IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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二人の連携?

「さて、これでちゃんと戦えますわね」

 

 アリーナの上、セシリアは腰に左手を当て満足といった様子で一夏達に告げる。

腰に当てていない右手には、彼女と彼女のIS『ブルー・ティアーズ』の得物であるスナイパーライフルが握られていた。

だがしかし、その砲口(ほうこう)は下を向いている。まだ本格的にやるつもりではない様だ。

 

(余裕(よゆう)かましてるつもりか?何にしても(こう)都合(つごう)だな)

 

 小鳥のIS『銀影』の肩にある出っ張りが開き、レンズ式センサーが露出する。

 

(機体名『蒼雫(ブルー・ティアーズ)』メインウェポンはスナイパーライフル『スターライトMk-Ⅲ(マークスリー)』背中と腰のアレは『ブルー・ティアーズ』計六つ・・・確か思考同調兵装(マインド・インタフェース)のビットって奴だっけか。話には聞いていたが、実物を見るのは(はじ)めてだな)

 

 小鳥が意識の焦点を当てた部位の名称、詳細(しょうさい)がセンサーを通して小鳥の頭に入ってくる。

 アリーナの直径は200メートル前後、超音速で空を駆けるISにとっては狭っ苦しくて仕方が無いが、それでもやるしかない。

 

「なんですの?そのIS、猿の乗り物らしくみすぼらしいなりをしていますわね」

 

 入念にセシリアの戦力を見極める視線に気付いたのか、銀影の小ささを小馬鹿にしたように彼女は小鳥のISを(なじ)る。

 

「悪いな。現状これで精一杯なんだ。・・・でも、(あなど)るなよ?飾り散らして負けちまったら格好着かなくなるぜ?」

 

 余裕の笑みでそれを(かわ)す小鳥。

だが自分に有利な土俵(どひょう)の上で、以外にもセシリアは理性的だった。

 

「ふふっ、(あか)(ぱじ)をかくのはそちらの方ですわ・・・。それを分かりきった上で、一つチャンスを与えましょう」

 

「ん?何だ?」

 

 だが、高飛車な語り口調は変わらない。

一夏も小鳥も(いぶか)しむ様にチャンスとやらに耳を(かたむ)けていた。

 

「このままやったとしても私が勝つのは明白(めいはく)()、ボロボロになって無様な姿を(さら)したくないのであれば、あの非礼についてお(あやま)りなさ「断る」

 

 傾けていたのだが、突然小鳥が断った。その表情はセシリアとの口論(こうろん)と同じくらい不機嫌な顔だった。

 

「戦いを始める前から降伏(リザイン)を求めてどうするよ。それとも、負けるのが怖いのか?」

 

 恐らく、小鳥は機嫌が悪い時にだけ出る(あお)り癖があるのだろう。しかも結構気が早いのかもしれない。

 一夏としては、小鳥の煽り癖についてはもう色々と言うべき事があるのかもしれないが、それでも今の言い分には同調出来る。

 

「ああ、それに、やってみなきゃ解らないだろ?」

 

 そう言って、一夏は不敵に笑った。

 

「ハッ、まさかまだ勝算があると思ってんだな一夏」

 

 軽口を叩いて一夏をみやる小鳥。それは非難や意見の相違を嫌った物ではなかった。

 

「乗ってやるよ、まずはセシリアからだ。援護(えんご)してやる、お前がメインだ」

 

 どうやら小鳥も本格的に勝ちに行く事にしたらしい。

一夏は右手を前に出して大きく開き、小鳥は両手をバックパックに伸ばす。

 そして、一夏は近接専用ブレート『雪片弐型(ゆきひらにがた)』を、小鳥は万能ダブルブレート『アイアス』を手にした。

 

「そうですか・・・では、交渉(こうしょう)決裂(けつれつ)、ですわね!」

 そんな二人を前にして、残念そうにセシリアが戦闘開始を()げた。

 背面の巨大なブロックが動くと同時に、セシリアはライフルを構えた。

 

「ッ・・・!避けろ一夏ッ!!」

 

 ライフルは一夏の方を向き、ビットの砲口は両方に向いていた。

速射ち(クイックドロウ)を警戒していた小鳥は、それにいち早く気付き、一夏に指示(しじ)を出す。

 

「うおッ!?」

 

 間一髪、全速力で離脱(りだつ)した場所にビットのビームが通過した。

 

「な、何とか()けれたけど・・・ッ!」

 

