IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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真相追及とジジとババ

 一夏(いちか)が肩口を狙った突きを繰り出す。

肩を反らす事でギリギリで避けるが、装甲が(かす)った様で、またシールドエネルギーが減少する。

 

「チィッ!」

 

 左の剣で刀を防ぎ、一瞬動きが止まったのを見計らって右の剣を振るう。

 それを喰らうまいと、一夏は大きく後退する。

 

(何でこんな事になってんだよ・・・!)

 

 今のセッションで減少したシールドエネルギーの量を片目で確認した小鳥(おどり)は、心の中で苦言を漏らす。

 ハァ・・・と、溜め息を漏らし、どうしてこんな面倒な事になっているのかを順々に思いだす。

事の始まりは、クラス代表を決める為に多数決を採った際に、セシリアがしゃしゃり出てきた事だった。

その(しゃく)(さわ)る演説に苛立(いらだ)った小鳥は、自分でも自覚している様な汚い口調で(ののし)り、セシリアがキレた。

結局解決策として一対一対一のバトルロワイヤルが提示(ていじ)された。そんな勝手な都合(つごう)でアリーナを使って良いのか疑問だったが、何を思ったか千冬先生、OKを出してしまった。

どっちにしても小鳥としては、一夏に説明した様に早々に撃墜され最初の脱落者となり、二人のどちらかにクラス代表の座を明け渡す心算(つもり)だったのだが・・・。

開始早々のセシリアの演説に腹を立て、負ける気を無くしてしまった。

で、セシリアを倒すと言う大番狂(おおばんぐる)わせを起こし、一夏に苦戦を強いられている。

 

(・・・ん?)

 

 そこまで考えて、頭の中に疑問を浮かべる小鳥。

そして気付いた、

 

(これ俺が勝つ必要ねーじゃん)

 

 そう、最初から小鳥は負けるつもりだったのだ。それに一夏に勝った所で、与えられるのは『クラス代表』と言う面倒な席である。

そんな物誰が欲しがるか、セシリアみたく自己顕示欲の多い奴ならともかく、そんな物は小鳥には無い。

つまり、彼が降伏(こうふく)した所で何の問題も無い、皆無(かいむ)である。

無論(むろん)、千冬の脅しの事も考慮(こうりょ)せねばならない。が、千冬は全力で戦った(すえ)の結果を望んでいるのであって、別段(べつだん)誰が勝とうがどうでも良いのだ。

 なら勝ちに(こだわ)る必要は毛頭(もうとう)無い。(よう)は全力でない事がバレなければ良いだけなのだから。

 

「あー、ちょっと待った!」

 

「ッ・・・何?」

 

 言う事聞いて止まってくれる一夏、見た所突撃(とつげき)仕掛(しげき)けようとしていたらしい、もう少し遅ければ面倒な事になっていたかもしれない。

 突然の制止に驚き(いぶか)しむ一夏だが、下手(ヘタ)な動きをされる前に、武器を投げ捨てて言葉を(つむ)ぐ。

 

「俺の負けだ!降参(こうさん)するッ!」

 

「・・・へ?」

 

 疑問から一転、思いもよらない一夏から発された台詞(せりふ)は間抜けとしか形容(けいよう)出来ないものだった。

 そんな間抜け(ヅラ)晒して恥ずかしくないのかとも思ったが、それは腹の底に押しやり、軽い口調(くちょう)でその理由を語る。

 

「このままやってもキリが()ぇ、それに今の俺じゃこの千日手(せんにちて)を打破できそうにもない。恐らくこのままやれば一夏が勝つだろうし、俺の負けだ」

 

 それは後付けの理由だが、全くの嘘と言う訳ではない。実際、一夏と白式に対抗しうる手段を思い付けない以上、少しずつシールドエネルギーが削られる現状において勝利は望めない。

 

「・・・いや、小鳥、本気か?俺は後少しで倒れるんだぞ?」

 

 一夏が訝しむ様に小鳥に問う、どうやら納得していないようだ。

 

