それ
「お前が誰かと
受け付けの老人は俺の変わりようを見て笑っていた。
「筋肉の付け方が
いつの
仕事において足を引っ張っていることを気にしているのか。クーガーは
「…アンタはこの仕事が好きか?」
そうして
それが俺の「生活」の一部になっていた。
「仕事にいかなる
俺のぶっきら
俺の
それでもクーガーはそんな俺に
「…俺は、だんだんこの仕事が
仕事
悪を
「そうか。」
「アンタはそうじゃないんだろうな。」
「…何が言いたい。」
そして、俺の知らない「俺」を
「仕事をしている時のアンタは別人だ。
「…俺は俺だ。」
確かに仕事をしている時は、より「影」の部分が表に出ているかもしれない。
だが、「影」も「俺」も「シュウ」という一人の男であることに違いはない。
「今も昔も、お前が”クーガー”という一人の人間でしかないようにな。」
だが、クーガーはそれを
「仕事を、特に何かを殺す時のアンタの目は…どこか、
多重人格、呪い、霊の
「別人である」、「何者かに操られている」という
本人に
だからこそ、コイツの意見が正しい可能性も
俺ではない誰か。「俺」や「影」を
かつて、確かに存在していたソイツを、今の「俺」が感じることはほとんどない。
だから俺は―――、
「育った環境の問題だ。俺は”殺す”ことで生きることを許されていた。
それをクーガーに打ち明けなかった。
俺は嘘を
――――キサマ、名前は何と言う
それ以上、
いいや、正確には本題に戻ったと言うべきなのかもしれない。
「俺、女ができたんだ。」
「…そうか。」
それまで「
「子どもも、できたんだ。」
「…そうか。」
「俺は…、こんなチンケな命だけどよ。死んでもアイツらを護るべきなんだって思うのさ。それが俺の生きてる意味なんだってな。」
そこまで言うと、クーガーの顔に重い雲がかかった。
「だけどもし…、もしもだ!…俺よりも強い敵が現れたら、その時俺はどうすればいい?」
今までにも「強敵」は何十人と
クーガーでは
それを、ここにきてようやく、クーガーはそういう当たり前の存在と向き合い始めたようだった。
「”死んでも”なんて言っちまったが、もしも俺が死んだら誰がアイツらを護ってやるんだ?」
「力」を付けるほどに、クーガーは自分の限界を見るようになっていた。
そして、俺や『異能の力』を持つ、常人ではない人種をひどく恐れるようになった。
護るものができたがために、自分の弱さを強く感じるようになっていた。
そこに、以前のような「遊び」に
「クーガー、この世に”最強”は存在しない。そして、同じように”最弱”もない。もしもそれを感じているのなら、それはお前が”お前”という人間を
「……シュウ。アンタ、前々から思ってたけどよ、言うことが年に見合ってないよな。…でもよ、」
自分の中にあったルールを
「だったらアンタは、ネズミが
俺は、初めてこの男から「遊び」を学んだ時、自分の「可能性」を感じた。
「ああ、
「…それが、俺とアンタの決定的な差なんだろうな。」
それは、この男でなくても良かったのかもしれない。
だが、実際に俺にその切っ掛けを
「そうだな。だが、だからこそお前は今、俺からそれを盗もうとしているんじゃないのか?」
クーガーは
「……そうだな。そうかもしれねえ。」
おそらく、完全には
クーガーのつくる笑みに「成長」が
「悪かったな。見っともないとこ見せちまって。」
だがコイツは今まで俺が引き受ける仕事にもしがみついてきた。
初めこそ
俺はそれだけでも十分、
だからこそ、俺にとって無駄なのかもしれない「酒」にも付き合うことができた。
「アイツらを護りたい気持ちに嘘はねえ。でも、だからこそ、俺たちみたいに戦えねえアイツらのことを思うと、変にその”弱さ”を共感しちまうんだ。無抵抗に喰われる
もしかするとコイツの言う「共感」は、俺が殺した相手を
だとしたら……、
「気を
