聖櫃に抱かれた子どもたち+   作:佐伯寿和2

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影と人 その二

それ以来(いらい)、クーガーは俺に()(まと)うようになり、日を(かさ)ねるにつれてお(たが)いの仕事を手伝うようにもなった。

「お前が誰かと(つる)む姿を見る日が来るとはな。」

受け付けの老人は俺の変わりようを見て笑っていた。

 

「筋肉の付け方が間違(まちが)っている。お前のような体格(たいかく)ならもっと――――」

いつの()にか「授業料」は金から訓練に変わっていた。

仕事において足を引っ張っていることを気にしているのか。クーガーは素直(すなお)に俺の言うことを聞き、必死に成長しようとしていた。

 

「…アンタはこの仕事が好きか?」

そうして諸々(もろもろ)の用事をすませると、“葡萄酒(ぶどうしゅ)()る木”で一緒(いっしょ)に酒を飲みながら年若いクーガーの愚痴(ぐち)とも心の(さけ)びとも言える話を聞く。

それが俺の「生活」の一部になっていた。

 

「仕事にいかなる私情(しじょう)(はさ)まない。ただ、俺を生かすための道具であればいい。」

俺のぶっきら(ぼう)物言(ものい)いは変わらない。

俺の理念(りねん)なんてものがこの男の生き方の参考(さんこう)になるとは到底(とうてい)思えない。

それでもクーガーはそんな俺に愛想(あいそ)()かすことなく、俺と言葉を()わし続けた。

「…俺は、だんだんこの仕事が天命(てんめい)なんじゃないかって思えるようになってきたよ。」

仕事一徹(いってつ)な俺と一緒にいる時間が増えたことが影響(えいきょう)しているのか。クーガーの性格は徐々(じょじょ)に変化しているように思えた。

悪を(にく)む気持ちが大きくなり、何かを護ることへの使命感が強くなったように思える。

「そうか。」

「アンタはそうじゃないんだろうな。」

「…何が言いたい。」

そして、俺の知らない「俺」を見抜(みぬ)くようになっていた。

「仕事をしている時のアンタは別人だ。(めん)と向かって付き合うようになってようやく気付いたよ。」

「…俺は俺だ。」

確かに仕事をしている時は、より「影」の部分が表に出ているかもしれない。

だが、「影」も「俺」も「シュウ」という一人の男であることに違いはない。

「今も昔も、お前が”クーガー”という一人の人間でしかないようにな。」

 

だが、クーガーはそれを(みと)めなかった。

「仕事を、特に何かを殺す時のアンタの目は…どこか、(あやつ)られているように見えるよ。」

多重人格、呪い、霊の憑依(ひょうい)

「別人である」、「何者かに操られている」という事象(じしょう)は確かに存在する。

本人に自覚(じかく)がないというのもありふれたパターンだ。

だからこそ、コイツの意見が正しい可能性も(おお)いにあった。

 

俺ではない誰か。「俺」や「影」を端末(たんまつ)として「シュウ」を操る者。

かつて、確かに存在していたソイツを、今の「俺」が感じることはほとんどない。

(たと)え、「影」がソイツとどこかで接触《せっしょく》していたとしても、「俺」には「恐怖」や「悪夢」という形でしか認識(にんしき)できない。

 

 

だから俺は―――、

「育った環境の問題だ。俺は”殺す”ことで生きることを許されていた。(この)もうと好むまいと。だからなるべく感情を表に出さない(くせ)がついた。お前が見ているのはその部分だ。」

それをクーガーに打ち明けなかった。

()()()()()()()()()納得(なっとく)させようとしていた。

 

俺は嘘を()くことが多くなった。

 

 

――――キサマ、名前は何と言う

 

 

それ以上、()()めても無駄と判断(はんだん)したのか。クーガーは話題を変えた。

いいや、正確には本題に戻ったと言うべきなのかもしれない。

「俺、女ができたんだ。」

「…そうか。」

薄々(うすうす)勘付(かんづ)いていはいた。

それまで「小汚(こきた)身形(みなり)」が普段着であるかのような男が、ある日突然、「紳士(しんし)」と言ってもいいような身綺麗(みぎれい)な姿で現れたのだから勘繰(かんぐ)らない方がどうかしている。