(もう少しで勝てるかも知れない戦いを前に勝利を投げ()て降伏しようなどお前からしたら論外(ろんがい)なんだろうが、しかし一夏、お前は気づいていない、この戦いを勝ち残っても先にあるのはクラス代表と言う厄介(やっかい)(せき)なんだ。こんな(ばつ)ゲームまっしぐらのフラッグレースは()りるのが最善解(さいぜんかい)なんだよ)

 

 とは言え、千冬(ちふゆ)女子(じょし)(ども)(さわ)がれても面倒(めんどう)なので、()()えず言い訳の一つ(くらい)は言っておこう。

 

「そーゆーのは俺好きじゃねぇんだよ。(いち)(ばち)か、ってのは確かに()汗握(あせにぎ)るが、そいつは駄目(だめ)だ。最良の選択をする者が勝利を手にし、そんな奴は何時(いつ)だって冷静な奴なんだよ」

 

 ぶっきらぼうに吐き出す言葉に(うそ)は無い、むしろ本音とも言えるだろう。

心の中で舌を()()っと出しながらも、自然体を保ちながら話し続ける小鳥。

 

「そう言う事で、セシリアは敗退(はいたい)、俺は降参(こうさん)。勝者は一夏ってのでどうでしょう?先生」

 

 そのおどけた視線の先には、ガラス()しにこちらを見ている織斑(おりむら)千冬(ちふゆ)()た。

この降参を確実とする為には、この人が最大の難所(なんしょ)である。

 

『・・・・・・。』

 

 反応が無い。本当にそれだけなのか疑っているのだろうか、(もく)して語らずかち合った視線(しせん)()らす事無く小鳥を(とら)え続ける。

 (だま)って考えて二分程、千冬が口を開いた。

 

『良いだろう、この勝負織斑一夏の勝利とする!』

 

 凛とした、力強いこえが拡声器から響く。

ふぅ、と膨らんだ風船(ふうせん)のように張った緊張(きんちょう)から解き放たれた小鳥は、安心の溜め息を吹き出す。

 と、不意に隣から一夏が声を掛けてきた。

 

「小鳥、良かったのか?」

 

「何が?」

 

「いや、だってお前ISの操縦(そうじゅう)に慣れてきたはずだろ。だったら残りのシールドエネルギーから考えても、こんな所で降参って・・・」

 

「うっせぇ、他ならぬ俺本人がこう言ってんだ、文句(もんく)付けてんじゃねぇ」

 

 ぶっきらぼうに言葉を吐き出し、くるりと一夏に背を向ける。その方向には一夏が飛び出した二番ピットがあり、そこから戻ろうと歩く位の速さで飛ぶ。

 と、その背中を見送る一夏が何かを思い出した様に地表(ちひょう)に降りる。

 

「大丈夫か?セシリア」

 

 そこには、一夏と小鳥の二人に敗れ、地表で待機していたセシリア・オルコットが居た。

一夏はそれを思い出しての行動らしい。

 

「え、ええ。勿論(もちろん)ですわ」

 

 敵に情けをかけられてか、セシリアは戸惑(とまど)いながらも()()べられた一夏の手を取る。

背中越しにそれを見ていた小鳥は、今までに無い程穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「━━━で、どう言う積もりだ?」

 

「何が?」

 

 その日の晩、一夏は小鳥の部屋にてトランプでしながらジジ抜きをしていた。

 

「何がじゃねえよ、お前あんな所で降りる様な(こし)()けだったのか?」

 

 一夏がカードを引き抜く、♠1だ。

♥の1と共に場に置く。

 何故?と問われれば、小鳥が『男子懇親(こんしん)会』を開こうと言い出し、たった二人でトランプゲームを始めたのだ。

 

「そうだ、と言ったら?」

 

「・・・何も無いけど」

 

「だったら聞いてどうすんだよっ・・・と、ラッキー♪」

 

 小鳥が一夏の手札を引き抜く、♥K(キング)だ。

二枚(そろ)ったので、場に♣K(キング)と共に出される。

 

「そうじゃなくて・・・。お前さ、クラス代表になりたくなくて降参したんじゃないか?」

 

