IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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何をした!?(What's happening!?) 1/2

「うーす」

 

「あ~、オドリンだぁ~」

 

 小鳥(おどり) (ゆう)が己の専用機を修復に格納庫(ハンガー)に向かうと、一年のホープ、布仏(のほとけ) 本音(ほんね)が異常に遅い歩みでこちらに寄って来た。どうやら部屋に居るのは本音一人(ひとり)だったらしい。

 

ちなみにだが、この格納庫は二年の整備科(せいびか)が使用する為の物であり、一年の格納庫には無い3Dデータ出力装置(プリンター)併設(へいせつ)されている。

 小鳥はそれを使用する事を目的(もくてき)に、(まゆずみ)とのツテを利用(りよう)してこの格納庫を使わせてもらっていると言う訳だ。

 

本音(ほんね)?どうしてここに?」

 

 つまり、この場所を借りている小鳥がここにいるのは問題ないが、一年の本音がここにいるのはやや不自然(ふしぜん)な事なのだ。

 そう疑問に思い、当人(とうにん)にその(わけ)()う。

 

「えぇーっとねぇ~。整備科以外の人には~、喋っちゃダメだよ~?」

 

「あ?機密情報(きみつじょうほう)なのか?」

 

「うん。今ね~、IS学園独自のISを造ろうってプロジェクトがあr」「あーあー、何も聞こえないなぁー!!!!」

 

 耳を(ふさ)ぎながら大慌(おおあわ)てで本音の台詞(せりふ)(さえ)り、機密を聞いていないポーズを必死(ひっし)に取る。

 

「バッッッッカかお前は!!!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

「ええ~?オドリン聞いてたよね~?ISのどくj」

 

 最早手段を選んでいる場合ではない、右手で本音の口を(ふさ)ぐ。

 

「聞こえねえって言ってるだろ!!お前も(だま)っとけ、()()()()()()()()()()()!!」

 

 そこまで言って本音の耳元(みみもと)に顔を()せて誰にも聞こえないような小声で(ささや)きかける。

 

「良いか。ここは国際的(こくさいてき)施設(しせつ)なんだ、()()()()()()()()()()。もしそんな事が明らかになってみろ。俺がでさえ予想がつかない事態が起こるぞ・・・それに」

 

 口から手を離し、顔を元の位置に戻して、普通の声で話を続ける。

 

「俺が機密情報を()らしたらどうするつもりだったんだ。軽いつもりは無いが、俺の口が重いなんて自信(じしん)は無いぞ」

 

 本当は自分の予想のつかない事態に巻き込まれたくないだけなのだが、上部(うわべ)だけでも心配するフリはしておこう。

 

「だいじょーぶだよ~。オドリンは嘘つきだから~」

 

「そいつは話さない事の理由じゃねえのか・・・?」

 

 そう言われた小鳥は、首を(かし)げながら本音を通り()して専用機に向かう。

 

「・・・・・・ま、何かあったらあったら俺に言え。気が向いたなら手伝(てつだ)ってやる」

 

「・・・うん、じゃあ~また~」

 

 背中の向こう側に振り向くことなく手を振って、小鳥は己がすべき事に歩いていった。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「さて、補修パーツ()けてくか」

 

 Eカーボン製の(はこ)や板を取り出し、エネルギーコードに(つな)がれた銀影(ぎんえい)を見上げる。

 小鳥の格好は、カーキグリーンのツナギを着け、白いタオルを巻いた『いかにも』といった服装である。

三日前にボコボコになったスラスターノズル(など)の細やかなパーツは、自然修復効果(しぜんしゅうふくこうか)でかなり綺麗(きれい)になっているが。その一方(いっぽう)で大まかな装甲(そうこう)などは、設定(せってい)により修復を止めていた(ため)、その黒い総身は鈴音(りんいん)との戦闘でついた傷がそのままになっている。

 小鳥が取り上げた黒いパーツは、へこんだパーツがそうなる前のような形状(けいじょう)をしており、それらが銀影のパーツの複製品である事を示していた。

 

この三日間、小鳥は一夏(いちか)の特訓に付き合っていなかったが、それは銀影の補修に当てていた。

三日前に整備室の拝借(はいしゃく)をし、前二日でデータ設計と出力(しゅつりょく)を終えていた為、今日はそのパーツの組み上げ(アッセンブル)調整(ちょうせい)にやって来たのだ。

 

「何の不具合(ふぐあい)も無ければ良いんだが・・・」

 

