IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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火花(ひばな)()鞘当(さやあ)

 一夏(いちか)小鳥(おどり)就任(しゅうにん)祝いのクラス会、もとい、宴会(どんちゃん騒ぎ)から一夜明け。

 午前8時40分、教室に辿(たど)り着いて一夏が見たものは、(くま)に目を細める小鳥が机に()()して寝ている光景だった。

 クラスの女子からの挨拶(あいさつ)を一通り返した一夏は、唯一(ゆいいつ)のクラスメイトの男子の後ろに腰を下ろし、近場(ちかば)の女子に(こえ)をかける。

 

「・・・珍しいな、小鳥が教室で寝てるだなんて」

 

「あぁー。確か昨日のクラス会が理由で寝不足だったんだって。それで早くから教室に来て寝直(ねな)した方が効率的(こうりつてき)だってさ」

 

「ふーん」

 

 小鳥も小鳥で楽しんでたんだな。と、得心(とくしん)をしたように息を()く一夏。

 

・・・昨晩(さくばん)、女子がギリギリまで教室を使い、教室を完全に空にするまで予定時間(よていじかん)を20(ぷん)もオーバーした事が千冬に()(とが)められ、小鳥がみっちり(しか)られた事を、一夏は知らない。

 

 と、(うわさ)()きのクラスの女子の一人が、一夏にとある噂を持ち出した。

 

「そう言えば、一夏くん。昨日転入(てんにゅう)してきた転入生(てんにゅうせい)って知ってる?中国の国家(こっか)代表(だいひょう)候補生(こうほせい)らしいんだけど」

 

 その話題に(こころ)()たりがある一夏は、いつもの調子(ちょうし)で反応する。

 

「ん?(りん)の事か?」

 

 噂好きの彼女らからすれば、その回答(かいとう)意外(いがい)な物だったらしく、驚いたように声を上げる。

 

「えっ、知ってるの!?」

 

「しかもあだ名で呼んだわよ!?」

 

 しかも、一夏が鈴音(リンイン)の事を『鈴』とあだ名で呼んだ事が(さら)に意外だった事も働き、教室中は寝てもいられないどよめきに(つつ)まれる。

 

(うるさ)いお前ら」

 

 と、その(さわ)がしさに小鳥が()きてしまった。

その目の下の(くま)は、小鳥の半開(はんびら)きの目に(さら)なる迫力(はくりょく)(あま)えている。

 

「お・・・お(はよ)う、小鳥」

 

「お早う。今は・・・45分か、流石に起きた方が良いか」

 

 軽い調子で挨拶(あいさつ)を返した(のち)、時計を見遣(みや)る小鳥。

現在時刻(げんざいじこく)確認(かくにん)し、もう寝ている時間は無いのだと把握(はあく)した彼は、首や肩を回して意識(いしき)覚醒(かくせい)(おのれ)(うなが)す。

 

「・・・・・・それと、件の転校生の名前(なまえ)(ファン)鈴音(リンイン)だろう?だったら一夏が知っていて当然だ。なんでも、幼なじみらしい」

 

 どうやら、女子たちの騒ぎの理由には何となく(さっ)しがついているらしい、これ以上(さわ)がれても迷惑(めいわく)だと、()()てる様に一夏と鈴音との関係性を乱雑(らんざつ)に説明する。

 が、しかし。その説明の乱雑(らんざつ)さが(あだ)となる。

そもそも、なぜ小鳥がそんな情報を入手しているのかが彼女らの疑問(ぎもん)琴線(きんせん)()き鳴らしたようだ。

 

「何でそんな事を小鳥くんが知ってるの!?」

 

「私たちでもそこまでは知らなかったのに!」

 

「一夏から聞いたんだよ」

 

「いつの間にそんなに一夏くんと仲良くなってたの!?」

 

「別に(かま)わんだろう」

 

「くッ・・・!!これが男女の差だとでも言うの・・・!?」

 

「知らん」

 

 女子の慟哭(どうこく)にさえ律儀(りちぎ)に答える辺り、本当に調子が悪いのだろう。

いつもなら『勝手にしていろ』と、そ知らぬ顔で全ての声を無視(むし)している(ところ)だろうに。

 そんな調子の悪い小鳥は、(くま)違和(いわかん)感に目を(こす)り、(めずら)しく親切な台詞(せりふ)()いた。

 

「さっさと散れ。この時間だ、千冬先生(我らが鬼教師)が廊下を歩いて来るぞ」

 

 その台詞にハッとなった彼女らは、(かね)が鳴るより前に着席していた。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 その昼、一夏と共に、小鳥、箒、セシリアの三人が食堂(しょくどう)()た。

その用事は言うまでも無く昼飯。

いつものように食券(しょっけん)を買い、(れつ)(なら)んだ四名(よんめい)は受け取り口の方で意外な人影を見ることになった。

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

 食堂のお(ぼん)の上にラーメンを置いた鈴音(りんいん)が、堂々(どうどう)仁王立(におうだ)ちしていた。

その勝ち気な目付きや髪型、口にだしては言えないがその身長の低さは、中学で別れた頃と変わらない。

 

