IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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種明(たねあ)かしと挑戦(トライアル) 1/2

 鈴音(りんいん)一夏(いちか)の部屋を奪取(だっしゅ)しようと、部屋に押し掛け、騒動(そうどう)が起きてから一夜。

 

「・・・なぁ小鳥」

 

「どうした?」

 

 騒動の原因(自覚(じかく)無し)と小鳥は、(めずら)しく二人だけで朝飯(あさめし)を食べていた。

 一夏が一度(はし)を置いて問い掛けたのに対し、小鳥はからし蓮根(れんこん)頬張(ほおば)りながら答える。

 

「小鳥さ、昨日千冬(ちふゆ)(ねえ)に電話掛けるって(おど)しかけてたけどさ。あれいつ手に入れてたんだ?」

 

 先日、鈴音を撃退(げきたい)する為に用意(ようい)した小道具(こどうぐ)

IS学園の人間で織斑千冬の名前を出されて退()かない者は居るまいと用意していた物だったが。

 

「ああ、あれか・・・。あれはー、ハッタリだ」

 

 さらっと、言い流す。

それを聞いた一夏は、何か期待外(きたいはず)れの答えを聞かされたような顔をする。

 

「何だ、結局(けっきょく)あれ千冬姉と(つな)がんねえのか」

 

「そりゃそうだ。俺と千冬先生の間に何が()る?何も()るまい。あれは、寮監(りょうかん)事務室(じむしつ)と繋がる番号だ」

 

 ある意味千冬と繋がる番号でもある為、(うそ)は言っていない。

後はその名前を『寮監事務(りょうかんじむ)』から『織斑千冬』に変更すれば“(確率で)織斑千冬に繋がる(かもしれない)電話番号”の完成である。

 それを聞いた一夏は、感服(かんぷく)すると同時に(あぎ)(がお)を浮かべた。

 

「ホントお前、悪知恵(わるぢえ)(はたら)くよな」

 

予防策(よぼうさく)二重(にじゅう)三重(さんじゅう)()ってると言え、人聞きの悪い」

 

 そもそも、一夏の(さっ)しが良ければあんな事は起こらなかった(はず)である。悪口を言われる()われは無い。

もしかしたら自分はとんでもない鈍感(どんかん)ジゴロ唐変木野郎(とうへんぼくやろう)と友人関係にあるのかも知れない。と、心内(こころうち)で舌を打つ、まるで創作物(そうさくぶつ)(じょう)冗談(じょうだん)みたいな本人(ほんにん)はそんな気も知らずに焼きジャケをご飯と共に口に入れる。

 

「そういや(ほうき)(やつ)はどうした?アイツがお前の隣に()ないとは珍しい」

 

 先日まで忠犬(ちゅうけん)みたいな姿勢で何かと一夏の後を着けていた箒の姿(すがた)が無い。

十中(じゅっちゅう)八九(はっく)一夏に気がある箒の事だ、隣人がそうである以上、(とも)()れる時間を(のが)すとは思えないが。

 

「ああ、なんでも部活の朝練(あされん)らしい。これ以上休んでたら部から除名(じょめい)するぞ、って(おど)されたんだってさ」

 

「ったく・・・お前の言う通りになったな」

 

 一夏が前々(まえまえ)から危惧(きぐ)していた事だが、箒は剣道部の修練(しゅうれん)放置(ほうち)して一夏の特訓(とっくん)に付き合っていたらしく、とうとうそのツケが回っていたらしい。

 彼女の不在(ふざい)の理由が彼女自身の身から出た(さび)だと言うことを知り、拍子(ひょうし)()けした小鳥は、毒づく感想だけを()べる。

 

(この唐変木(とうへんぼく)は気付いちゃいねえが、今日は女子からの視線が多い。自分がチャンスであることを知っていやがる)

 

 その虎視眈々(こしたんたん)とした視線(しせん)()び続け、本当なら舌打ちの一つくらい打ちたいほどストレスが貯まっている訳だが、それで止める訳でもないだろう。

不機嫌さを隠し、飯を口に運び味噌汁(みそしる)で一息で流し込む。

 

「っと、ごちそーさん。先に教室行っとくぞ」

 

「おう。じゃあ教室でな」

 