 だが、攻撃は止まらない。(しゃべ)る暇もなく一夏の元にはライフルによる狙撃(そげき)が始まっていた。

 

「うおっ、とぁっ、ぐぅっ!」

 

 避ける度に苦悶(くもん)の声を()らす一夏、小鳥も慌ててフォローに向かう。

 

「んなろっ!!」

 

 アイアスの()が五十度曲がり、射撃形態(ガンモード)となる。前腕部に搭載(とうさい)されたビームバルカンを込みでやたらめったら撃ちまくる。

 

(わずら)わしいですわ、ねッ!」

 

 小鳥の邪魔を(わずら)わしく思ったセシリアは、一夏への攻撃を止め、左手を小鳥へ向けてビットでの攻撃を始める。

 

「くッ・・・!流石に四門での射撃はキツいな!!」

 

 彼女を中心として円形移動をしながら上下左右に避け続ける。

 

「小鳥!」

 

「気にしてる場合かッ!今のうちに、セシリアに近づけ!」

 

 心配する一夏に向けて大声で指示を出す小鳥。それを聞いたセシリアは、一夏の方へと視線を戻す。

 

「やらせませんわ!」

 

 再度ライフルでの射撃を再開させる。

 

「何で作戦バラしてるんだよ!」

 

 撃たれ続ける一夏は白式の翼を広げ加速しながら回避を続ける。

 

(例えまた牽制射撃(けんせいしゃげき)をされてもあの精度では問題にはなりません!まず先に織斑さんの方を落として差し上げますわ!)

 

 そんな事をセシリアが考え、ビット二枚をシールドのように展開している最中。

 

(どうせ俺の命中率の悪さから大丈夫だと思っているんだろうな・・・。もう準備出来てんなら、俺の援護なんか要らねぇだろ、一夏!)

 

 その後ろで小鳥はアイアスの背中を合わせ、一つの巨剣とした。

 

「ほっ、はっ、よっ!」

 

 そして小鳥の思惑通り、一夏の回避の度に発する掛け声にも余裕が見える。

 

「もう!ちょこまかと!」

 

 と、そんな現状に苛立ちを募らせたセシリアは更に一夏への攻撃を激しくする。

 

「らあ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ッ!!」

 

 その隙を見計らい、叫びを上げて小鳥が巨剣のアイアスを背負って突撃をかける。

 

「かかりましたわ♪」

 

 だが、切羽(せっぱ)()まった状況にも関わらずセシリアは優越(ゆうえつ)(かん)に浸った声を上げた。

 

「・・・ッ!?」

 

 そのレスポンスに小鳥の頭は一瞬だけ真っ白になる。

かかった?知っていた?予測していた?罠?反撃?どうやって?刹那の間にいくつもの疑問が浮かぶが、その疑問の隙間から一つの発見が生まれる。

 

(ビットが・・・二つ?)

 

・・・・・・()()()()()

 セシリアのISであるブルー・ティアーズのビット『ブルー・ティアーズ』は(けい)()っつ。

内二つは腰に()り、今も装備されている。もう四つは背面に装備されていて、先程までそれを使って二人を追い詰めていた。

 そして今、二つのビットを防御の為に展開している。

 

 ならもう二つは?

 

 

「不味いッ!!!!」

 

「猪突猛進も嫌いじゃないですが、蛮勇(ばんゆう)に過ぎるのも考え物ですわよ?」

 

 勝ち誇ったセシリアの声が小鳥の耳に届く。

 上下がら挟むように設置されていたビットが、交差射撃(クロスファイア)で小鳥にビームを放つ。

 誰もがその着弾を確信する中、小鳥は銀影に命令する。

(お前が俺のISだってんなら・・・全力を(もっ)()せてみろ、俺を・・・全てを!)

 ビームが銀影の装甲へと進む。距離は五十メートル、人間ならば避けるのはおろか反応することさえ難しいだろう、ISを着けていた所で被弾は必須だ。

 

だが、そうはならなかった。

 

「グゥッ・・・!!あぁぁあッ!!!」

 

 (かわ)したのだ、しかも横にずれる訳ではなく、全身のスラスターを全力で逆噴射し、反対方向へと加速したのだ。

 

「嘘!?」

 

「ぐっへぇ・・・流石に、今の動きじゃ()()(もよお)すわ」

 

 驚くセシリアを他所に、小鳥は気の抜けた台詞を吐きながら口許(くちもと)(ぬぐ)う、どうやら本当に吐き気がしているらしい。

 

「くっ・・・次は外しません!!」

 