「子どもも、できたんだ。」

「…そうか。」

「俺は…、こんなチンケな命だけどよ。死んでもアイツらを護るべきなんだって思うのさ。それが俺の生きてる意味なんだってな。」

そこまで言うと、クーガーの顔に重い雲がかかった。

「だけどもし…、もしもだ!…俺よりも強い敵が現れたら、その時俺はどうすればいい?」

今までにも「強敵」は何十人と遭遇(そうぐう)してきた。

クーガーでは太刀打(たちう)ちできない相手を、俺が殺してきた。

それを、ここにきてようやく、クーガーはそういう当たり前の存在と向き合い始めたようだった。

 

「”死んでも”なんて言っちまったが、もしも俺が死んだら誰がアイツらを護ってやるんだ?」

「力」を付けるほどに、クーガーは自分の限界を見るようになっていた。

そして、俺や『異能の力』を持つ、常人ではない人種をひどく恐れるようになった。

護るものができたがために、自分の弱さを強く感じるようになっていた。

そこに、以前のような「遊び」に雄弁(ゆうべん)な男の姿はなかった。

 

「クーガー、この世に”最強”は存在しない。そして、同じように”最弱”もない。もしもそれを感じているのなら、それはお前が”お前”という人間を(かたよ)った方向からしか見ることができていないからだ。」

「……シュウ。アンタ、前々から思ってたけどよ、言うことが年に見合ってないよな。…でもよ、」

自分の中にあったルールを(やぶ)り、酒に飲まれるクーガーに「授業料」を(はら)うだけの(たの)もしさは感じられない。

「だったらアンタは、ネズミが(おおかみ)を殺すとこを見たことがあんのか?」

 

俺は、初めてこの男から「遊び」を学んだ時、自分の「可能性」を感じた。

「ああ、当然(とうぜん)だ。ネズミに限らない。狼は誰にでも殺される。そして、ネズミは誰でも殺せる。お前がその”本能(ネズミ)”を小さな箱に押し込めない限り、ネズミは何者とも対等である可能性を持ち続ける。」

「…それが、俺とアンタの決定的な差なんだろうな。」

それは、この男でなくても良かったのかもしれない。

だが、実際に俺にその切っ掛けを(あた)えてくれたのはこの男。そして、彼女だった。

「そうだな。だが、だからこそお前は今、俺からそれを盗もうとしているんじゃないのか?」

クーガーは眉間(みけん)(しわ)を寄せながらグラスに(うつ)った自分の顔をしばらく見詰め、それを強く(にぎ)りしめた。

「……そうだな。そうかもしれねえ。」

おそらく、完全には納得(なっとく)していないのだろう。

クーガーのつくる笑みに「成長」が(うかが)える一方で「(あきら)め」のようなものが浮かんでいた。

 

「悪かったな。見っともないとこ見せちまって。」

だがコイツは今まで俺が引き受ける仕事にもしがみついてきた。

初めこそ()(ごと)ばかり()らしていたが、恋人ができたからか。俺のやり方を真似(まね)するようになり、頭を使うことも覚え、今もこうして生き残っている。

俺はそれだけでも十分、評価(ひょうか)できる男だと思った。

だからこそ、俺にとって無駄なのかもしれない「酒」にも付き合うことができた。

 

「アイツらを護りたい気持ちに嘘はねえ。でも、だからこそ、俺たちみたいに戦えねえアイツらのことを思うと、変にその”弱さ”を共感しちまうんだ。無抵抗に喰われる()が頭に(よぎ)っちまうんだ。」

もしかするとコイツの言う「共感」は、俺が殺した相手を(おも)って恐れるのと()た感覚なのかもしれない。

だとしたら……、

「気を()()ぎるな。お前がそう思っているように、彼女もお前を護りたいと思っているはずだ。一方的な”助け”は彼女にとっても、お前にとっても重荷(おもに)でしかない。」

「…小さな箱にネズミを押し込めたがるのは決まって悪戯(いたずら)好きのガキか、人の心が分からねえ学者たちか。…確かにアンタの言う通りだよ。俺はアイツらを箱に閉じ込めたいんじゃない。幸せにしてやりたいんだ。」

俺の言葉を取り、(なか)ばこじ付けのような冗談(じょうだん)でごまかすクーガーの顔は、彼女との大切な記憶を思い返しているようにも見えた。

 

