IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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無力な悩み

 鈴音(りんいん)一夏(いちか)(ほうき)遭遇(そうぐう)していた(ころ)小鳥(おどり)はコンビニのビニール(ぶくろ)片手(かたて)に1-1の教室(きょうしつ)へと向かっていた。

 一夏のクラス代表(だいひょう)と自分の(ふく)代表(だいひょう)就任(しゅうにん)(しゅく)してのクラス会をやるのだそうだ。

 

(・・・一夏も(おれ)もそんな物欠片(かけら)たりとも欲していないと言うのに、どうしてそんなに(さわ)()てるのか)

 

 ちなみに、彼がコンビニに出ていたのも、女子(じょし)が『お菓子買ってきて!』と言ったからである。

よくも主役(しゅやく)一人(ひとり)雑用(ざつよう)に使えたな、と良くも悪くも感心(かんしん)してしまう。

・・・・・・(くわ)えて言うのであれば、教室を使えるよう交渉(こうしょう)をしたのも彼である。

 

(平和だな・・・・・・)

 

 一人薄暗(うすぐら)い道を歩く彼は何も言わず、いつもの(よう)(しか)めっ(つら)で歩き(つづ)ける。

 

「・・・・・・」

 

 ふと、足を止めて窓を()やる。

防弾(ぼうだん)の為に分厚(ぶあつ)い窓、その先に広がる黄昏(たそがれ)と夜の()じる空。

小鳥はその全てを『見』て、その全てを『視』ていなかった。

 心に(いだ)くのは、焦燥(しょうそう)か、(ある)いは望郷(ぼうきょう)(たぐい)だったのかも知れない。

 

何故(なぜ)今、俺は此処(ここ)に居る』

 

『此処に居て俺に何が出来(でき)る』

 

 ()()()。と、強く奥歯(おくば)()()めた小鳥は、こう呟く。

 

何故(なぜ)・・・・・・。()()()()()()・・・・・・!?

 

 (だれ)にも(とど)ける()もりの()い言葉は、誰に届く事無く消えていった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

織斑(おりむら)くん代表就任おめでとー!」

 

 パンッ!パンッ!とクラッカーが(はじ)ける。

苦笑(にがわら)いの裏側(わらがわ)で沈み込む一夏と、(わずら)わしげにテープを払う小鳥にクラッカーのテープと細切(こまぎ)れの紙が()かる。

 

「小鳥くんもねー!」

 

「そう思うんだったら雑用に使うかよ」

 

 いつも通りの(しか)めっ(つら)で小さく抗議(こうぎ)する小鳥。

クラスの女子も一応(いちおう)思う所はあったらしく。あはは、と笑って釈明(しゃくめい)する。

 

「いや~。だってほら、良い会にする為なら猫の手だって借りたくなるじゃない?」

 

 それに対して何も言わずに(こま)った顔をして頭を()くだけの小鳥。

納得してくれたのだと思った女子は、ポテトチップスを求めどこかへ行ってしまう。

 

「・・・・・・だったら一夏にも手伝(てつだ)わせれば()かったろうに」

 

 相変わらず小声(こごえ)でぼやく。

無論(むろん)そのぼやきは隣に立つ一夏にしか聞こえないが、彼にしか聞こえないだけに一夏は苦笑いするしかなかった。

 

「それにしても、織斑(おりむら)くんが代表になってくれて良かったね~」

 

「ほんとほんと」

 

「これで対抗戦も盛り上がるね」

 

「そうそう」

 

「ラッキーよね」

 

「うんうん」

 

 と、勝手に(はや)し立てる女子。

ただ、その中に他組(たくみ)の女子が混ざっている(よう)に見えるのは気のせいだろうか。

一夏は疑念(ぎねん)を抱き、小鳥は確信を持つ。

 

(整備(せいび)()の人間まで居るしな)

 