 ある程度の失敗を覚悟して、一部のサイズを変更した設計データを用意(ようい)しているが、出来ることなら再出力の手間はしたくない。

 

次々と他のパーツを手に取り、それ同士(どうし)を組み合わせていく。

一つはパーツの模様が合うように、一つは(ねじ)り込むようにと、組み合わせていく内に装甲パーツがより大きくなっていく。

 

「パーツ同士の組み合いは良し、後は銀影にちゃんと引っ付くかだな・・・」

 

 足場を利用し、最も破損(はそん)の大きかった胸部装甲にまで登ると、組み上がったパーツを足元に置き、電磁性ドライバーガンを手に取る。

ドライバーガンから伸びるコードには、腰のベルトに留めてられるほどのサイズのバッテリーがあり、そのスイッチをオンにした小鳥は、拳銃に良く似たドライバーガンの回転部を装甲の隅に押し付ける。

 ドライバーガンの引き金を引くと『バシュン』と言う音が飛び、引き抜いた回転部の先には、(あま)りに細かいせいで側面が平らに見える極小(ごくしょう)のネジがあった。

普段はISの常温超電導効果で引き付けられていて回すことも叶わないが、磁界を乱すことで回しとる事が出来るのだ。

 

 それを十数ヵ所で繰り返すと、胸部の最も大きいパーツが外れる。

 

「いやー、一昨日(おととい)から見てたけど、見事だね小鳥くん」

 

 不意に、後ろから声が掛かる。

振り向いて見てみると、そこには小鳥に格納庫を貸してくれた(まゆずみ) 薫子(かおるこ)が居た。

声の主が誰か分かった小鳥は、作業に戻りつつ、変わらない調子で答える。

 

「当たり前だ。()三ヶ月前(さんかげつまえ)まで取ってた杵柄(きねづか)()ちるにはまだ早い」

 

 一応、腕が(にぶ)っているのは認めるが、それでも現在の整備科二年と同じかそれ以上の腕前(うでまえ)自負(じふ)がある。

それに、その鈍りもある程度の数をこなしてしまえば解消(かいしょう)される。

大きいパーツの下にあったパーツを外し、複製したパーツを組み込んでいく。

 

「で?何か用があるのか?無いのなら散って欲しいんだが」

 

 カチャカチャと工具箱(こうぐばこ)(あさ)りながらうざったそうに黛に()げる。

彼女は二年整備科において学年主席であり、その技量も確かだが、何もしないのであれば居ないも同然。まして観察されているとなれば、集中力が削がれる。

であれば居なくなってくれた方が助かると言うものだ。

 

「もー、ツれないなぁ。折角(せっかく)なら手伝ってあげようと思ったのにー」

 

「なら右肩左肩右腕左腕の順でパーツを(まとめ)めてくれ。その順で取り付ける」

 

「はーい」

 

 小鳥の出した指示通りにパーツを纏める黛、そうして少し時間が()った(ころ)、またもや黛が口を開いた。

 

「そう言えば小鳥君って、一組の副代表なんだよね」

 

「それがどうした」

 

「いや、今一夏君が篠ノ之(しののの)さんと剣道の試合してるって聞いてるんだけど。それって小鳥君の指示(しじ)なの?」

 

 その疑問に、少しの間無言になる小鳥。

 

実際、『お前が鈴音に勝てるとしたら近接戦くらいしかない』一夏に指示をだし、生身でも出来る特訓として剣道の対戦をさせている。

それを否定するメリットは無いし、肯定した所で何か問題が起こる訳でもない。

 が、気になる事が少し。

 

「・・・どうしてそう思った?」

 

 その指示は昨日の晩に『一夏の部屋で』した事である。

いかに“学園の壁には眼も耳も鼻もある”と本音(ほんね)に言った小鳥でも、流石(さすが)に個室のプライバシーは保たれていると思っている。

盗聴無(とうちょうな)しでその答えに(いた)るとすれば黛自身がそう言う考えをしているとしか思い至れなかったのである。

それに、ああ見えて黛も頭が悪い訳ではない。自分の頭でそれを考えられてもそう不自然な事ではないだろう

 しかし、返って来たのは想定外のものだった。

 

「いやぁー。それが私が思ったって訳じゃないんだよねぇー」

 

「成る程、受け売りか」

 

 真顔(まがお)平淡(へいたん)な声で黛に返す。

その指摘を受け頭を軽く()きながら苦笑いする黛。

 