「アンタも早く見つかるといいな。」

「…何がだ。」

「今でも会いに行ってるんだろ?ミーナに。」

「……」

”ミーナ・フィラーノ”。あの通りに立っていた、初めて俺と同じベッドを共にした女の名だった。

 

クーガーに連れられて以来、月に2、3度、俺はあの通りに足を運ぶようになっていた。

「また来たの?もう来るなって言ったでしょ?」

彼女は仕事だからと言い訳をするが、俺も彼女もいつの頃からか気を(つか)わない間柄(あいだがら)になっていたし、街で見かければそれとなく挨拶(あいさつ)も交わすようになった。

「それで?ミーナにはもう自分の気持ちを伝えたのか?」

でも俺が彼女に(いだ)いている感情は、クーガーの思っているようなものじゃない。

 

彼女は、正体の分からない「(なつ)かしさ」を持っていた。

「影」であり続けた俺はただ、それに()れることで(つか)()安息(あんそく)を取っているに過ぎない。

「気にする必要なんかねえさ。この町で娼婦(しょうふ)とゴールインする奴なんざ(めずら)しくとも何ともねえんだからよ。」

「…そうだな。」

 

この感情だけは、今のクーガーにも見抜けないだろう。

そして、理解もできない。

人殺しの思想、理想が同じ人殺しにしか理解されないように。

「結婚」や「家族」とは違う。

誰の目にも触れない、暗い場所にあるこの心(おだ)やかな気持ちは。

……だが、そういう俺の一方的な感情を別にすれば、クーガーの案は一考する価値があるようにも思えた。

俺と彼女が結ばれる。

それはいったい俺という人間をどう変えてしまうのだろうか。

今の俺には想像すらできない。

 

 

――――キサマ、名前は何と言う

 

 

「やめとけ、やめとけ。どんなにイイ関係になったってな、女と猫は宝石とエサがなきゃ、次の瞬間にゃ赤の他人ってなもんよ!じゃなきゃ、どうにかこうにかテメエを殺して保険金を(かす)()ろうなんて考えてやがる詐欺師(ピエロ)よっ!」

ビビガ・アルノ・ピンガ。

仕事の()()きで知り合った男で、今は俺の仕事を斡旋(あっせん)してくれる仲介屋(ちゅうかいや)だ。

「それはアンタをフッたあのダンサーへの(ひが)みじゃないのか?」

ズボラな見かけに()らず一途(いちず)な男で、つい先日までストリップショーのダンサーと付き合っていた。

だが、趣味のギャンブルと機械いじりが彼女の物欲と衝突(しょうとつ)し、破局(はきょく)してしまったらしい。

だからこの言い分は、その腹いせみたいなものだった。

「ハッ、俺も焼きが回ってたのさ。…あのアマが執拗(しつこ)く言い寄ってくるからよ。つい……あぁ、クソッたれ!思い出しただけでも胸糞(むなくそ)悪いっ!」

「少し前まで”女と犬だけが唯一(ゆいいつ)、男と家族になれる存在”なんて言っていた奴の言葉とは思えないな。」

男は大の愛犬家で、外で野良犬を5匹手懐(てなず)けていた。

「バカ言うな。会えば”ダイヤ”だ、”ルビー”だなんて鳴きやがるブタと、いつだって()(こう)から俺と触れ合おうとするアイツらを一緒にすんじゃねえよ!」

「…そうだな。俺が悪かった。」

普段なら見た目とは裏腹に見識(けんしき)の深い意見を口にできる男なのだが、よほどそのダンサーを気に入っていたんだろう。

しばらくは真面(まとも)な会話もできそうにない。

だが、(ほう)っておけばじきに(おさ)まる。そういう奴でもあった。

 

 

「ねえ、シュウ。アナタ、雲の数を数えたことはある?」

「何?」

結局(けっきょく)、ビビガの言葉が尾を引き、プロポーズの心構(こころがま)えもないまま彼女に会ってしまっていた。

「雲の数よ。なーんにも考えないでさ、ボーッと空を見上げたことってある?」

俺に(おお)いかぶさる彼女は、肌を()り合わせながら言った。

「……」

「不思議な気分になるの。なんか、(なや)(ごと)がそこに溶けていくような感覚…。」

「…何か、あったのか?」

俺の勘繰(かんぐ)りは当たったらしい。

彼女は俺の耳に()()きながら(つぶや)く。

「この前、久しぶりに()ろしてきたの。」

「……」

「気を付けてはいるんだけどね。100%って訳にはいかないよね。」

娼婦にとって、それは「仕事の一環(いっかん)」なのかもしれない。

だが、子どもはなく、ましてや女でもない俺にはその感覚は理解できなかった。

 