 適当(てきとう)に手を振って食堂から出ていく。

後ろの一夏がどんな表情をしているかは知らないが、一夏も自分の表情を知る事はないだろう。

チッ、と。(まわ)りに聞こえる程盛大(せいだい)舌打(したう)ちする。きっと今、自分の顔は悪い表情をしている事だろう。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 教室棟(きょうしつとう)へ向かうべく、寮棟(りょうとう)から出て来た小鳥は、生徒用玄関(せいとようげんかん)の奥で小さな人だかりが出来ているのを見つけた。

それは、廊下(ろうか)掲示板(けいじばん)()られた大きな紙に集まっているように見える。

 

「・・・なんだ?」

 

 (さそ)われたように人だかりの外側にまでやって来た小鳥は、半開(はんびら)きの目で紙を見上げそのタイトルを読む。

 

『クラス代表対抗戦(だいひょうたいこうせん)日程表(にっていひょう)』と書かれたそれの意味を冷静(れいせい)に読み取った小鳥は、左から軽く流し見ていく。

 三年ブロック、二年ブロック、一年ブロック。小鳥の目的の物は、(ほど)なくして最も右に見つかった。

 それは小鳥の級友(きゅうゆう)にしてクラス代表、織斑一夏の対戦表である。

 小鳥は一組の副代表であり、一夏のサポート役であることから、その対戦カードを注視(ちゅうし)しない訳にも行かない。

 だが、それを見た時小鳥は愕然(がくぜん)とした。

 

「・・・おいおい、昨日の今日でそれって・・・マジかよ・・・!」

 

 声は小さいものの、それを見た小鳥の声は驚愕(きょうがく)()れている。

一年生ブロック一回戦、その対戦は。

 

 

1-1:織斑(おりむら)一夏(いちか) 対 1-2:(ファン)鈴音(リンイン)

 

 

 まさかの 押し掛けVS家主(やぬし) だった

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 その日の放課後より小鳥の情報収集が始まった。

 

 

前回ブルー・ティアーズの情報を入手した時と同様(どうよう)、裏アカウントを利用した学園のデータバンクへのアクセスはもちろんの事。

外部のネットワークを利用した個体の特定。

鈴音がアリーナで訓練をすると言うのなら、一夏を()っぽいてその様子を見に行く事もあった。

 ただ、その一連の情報収集を見た幾人(いくにん)かの女子から『小鳥は鈴音に気がある』と言う(むね)(うわさ)を流されたときは、副代表だなんて()めてしまおうかと考えることもあったが。

 

「それなりに、集まって来たがねえ・・・」

 

 一週間(いっしゅうかん)二日(ふつか)が経ち、自室のベッドの上で胡座(あぐら)をかき、紙に書いた途中経過(とちゅうけいか)を振り返る。

 集まった情報は三つ

 

1.ISのざっくりとした概要(がいよう)

2.基本性能(きほんせいのう)

3.単一仕様(ワンオフ・アビリティー)の売り文句(もんく)

 

1. 鈴音の専用機の名は甲龍(シェンロン)

人類革新連盟(じんるいかくしんれんめい)の連盟国の一つである中国の第三世代型IS。

・機体コンセプトは『安定した挙動(きょどう)と性能』『長時間の稼働(かどう)』の二つ。

 

2. 基本性能は『第二世代に毛が生えた』と言った所。

・コンセプトがコンセプト(ゆえ)に、量産性や安定性を重視(じゅうし)した設計を持つ。

単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使う事に特化した機体ではなく、『第二世代機に第三世代兵装を装備した』と言うのが実情(じつじょう)

 

3. 問題の第三世代兵装。

・・・(あま)り情報が集まっていない。

名称(めいしょう)は『衝撃砲(しょうげきほう)

上記(じょうき)のメカニズム。

→空間その物に圧力をかけ、眼に見えない砲身(ほうしん)を形成。その空間の(ゆが)()の差による衝撃を砲弾として撃ち()む。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

「んぁー!こなくそ。・・・後少しなんだがなぁ」

 