 パッと部屋を見回した(かぎ)り、軽く五十人(ごじゅうにん)は居るし、布仏(のほとけ)本音(ほんね)視界(しかい)(はし)見受(みう)けられる。

これでは如何(いか)に教室が広くとも、これは過密(かみつ)状態(じょうたい)である。

 

「って、何で(りん)まで居るんだ」

 

 と、内心で(あき)(かえ)っている小鳥の(となり)では、一夏が他組の顔見知りを発見したらしい。

小鳥が合わせた一夏の視線の先には、先程(さきほど)遭遇(そうぐう)した女子が居た。

 

「・・・あのツインテの女子、顔見知りか?」

 

「あ、うん。(ファン)鈴音(リンイン)ってやつでさ、小四以来の幼なじみってヤツかな。中二(ちゅうに)の頃に転校してたんだけど、何でも中国の代表候補生として二組に転入してきたんだってさ」

 

「ふーん」

 

 何となく聞き流しながら手に持った紙コップのジンジャーエールを口に流し込む小鳥。

 

「良いやつだぜ?なんだって『料理が上達(じょうたつ)したらタダで酢豚(すぶた)を食わせてくれる』って約束してくれたんだぜ」

 

「ブッ!」

 

「どうした!?

 

「い、いや。()せただけだ」

 

(き、気付いてねぇ~!?それ『毎日(まいにち)味噌汁(みそしる)』の下りじゃねぇか!?)

 

 どうやら小鳥の見立ては正しかったらしい。

思っていたよりも一夏は(つみ)(づく)りな男のようだ、と認識を(あらた)めた小鳥は、苦笑しながらも(せき)(おさ)える。

と、いつの間にか一夏の(かたわ)らによっていた箒が不機嫌(ふきげん)そうに鼻をならす。

 

「フン、人気者(にんきもの)だな。一夏」

 

「・・・・・・ホントにそう思うか?」

 

「イヤ~、人気者はツラいねぇ」

 

 そんなやり取りを聞いていた小鳥が、白々(しらじら)しく(ひじ)小突(こづ)く。

 

「そんな事言ったてなぁ・・・。迷惑とは言わないけど困惑はするさ。今日みたいに突然俺が理由に何かやってたらびっくりするだろ」

 

「そりゃ言えてる。ま、お前は空気読むのが上手だよ。その(わり)には相当ニブいがな」

 

 からかうようにクツクツと笑う小鳥。

口を()の形にして不満を顔に出す一夏、そんなに好かれている自覚(じかく)の無い一夏としては意外(いがい)な事なのだろう。

 学級の垣根(かきね)を越えて人間の集結している1-1。

そんな教室に一組(ひとくみ)乱入者(らんにゅうしゃ)が、(とびら)を開いてやって来た。

 

「はーい、こんにちは新聞部でーす!話題の新入生の男子二人(ふたり)(ぐみ)取材(しゅざい)しに来ました~!」

 

 その言葉を聞いて『お~』と盛り上がる女子一同と、肩を落とすように()め息を()く一夏と小鳥。

 

(どうも、インタビューとかは苦手なんだよなぁ。何か、自分の事探られてる気がしてヤだし)

 

 そんな一夏の苦手意識を知るよしもなく、新聞部の女子は一夏と小鳥の元へとやって来る。

 

「私、は(まゆずみ)薫子(かおるこ)。二年で新聞部副部長やってます。あ、はいこれ名刺(めいし)

 

 名刺を受け取った小鳥は、そこに(おど)画数(かくすう)の多すぎる文字を見て苦笑いし、誰にも聞こえない(ほど)小さな声で(つぶや)く。

 

「・・・(おや)は何を思ってこの名前を付けたんだ?」

 

「ん?何か言った?」

 

「いや、下らない事を言ったまでだ。気にしなくて良い」

 

 自分の名前にツッコみ(どころ)()ると知りつつも。彼女の字面(じづら)の画数にはツッコまざるを()なかった。

 そんな事は(つゆ)知らず、(まゆずみ)は取材を続ける。

 

「ではまず、織斑くんから!」

 