「人を殺す…ってどんな感覚?」

そして今度はそれとは対極(たいきょく)の、彼女の理解できない感覚を俺に(たず)ねてきた。

「……」

「…恐くないの?」

「…少し前までは、恐くなかった。」

「今は?」

「ひどく、恐い。」

「どうして?」

「…人が、死なないと知ってしまったから。」

「……」

「一度、手を()めてしまったなら、二度と洗い落とせない。逃げられない。」

「……」

「”無知”が人を殺す。そして、”死”は永遠に俺の(となり)に立ち続ける。夢に(ささや)き続ける。”(つぐな)え”と。」

「…その人たちの夢を、見るの?」

「ああ。そしてそれは現実になる。今の仕事がそのことを俺に教えたんだ。」

軍を抜けた俺は、夢物語のような動く髑髏(どくろ)半透明(はんとうめい)の人間たちに出会った。

ソイツらは常に俺を指して言う。「死んで、償え」と。

まるで、俺という人間の命の終わりがその「(にく)しみの(かたまり)」の終わりであるかのように。

 

「知らなければよかった?」

「そうかもしれない。」

「……」

「だが、彼らがそれを許しはしなかっただろう。」

「……」

「死は死でしか(あがな)えない。彼らはそのためだけに生きていると言ってもいい。」

「…それでもアナタは殺すことを止めないのね。」

「…アンタは、どうだ。空に逃がしたはずの命が夢に現れることはないのか?」

「たまに、ね。」

「今の仕事を()めたいとは思わないのか?」

「できちゃった時は思うよ。でもね、アタシだって考えなしに今の仕事をしてる訳じゃないんだよ。」

彼女は俺の身体(からだ)に深く深く(つめ)()()ませ、より強く体を押し当て、首筋(くびすじ)()める。

「どんなバカでも生きてたいって思わない?こんなに気持ちいいこと知ったらさ。またしたいって思わない?少なくとも、アタシはそう思えたから、今まで生きてこられた。」

彼女の家庭はひどく(すさ)んでいた。

母親と長男からの暴力が()えず、彼女はそのフラストレーションを小動物にぶつけていたという。

「でもね、ある日、(つが)いの猫を見て思ったの。どうして誰かと一緒にいようとするんだろうなって。アタシはこんなに嫌で、毎日アイツらを殺したいって思ってるのに。」

 

「11の頃だったかな。アタシの初めての仕事は。」

 

「幸せだったよ。その瞬間は。すぐに家を()てて同僚(どうりょう)の姉さんの家に置いてもらったわ。」

 

「姉さんから色々教えてもらいながら、どうしたらその幸せが長続きするだろうなって考えるようになって。まずは形から入ることにしたわ。」

 

化粧(けしょう)を覚えて、スタイルを(ととの)えて、作法(さほう)常識(じょうしき)、男の身体のことを覚えたわ。」

 

「そしたらいつの間にか、自然とお客のことを大事に想ってる自分がいることに気付いたの。」

 

「人生をバカにしてる奴も、悪いことで金儲(かねもう)けしてる奴も、上司(じょうし)(いじ)められて悩んでる奴も。」

 

「ここに来る奴らは皆、何か大切なものを見失(みうしな)ってて。だからアタシは必死に教えてあげるの。”死んじゃダメだよ”って。」

 

「もちろん、アタシみたいなガキの言葉を聞いてくれる奴の方が少ないよ。でも、たまに”ありがとう”って言ってくれる奴がいるの。」

 

「その言葉を聞くと、続けてて良かったって思う。周りからはいい目では見られないけど、アタシはこの仕事が警察と同じくらい大事なものだって思ってる。」

 

「この仕事のお(かげ)で、アタシは生きていられるの。」

 

「…アナタは、シュウは、どう?自分の仕事は、好き?」

「俺は、ただ金が必要だから仕事をしている。」

「ウソつき。」

「…何?」

「…私ね、ロマリア出身なの。」

「……」

「”ミーナ”も本名じゃないわ。」

 

「だからシュウに()かれた時、何かを感じたの。アタシの、大事な何か。」

 