 勢い良く腕を振り上げ、背を()ばす。

そのままベッドに仰向(あおむ)けになり、天井(てんじょう)を見上げた。

 この衝撃砲こそが勝敗(しょうはい)(わか)(かぎ)になるのは間違(まちが)いあるまい。

小鳥はこれを『超強い空気砲』として(とら)えているが、()たしてそれが正解なのか。

 

「━━━実物を見ない事には、話にならんな」

 

 仮にそれが正解だったとしても、実際に甲龍(シェンロン)搭載(とうさい)されている衝撃砲が如何(いか)(ほど)の威力、弾速なのか。そればかりは実物を見ない事には判別がつかない。

 しかも代表戦を意識しているのか、一応(いちおう)毎日アリーナに来て特訓はしているが、全く衝撃砲を使おうとしないのだ。

基本的に対策(たいさく)と言う物は情報が有ってからこそ。だと言うのに情報が無ければ(さく)もへったくれもない。

 

「━━━お手上げって事にしたくはないな」

 

 これは自分の仕事である。背負わされた物であれ何であれ、一度始めた仕事だ。『出来ませんでした』だなどと言って投げ出したくもない。

そもそも、そんな事をすれば鈴音との情報戦に負けた気がして正直(しゃく)だ。

 

「オドリ、何かあったのか?」

 

「ん?いや、お前の心配する事じゃない」

 

 ベッドの上で紙資料(かみしりょう)をバラ蒔き、仰向けに寝転がっていた小鳥に、同室の刹那(せつな)が声を掛ける。

 いつもなら就寝の時間である11:30に、小鳥はこう言う事はせず、むしろいつだって刹那より先に(とこ)に就いているのだ。

 

「そうか」

 

 そう言って、窓の近いベッドに横になる刹那。

最近気づいたのだが、刹那と言う少年は世間一般的からは『素っ気ない』もしくは『淡白(たんぱく)』な性格をしている。

 最初は過去が無い(ゆえ)に世界に戸惑っているのかとも思ったが、そうでもないらしい。

 とは言え冷淡(れいたん)と言うほどでもなく、押せば返すし、押さねば返さないと言うだけの話である。

こちらから押せば返してくれるし、『聞くな』『言うな』と言えば従順(じゅうじゅん)に応じてくれる。

馴れ合いが苦手な小鳥にとってはそう言った性格の刹那は接しやすい人間だった。

 

「なぁ刹那」

 

「何だ」

 

 ピロートークはしない主義だが、行き()まった現状の打開(だかい)に期待を込め、刹那に問い掛ける。

 

「もし、お前が欲しい情報を所有している奴が居るとして、だ。お前がそれを手に入れる為に、お前はどうする?」

 

「何らかの手段で相手に詰め寄り、開示(かいじ)(せま)る」

 

物騒(ぶっそう)だなオイ」

 

 即答であった。

一番早い手ではあるが、実行(じっこう)(はばか)られる手段の提示(ていじ)に苦笑いを浮かべる(ほか)なんともし(がた)い。

 

「━━━まぁ、一応聞いとくが、そうした方が良い理由は?」

 

「話し合いでは時間がかかり過ぎる。最終的にそうなるのなら、そうする方が良い・・・それに、」

 

「それに?」

 

「ISの情報なら、ぶつかった方が早い」

 

「成る程・・・。OK、参考になった」

 

 そう言って手作り小型ノートパソコンを取り、丁寧(ていねい)に両手で閉じる。

(つくえ)の上にあるこれまたお手製の充電(じゅうでん)ポットに置いた小鳥は、すぐ側の照明スイッチに手を掛ける。

 

「じゃ、電気落とすぜ」

 

「ああ」

 

「お休みー」

 

 パチン、と小気味(こぎみ)()い音と共に部屋に暗闇(くらやみ)(おとず)れる。

(かす)かに見えるベッドに潜り込んだ小鳥は、その中で刹那と背中合わせになる。

 

(さあって・・・考えるのは止めにしようや)

 

 誰もが眠ろうと暗闇に眼を(つむ)る中、小鳥遊は悪巧(わるだく)みに笑顔を浮かべていた。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「━━━よっ」

 

「小鳥・・・アンタ何でここに!」

 

 クラス代表対抗戦の対戦カードが発表されてから六日、いつものようにアリーナに来ていた鈴音の前に、一組の副代表にして一夏の参謀(さんぼう)小鳥(おどり) (ゆう)がそこに居た。