 一夏が小鳥の♠10を引く。こちらも揃ったようで♦10と共に場に出される。

 

今頃(いまごろ)か・・・・・。まぁ、あの場で言った事が嘘って訳でもないな。実際、俺から見りゃ相当負け筋だったし」

 

「だからって、勝てるかも知れない戦いでわざと負けるってのはダメだろう」

 

 一夏からカードを貰った小鳥は苦い顔をする。二人しか居ないこの状況で出さないとすると、意図的に出していない限りこれがジジの可能性が高い。一方の一夏はニヤリと笑っている。

 

「うるせぇ、お前は勝ちを優先して、俺は後先考えてた、それだけだろうが。あと俺の『待て』に素直に従ったお前が悪い」

 

 そう言いながら少ない手札を後ろでシャッフルする小鳥。どうやらジジの居場所を変えた様だ。

 

「それは・・・そうだけど」

 

 言い返す事の出来ない一夏は、口を尖らせながらも小鳥の手札を引っこ抜く、ジョーカーだ。

 

「げ」

 

 手持ちのカードとは揃わないらしい、嫌そうな声を上げる一夏。

 

「小鳥お前何してんだよ、出し忘れだなんて」

 

「悪い悪い、ちょっと出し忘れて・・・なっ!」

 

 (さき)の小鳥と同じように、シャッフルされた一夏の手札からカードを一枚引き抜き、♦2が回ってくる。ジジではないようで♣2と二枚組になって場に出てくる。

小鳥の残り枚数二枚。一夏の残り枚数三枚。

 

(小鳥はジジの♥8とジョーカーを持ってる筈だ、俺が♥8を引かなければ勝てる・・・!)

 

 実を言うと、一夏も揃っているのに出していないカードがある。計算高い小鳥なら、正攻法でやっても通用しないのは目に見えている。だからブラフとして三枚の内二枚を出していないのだ。一見すれば三体二だが実質一対二なのだ。

 

(嘘吐くのは得意じゃないけど、バレてなさそうだし。ジョーカーを引いて俺が勝つ)

 

 と、息巻いている一夏に、目の前の小鳥は、世間話を続ける。

 

「ま、それはそれだ。クラス代表の仕事は任せる。なに、俺よりかは良いクラスになるだろうよ」

 

「ああ、任せといてくれ。どこまで出来るか分かんないけどさ」

 

 そう言って小鳥の手札へと手を伸ばす一夏。

だが、事もあろうに小鳥はその手を振り払った。

 

「なッ・・・!?」

 

「まぁでも、この勝負は(ゆず)らねぇけどな」

 

 そう言って残り二枚を無造作に置く。そのカードは♥と♣の8だった。

 

「あぁー!きったねぇぞお前ホントに!」

 

「はっはっは、そりゃお前の言えた事じゃねぇだろ!お(たが)い様なんだから文句言うなバーカ!」

 

 小馬鹿にしたように罵る、どうやら一夏が揃っているカードを出していない事に気づいていたようだ。

 一夏は小鳥がジョーカーを二枚持っていると踏んでいたのだが、実際は小鳥も出していないカードがあり、状況は二対一ではなく零対一だったのだ。

 

「ま、しかし。ジジがババ(ジョーカー)だったとはな。これじゃ見た目ババ抜きと変わんないじゃん」

 

 小鳥としては、途中までジジが何なのか解っていなかったが。四、五回程ジョーカーが手札に来た時点で何となく察した。『ああ、コレがジジなんだな』と。

 

「でもまぁ途中まで『ジジはどれだ?』で楽しかったけどな」

 

「それが出来るのは小鳥だけだよ・・・。お前どうせカードの並び完全に覚えてるだろ?」

 

「うん」

 

 にべもなく答える辺り、本当に頭が良いんだなと実感させられる。

 小鳥が才覚ある事を確認して脱力しながらも、一夏は問う。

 

「そう言えば『男子懇親会』って言ってたけど、二人で成立してるのか?」

 