「…小さな箱にネズミを押し込めたがるのは決まって
俺の言葉を取り、
「アンタも早く見つかるといいな。」
「…何がだ。」
「今でも会いに行ってるんだろ?ミーナに。」
「……」
”ミーナ・フィラーノ”。あの通りに立っていた、初めて俺と同じベッドを共にした女の名だった。
クーガーに連れられて以来、月に2、3度、俺はあの通りに足を運ぶようになっていた。
「また来たの?もう来るなって言ったでしょ?」
彼女は仕事だからと言い訳をするが、俺も彼女もいつの頃からか気を
「それで?ミーナにはもう自分の気持ちを伝えたのか?」
でも俺が彼女に
彼女は、正体の分からない「
「影」であり続けた俺はただ、それに
「気にする必要なんかねえさ。この町で
「…そうだな。」
この感情だけは、今のクーガーにも見抜けないだろう。
そして、理解もできない。
人殺しの思想、理想が同じ人殺しにしか理解されないように。
「結婚」や「家族」とは違う。
誰の目にも触れない、暗い場所にあるこの心
……だが、そういう俺の一方的な感情を別にすれば、クーガーの案は一考する価値があるようにも思えた。
俺と彼女が結ばれる。
それはいったい俺という人間をどう変えてしまうのだろうか。
今の俺には想像すらできない。
――――キサマ、名前は何と言う
「やめとけ、やめとけ。どんなにイイ関係になったってな、女と猫は宝石とエサがなきゃ、次の瞬間にゃ赤の他人ってなもんよ!じゃなきゃ、どうにかこうにかテメエを殺して保険金を
ビビガ・アルノ・ピンガ。
仕事の
「それはアンタをフッたあのダンサーへの
ズボラな見かけに
だが、趣味のギャンブルと機械いじりが彼女の物欲と
だからこの言い分は、その腹いせみたいなものだった。
「ハッ、俺も焼きが回ってたのさ。…あのアマが
「少し前まで”女と犬だけが
男は大の愛犬家で、外で野良犬を5匹
「バカ言うな。会えば”ダイヤ”だ、”ルビー”だなんて鳴きやがるブタと、いつだって
「…そうだな。俺が悪かった。」
普段なら見た目とは裏腹に
しばらくは
だが、
「ねえ、シュウ。アナタ、雲の数を数えたことはある?」
「何?」
「雲の数よ。なーんにも考えないでさ、ボーッと空を見上げたことってある?」
俺に
「……」
「不思議な気分になるの。なんか、
「…何か、あったのか?」
俺の
彼女は俺の耳に
「この前、久しぶりに
「……」
「気を付けてはいるんだけどね。100%って訳にはいかないよね。」
娼婦にとって、それは「仕事の
だが、子どもはなく、ましてや女でもない俺にはその感覚は理解できなかった。
「人を殺す…ってどんな感覚?」
そして今度はそれとは
「……」
「…恐くないの?」
「…少し前までは、恐くなかった。」
「今は?」
「ひどく、恐い。」
「どうして?」
「…人が、死なないと知ってしまったから。」
「……」
「一度、手を
「……」
「”無知”が人を殺す。そして、”死”は永遠に俺の
「…その人たちの夢を、見るの?」
「ああ。そしてそれは現実になる。今の仕事がそのことを俺に教えたんだ。」
軍を抜けた俺は、夢物語のような動く
ソイツらは常に俺を指して言う。「死んで、償え」と。
まるで、俺という人間の命の終わりがその「
「知らなければよかった?」
「そうかもしれない。」
「……」
「だが、彼らがそれを許しはしなかっただろう。」
「……」
「死は死でしか
「…それでもアナタは殺すことを止めないのね。」
「…アンタは、どうだ。空に逃がしたはずの命が夢に現れることはないのか?」
「たまに、ね。」
「今の仕事を
「できちゃった時は思うよ。でもね、アタシだって考えなしに今の仕事をしてる訳じゃないんだよ。」
彼女は俺の
「どんなバカでも生きてたいって思わない?こんなに気持ちいいこと知ったらさ。またしたいって思わない?少なくとも、アタシはそう思えたから、今まで生きてこられた。」
彼女の家庭はひどく