 黒と銀に(いろど)られた銀影を身に(まと)い、空を()く小鳥は、親しい友人に久し振りにあったように軽い調子で声を掛ける。

先日(せんじつ)()え湯を飲まされている鈴音は、警戒心(けいかいしん)丸出(まるだ)しで問い掛ける。

 

「アンタ、何しにここに来たのよ!?」

 

「あー何。力試しだよ、これ(まで)まともにタイマンの経験してねぇからな。俺自身の今の『位置』ってヤツを知りたいのさ」

 

 何の事も無く、当然の事のように()げる小鳥。

しかし、次の瞬間には凶悪(きょうあく)()みを見せて、

 

「それと、(いま)話題(わだい)の中国代表が一体どれ程の者か、それも知りたくてなあ」

 

「は?何、私を試そうっての?」

 

 その台詞(せりふ)挑発(ちょうはつ)と受け取った鈴音は、喧嘩腰(けんかごし)で聞き返す。

 

「言っただろう?()()()()()。何も、これで解るのは俺の『位置』だけじゃない、一石二鳥(いっせきにちょう)だとは思わないか?」

 

「はっ!アンタなんかにあたしが(はか)れるかっての。実力の半分(はんぶん)でコテンパンにしてやるわよ!」

 

「ほう?それは俺の挑戦を受けると言うことで良いんだな?」

 

「ええ、ええ。アンタこそ、()いた(つば)()むんじゃないわよ?」

 

 宣戦布告(せんせんふこく)を受け取った鈴音。

小鳥は歪めた口角(こうかく)最大限(さいだいげん)()()げて笑う。

 

「当然だ。俺は嘘は吐かない主義(しゅぎ)なんでね」

 

「へえ、あたしに見せた千冬さんの電話番号は嘘だったのに?」

 

 どうやらこの九日間(ここのかかん)の内に小鳥の見せた電話番号がハッタリである事がバレたようだ。

 苦笑(にがわら)いを浮かべながらも、小鳥はヘラヘラと言い返す。

 

「オイオイ。言い()かりも良い加減(かげん)にしてもらいたい所だな、あれは確かに千冬先生に必ず掛かる物じゃないが、一応千冬先生に掛かる可能性はあるから間違ってもないぞ」

 

「そー言うのは誇大表現(こだいひょうげん)って言うのよ!」

 

「クックック・・・その通りだな。だがあの電話番号に掛けりゃ遅かれ早かれお前はあの場から追い出されてたんだ。むしろ良かったじゃないか、本当に先生に怒られなくて」

 

(ほん)(とう)にああ言えばこう言う・・・ッ!」

 

 喉を鳴らして欺瞞(ぎまん)肯定(こうてい)する小鳥に、もう話にならないと確信した鈴音は、怒りを()(いき)()き出して二振(ふたふ)りの青竜刀(せいりゅうとう)()び出す。

 

「・・・もういいわ。アンタとは話にならないし、直接(ちょくせつ)ボッコボコにしてやるわよ」

 

「やっとこさ理解したか」

 

 自分の挑発(ちょうはつ)に乗る鈴音に、しめた、と(わら)う。

どうも、(ファン) 鈴音(リンイン)と言う人間は()()ぐで(あお)耐性(たいせい)が低いらしい。

(いじ)甲斐(がい)のある玩具(オモチャ)を見つけた小鳥は、今後の(たの)しみを思いながらバックパックのダブルブレード『アイアス』を抜き、左の方を前に突きだし、右を肩に(かつ)(かま)えを取る。

 

「言っとくけど、あたし、強いわよ」

 

「そうかい、なら戦い甲斐(がい)が、あるってモンだッ!」

 

 言うが速いか、スラスターを全力で()かし、鈴音に突撃(とつげき)する。

直剣(ちょっけん)青竜刀(せいりゅうとう)がぶつかり、火花が散る。

 左の剣で青竜刀をかち上げるように切り上げた小鳥は、さらに低い軌道(きどう)で鈴音の身体(からだ)(ねら)う。

 

「ぐッ!」

 

 大振りの一撃(いちげき)を左の刀で受けた鈴音は、後退(こうたい)して距離を取る。

 