「最初はね、シュウに恋したのかもしれないって思ったわ。同郷(どうきょう)で、アタシよりも(たくま)しく生きてる人に抱かれて()かれたのかもしれないって。」

 

「でも、アタシはまだこの仕事から足を洗うつもりなんてなかったし、覚悟(かくご)もできてなかった。だからアナタに言ったのよ。”もう来ないで”って。」

 

「それなのに、アナタは何度もアタシの前に現れて、アタシを(こま)らせる。」

 

「でも、街ですれ違うアナタを見た時、アナタにはその気がないんだって気付いたわ。」

 

「それでもアナタはここ来ると必ずアタシを指名する。…どうして?」

「…分からない。」

「それがアナタの嘘。」

 

「そして、アタシがアナタに惹かれた理由。」

 

「生きて、シュウ。それがアタシの口から言える精一杯(せいいっぱい)の言葉。」

そして、俺たちは今までで一番長いキスをした。

 

 

 

 

 

 

月日が()った。

故郷(こきょう)()われれば「ここだ」と答えられる(ほど)に。

そんな(おり)

 

――――ルコッ!

 

「!?」

その名は不意(ふい)を突くかのように俺の耳に飛び込んできた。

思わず声のする方を見遣(みや)る。

「…まったくもう、走ったら危ないっていつも言ってるでしょ?」

「ごめんなさい、ママ。」

そこには仲睦(なかむつ)まじい母子(ぼし)の姿があった。

「……」

母…。

もう、名前も思い出せない。

自分の名前ですら、忘れてしまっていた。……()()()()()()

…そう、俺にも「名前」があった。

「コードネーム」ではなく、「人」としての名が。

あの男に出会うまで……。

 

 

 

 

――――キサマ、名前は何という

 

「……」

俺はソイツが気に喰わなかった。

軍人であること。愛煙家(あいえんか)であること。(ひげ)(のり)で固めるような男であること。

…何より、ソイツが俺の両親を殺した奴と同じ目をしていることが憎かった。

 

ドンッ!

質問に答えない俺の手足を、男は躊躇(ためら)うことなく撃ち抜いた。

「アアァァァァッ!!」

「…名前は?」

その()(かえ)しだった。男は名前を尋ね続け、俺は(がん)として答えない。そして男は俺を傷つける。

 

大量の血が流れ、気力も限界を(むか)え、俺は気絶する。

 

「……気が付いたか。」

目が()めると、男は血だらけの俺を介抱(かいほう)していた。

 

何がしたいのか俺にはサッパリ理解できなかった。

処刑台(しょけいだい)()()けられたチンピラを引き取り、ただ名前を聞き出すためだけの拷問(ごうもん)をし、今度は死なないように看病(かんびょう)している。

…どうしてなんだ……

 

「……ルコ。」

 

その時に覚えたの自分の感情は、今でもハッキリと理解できない。

血が()りなくて思考力(しこうりょく)(にぶ)っていたのかもしれない。

ただ、どうしてだか自分のしてきたチンピラ行為(こうい)が「悪」なのだと深く反省(はんせい)したのは(おぼ)えている。

「…何?」

男もまた、俺の突然の告白を認識(にんしき)しきれていなかった。

「…ルーカ・ヤクヴ・イルツァコフ。」

 

 

――――それが、俺の名前だった




※一徹(いってつ)
頑ななものの考えをする様。思い込んだことを押し通す様。

なので「仕事一徹」は仕事にばかりかまけている人、「仕事人間」みたいな意味で捉えてください。

※堕ろす(おろす)
妊娠中の母体から未成熟な赤ちゃんを取り出す手術。
人口妊娠中絶。

※贖う(あがなう)
背負った罪に見合う代償を払う行為。
償う。罪滅ぼしをする。

※ルーカ・ヤクヴ・イルツァコフ
……次回、謝罪会見、開きますm(__)m

※ホントの後書き
今回、後半に今までと違う書き方をしてみました。(ミーナのセリフがずっと続くとこの話です)
下書きでセリフだけを並べてた状態から手を加えていこうかと思って読み直してみると、「意外とこのままでも読めるんじゃない?」と思ったのでそのまま投稿してみました(笑)

私の創作はいつも他人の目が入ってないので、全部一方的な押し付けになってしまいます。
ですので、もしも今回の話が読みにくかったら……、ごめんなさいww
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