「は、はい」

 

「ズバリ、クラス代表になった感想を!」

 

「えーっと・・・」

 

 不味い、何も思い付かない。

とは言え期待を裏切る訳にもいかない為、ふんわりとした言葉が口から出てくる。

 

「え、えー。頑張ります・・・?」

 

「弱~い!もうちょっと良いコメント頂戴(ちょうだい)よ~」

 

「いや、その。インタビューとか苦手で・・・」

 

 あはは、と間に合わせの笑顔で取り(つくろ)う一夏。

(まゆずみ)はボイスレコーダーの底の部分で頭を掻くと。

 

「まぁいいや、テキトーに捏造(ねつぞう)しておくから良いとして・・・」

 

「オイ」

 

 捏造と言う記者のあるまじき台詞にツッコむ小鳥、それを聞かぬフリして彼女は小鳥にレコーダーを()し向ける。

 

「じゃあ小鳥くん!副代表になった感想!」

 

 自分のペースを押し通そうとする(まゆずみ)にうんざりとした顔を向けながら、小鳥は表情を崩さずに答える。

 

「・・・・・・まぁ。元々、どのポストに()くつもりも無かったが。()いたからには全力を()くして一夏をサポートする所存(しょぞん)だ」

 

「おお!これは捏造しなくても良いコメント」

 

 一夏に比べて内容(ないよう)のあるコメントを(わた)す小鳥。

・・・・・・(じつ)を言えば一夏がインタビューを受けている()にインタビュー内容を考えていただけなのだが。

 

「そう言えば、代表を決める為にISで戦ったって聞いたけど。よくオルコットちゃんに勝てたね」

 

「それはまぁ、実質(じっしつ)()(たい)(いち)だったからなぁ」

 

「実質も何も、ああしなければ俺達が無様(ぶざま)に負けていた。よってたかって攻撃しなけりゃどうしようもなかっただけの話だろう?」

 

 小鳥がにべもなく告げる。

『手段を選ばないタイプなんだよなぁ』と、一夏が(ひそ)かに心の内で独白(どくはく)しているのを尻目(しりめ)(まゆずみ)はセシリアにインタビューを始める。

 

「あ、そうだ。ついでにオルコットちゃんもコメントちょーだい」

 

「わたくし、こういったのは得意ではないのですが、仕方ありませんわね」

 

 と()(わり)には中々気合いが入っている風に見えるし、インタビューを受けると知りつつ近くで待機(たいき)してたり、その時から(みょう)に髪を気にして(ととの)えていた(あた)り、元々()()()()()だったのだろう。

 

「コホン。まぁ、一夏さんには、国家代表候補生のわたくしが指導していく予定ですわ。そうなったからには、一夏さんはこれからどんどん強くなって━━━」

 

「あーゴメン長くなりそうだからこっちで捏造しとくわ」

 

「ちょ、ちょっと!最後まで聞きなさい!」

 

 渾身(こんしん)のコメントを聞き流され憤慨(ふんがい)するセシリア

 あははー。と、聞かぬふりして自分のペースを押し通す黛。

 なんだか大変そうだな、セシリア。と、他人事の目で事態を静観する一夏。

 他人事(ひとごと)だと見てて楽だなぁ。と皮肉気(ひにくげ)な視線で見ている小鳥。

 三者三様で事態に立つが誰一人として火消しに回る気は無いようだ。

 

「っと、じゃあ話題の専用機持ちを写真に収めて私達は退散としましょうかね」

 

「えっ?」

 

 意外そうなセシリアの声、(わず)かに喜色(きいろ)(ふく)んでいる様に聞こえるのは、気のせいではないだろう。

 

「と、すると。三人一緒に、か?」

 

「う~ん、そうだね!その方が早いし、画面(がめん)()えもするからねぇ~」

 

 そう言われた小鳥は、『うげっ』と顔を(しか)め嫌なことを隠さない。

 どうせポージングがどうのこうの言われ、セシリアから文句(もんく)を言われ、最終的にはわーわーぎゃーすかと騒がしくなるのだろう。

 

「ハァ・・・。一夏、手ぇ出せ」

 

「?・・・おう」

 

 ため息を()いた小鳥の指示に従い、素直に右手を前に出す一夏。

その下に差し込む様に自分の右手を出した小鳥は、セシリアに指示を出す。

 

「そらセシリア、一夏の上だ。手ぇ置け」

 

「えっ!?