「オラオラァ!休めると思うなよ!」

 

 小鳥は更に接近(せっきん)追撃(ついげき)(はか)る。

二振りの青竜刀を(つか)連結(れんけつ)、両刃の偃月刀(えんげつとう)とした鈴音はそれで迎え撃つ。

 振り下ろす右の剣は頭の上で偃月刀(えんげつとう)()で止められるが、すぐさま横一閃(よこいっせん)、左の剣を振り抜く。

 

「こん、なろ!」

 

「ガッ・・・!」

 

 前蹴(まえげ)りで小鳥を遠ざけ、横の斬撃(ざんげき)(かわ)す鈴音。

鳩尾(みぞおち)にキツい一発(いっぱつ)(もら)い、軽くえずく。

 しかし、正直に体勢を整えている場合ではない。

 

「はあっ!」

 

「うぉッ!?」

 

相手は近、中距離戦を得意としている機体である。空中で転がるようにして横を向いた小鳥は、間髪容(かんぱつい)れず、左へと走る。

 次の瞬間には、小鳥が居た場所に鈴音が偃月刀(えんげつとう)で斬りかかっていた。

 

「んなろ・・・ッ!」

 

 後ろを向いて全力後退(ぜんりょくこうたい)しながらアイアスのビームライフルと腕部バルカンをバラ()き、鈴音をその場に()(とど)める。

狙いもせず撃った数々のビームは、ほとんどが当たらず空に散るだけだが、(なに)六門(ろくもん)一斉砲火(ラピッドファイア)だ。母数(ぼすう)が多く、時折(ときおり)当たる一発(いっぱつ)一発(いっぱつ)がじわじわと鈴音のシールドエネルギーを(けず)る。

 

「あぁもう、鬱陶(うっとう)しい!」

 

 バックステップで一気に距離を取った鈴音。

 

(━━━来るかッ!)

 

 この距離で彼女が攻撃する為には(くだん)の衝撃砲しか手段は無い。

 すぐにでも(かわ)せるよう身構(みがま)えつつ、しかし射撃は止めない。

 

「喰らえ!衝撃砲!」

 

 甲龍(シェンロン)の肩アーマーがバシャリと開き、エネルギーが集中しているであろう、赤熱化(せきねつか)した内部が外界に(さら)される。

 エネルギーの上昇具合(じょうしょうぐあい)から砲撃(ほうげき)発射(はっしゃ)された事を把握(はあく)する小鳥は、それを()けようとして

 

 

 見えない衝撃に()()()()()()()()()

 

「ガ、っア・・・!?」

 

 ミシリ、と(きし)頬骨(ほおぼね)

一拍(いっぱく)遅れて停止慣性(ていしかんせい)(はたら)きが力点(りきてん)に殺され、顔を起点(きてん)に小鳥の身体(からだ)が吹き飛んだ。

 

(く・・・そ!思ったより弾速も威力も高い!)

 

 吹き飛びながらも鈴音の方を(にら)み、次の一撃を警戒する。

しかし、鈴音は追撃をしてこない。

どうやら次弾装填(じだんそうてん)までに少しばかりタイムラグが生ずるようで、心身宙返(しんしんちゅうがえ)りで体勢を建て直した時点で衝撃砲の追撃が放たれる。

 

(ラグがあるっつったって、コイツは・・・!)

 

 アイアスを合体(がったい)させる(ひま)も無い。

二振りの剣を交差させ身構(みがま)える小鳥は、またもや衝撃を正面から受け止める事となる。

 

「ぐっ・・・う!」

 

 銀影の出力の高いPICでも相殺(そうさい)出来(でき)ない威力の攻撃に、後ろへ押し退けられる。

 先の直撃(ちょくげき)と今の防御でシールドエネルギーがかなり(けず)られた。

 これ以上の命中(めいちゅう)不味(まず)い。鈴音を中心に時計回(とけいまわ)りを(えが)いて飛び始める。

 

(コイツはヤバイ。思った以上に完成度(かんせいど)(たけ)え!)

