――――「その晩」は俺たちが配備されるのを待っていたかのように訪れた。
「……来やがったな。」
夜もとっぷりと
真っ黒な外の景色に不自然な明かりがパッと現れる。続けざまにもう一つ、照明弾が打ち上げられる。
…どうやら、真っ直ぐこっちに向かって来ているようだ。
その後は外に
よほど自分の力に自信があるらしい。その後も
「
そうして1分が
「まさか、ドンピシャでこの部屋にくるとはな。」
もしかすると、爆弾は注意を引き付ける
けれど、
「おうおう、こんな
ホームレスさながらのボロボロのコートに
「……アイツァ」
見たことがある。確かギルドの指名手配犯だ。名前は確か……、
「そんな悪い大人にはこのドクスン・ベベドア様がお仕置きをしてやらにゃあな!ワッハッハッハ!!」
……そうだ。ドクスン・ベベドア。最近急に
俺はわざわざ手配書に書かれたコイツへの注意書きを思い出した。
「まさに”
パッと見、
「おいおい、逃げるなよキサマら!それでもタマァ付いてんのか?!」
いいや、それでいい。さすがカリーナの
「なんだなんだ。張り合いのねえヤツらだぜ。」
5、60代の
「まあ、それでも俺はやりたいように
ジジイは
「撃てっ!!」
チャンスを
だが――――、
「……クックック。テメエらみてえなエリート連中はいっつも頭ばっかりで考えるから、一歩遅れるんだよなぁ。」
煙が晴れると、そこには巨大な岩の
「頭でっかちのテメエらなら知ってるだろうがな。コイツぁ”生きた土人形”、
「だが、そんじょそこいらのゴーレムじゃねえぜ?」
そうだ。コイツ言う通り、目の前に現れたゴーレムたちは俺の知ってるやつとはだいぶ食い違っていた。
「エルク、私――――」
「待て。あの
「そうじゃなくて……。」
『力』を使おうとする彼女を
「……」
俺の知ってるゴーレムの
あんな、
そもそも、俺にはどうしてもあのジジイが十数体も同時に
「それを可能にしたのがこの石よ!」
薄っぺらな
わざわざ犯罪者のお
「テメエら!人が気持ちよく喋ってる時くらい静かにできねえのか?!ママから教わらなかったのか?アアン?!」
普通のゴーレムなら
ゴーレムの弱点を
それでも彼らは作戦を
「まぁ、いい。とにかくなぁ――――、」
ジジイの注意を引く
だが、それも
それに、ゴーレムに
それでも普通の岩なら『壁』ごと
そんな
「コイツぁなあ、あの”精霊の国”スメリアから闇ルートで仕入れた魔法の石なのよ!」
……バカか、コイツ?そういうことは口止めされてるはずだろ。
それに、どうにも『石』についても
だけど、相手が悪かったな。
「リーザ、もういいぜ。やっちまっても。」
「……」
そこで初めて彼女が
「どうした?…なんか俺またマズったこと言ったか?」
「…エルク、私、あの子たちを
「は?なんで?」
「……何でかまではよく分からないけど、
そう
「なんで先に言わねえんだよ。」
「……私の話し聞いてくれなかったの、エルクじゃない。」
「あぁ?……まあ、そうだけどよ。俺も確かめなきゃねんえことがあったんだよ。仕方ねえだろ?」
彼女は
…
……さてマジでどうするか。
だけど、
ゴーレムの自爆は、その大きさにもよるが、
その時だった。
「ほうか、ほうか。この石がのう。」
「!?」
俺たちの背後に立っていただけのケバブが、なぜかあの『石』を手にしていた。
「……」
反射的に懐を
あまりに
「確かに見たことのない材質ではあるが、よほど頭の切れる魔術師が仕上げたんじゃろ。石そのものよりも
ケバブは石を照明にかざしてみたり、
「くそジジイ!どうやって!?」
禿げたジジイの
「お前さんにジジイ呼ばわりされたくないわい。」
デブとはいえ、さすがは”アーク一味”の一人ということか。
「商人にとってスリや強盗は天敵じゃからな。こっちが
返事に合せてオッサンの肩から足元からヒョッコリと1つ、2つ、3つの小さな人影が
「……小人か?!」
「それだけじゃあないぞい。」
「なに?!」
チョンガラの声を
「ど、どうなってやがる?!」
ハゲの驚きようにさもあらんといった様子で笑うデブ。
「ウッヒョッヒョッヒョッ。どんなにイイ道具を持ったところで使う人間がこうもアホウじゃ文字通り”持ち
