IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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未知との迎撃(Intercept for unknown) 2/2

「ふッ!」

 

「はぁあ!」

 

 日本刀(にほんとう)偃月刀(えんげつとう)がぶつかり合う。

連結状態の牙月のもう一方も刃を振り上げ、胴を狙うが、すぐさま構え直した一夏の刀がその刃を止める。

すると、刃の上を滑らせる様に、更に踏み込んで一夏が切りかかってくる。

 

「うぉおおッ!」

 

「ちぃっ!」

 

 鈴音(リンイン)が仕掛けた近接戦は、彼女自身が弾かれることによって中断される。

 

(さぁーて、衝撃砲の対策を練られてるて考えて接近戦に持ち込んだのは良いんだけど、どうしたもんかしらね)

 

 さっきまでの打ち合いで分かった事が一つ。

 

 今の一夏とあたしに近接戦闘での実力差がそんなにない

 

 単純に距離を取らないで連結(れんけつ)させた双天牙月で切り合っていたのだが、どうも決めきれない。

連続回転切りは上手く(かわ)されるか、回転方向に合わせて止められる。

 三日間くらい剣道の特訓をしていたらしいけど、それにしてもメチャクチャ強くなっている。

 それに何より、

 

(そもそも何なのよ・・・。さっきの衝撃砲をかき消したのは)

 

 必殺級の一撃を消した白い閃光、それが何よりも気がかりだった。

 

「・・・いや、考えても仕方が無いわね」

 

 衝撃砲をかき消したあれが何なのかは解らないけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけ解れば十分。

 

「なんかあれ喰らったらヤバそうな気もするけど。(よう)は喰らわなけりゃ良いだけの話だもんね」

 

 双天牙月を背中に構え、一夏に宣言を叩きつける。

 

「さぁ一夏!もっともっと飛ばしていくわよ!」

 

「・・・ああ、俺も全力で行くぞ!」

 

 一夏もその宣言に応じるように、刀を構える。

 

「はぁッ!」

 

 先に出たのは一夏、瞬間加速(イグニッションブースト)であっと言う間も無く一夏自身の射程距離に入る。

 

(っ、速い!?)

 

一瞬判断が遅れ、がら空きの脇腹に刀が振るわれる。

しかも、その刃に例の白い光が輝いた。

 

(間に合わないか!)

 

 もうこの一撃は受けるしかない。

だからと言って、タダで大ダメージを食らってあげられる程(あきら)めは良くない。

衝撃砲のチャージは()んでる、後手に回るけどそれでもダメージを与えることは出来る。

 そして一夏の刀が触れようとした時。

 

ドッパァアアアンッ!!!

 

 正体不明の音と光がアリーナを襲ったのだ。

それは一夏の白い光でも、衝撃砲が炸裂した音でもない。

 

「「!?」」

 

 思わず、互いの攻撃が止まってしまう。

 客席を二重で覆うシールドを照らす光が拡散(かくさん)したビームだと気付く為に時間はかからなかったが、その光の中央に居る人物が誰か気付くには時間がかかった。

 

『・・・無事か?』

 

 一夏と鈴音の双方に男の声で通信が入る。

それは、銀影に乗る小鳥の声だった。

 驚いた一夏が、問いかける。

 

「な・・・ッ。小鳥!?何があったんだ!?」

 

『乱入者だ。何が目的かは知らんが、シールドの外からお前等を狙っていた。・・・気をつけろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。お前()は教員の指示(しじ)(したが)って行動しろ』

 

「アンタはどうするつもりよ!?」

 

『・・・時間を(かせ)ぐ。今ここであの砲撃を(しの)げるのは俺しか居ない。奴の砲撃でシールドが割れる可能性がある以上、観客に被害が出ないようにするにはこれが最適解だ』

 

 淡々(たんたん)とした口調で語る小鳥、それなりに緊張しているらしい。

 

『だ、ダメです!生徒にそんな危ない事させられません!』

 

 話を聞いていた山田先生が慌てた様子で会話に介入する。

が、小鳥が緊迫(きんさく)した様子でその意見を切り捨てる。

 

「なら別の案が有るんですか?あるならさっさと言って下さい。アレが暴れだしたら多分話してる(ひま)無いんで」

 

『えっと・・・それは・・・!』

 

「・・・・・・まぁ無理はしませんよ。コイツをアリーナの外に出したら後は先生方にお任せしますんで」

 

 肩のセンサーカバーを開き『敵』を見る。

 

(何なんだ、コイツは)

 

 そこには、異様に大きな腕、頭部の複眼(ふくがん)の様なセンサーアイ、そして何よりISでは珍しい全身装甲(フル・スキン)タイプのISが居た。

相手の装備、挙動(きょどう)を注視する小鳥。

 