 

 正直見くびっていた。どうやら虎の子の第三世代兵装だと思っていたそれは、(すで)成獣(せいじゅう)と化していたようだ。

 考え直してみると、IS学園に(まん)()して送り出すISがお粗末物(そまつもの)だなどと、あり得る訳が無い。そもそもあの中国が遅ればせながら出してきた代物(しろもの)だ。あの中国が。

見栄(みえ)虚勢(きょせい)が服を着けて歩いているようなあの国が、中途半端(ちゅうとはんぱ)な機体を実用させるとは思わない。ハイそこJ-20(パチモン戦闘機)は?とか言わない。

 

(()(かく)コイツは動き続けるしかねぇ!)

 

 クールタイムはおおよそ二秒。

二門(にもん)砲塔(ほうとう)から交互(こうご)に放たれる砲弾。チャージから予測できる発射タイミングを元に不可視(ふかし)の攻撃を必死に回避(かいひ)し続ける。

 

「ホラホラ!さっきまでの威勢はどこ行ったのかしら?!」

 

「うっせえ!言ってろ!」

 

 カタログスペックを信用するなら、甲龍(シェンロン)の通常、瞬間最大速は共に銀影以下。追い付かれる事はあるまい。とは言え、このままではジリ貧だ。

 どうも鈴音自身のスペックが高い。格闘戦のセンスもさることながら、甲龍(シェンロン)の衝撃砲を利用した中、遠距離戦も卒無(そつな)くこなしている。

 考えてもどうしようも無いと腹を(くく)って考えるのを止めた訳だが、流石(さすが)に考えなさ過ぎた。

甲龍(シェンロン)の完成度もさることながら、パイロットの鈴音がその武器の能力値を完全に引き出している。

 

「ったく・・・凄い奴だよ」

 

 面倒臭(めんどうくさ)いほど弱点の少ない相手がここまで厄介(やっかい)な敵になるとは思わなかった。

 

(とは言え・・・やられっぱなしも(しょう)にあわんな)

 

 小鳥の本来の目的は衝撃砲のデータを()る事にあるので、別に負けて痛む腹は無い。

が、しかし。かと言って只々(ただただ)何もせずにボコられて負けると言うのも、負けず嫌いな小鳥にとっては考えがたい結論だった。

 

 ならば勝利に至る為のルート(勝ち方)を探るまでだ。

総合的(そうごうてき)な能力値で(おと)る小鳥が鈴音を下す為に必要なのは、壁を()()()力ではなく、()()力だ。

 それを可能にするには総合能力(そうごうのうりょく)ではなく、一部の突出(としゅつ)した能力を最も有効的(ゆうこうてき)活用(かつよう)せねばならない。

 小鳥は回避を繰り返し、動き続けながら頭を回す。

 

(俺が鈴音に対して取れるマウントは二つ・・・。機動力と防御力)

 

 銀影(ぎんえい)は、本体の機動力、“アイアス”の防御力の二つの点で甲龍(シェンロン)を上回る。

 

(ま、それ以外は甲龍(シェンロン)の方が上回ってんだよなぁ)

 

 60%の完成度とは言え世知辛(せちがら)い事である。

とは言え長所(ちょうしょ)長所(ちょうしょ)だ、戦術(せんじゅつ)を考え始める。

 

・・・・・・こうやって動き回りながら考える事が出来るようになっているのがセシリアと箒が追いかけ回してくれた成果(せいか)だと言うべきなのだろうか。

 

(━━━考えんどこ)

 

 それについては考えた所で(せん)の無い話だ。

 

 気を取り直して。

鈴音に攻撃を行う為にはあの衝撃砲を(くぐ)()ける必要がある。

さて、あの段幕(だんまく)をどうやって潜り抜けるかだ。

 

1.普通に回避しながら接近する。

2.被弾覚悟(ひだんかくご)で突っ込む。

3.近接戦は(あきら)めて遠距離戦を(いど)む。

 

(・・・・・・まぁ、1は無理。3は出来るけどほぼほぼ勝ち目無し。2が一番妥当(だとう)かな)

 

 幸いこちらには“アイアス”と言う、()()()()()()()()()()()(たて)がある。

衝撃砲の砲弾が空間歪曲(くうかんわいきょく)を利用したエネルギー体であるのなら、銀影からすれば絶好(ぜっこう)好餌(こうえ)(ほか)ならない。

 

(一発、かましてやるか)






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