 それを好機と見たセシリアは小鳥に手を向け標準を合わせる。

だが、小鳥は動かない、むしろ余裕の笑みさえ見せている。それを(いぶか)るセシリアに、小鳥はこう言って見せた。

 

「『外さない』か・・・そいつは結構だが、俺を見てる暇はあるのかな?」

 

 その台詞にハッとしたセシリアは後ろに振り返る。

そこには、彼女に向かって突貫を仕掛ける一夏の姿があった。一瞬逡巡(しゅんじゅん)したセシリアは近接武器を呼び出す。

 

「うぉぉおッ!!」

 

「くっ・・・『インターセプター』!!」

 

 ガギィンッと、二つの近接武器がぶつかり火花を散らす。しかし、突貫の勢いが付いた白式の力に()され始める。

 

「ッ・・・!」

 

「逃がさない・・・ッ!!」

 

 一夏の気迫もあって、雪片弐型の(きっさき)がセシリアの柔肌に触れる。だが、刀から伝わる感覚は柔らかい物ではなく、装甲の如く硬い。ISのシールドバリアーに触れているのだろう。

 

(今だッ!)

 

 その瞬間、一夏は切り札を使おうと刀を握る手に力を()め、その名を叫んだ。

 

「『零落白夜(れいらくびゃくや)』発動ッ!!!!」

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

「ん?・・・“雪片弐型”に“零落白夜”・・・?まさか、これって・・・!?」

 

 小鳥が覚悟を決めている頃、コンソールパネルを(いじ)っていた一夏は、白式の武器と謎の文章に首を傾げていた。

 

「織斑先生、もしかしてこれって・・・」

 

 左に立つ千冬(ちふゆ)に問う。

 一夏にはその文章の羅列に覚えがあった。

 『雪片弐型』『零落白夜』その二つの名は、千冬が現役のIS乗りとして『ブリュンヒルデ(世界最強)』の異名を()るその前から一夏は知っている。

 彼女が現役時代に乗り回していたIS『暮桜(くれざくら)』その武器の名が『雪片』であり、白式のそれは更に『弐型』とあってその後継である事が見てとれる。

 『零落白夜』に至っては暮桜の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)そのままだ。

 

「ほう・・・そう来たか」

 

 感慨深く呟く千冬、その呟きには僅かながら確信が見える。

 

「えっと・・・雪片弐型については何となく分かるけど、零落白夜って一体何なんですか?」

 

 その呟きを聞いて疑問を感じた一夏は、千冬にその概要を問う。

 それを受けて、千冬もその疑問に答える。

 

「あぁ、それはワンオフアビリティーだ」

 

「いや、それは知ってますけど・・・」

 

「わ、ワンオフアビリティーだと!?まだ最適化(フッテイング)したばかりだというのに・・・!」

 

 信じられないと言った様子で(ほうき)が騒ぎ立てる。

そうしていると、説明を始めようとしていた千冬が顔を(しか)めながらも箒を(たしな)める。

 

(わめ)くな騒がしい・・・恐らく、白式にワンオフアビリティーがあるのは()()()()()()なのだろうな」

 

 とは言え、私のものを発現するとはな。と何処か誇らしげに呟くが、その緩んだ表情はすぐに治まり一夏への説明を再開させる。

 

「『零落白夜』は攻撃特化のワンオフアビリティーだ、これを発動させれば、ほぼ無条件で接触したISのエネルギーを対消滅させる特殊エネルギーを発生させる・・・。篠ノ之(しののの)、それでシールドバリアーを消滅させた場合、相手のISはどうなると思う」

 

 急に話を振られた箒は、戸惑いながらも応える。

 

「ISの操縦(そうじゅう)(しゃ)保護(ほご)プログラムによって『絶対防御』が発動し、(さら)に大きなダメージが与えられます」

 

 そうだ、と箒の答えが正答であることを保証(ほしょう)し、満足気に(うなず)く千冬。

 

「私がブリュンヒルデの地位に居られたのは、このアビリティーによる所が大きいな。・・・だが、気を付けろ。大きな力にはそれに見合う代償(だいしょう)支払(しはら)う必要がある」

 

 そう言った千冬の視線は、不機嫌な小鳥の鋭さに匹敵する物があった。

 その目付きに身震(みぶる)いし、(つば)を飲んだ一夏に千冬は説明を続ける。

 

「それを発動している間は、どれだけ足掻(あが)いてもシールドエネルギーが減少する」

 

「━━━はい?」

 