(武装は両腕部(りょうわんぶ)の高出力ビームキャノンのみ・・・・・・。スラスターの多さから見ても・・・高機動で()き回して一撃で()()()、かな)

 

 その(わり)には先程から動いかずにこちらを見ているだけなのが引っ掛かる。

気を取り直し、通信で山田先生に問いかける。

 

「それで、追い込む場所はどうします?海上(かいじょう)最善(さいぜん)だと思うんですが」

 

『いや、それは無理だ』

 

 あれ?と首を(かし)げる小鳥、確か自分の通信先は山田先生の(はず)・・・。

 

「何で千冬先生が出てるんですか?」

 

『気にするな』

 

 後ろで小さく『代理です~!』と、山田先生の声が聞こえる。

と言うことは、(せき)に割り込みマイクをぶんどったのだろう。

 『やはり横暴な人だな』と、口を引き()らせ苦笑(にがわら)いしたが、先の発言について千冬に問う。

 

「それで、何で”無理”なんです?」

 

『何者かに非常事態の隔壁(かくへき)システムがハックされた。整備科に対処させてるが少なくとも十分はかかる』

 

「・・・つまり。俺一人でやれ、と?」

 

『それはお前自身の判断だ。お前、部隊指揮(ぶたいしき)は得意だろう?』

 

 言われた小鳥は、『了解』とだけ言って静かに通信を切る。

 

「・・・ったく、冗談キツいぜ」

 

 観客が居る以上、一夏に零落白夜でエネルギーシールドを割ってもらう訳にも行かない、となると一夏達の増援(ぞうえん)は望めない。

 とは言え何もしない訳にもいかない。

思考を(まと)め上げて行動を起こす。

 

「まずは、客の安全確保(あんぜんかくほ)からだな」

 

 隔壁が降りていると言うことは、閉じ込められていると言うことだが、裏を返せば堅牢(けんろう)(おり)に守られていると言うことでもある。眼前(がんぜん)の『アレ』さえ何とかなればおおよそ問題は無いだろう。

 アイアス(一振りの大剣)を構えた小鳥は、上方の敵機へと瞬時加速(イグニッション・ブースト)で距離を詰める。

 

(まずはコイツをアリーナの外に追いやる!)

 

 それに対して敵は回避行動をとるが、小鳥はそれを予測し強制的に同じ方向へと無理矢理に方向転換する。

本来、瞬時加速は方向転換を可能とするものではないのだが、肩アーマー、脚部にさえスラスターのある銀影のスペックがあれば、それは不可能ではない。

 圧倒的な速度で謎のISに激突した小鳥は、左手で持った大剣()しでシールドチャージを行う。

 勿論(もちろん)、相手は距離を取ろうとするが、

 

「エネルギー拡散フィールド、展開ッ!」

 

 『アイアス』から展開されるエネルギー拡散フィールドが、スラスターやPICの指向性を奪い、行動不能に(おちい)らせる。

 

「ラアアアッ!!」

 

 更にスラスターを()かし、敵諸共(もろとも)アリーナから外に出ていく。

 アリーナの外はおろか、学園の領域さえも()え加速していく両機は、(ゆる)やかな放物線を(えが)き、学園から3kmほど離れた太平洋へと、水柱(みずばしら)を上げる程の勢いで着水(ちゃくすい)する。

 

(オラァッ!)

 

水深10m程で勢いが完全に殺されるの確認して相手を蹴り飛ばし、相手を沈める事でさらに距離を取る。

 

『・・・・・・』

 

 距離が空いて好機と見たのだろう、奇形のISが右手を小鳥に(かざ)して主砲を放とうとする。

 そうと知りながらもただ(たたず)むだけで、小鳥は回避する素振りさえ見せない。

特に妨害(ぼうがい)もされなかったビーム砲は、海中で投射(とうしゃ)され。

 

(はッ、馬鹿め)

 

 奇形のISの右手が爆発した。

 

『・・・・・・』

 

 水と空気では密度が違う、空気が1なら水はおおよそ1000、単純に考えても抵抗値は1000倍。ビームの集束(しゅうそく)率が途轍(とてつ)もなく高くない限り、1000倍以上の出力が必要となる。

 更に言えば、密度が高ければそれに応じて熱交換も高効率で行われる。

 

つまり、奇形のISの右腕の付近の海水の温度が、ビームの熱量によって急激に上昇、沸騰(ふっとう)し水蒸気爆発を起こしたのだ。

 

「ふッ・・・・・・!」

 

 そして爆発したならば、次に起こるのは収縮(しゅうしゅく)だ。

急激に温度が上がって水蒸気と化した海水は、すぐさま水に戻る物、水素と酸素として水面を目指(めざ)す物に別れるが、急激に周囲(しゅうい)の海水の密度が下がることに()わりは無い。

無くした物を(おぎな)うかのごとく、周囲の海水が殺到(さっとう)し始め、奇形のISは身動きが取れなくなる。

(わず)かに引き寄せられる感覚にあわせて前方の敵機へと突撃する小鳥。

銀影には水中戦用のジェットエンジンは無いものの、出力の高いPICがそれを補って(あま)りある速度を叩き出す。

 近接戦闘の距離まで近付かれた敵機は回避が間に合わないと(さと)り、腕を振って応戦するが、態勢を低くさせることであえなく(かわ)され、腹部を切りつけられる。

 

(よしっ!)