――――
「ケラックたちを連れてきてたなんて聞いてねえぞ?」
今はリーザの肩や頭にしがみ付くイタズラな3匹の小人たち。コイツらが得意の「隠れん坊」でドクスンの懐に
さらには土人形
「どうじゃ、
「先に言っとけよ。」
あとは、オッサンの影に
その時点でもう決着はついてたんだ。
俺があれやこれやと頭を
「モフリーの奴も連れてきたんじゃがのう。使う必要もないくらいのバカじゃったな。」
そして、リーザはこのことを知っていた。だからあんな非常事態の
彼女はそれを教えようとしてくれていたのに、俺は自分のことばかりでそれを無視しちまった。
怒られて当然だ。
「本当に助かったわ。」
全ての
「
アナタたち、か。それはもう皮肉にしか聞こえねえけど、カリーナにその気は
「特に、そちらの
ケバブを見る彼女の
「この仕事をするようになって、人を外見で判断しないように
「礼なんぞいらんいらん。これも仕事じゃからな。」
彼女は恥じらいながらオッサンに
「ただ、お前さんの自慢の石を一つ、ワシに
「…お店の商品を?え、ええ、もちろんよ。ボーナスなんて言い方は失礼かもしれないけれど。どれでも好きなものを持っていって!」
そうは言うけどよ、この階にあるもんはどれも
カリーナの口からそんな
「ちゃうちゃう。そうじゃのぉて、お前さんの一番のお気に入りが欲しいんじゃよ。」
「…え?」
「報酬もボーナスもいらん。ただ、お前さんとの思い出が一つ欲しいだけじゃよ。」
……なんだ、この
完全に、俺はオッサンのオマケみたいな立ち位置に立たされていた。
「……オジサマ、
おいおい、それじゃあ
「じゃからじゃよ。
「フフ、さすがに同業者だけあって人の心を操るのが
いやいや、どう見ても
その言葉を待ち
「
「……そうね。まったく、その通りだわ。お
答えを返す彼女の顔は大人びていた。大人びた笑顔は100%オッサンを受け入れていた。
カリーナがショーケースの中から真っ赤なルビーの指輪を取り出し、オッサンがそれを受け取る。その背景に、教会があるように見えて仕方がない。
「少し
もうダメだ。見てらんねえ……。
――――結局、二人はお
「エルク、それじゃあね。その
……そう言って最後に見せた彼女の笑顔は、シュウに恋するティファのそれに
「それで満足かよ?」
帰り道、オッサンは右中指に着けた指輪を
俺は
「この世には、金や
落ちぶれた王様は
……その時、オッサンの背中から感じた何かは、俺にはやっぱりよく分からないもののように思えた。
――――後日
チョンガラのオッサンに趣味が増えた。
パイプを
そんなオッサンを見る
「確かに欲しい……。」
「うわっ!」
考え事をしている俺の
指を
「でも、今はいらない。」
「そ、そうかよ。」
「今はね、もっと私の声を聞いて欲しい。それで、いい。」
「わ、悪かったよ。あの時は俺もどうするか本気で悩んでたんだ。」
「そうじゃなくて……、」
そしてまた、俺は余計なことを言って彼女の眉間に皺を寄せてしまう。でも今度は間違えない。
俺は彼女の目を見て聞き返した。けど――――、
「……ううん、やっぱりなんでもない。」
……まあ、いいか。
今はまだ、完全に言いたいことを言い合えない関係でも。傍にいて欲しいと想い合えるだけで。
「……やっぱり言う。」
「あん?」
頬を染めながら、
「エルク、自分では気付いてないかもしれないけど…、」
「けど?」
いつになく
「…女の人には気を付けてよね。」
小さな子どもが母親に甘えるように、彼女は俺に抱きついた。
「……エルクだって、甘えん坊のくせに。」
「……あぁ、そうだよな。」
彼女の髪に顔を
※ドクスン・ベベドア
えらく威勢のいい「ドクスン」を書いてしまいました(笑)
ちなみに「ベベドア」は次作の「アーク3」で登場する「超古代の最強最悪の人形型モンスター、ベベドア」からとっています。
ベベドアは人形でありながら他人を操る能力も備えています。
原作で「ドールマスター(モンスターの種類)」に位置づけられるドクスンはゴーレム(土人形)を使ってエルクたちを襲います。
……結果、なんとなく共通点があるように思えたし、別にいいかなって感じで付けてしまいました(笑)