母親と長男からの暴力が
「でもね、ある日、
「11の頃だったかな。アタシの初めての仕事は。」
「幸せだったよ。その瞬間は。すぐに家を
「姉さんから色々教えてもらいながら、どうしたらその幸せが長続きするだろうなって考えるようになって。まずは形から入ることにしたわ。」
「
「そしたらいつの間にか、自然とお客のことを大事に想ってる自分がいることに気付いたの。」
「人生をバカにしてる奴も、悪いことで
「ここに来る奴らは皆、何か大切なものを
「もちろん、アタシみたいなガキの言葉を聞いてくれる奴の方が少ないよ。でも、たまに”ありがとう”って言ってくれる奴がいるの。」
「その言葉を聞くと、続けてて良かったって思う。周りからはいい目では見られないけど、アタシはこの仕事が警察と同じくらい大事なものだって思ってる。」
「この仕事のお
「…アナタは、シュウは、どう?自分の仕事は、好き?」
「俺は、ただ金が必要だから仕事をしている。」
「ウソつき。」
「…何?」
「…私ね、ロマリア出身なの。」
「……」
「”ミーナ”も本名じゃないわ。」
「だからシュウに
「最初はね、シュウに恋したのかもしれないって思ったわ。
「でも、アタシはまだこの仕事から足を洗うつもりなんてなかったし、
「それなのに、アナタは何度もアタシの前に現れて、アタシを
「でも、街ですれ違うアナタを見た時、アナタにはその気がないんだって気付いたわ。」
「それでもアナタはここ来ると必ずアタシを指名する。…どうして?」
「…分からない。」
「それがアナタの嘘。」
「そして、アタシがアナタに惹かれた理由。」
「生きて、シュウ。それがアタシの口から言える
そして、俺たちは今までで一番長いキスをした。
月日が
そんな
――――ルコッ!
「!?」
その名は
思わず声のする方を
「…まったくもう、走ったら危ないっていつも言ってるでしょ?」
「ごめんなさい、ママ。」
そこには
「……」
母…。
もう、名前も思い出せない。
自分の名前ですら、忘れてしまっていた。……
…そう、俺にも「名前」があった。
「コードネーム」ではなく、「人」としての名が。
あの男に出会うまで……。
――――キサマ、名前は何という
「……」
俺はソイツが気に喰わなかった。
軍人であること。
…何より、ソイツが俺の両親を殺した奴と同じ目をしていることが憎かった。
ドンッ!
質問に答えない俺の手足を、男は
「アアァァァァッ!!」
「…名前は?」
その
大量の血が流れ、気力も限界を
「……気が付いたか。」
目が
何がしたいのか俺にはサッパリ理解できなかった。
…どうしてなんだ……
「……ルコ。」
その時に覚えたの自分の感情は、今でもハッキリと理解できない。
血が
ただ、どうしてだか自分のしてきたチンピラ
「…何?」
男もまた、俺の突然の告白を
「…ルーカ・ヤクヴ・イルツァコフ。」
――――それが、俺の名前だった
※一徹(いってつ)
頑ななものの考えをする様。思い込んだことを押し通す様。
なので「仕事一徹」は仕事にばかりかまけている人、「仕事人間」みたいな意味で捉えてください。
※堕ろす(おろす)
妊娠中の母体から未成熟な赤ちゃんを取り出す手術。
人口妊娠中絶。
※贖う(あがなう)
背負った罪に見合う代償を払う行為。
償う。罪滅ぼしをする。
※ルーカ・ヤクヴ・イルツァコフ
……次回、謝罪会見、開きますm(__)m
※ホントの後書き
今回、後半に今までと違う書き方をしてみました。(ミーナのセリフがずっと続くとこの話です)
下書きでセリフだけを並べてた状態から手を加えていこうかと思って読み直してみると、「意外とこのままでも読めるんじゃない?」と思ったのでそのまま投稿してみました(笑)
私の創作はいつも他人の目が入ってないので、全部一方的な押し付けになってしまいます。
ですので、もしも今回の話が読みにくかったら……、ごめんなさいww