 

「おぉ!それ良いね!」

 

 小鳥が(あご)で一夏の上に手を置くよう、セシリアに(うなが)す。

当のセシリアは、一夏との距離を詰める事が出来る思わぬ機会(きかい)を得て、テンパった様子を見せる。

 

「そ、その。ハンドクリームを塗りたいんですが・・・」

 

 これは好印象を残すまたとないチャンス。

あわよくば、香りによる印象(いんしょう)()けを狙うセシリア。

 

「めんどくさいなぁ。ほら、さっさと手置いて!」

 

 しかし相手が悪い、今カメラ(場の流れ)を握るのは新聞部の部長、(まゆずみ)である。これまでマイペースを突き通し続けた彼女が、セシリアの事情を察する筈もそれに付き合う訳もない。

 

「いっ、一夏さん。の、乗せますわよ・・・?」

 

「おう」

 

 恐る恐る一夏の手の上に自分の手を乗せようとするセシリア。

彼女のぎくしゃくしている訳が解らない一夏は、心配そうにセシリアに問いかける。

 

「大丈夫かセシリア。何かさっきから顔赤いけど、調子悪いんだったら無理しなくても良いんだぞ?」

 

「だ、大丈夫です!なんともありませんわ!」

 

 ぶんぶんと顔と手を横に振って一夏の心配を否定するセシリア。

それを見て内心ニヤニヤ(がお)の小鳥は、ムスッとした顔を崩さないでセシリアを急かす。

 

「そら、早く乗せろ。なんだったら(おれ)()二人(ふたり)だけで撮っちまうぞ?」

 

「っ、分かりましたわ!」

 

 ようは手を重ねれば良いだけの話なのだ。

『女は度胸ですわ!』とヤケクソ気味に覚悟を構えたセシリアは、意を決して自らの右手を一夏の右手の上に重ねる。

 

「よーし、ポーズは決まったね!撮るよー、はい35×51÷24は~?」

 

「え?え~っと、2?」

 

「ブ~。74.375でした~」

 

 『2じゃないんかい』と内心で呆れ半分のツッコミを入れる一夏。

 一方のセシリアは、緊張でちゃんとした笑顔が出来たかわからなかった為、パタパタと駆けて黛、もといカメラへと向かう。

 無表情の小鳥は、周りの女子が居ない事に気付き、まさかと後ろを振り替える。

 

「ん?どうしたんだ、セシリア」

 

 一夏がそう彼女に声をかけた理由は単純(たんじゅん)明快(めいかい)。カメラに収まった写真を見て驚愕の表情を見せたからだ。

一夏の後方で背後の異状に気付いた小鳥もセシリア程ではないが、驚いた顔で絶句(ぜっく)している。

 

「うわっ・・・」

 

 写真を見た一夏も思わず驚きの声を漏らしてしまった。

それもそうだろう、驚くべき行動力をもって女子のほとんどが画郭(がかく)に収まっていたのだから。

 

「箒までいるし・・・」

 

 こんな催し物には無関心を貫くまでもが枠内に(わくない)収まっている。写真の彼女も今の彼女も変わらず鉄面皮(てつめんぴ)なのがやけに不自然だ。

 

「あ、貴女(あなた)達ねぇ!」

 

「まぁまぁ、皆の思い出になって良いじゃない」

 

「そうそう、それにセシリア一人に良い思いはさせないわよー?」

 

「うぐ、」

 