 この部屋に小鳥と一夏しか居ない、これでは懇親会というより相談と言った方がが適当だろう。

 

「んー。ま、成立しない訳じゃないだろ。幼なじみとは言え、女子と二人きり個室でだなんて気不味いだろ?」

 

「まぁ・・・そうだけどさ・・・。ってそれを言ったら小鳥も同じだろ、俺と一緒じゃないならお前と相部屋の人は女子なんだろ?」

 

「ハッハッハ・・・」

 

 そんな意見を前に、小鳥は苦笑いをしていた。

何と言うか、後ろめたい事を隠しているかの様な笑顔。

 

「お、おい小鳥、まさか、ココって一人部屋なのか?」

 

「ハッハッハ・・・」

 

 笑うだけで何も言わない小鳥、やはり何か隠しているようだ。

 

「・・・。」

 

「ハハハハハ・・・」

 

 じーっ、と小鳥の顔を見る。

「・・・・・・。」

 

「ハハハハ・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 それは、小鳥の様に(くち)上手(じょうず)な訳ではない一夏が思い付く、最大の手段だった。

 そんな一夏の切なる思いが届いたのか、両手の平を見せつつ降参のポーズを取り、折れる小鳥。

 

「あー分かった分かった、そんな恐い顔して俺を見るな、千冬先生みたいだぞ」

 

 溜め息混じりで降伏宣言を発令する小鳥。一方の一夏もそんな感想に不満があるようで、口を(とが)らせる。

 

「そんな怖かったか?俺と千冬姉(ちふゆねぇ)ってそこまで似てないだろ」

 

 そんな否定を逆に小鳥は否定する。

 

「似てるぜ?俺は居ないけど、性別関わらず()()()()()ってのは似るもんだ。(むし)ろお前ら織斑姉弟は凄く似てる部類だ、論理(ロジック)滅茶苦茶(メチャクチャ)だが、それこそ『歳の離れた双子』ってレベルでな」

 

 感慨(かんがい)深く呟く。二人の顔立ちはかなり近い。経年(けいねん)(こう)と言うべきか、目付(めつ)きの(するど)さに違いはあれ、そこにさえ目を(つぶ)れば、その相似(そうじ)(ほど)は双子と言っても()(つか)え無いだろう。

 

「参ったな・・・じゃあ円花(まどか)とも似てるって良く言われるし、三人(そろ)って似てるのか・・・」

 

「あん?お前三人姉弟なのか?」

 

 一夏の呟きを聞いた小鳥が本人に問う。名前からして女性だろう。真逆(まさか)一夏に姉か妹が居るとは思わなかったのだろう。

 

「あ・・・」

 

(秘密だったのか・・・)

 

 しまった、と言う顔している一夏、どうやら隠し事は苦手らしい。

 

「気にすんなよ、秘密だってんなら口は割らんさ。ま、その代わりにそのマドカって奴について詳しく」

 

「まぁ、それなら良いけど・・・。でも小鳥の秘密も教えてくれよ?」

 

「おう、等価交換ってトコだな」

 

 実は内心で『誤魔化(ごまか)せられなかったか』と、舌打(したう)ちと苦笑(くしょう)をしていたのだが、そんな事を顔に出さず了承(りょうしょう)する小鳥。

 

「えーと、どこから話す?残念な事に、俺は円花の事を余り覚えてないぞ?」

 

「あ?そりゃどう言う意味だよ」

 

 今居る人の事を『覚えていない』と言うのは明らかな矛盾が有る。ベットに(もた)れる小鳥は、その矛盾の意味を、ベットに腰かけている一夏に問う。

 

「そのままの意味だよ。ちっちゃい(ころ)の円花の事を覚えてないんだよ。あいつに関わる事は、千冬姉から聞いた事が大半だし」

 

「ああ、そう言う事・・・驚いて損した」

 

(なん)に驚いたんだ・・・」

 

(イヤ)物騒(ぶっそう)な妄想だが『もう居ない人』なのかと」

 

「そんな訳無いだろ!」

 