「あはは、そう言うこと。たっちゃんが『一組の実質的な頭脳は小鳥くん』だーって言ってたし」

 

「━━待て、“たっちゃん”とは?」

 

 恐らくは(なにがし)かの渾名(あだな)なのは理解出来(りかいでき)るが、何せ二、三年の名前は覚えていない。渾名からその本人の特定出来(とくていでき)ないのだ。

 

「えーっと。更識(さらしき) 楯無(たてなし)って知ってる?」

 

「・・・聞き覚えは()る。誰だかは知らんが」

 

「それは仕方ないかも。今年は色々とゴタゴタがあったからそんなに挨拶(あいさつ)とかもやってないからね」

 

「んで?何者なんだソイツは」

 

 (いぶか)しげに問い返す。しかし、それに答えたのは黛ではなかった。

 

「あら。おねーさん有名人のつもりなんだけどなぁ」

 

 格納庫に小鳥のでも黛のでもない声が響く。

声のした方を見ると、そこには閉じた扇と(おぼ)しき物を片手に微笑(ほほ)えむ二年の女生徒が居た。

 

「━━自分で有名人だと口走るという事は、お前が更識(さらしき) 楯無(たてなし)で良いのか?」

 

「あら悪い子ね。年上には敬語が基本でしょう?」

 

「だったら自分が何者なのか明らかにするのが先じゃないか?」

 

「ふふっ、それもそうね」

 

 (恐らくは)楯無本人(ほんにん)科白(せりふ)に対し、間髪入(かんはつい)れず言い返す。

 そうすると、不敵な笑みを浮かべ、求めに応じて自己紹介を始めた。

 

「私は二年の更識楯無、君の先輩にしてこの学校の生徒会長(せいとかいちょう)よ」

 

「・・・・・・」

 

 (いぶか)るように楯無を見て、警戒心全開の声音で問い返す。

 

「で、俺に何の(よう)だ?」

 

 そこに敬語は無い。

 

「あらー?一応自己紹介(いちおうじこしょうかい)したんだけどなぁ?」

 

「はいはい、(おな)歳未満(どしみまん)の奴に敬語を使う気は無い」

 

 何かしらの世話になってるわけでもないしな。と続けて足場から楯無を見下ろす。

その半開きの眼は小鳥(ことり)と言うよりは猛禽(もうきん)のそれに近く。おおよその人間が見れば尻込(しりご)みをしてしまうだろう。

しかし、何の()()も見せず、楯無は小鳥の元に(あゆ)()る。

そして足場の元にまでやって来た楯無が立ち止まったかと思うと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ・・・!?」

 

「うふ。驚いた?」

 

 小鳥の顔を見上げるように(のぞ)()む楯無、一歩退(いっぽひ)いて(まゆ)(ひそ)めたまま小鳥も彼女の顔を見返す。

 

「驚いたではあるが・・・。さて、俺の質問に答えて貰おうか。俺に何の用だ?」

 

 むしろ()した警戒心(けいかいしん)のままに、問い返す。

 

 一見すると楯無は悪戯(いたずら)な猫を思わせるが、その(じつ)、小鳥からすれば油断(ゆだん)(すき)(すき)さない肉食獣(にくしょくじゅう)(ひとみ)の奥に見え隠れしていた。

小鳥が無表情に問うのに対して、楯無は笑みを浮かべながらその問いに答える。

 

「ふっふっふ。何だと思う?」

 

「はっはっは質問に質問で返す方がマナー違反だろ」

 

 珍しく大口を開けて笑ったかと思えばそのままの口調で毒を吐き出す小鳥。

これは一本取られたとばかりに扇で頭を叩いて楯無は答える。

 

「あっはっは、これは失敬(しっけい)。じゃあ本題に入ろうかしらね」

 

 本当なら用の内容など聞かず『帰ってくれ』と言うところだったが、この手の人間は相手の都合(つごう)事情(じじょう)など気にしない傾向(けいこう)がある。聞くだけ聞いて帰って(もら)おう。

 話を切り出す楯無を横目に見ながら、銀影に新しい胸部装甲を()()む。会話に耳を傾けていた為に気がつかなかったが、どうやら上手く行っているらしい、何の問題も無く組み着いていた。

 

単刀直入(たんとうちょくにゅう)に言うけど、小鳥くんの事を知りたいのよねぇ」

 

「マジで単刀直入だなオイ」

 