(そう言えばそこんとこは箒とおんなじだな)

 

 二人の幼なじみの共通点(きょうつうてん)の発見に、(ひそ)かに心の内で手を()つ一夏。

そんな二人に向けて、文句(もんく)を飛ばした。

 

鈴音(リンイン)、一夏。邪魔(じゃま)だ、注文が出来ないだろ」

 

「あっ、ゴメン」

 

 意図(いと)せず進路(しんろ)妨害(ぼうがい)をしていた事に気付いた鈴音は、小鳥の指摘(してき)に従い大人(おとな)しく通路から身を引く。

流石にそれが出来ない程子供ではないらしい。

 

「まったく。何で早く来ないのよ、アンタを待ってたんだからね!」

 

無茶(むちゃ)()うなよ。エスパー(超能力者)じゃないんだから」

 

 理不尽(りふじん)な物言いに対して、一夏は()れている風に返答する。

実際片手で注文した塩鯖(しおさば)定食(ていしょく)を受け取っている辺り、鈴音とのこう言ったやり取りは馴れているのだろう。

一夏に続き箒がきつねうどん、セシリアが洋食ランチ、小鳥が博多うどんを受け取り、自分達の座る席を探し始める。

 

「あ、あっちが空いてます・・・けど、四席しかありませんわね」

 

 程なくしてセシリアがそれなりに空いた席を見つけるが、空席は四つ、対して人数は五人である。

少し考えて、小鳥がこう提案した。

 

「お前らで座れ。俺は一人で食う」

 

「えっ、良いの?」

 

 ぱあっ、と顔に喜色(きいろ)(とも)した鈴音は、そう小鳥に問う。

問われた小鳥は、()(いき)混じりだが、悪戯小僧(いたずらこぞう)の様な笑みを浮かべ。

 

「お前・・・と言うか、お前らは元々(もともと)一夏が目的なんだろ。それに、合ってない分()もる話も()(はず)だ。違うか?」

 

 再開の喜びを邪魔する程小鳥は人が出来ていない訳ではない。

鈴音の喜びを他所(よそ)にすたすたと一人空いている席に歩く。女子三人はその気遣(きづか)いに感謝しながら、一夏と共に四名席(よめいせき)に腰かけるのだった。

 

 

 

「・・・一夏、アンタクラス代表なんだって?」

 

「お、おう。成り行きだけどな」

 

「ふーん・・・」

 

 (りん)が話しかけてきたのは、そのラーメンの(めん)を二、三回(すす)ってからだった。

不満を隠さない一夏の返答に何か思う所があったのか、鈴にしては珍しく歯切(はぎ)れの悪い相づちを打つ。

 その違和感を誤魔化すかのようにどんぶりからゴクゴクと雄々(おお)しくスープを飲み()す。

 

 (あい)()わらず鈴は汁物(しるもの)でスプーンレンゲの類いは使わない。本人曰く“女々しい”のだそうだ。

 

そんな事を思い起こし、『お前女だろうが』と心の内でツッコミを入れていた一夏に、何か躊躇(とまど)っている要な安定しない声音で鈴が声を掛けた。

 

「あ、あのさぁ」

 

「ん?どうした?」

 

「・・・アンタがどうしてもって言うなら。ISの操縦、見てあげても良いけど?」

 

 その視線はどこか行き場を探して虚空(こくう)をさ(まよ)っていた。

 

「え、良いのか?それなら頼みたいけど」

 

前の実習(じっしゅう)経験(けいけん)実力(じつりょく)不足(ふそく)痛感(つうかん)していた事もあって、(わた)りに船だと思った考えた一夏は、その問いを()で返す。

が、しかし。本人が良くても周囲(しゅうい)はそれを許さないらしい。

 

「あなたは二組でしょう!?敵の(ほどこ)しは受けませんわ」

 

「一夏に教えるのは私の役目(やくめ)だ。私が(たの)まれたのだ」

 

 テーブルに手を置き身を乗り出してまで抗議(こうぎ)の声を上げる二人。

その形相は何か鬼気(きき)(せま)るものがある。

 しかし、そんな物はどこ()(かぜ)(すず)しい顔をした(りん)は、二人に向けて敵意(てきい)丸出(まるだ)しの台詞(せりふ)を告げる。

 

「あたしは一夏に言ってんの。関係無いのは引っ込んでてよ」

 

「関係ならある!一夏が私にどうしてもと頼んでいるのだ」

 

「それに、一夏さんは一組の代表ですのよ。一組の人間が教えるのは当然ですわ。後からしゃしゃり出てきて何を図々(ずうずう)しい事をおっしゃるのですか?」

 

「はんッ、図々しいも何も、あたしは一夏と小学生からの付き合い何だから後もへったくれもないわよ」

 