 今までに無い程声を(あら)らげる、戦っている時よりも敵意が伝わって来るその声音(こわね)は、その裏にある物が『恐怖』だと言う事が判って仕舞(しま)う程感情を()き出しにした物だった。

 自分の声が大きい物と気づいた一夏は、大慌てで謝る。

 

「わ、悪い。つい声でかくしちまったな・・・。」

 

「良いよ。どうやらお前にとって『近親者が居なくなる』は鬼門みてぇだしな。何、幼少期の事についてまで聞く気はねぇよ」

 

 そう言って、何を聞こうか考え込む小鳥。

こう言う時、目付きの悪い小鳥だが、眉間に(しわ)()せている為に、元々良いと言えない顔立ちが余計に悪くなる。

 

(顔の作りが悪いって訳じゃないんだけどなぁ・・・)

 

 かと言って、小鳥の顔が不細工(ぶさいく)と言う訳ではなく、単純に善人の面構(つらがま)えでないだけで、実は結構顔の出来は良いんじゃないだろうか。

 

「んー」

 

 じーっ、と小鳥の顔を覗き込む。

 

 平均よりは出っ張った額、ややシャープな(あご)のライン、(わず)かに高く小さい鼻、女子も(うらや)二重(ふたえ)と長い睫毛(まつげ)。これだけ見れば、少し彫りの深いだけのイケメンなのだが・・・。

 

半開きにして、途轍(とてつ)もなく鋭い目付き、伸びきった髪を後ろで一括りにしただけの乱雑な髪型、極め付けは計算高く、勝ち気なあの性格である。友人付き合いは出来ても、それ以上は難しいだろう。

 

「ま、それはさて置き、マドカの話を先に進めようじゃないか。そうだな、まずは妹か姉かくらいは教えやがれ」

 

 自分の顔が品定めされている事に気付かないまま、小鳥は一夏に先を(うなが)す。

 

「あぁ、円花は妹だよ、いまは中三だな」

 

「ふむ、やっぱ千冬先生とも似てんのか?」

 

「うん、身内の俺が似てるって思うんだから、似てると思う」

 

 言って妹の顔を思い浮かべる一夏、顔立ちはかなり似ているが、千冬に比べて目付きは優しい、そこは人生で経験してきた物の差だろう。

 

「んじゃ漢字でどう書くんだ?」

 

(えん)(はな)で円花って読ませてる」

 

 ふむ、と(うなづ)く小鳥。大分物を聞かれている気がするが、小鳥の秘密がこの情報に見合う物でなければどうしようかと思ってしまう。

 

「じゃあー最後に二つ、お前ん()に暮らしてんなら一人で大丈夫なのか。ってのと、その円花について知ってるのは?」

 

「えーっと、千冬姉は勿論だけど・・・。後は(ほうき)くらいかな」

 

「ふむ」

 

「それと家については、千冬姉が早めに帰ってるんだってさ」

 

「そりゃ良かった、お前としても安心だろ」

 

「まぁな」

 

 他人(ひと)家庭(かてい)事情(じじょう)に良く顔を突っ込めるな、とある意味感心しながら、返答する一夏。

(とは言え、今度はこちらが質問する番だ。(しぼ)られて貰おうじゃないか・・・!)

 

「さ、て。次は俺だな・・・。とは言え、俺の方は一言で終わるぞ?」

 

「そうなのか?」

 

「そうなんです。だって『俺の隣人は○○なんです』の一言で済んじまうからよ」

 

 目を閉じてやれやれと言った表情を浮かべる小鳥。一夏としては、そんな簡単な事を躊躇(ためら)うのが意外だった。

 

「その上、お前に対して罪悪感(ざいあくかん)がある事以外に(じゃべ)れない理由が有る訳でも無し、ホントに俺のモチベーション以外に問題はねぇのよ」

 

「じゃあ、なんで話せないんだよ」

 

 両手に頭を乗せ、気楽な口調で話す小鳥にそう問う。

問題無いと言うのに、こんなに勿体(もったい)()られると気になって仕方がないではないか、なんだか損した気分だ。

 