 趣旨(しゅし)から外れているのは勝手に入ってきた女子達なのだが、全員悪びれる素振(そぶ)りもなくむしろセシリアをなだめ、言いくるめようとしている。

 

「ったく・・・」

 

 あっけにとられて何も言えなくなった一夏は、頭を掻いてその行動力に感嘆(かんたん)する。

と、何かを思い出した一夏は、女子から離れる為に輪から離れ、机の側に居る小鳥に問いかける。

 

「そういやさ、今回のポーズ小鳥が決めたけど。あれ何か意味あんのか?」

 

「あぁ、あれか・・・」

 

 そう聞かれた小鳥は、いつもの半開きの目を閉ざし、

 

「良い意味ではないな」

 

「・・・と言うと?」

 

「あの構図は見る人間によって意味合いが変わる」

 

 机の上の紙コップを手に取り濃ゆめのオレンジジュースをなみなみに注ぎ、続けざまにそれに口を付ける。

(だいだい)(いろ)の液体で口を(うるお)した小鳥は、挑発するような目付きを一夏に向けて問いかける。

 

「じゃあ逆に聞くが、お前はあの構図にどんな意味を見出だした?」

 

 問われた一夏は、少し考え、スポーツマンシップに(のっと)った答えを出す。

 

「━━実力順、かな。俺と小鳥の順位は()(かく)、間違いなくセシリアは俺たちよりも強い」

 

「そうだな。お前みたいな()(とう)な思考回路の持ち主ならそう思うだろうよ」

 

「と言うかそれ以外にあるのか?」

 

「あるのさ、お前に解らないだけで」

 

 たがしかし、小鳥が言うにはそれ以外の理由が在るようだ。

皮肉気に口を歪めた小鳥は、もう一つの解釈を口にした。

 

「答えは()()()()だ。バカみてえだがそいつは確実にある、そしてそう言う奴に限って嘘みたいな行動力がある。・・・だからこそセシリアを上にして()()()()()()()()()()()。面倒臭い騒動を回避するためにな」

 

「お前、そこまで考えて・・・」

 

「まぁ、考えすぎかもしれねえけどな」

 

 オレンジジュースを飲む小鳥の声は、溜め息が混じる。

一夏もそうだが、小鳥もまた女尊男卑の風潮(ふうちょう)に嫌気が()しているようだ。

 

「ま、お互いそんな事が無いように注意払ってこう、ってだけの話さ」

 

 そう言って腰かけた机から離れた小鳥は、一組の出口(でぐち)目掛(めが)一目散(いちもくさん)に歩き去るのであった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

「・・・思ったより早かったな」

 

 開口一番、クラス会から帰還した小鳥に刹那が発した言葉はその一言だった。

 

「早いも何も、一時帰還だからな。9時半頃にもう一回出ていく予定だし」

 

 一応10時までの時間制限だが、どうせ騒ぎ好きの女子達がギリギリまで居座るに違いない。

それを見込んだ上で、30分で片付けるタイムテーブルを組んでいるのだ。

 

「・・・だが、主役が居なくても良いのか?」

 

「良いんだよ。主人公ってのは物語の最初と最後にさえ居ればそれで十分だ」

 

 一夏の事はあえて(かえり)みずあっけらかんと言い放つ小鳥。

ベッドに腰掛け、そのまま仰向けに寝転がる。

 

「それに、俺が主役だなんてのも(がら)じゃない。気を(つか)ってないと場の雰囲気を悪くするような奴が主人公を僭称(せんしょう)出来る筈が無いだろう?」

 

 なら影で黒子に徹してる方がよっぽどマシだ。と皮肉を口にする小鳥。

刹那は無表情だが、呆れた様子を隠さない。

 

「それに、俺が幸せを享受(きょうじゅ)する権利なんてどこにも在りはしない」

 

「? 何か言ったか?」

 

「別に、何も言っちゃいねえよ」

 

 小声で呟いた為に刹那には聞こえなかったようだが、その呟きには(いまし)めに近い響きがあった。







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