「そ、それを言うなら私の方が先だぞ!それに、一夏は何度もうちで食事をしている間柄だ。付き合いの深さもそれなりにある」

 

 そう、小さい頃から千冬(ちふゆ)円花(まどか)の三人だけで暮らしていた織斑家は、家長の千冬が懇意(こんい)にしていた篠ノ之(しののの)家のご相伴(しょうばん)(あずか)かっていた事が何度かある。

 

 その(たび)に束の無茶苦茶(むちゃくちゃ)加減(かげん)にふりまわされていたのだが。

 

 がしかし、家に上がってご(はん)を食べていた事は、鈴に対してはそれほどのアドバンテージにはならない。

 

「うちで食事?それならあたしん()でもそうだったわよ」

 

 そう言えばそうだ、鈴の家は中華料理屋で、彼女の誘いと言うのもあったが、一夏と円花の二人はそれなりにお世話になっていた。

鈴の父親、(ファン)楽音(ガクイン)(いとな)む店は、特徴として全ての料理の量、質、値段の全てが食べ盛り向けで、個人的に気に入っていた一夏は、円花とは別に一人で食べに行っていた事もある。

 

 ちなみに、家計を助けようと働き口を探していた一夏を(やと)ってくれたのも楽音だったりしていて、何かと彼には頭が上がらない思いでいる。

 

 と、物思いにふけっていると。

 

「い、一夏!どういう事だ!?聞いていないぞ!」

 

「わたくしもですわ!一夏さん、納得の行く説明を要求します」

 

 鬼気迫(ききせま)(いきお)いの矛先(ほこさき)が、今度は一夏に向いた。

何が二人の追求(ついきゅう)意欲(いよく)をかき立てるのか。困ったように頭をかいて、嘘偽り無く答える。

 

「説明って言ってもなぁ・・・単純に鈴の家が中華料理店をやってて、そこに良く行ってたってだけだぞ?」

 

「な、何?店なのか」

 

「あら、そうでしたの?それなら、別に不思議な事は何もありませんわ」

 

 ほっとしたように箒とセシリアが胸を()で下ろす。

しかし、対照的(たいしょうてき)になぜか鈴の表情が途端(とたん)にふてくされたような物になり、怒りを(まぎ)らわすようにラーメンを(すす)る。何も悪いことを行ったつもりは無いのだが。

 

「そう言えば。親父さんやお袋さんは元気してるか?まぁ親父さんは病気と無縁(むえん)だろうけど」

 

「あー、・・・・・・うん、元気━━━のはずよ」

 

 話しかけてきた時よりも歯切れの悪い返答を返す鈴。その表情も何だか浮かない物になっている。

元気が取り柄みたいな彼女がそういった顔をするのは相当珍しく、違和感を感じずにはいられない。

しかし、それを追求するより先に鈴が話を始める。

 

「それよりさ!今日の放課後、時間ある?久し振りだしどっかいこうよ。駅前のファミレスとかさ」

 

「あー、あそこ去年(つぶ)れたぞ」

 

「あっ・・・そう。・・・・・・じゃ、じゃあ学食でもいいからさ。その、積もる話もあるでしょ?」

 

 残念ながら積もる程の話題は無い。そもそも鈴が中国本土に帰ったのが中学二年の頃だったので、鈴と会っていない期間と言うのも一年と少しくらいで、その半分も受験勉強に費やされた。

結果として伝えておくこと、伝えたいことと言うのはこれといって無いのだ。

 

「━━━生憎(あいにく)だが、一夏は私とISの特訓をするのだ。放課後は埋まっている」

 

「そうですわ。クラス対抗戦に向けての特訓が必要ですもの」

 

 おかしい、なぜか自分の意思とは関係無しに放課後の予定が埋まっていく。

 

(おかしいな~、俺はその予定を入た覚え無いんだけどなぁ)

 

 もしかしたら自分以外の全員に行き渡っているスケジュールがあるのかもしれない。

とは言え自分に関わる物だと言うのなら本人にも伝えてもらいたいものだが。

 心中(しんちゅう)で不満を呟く一夏。

 

「じゃあそれが終わったら行くから。時間空けといてね。じゃあね、一夏!」

 

 そう言って丼を乗せた(ぜん)を持ち、席を立つ鈴。

食器類の片付けに行ったのだろうが、恐らくは帰ってこないだろう。昔から彼女は自分の話をするだけして相手の話をあまり聞かない傾向(けいこう)がある。

 またもや自分の意思を無視して予定が組まれてしまった。

 

「一夏、(わか)っているな」

 

「あーはいはいわかってるって」

 

 苦笑いで対応する。

鈴の約束は断れないわ身に覚えの無い二人の特訓があるわ、今日は珍しく体育やISの実習の無い日だと言うのに疲れを感じるのは何故(なぜ)なのだろう。

素朴な疑問を抱えながらも手を合わせ、昼食を終える一夏だった。







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