 今のは聞き違いだろうか、自分のシールドエネルギーが減少すると言うことは、何もしなくてもダメージが入っている事と何も変わらない。敵にダメージを与えるのに、自分にもダメージ受けさせるというのは一体どう言う事なのだろう。

 そんな一夏の疑問を()んでか、千冬がシールドエネルギーの減少について話を始める。

 

「考えてもみろ、対消滅エネルギーだなんて物どこから持ってくるんだ、精製するにしても相当エネルギーを()う筈だ」

 

「あー・・・」

 

 その言葉に納得(なっとく)(きん)()ない。

つまりは対消滅エネルギーの精製の為にシールドエネルギーまで使わないと間に合わないのだ。

 

「大きな力とは常に諸刃(もろは)の剣だ・・・使い所を見誤れば、即座にその(やいば)はお前自身に向けられることになるぞ」

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

(その使い所は・・・ここだぁッ!!!)

 

 雪片弐型が刃の根本からガパリと開き、対消滅エネルギーの刃が形成され、刀のリーチが更に伸びる。

 

「ッ!?これは・・・!?あぁっ!?」

 

「いぃぃけぇぇぇ!!!」

 

 シールドエネルギーが消滅を始める。千冬の言った通り自分のシールドエネルギーも消費され減少を始めるが、それは些末(さまつ)な問題だ。

 

(この距離なら、外さない!)

 

 ほぼ零距離で発動した零落白夜なら、必ず絶対防御を発動させられる。

 

「ぐぅッ・・・!」

 

 果たして絶対防御が発生し、ブルーティアーズのシールドエネルギーがとてつもない勢いで減少する。

 

「こ・・・のッ!」

 

 これ以上接近を続けては不味(まず)いと感じたセシリアは、フリーになっていたビットの砲口を一夏にむけ、光弾を放つ。

 

「ぐあぁッ!?」

 

 それは狙いを違わず一夏に着弾し、その身体を引き剥がし、更にライフルでの射撃で追撃(ついげき)をかける。

 

「はいストーップ」

 

 高い攻撃力に驚いた拍子で過剰に反応したセシリアだが、その後ろには小鳥が居た。

 制止の声を聞いてからビットの砲口が向くが、剣を構え、その背中に突き付けているその顔は凄まじく誇らしげであった。

 

「この反応の遅さ・・・やっぱり、お前ビットとライフルでの同時使用は出来ないな?その上、切り替える時に若干のタイムラグが有る」

 

 そう言って()()()と笑う小鳥。その解析(かいせき)は正しかった。

 セシリアのISブルーティアーズのビットは計六機、内四つをこれまでセシリアは使って来たが、どの使用タイミングでも同時使用はしてこなかった。

 

「一回目、試合開始のあの時はライフルを構えたが、引き金を引くことは無く、ビットだけの射撃だった。

 二回目、俺の援護を嫌がって行った牽制でも、ビット四機を使っていたが、ライフルは使わなかった。

 三回目、俺を罠に()めた時も、やろうとすればライフルでの追撃が出来た筈だ。だがしかし、それは無かった」

 

 セシリアも一夏もその仮説に耳を傾け清澄する。

それに気付いている小鳥は、仮説の結論を提示した。

 

「・・・それらから考えられる可能性は一つ。

お前は()()()()()()()()()()()使()()()()()()()

 

「ええ、ですがそれを補う手をもってないとでも?」

 

 小鳥の推測に苦い顔をするが、それでも悠然(ゆうぜん)とした態度を崩さない。

小鳥を罠にかけた方法、上下からのクロスファイアもその一つだ。

 

「あぁ、知ってるさ。()()()()()()()

 

 やってみろよ、と挑発(ちょうはつ)して見せる。

挑発に乗ってセシリアは上下のビットから光線を放つ。小鳥はそれを予測し後退するが、クロスファイアの交点から僅かに離れた程度で、まだ避けたとは言い難い。

 ゴウンッと、その口振りとは裏腹に、あっさりと光弾を食らう小鳥。煙が上がり、熱波(ねっぱ)が散らばる。

 

「小鳥ッ!」

 

「口からの出任(でまか)せでしたら、言わない方が良いと思いますわよ?」

 

 そんな(かた)()かしを食らったセシリアは失望したように語りかける。その口調は小鳥がセシリアに忠告(ちゅうこく)した時と似ていた。

だが、その失望を裏切る様に、小鳥が抗議(こうぎ)の声を上げた。

 

「━━━()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 剣の(きっさき)が煙から突き出たかと思うと、次の瞬間には、剣を振るう動きが煙を引き千切(ちぎ)り、ほぼ無傷の銀影が姿を現した。