 あれ(ほど)はぐらかしていた割にはあっさりと核心(かくしん)を話す為に拍子抜(ひょうしぬ)けしてしまう。先程までの(にら)み合いがバカみたいだ。

(あき)れ半分に返答しながら工具箱(こうぐばこ)(あさ)り、新品の極小ネジを探す。

 

「とは言え、たーだ話し合っただけじゃ解りづらいしねぇー。どうしたら良いと思う?」

 

「・・・聞く側が疑問符(ぎもんふ)を出してんじゃねえ。話を出すなら話題を作ってからにしろ」

 

 完全に呆れた様子で溜め息を()く。

しかし、その眼はまだ警戒を解いていない。どんなに間抜けのフリをした所で、彼女が小鳥を実質的な一組のブレーンだと見立てた事に変わりは無い。

今は優先順位(ゆうせんじゅんい)第二位(だいにい)の話題だが、それについても後々(のちのち)聞くつもりでもある。

 とは言え話が進まないのでは話にならない。極小ネジを20本程取り出して楯無に()げる。

 

「・・・俺から話す事は何も無い。お前が聞きたい事だけ聞け。返せる物だけ返してやる」

 

「あら(ふと)(ぱら)。結構気前(きまえ)良いのね」

 

「別に、早くお前に帰って貰いたいだけだ。それに俺もお前に聞きたい事がある、それに答えて貰う事前提で話して貰うぞ」

 

「・・・そうねぇー。どうしよっかしら♪」

 

「じゃあ話は終わりだ帰れ帰れ」

 

「やーん、冗談だってば」

 

 わざとらしい楯無の態度に取り合う積りは無い。相手がマイペースを貫こうと言うならこちらもマイペースで行かせて貰おう。冗談など皮肉(ひにく)で世界を(わら)う時で十分だ。

 楯無が注文通りに質問を投げた。

 

「じゃあ一つ。小鳥くんはどうしてIS学園に来たの?」

 

「・・・IS学園以外に行きたくなかっただけだ。企業も軍も研究所も御免な上、俺には整備士の方が性に合ってる」

 

 吐き捨てるように言い、ネジで装甲を留め始める。

がしかし、唇に指を当てた楯無が追及(ついきゅう)を始めた。

 

「うーん、それだったら小鳥くんがそれまでいた専門校に居たら良かったんじゃない?」

 

「━━軍事しか魅力の無い場所だったからな、それが理由で発展した街だったし、()()()()()()()()に飽き飽きしていただけだ。ただ、」

 

「ただ?」

 

 聞き捨てならないことが一つだけあった。

ドライバーガンを下ろして作業を止める。

 

専門校だなんて誰が言った?

 

・・・無論(むろん)そこに行き着く為のヒントはあった。

小鳥が同い年未満に敬語は使わないと言った(少なくとも18歳を越している)事。

ISの整備士・技師(ぎし)を目指していた事。

軍や研究所には行きたくない(所属していない)と言った事。

 

 裏の意味を読み取ればそれだけで十分に把握(はあく)できる。

後は黛辺りから聞いたと言う可能性もあるが、であれば恐らく二日以内に学園中(がくえんじゅう)で騒ぎになっているだろう『小鳥 遊は少なくとも18歳以上だ』と。

しかしそんな(うわさ)は耳にしてない。噂が立っていたのなら、恐らく当事者である小鳥自身にも届くだろう。

 

「・・・いや、何でもない。下らない事だ」

 

「ええー?そこまで言って何も無いって事は無いでしょう」

 

「有ろうが無かろうが、話さないと言うだけの話だ。言っただろう()()()()()()()()()()()と」

 

 言って、作業を再開させる。

 恐らくはここで楯無にそれを聞いてもはぐらかされるだけだ、あるいはそれ以上に厄介(やっかい)な事にさえなりかねない。雄弁(ゆうべん)(ぎん)沈黙(ちんもく)(きん)とも言う、下手に口を開いて情報を抜かれるのなら口を開かない方が良さそうだ。

 

「・・・ふーん、何となく小鳥くんの事が解ってきたわ」

 

「・・・━━」

 

 何をどう解ったのかは知らないが、何か解ったらしい。







 今回話題に上がった通り小鳥は(すで)に高校を卒業しており、四年生の専門校に通っていた経歴(けいれき)があります。
ちなみに童顔(どうがん)のせいで気付かれづらいが(とし)は現在23歳で、生徒よりも教師陣(きょうしじん)の方が歳が近かったりします。


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