールの町に住む少年の名前です。