 

「よお、ご期待通りなんの支障も無く帰って来てやったぜ?」

 

 黒と銀が包むその機体の中で小鳥は不敵に笑い、そんな彼に向かって一夏が疑問を投げ掛ける。

 

「シールドの無い機体でどうやって・・・!?」

 

 小鳥の機体は中々装甲が厚く見えるが、しかしその身体には(すす)一つ付いていない。(たて)を持たない銀影では(かわ)す以外に無傷でいられる手段は無い。

 

「シールドが無い?どこに目ぇ付けてんだよ、目の前に有るだろうが、おっきいのが」

 

 ほれ、と右手にある物を掲げる。

逆手に持って(かか)げられたそれの名は『アイアス』、合体して一本の巨剣となったそれは、全身を隠せる(ほど)大きい。

 

「名前が『アイアス(盾の英雄)』だから何かと思ったけど、こう言う使い方が有るわけだ」

 

 笑って二人に見せつける、その笑顔はこれまでに無い程爽快(そうかい)だ。

 

「さぁーて、いつまでも(ほう)けている場合じゃないぜ?」

 

 目付きの悪い顔が凶悪(きょうあく)(ゆが)む、すると巨剣となったアイアスの持ち手だけが二つに分割され下の部分が五十度程折れ曲がった。

 そして、それを持ち上げた小鳥が

 

「今度は外さない」

 

 そう呟いた次の瞬間。二振りの時よりも強い一撃が放たれた。

 

「は・・・?」

 

 ドガァンッ!!と轟々(ごうごう)たる爆発音が響き渡る。ビットをその光弾一つで撃ち墜としたのだ。

 

「ふぅ・・・やっぱり、狙って撃つってのは難しいもんだな」

 

 感慨(かんがい)(ふか)(うなず)いて一人ごちる小鳥だが、セシリアが受けた衝撃(しょうげき)はとんでもない物だった。

 

(ビットを・・・撃墜した!?狙いを着けられないように常に動かしていたと言うのに!)

 

 その上小鳥の射撃センスは、先の牽制(けんせい)射撃(しゃげき)では物に当てるのが精一杯の筈だった。

 

「そらそら!一夏、お前も手伝え!こいつのビット全部落とすぞ!」

 

「解った!!」

 

 そんなセシリアの衝撃も露知らず、小鳥は一夏と連携(れんけき)を取り始める。

合流(ごうりゅう)した一夏を後ろに付けて、小鳥はセシリアに突撃(とつげき)をかける。

そうはさせまいとビットでの牽制射撃が降り注ぐが、特殊フィールドを発生させたアイアスを前に霧散(むさん)していく。

 

「くッ・・・!小賢(こざか)しいですわね!」

 

 不落の楯(アイアス)必殺の刃(零落白夜)実戦(じっせん)経験(けいけん)はズブの素人とは言えこの二つが組めば相当(そうとう)脅威(きょうい)となる。

しかし、彼等が素人と言うのならセシリアはその道を長いこと歩いてきたのだ。頭を回し二人に対して対抗策を練る。

 

(ビットは残り三基・・・!ビットを(おとり)にしてライフルで撃ち落として差し上げますわ!)

 

 ビットの高度を上げ、小鳥では防ぎ切れない角度で一夏を狙う。

 

(ッ・・・そう来たか)

 

 狙われている当の本人よりも先に気付いた小鳥。

肩に装備されているセンサーからは、動くもの全てを敏感(びんかん)(とら)える感覚が伝わる。

 

(零落白夜にシールドエネルギーを使う以上、迂闊(うかつ)に一夏に被弾(ひだん)してもらう訳にはいかねぇ)

 

 先程見た一夏とセシリアのセッションで、一夏が『零落白夜』を使える事、それを発動した瞬間からシールドエネルギーが減少すること、この二つを銀影の目から把握(はあく)していた小鳥は、上手いことするなと内心(ないしん)で舌を打つ。

 

 シールドエネルギーを消費して振るわれる『零落白夜』が最大の攻め手である以上、一夏が下手に被弾すればセシリアに(とど)めを()せなくなるかもしれない。

 勿論(もちろん)、分かりきったビットの攻撃を(かわ)す事など難しい話ではない。だが、下手に回避運動を取れば一夏を(おお)う小鳥の大楯から身をはみ出し、ライフルで狙撃されかねない。