ベベドアファンの方、怒らないでねm(__)m
ちなみに、カリーナがチョンガラに贈るルビーの下りですが、原作でシュウが仲間にいればドクスンから「盗む」ことのできるアイテムが「ルビー」でした。
なのでちょっとだけ絡めてみました。
※微かに光る石
原作でシュウとシャンテがスメリアの「何でも屋」ペペから要求される報酬が「微かに光る石」という限定アイテムなのですが、今回の「ゴーレムを生み出す石」とは本来関係ありません。
ですが、「Aパート」で全く触れなかったのでここで使ってみました。
――――以下、裏設定とネタバレ
「微かに光る石」はこの作品の一年前から存在が確認され始めたスメリア原産のとても珍しい鉱石です。
その正体は、オルニスの丘に封じられていた魔人ラリュウキをアークたちが解放し、討ち取ったことで霧散した魔人の『力』を宿す石です。
付着した『力』の量にも左右されますが、その石に呪法を
(かのチートアイテム、”ロマンシングストーン”も同じような過程を経てできることにします。『力』の素はラリュウキではありませんが。)
今回、私の作品ではペペの要求は「邪竜ギア」を討つイベントに切り替えましたが、それはこの「微かに光る石」を守護するのが「ギア」だったからということにします。
(「微かに光る石」の入手地点と「ギア」の出現地点が近いし。)
そして、「微かに光る石」に目を着けたアンデルはギルドに「ギア」の討伐を依頼しました。
さらに、自分の身体に染み着いた魔人の『力』に違和感を覚えたゴーゲンはアークに与えられた任務の前にスメリアに立ち寄り、ペペを雇って調査させることになりました。
(ゴーゲンは3000年もの間、ラリュウキと一緒に異次元に閉じ込められていたため、いくらか魔人の『力』が染み込んでいることにします。)
ペペはアンデルの依頼とゴーゲンの依頼が繋がっていることに気付き、一獲千金を計画していたのです。
また、ペペは自分の力で「ギア」をどうにかすることでアンデルの信用を買い、さらにはレジスタンスへの「石」の横流しを考えていました。
その他のことはAパート「浮彫りの影」を参照してください。
※土人形→原作のゴーレム系モンスターのこと
「自爆」
原作のゴーレム系にそんな技はありませんが、周囲にエネルギーを放出する「エクストラクト」と岩の嵐を巻き起こす「マッドストーム」がその代わりになると思って「自爆」に置き換えてみました。
「ゴーレム」はヘブライ語で「胎児」「未完成のもの」「形なき固まり」といった意味らしいです。
さらに、生成時にその土の体に刻む必要のある言葉「emeth(真理)」は一文字削れば「meth(死んだ)」という意味になり、ゴーレムは壊れてしまいます。
※ケラック
多くのプレイヤーは回復役に使っていたと思われる「アークⅠ」でチョンガラが使っていた召喚獣の一匹です。
3人一組の小人で、補佐系の魔法をふんだんに使ってイタズラをするのが好きな困ったちゃんたちです。
本当なら「召喚の壺」がないと操れない設定なのだと思いますが、私の話では、スッカリ打ち解けているため「壺なし」でも操れることにします。
強制的に操る時だけ「壺が必要」みたいな。
ちなみに「隠れん坊」はサイレント(沈黙)やマイトマインド(魔力アップ)、マジックシールド(魔法攻撃無効化の壁)を応用したものだと思ってください。
※オドン
ケラックと同じくチョンガラの元召喚獣で、敵モンスターに変身することでそのステータスをソックリそのままマネるというキャラクターでした。
今回は、『変身』の時に相手の影に潜るようなモーションをとることから、「他人の影に隠れることができる」という能力も付けました。
※モフリー
上の二匹と同様です。今回は登場しなかったので紹介はなしということで(笑)
本当はもっとコミカルなエンドにしようと思っていました。
リーザに一目惚れしたドクスンが最終的にリーザに告白して、
リーザは「自首しましょ」
ドクスンが「はい」
みたいな、「アナタは大変なものを盗んでしまいました」的な、カリオスト○的な…(笑)
だけど、なんか違う方向に行ってしまい、止めることもできませんでした(笑)なかなか思うように書けないもんですね(^_^;)