「まぁなぁ・・・。じゃあ一夏、お前の隣人(りんじん)は、(おさな)馴染(なじ)みとは言え異性だ。苦労(くろう)はしてるか?」

 

「え、何でんな事」

 

「良いから答えろ、一人暮らし出来てる奴に嫉妬(しっと)出来れば『YES』そうでなきゃ『NO』だ」

 

 理由を答える事も無く、先を(うなが)す小鳥。その勢いに押され、一夏も自分の思う所を吐露(とろ)し始める。

 

「まぁ・・・、不便だけど、嫉妬する程苦労してるって訳じゃないかな。箒は気難(きむずか)しいけど、何だかんだ気を使ってくれるし」

 

「気づいてねぇのかよコイツ・・・」

 

「え?」

 

「いや、何でもない。聞き流せ」

 

「お、おう」

 

 何だろう、色々と問い詰めてやろうと息巻いていたのに、小鳥のペースに()まれている気がする。

 

「取り敢えず、このままだと面白くも何とも無い。クイズ形式で行こうじゃないか」

 

 そう提案する小鳥、流されてるようで気に掛かるが、悪い提案ではない。

 

「・・・じゃあ、同室の奴は居るのか?」

 

「『NO』だな、一応(いちおう)居る事は居る」

 

「ん?じゃあいつもは居ないって事なのか?」

 

「『YES』寝床(ねどこ)がここってだけで、今の所(ほとん)ど顔を合わせてない」

 

「そんな奴居るのか・・・」

 

「まぁな。とは言え、特殊(とくしゅ)な生徒ってだけで悪い奴じゃあねぇんだぜ?」

 

 悪戯(イタズラ)小僧(こぞう)の様な、不敵な笑みを見せる。

 

「そいつのクラスって何組?」

 

「1の3らしいな。でも授業に出れないってんで、いつも空席らしい」

 

「うーん。じゃあ、そいつって有名人?」

 

「先生間では『YES』生徒間では『NO』だな」

 

 何とも特徴の読めない人間の様だ、これではまるで教師陣によってその人に関する情報がシャットアウトされているかのような・・・。

 

「イヤ待て、ホントに何者なんだそいつ」

 

「いやぁ、それがなぁ・・・俺も良く知らないし本人が一番良く分かってねぇんだよ」

 

「はい?」

 

 一瞬頭が動かなくなった気がした。

自分で自分が分からない、とはどう言う事だろう。

 

「まぁ何だ、あいつは所謂(いわゆる)『記憶喪失』ってヤツでな。その上で身元不明らしい。どうしてそんな奴がIS学園(ココ)に居るのかは知らねぇけどよ」

 

 小鳥もその記憶について気に掛かっているらしい、その瞳には好奇(こうき)(しん)の色が見え隠れしていた。

 

「・・・なぁ、小鳥」

 

「んぁ?」

 

「ホントに何なんだその()は」

 

 その言葉に、小鳥は吹き出した。

問題が解らない奴を見て笑う小学生のマセガキみたいな、そんな底意地(そこいじ)の悪い笑顔をしている小鳥。

 

「失礼だな。これをちゃんと答えられる奴なんて居る訳無いじゃねーか。何だかんだ言ったって学年一つにつき百人(ひゃくにん)前後(ぜんご)居るんだぜ?その中から情報の無い奴一人だけを見つけろだなんて無茶がある!」

 

「だーかーら、前提(ぜんてい)から間違ってんだよ、もうちょっと考えてみな。そもそも、女子と同じ部屋なら何で俺がお前に後ろめたく思わなきゃいけないんだよ」

 

 その小鳥の発言に、一夏も反論する、

 

「いやだって、俺等以外は全員女子なんだから・・・。オイ待て『前提から間違ってる』ってお前まさか・・・!?」

 

 だが、その反論の途中で一夏はある可能性に気付いた

(ようや)く気付きやがったか・・・まぁ、答え合わせは本人が来てからにしようじゃないか」

 

 それを察した小鳥は、口角(こうかく)をつり上げて意地の悪い笑みを浮かべていた。

 








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