かといってこのまま突撃を止めなければビットからの射撃が一夏を襲う。逆に止まってしまえば、セシリアが距離を取って仕切(しき)り直しをかけ、これが本当に最後のチャンスになるかもしれない。

 小鳥自身にブルー・ティアーズを倒せるかと言われると、恐らく可能だろう。だが、一夏と共闘(きょうとう)しようと約束したのだ、一夏を見殺しにしてしまうと言うのは余りに不義理(ふぎり)すぎる。

 単純だが、これ(ほど)効果的(こうかてき)な手は無い。観念した小鳥は覚悟を決める。

 

瞬時加速(イグニッションブースト)ッ!!」

 

 一か八か、加速したのだ。

 

「ちょッ・・・!小鳥!?」

 

それも一夏を置いてけぼりにする速度で。

 

「なっ・・・!」

 

 だが、これは思ったよりも効果的らしい。

小鳥のシルエットが大きくなれば、その影に一夏が隠れセシリアから見えなくなる。そうすれば彼女は一夏に狙いを定められなくなる。現に一夏はビットからの攻撃を受けていない。

 

()らいやがれやァッ!!」

 

 何者も寄せ付けぬ瞬時加速での加速、これはほぼ全てのISに搭載されている機能だ。

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)ではないので、第零世代とは言えそれ位はあるだろうと踏んでいたが、大当たりだった。

 大剣を構えて高速で突貫する小鳥は必勝を確信する。

しかし、セシリアの驚いた顔はすぐさま元の悠然(ゆうぜん)とした表情に戻っていた。

 

「残念ですが、ティアーズは六基ございましてよ?」

 

 腰部に装備されたビットが起動している、だがそのビットには砲口が無い。

 

(・・・不味いッ!)

 

 そこから考えれる可能性はただ一つ。誘導ミサイルとしての運用を念頭(ねんとう)に置いたビットだと言うことだ。

直線的なビーム兵器であれば身体一つ分動けば躱せる、だが誘導ミサイルであれば話は別だ。

無論、銀影の機動性であれば回避も(かた)くはないだろう、しかしこの距離、この速度ではビットによる誘導を回避躱しきるのは、とてもじゃないが考えきれない。

 

(回避(かいひ)不可(ふか)撃墜(げきつい)難度(なんど)も高い・・・ッ!)

 だからと言って防御したとしても、もうチャンスは(めぐ)らない、同じ結末を(むか)えるだろう。

 万事(ばんじ)(きゅう)すか、と(あきら)めかけたその時。

 

「ここだあァァッ!!」

 

「嘘・・・!?」

 

 一夏が小鳥の背後から飛び出したのだ。

驚いて小鳥へのロックを外してしまったセシリアだが、驚いているのは何も彼女だけではない。

 

「何ィ!?」

 

 小鳥も驚いていた。

それもその筈、今この場に居るのは、一夏をビットから隠す為に突貫(とっかん)を仕掛けたからだ。

それは作戦ではなく突発的な思い付きだった。実際一夏を置き去りにしたし、追い付かれるなどとは思わなかった。

 

「うおォォッ!!」

 

 もうこの距離なら(かわ)せない、不可避を確信した一夏は再度零落白夜を発動させる。

 二つの標的を同時に打ち落とせる程セシリアは器用ではない。そもそもそんなことが出来ていたのなら、ここまで追い込まれはしまい。

 

「くうぅッ!!」

 

 苦悶(くもん)の声を漏らし、必死に近接ブレードを構えるが、近接専門の機体を相手には最早手後(ておく)れでしかない。

 

「「もらったァッ!!!!!!」」

 

 加速した一夏と小鳥は速度を保ったまま巨剣と刀で切り()いた。




万能ダブルブレード『アイアス』防御形態について


銀影の主武装『アイアス』は、片刃(かたば)包丁(ぼうちょう)のような形状をしており、その(みね)同士(どうし)を接続することで、ISの総身(そうしん)(かば)える程の巨大な(つるぎ)となる。
 この状態の『アイアス』は、盾としての機能が使用可能となる。
この機能こそが銀影が第三世代機である所以(ゆえん)である。
銀影の仕様、『エネルギー拡散フィールド』は質量を除くエネルギーを均一(きんいつ)に拡散させる性質のフィールドを形成。
その能力値は、戦艦のビーム砲程度なら拡散し防ぎきる程の防御力を誇る。
また、エネルギーを拡散させる性質から、ハイパーセンサーが感知する特殊な周波数のエネルギー波も拡散させる為、対ハイパーセンサー用の短距離ジャマーとしての運用も可能である。


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