 

『・・・・・・』

 

 確かな手応えを感じる小鳥だが、無感情な敵は何のレスポンスも無く、複眼でこちらを見つめるだけだ。

 正面の敵をオレンジのバイザー越しに見据え険しい顔をする小鳥は、その無反応さに疑問を感じ、ふと考える。

 

(何者なんだコイツは?さっきから異常に反応が鈍いし遅い・・・。軍の人間でもこれほど無感情じゃねえぞ)

 

 まるで意思を感じない。

 目の前の敵は一夏や鈴音を狙って居たにも関わらず、今は能動的に敵対行動を起こさない。

先の二回のセッションも、こちらから動いた事に対してカウンターを当てる様に反射的な行動しか起こしていない。

 そう、それはまるで・・・。

 

(まるで、人間が乗っていないみたいだ)

 

 だが、その考えを自分で否定する。

ISは人間無しでは動かない。機械を通して起動・停止は出来るが、ここまで動作する事は絶対にあり得ない。

 

『・・・本当にそうかしら?』

 

(・・・いきなり話しかけてくんじゃねえよ、ビックリするだろ?)

 

 頭に響く少女の声に冷静に心の声で返答する小鳥、声の主はクスクスと笑い、小鳥の事をお構い無しに語り掛ける。

 

『知っているでしょ?()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(ったく。前はダメ出し今日はヒントかよ。まぁでもお前の口振りから察するに・・・()()()()()()()()()()())

 

 そう、彼女の名は『銀影』

小鳥が今乗り回している機体と同じ名前なのは、偶然でもなんでもなく。IS『銀影』のISコアに宿る疑似人格である。

 実はこれまで小鳥が銀影に乗るたびに彼に話かけていたのだ。

小鳥が初めて銀影に乗って一夏に通信をかけた時やけに機嫌が良かったのも、彼女が居たことに研究の未来を見ていたからだったりしている。

 

『まぁね、でも目の前の子がそうなのかは私にもわからないわよ』

 

(は?コアネットワークで接触できねえのか?)

 

『そのネットワークから切断されてるの。あなただってアレが二人を狙ってる時にセンサーでしか存在を確認できなかったでしょ?』

 

 なるほど。と、納得する小鳥。

ISはその特性として、『コアネットワーク』と言う特殊な電子ネットワークを所有している。

そのネットワークはISの本来の目的である『宇宙空間の開発』の為の通信機能と座標特定機能があり、ネットワークに接続されている限り恒星と恒星の距離があったとしても、それでも座標が割り出せるらしい。

 

(にわか)には信じられないが、どうやらあの機体は単独起動(スタンドアローン)を可能にした上、あの機体のISコアを説得(ちょうきょう)して、機械による自動制御を行っているらしい。

 

『まぁでも、OSはそこまで優秀じゃないみたいだし、あなたがやった戦闘条件の変更は効いてるみたいだから、ティアーズ(セシリア)の時みたいな下手な使い方はしないでよ』

 

(善処(ぜんしょ)するさ)

 

 適当(てきとう)に返事をして会話を切り上げた小鳥は、目の前に意識の焦点(しょうてん)を合わせ、少女に対して告げる。

 

(行くぜ・・・銀影ッ!)

 

 と、距離を詰めようと前傾姿勢をとったその瞬間。奇形のISがまたもや小鳥に向けて右手を(かざ)した。

 何のつもりかと瞬間動きを止めるが、そんな事は意に介さず、敵はビームを撃ち放つ。

 

(『!?』)

 

 小鳥も銀影も驚き、動きが硬直してしまう。

どれ程未完成なOSだといえ、真逆(まさか)同じ()(おか)す程愚かではあるまいと思っていたが故に、その(きょ)を突かれてしまった。

 その(すき)を突き、奇形のISは海面へと浮上していく。

 

(ッ・・・!しまった!)

 

 海中で主砲が満足に使えないなら海の上に行けば良いのだ。

恐らくこのビームは()(くら)ましだ。いかに銀影の『眼』が良くとも、自分で得た情報の方がISの送ってくる情報よりも早い。

 水中における単純な速力(そくりょく)では小鳥に()があるものの、通常の空域戦(くういきせん)では恐らく相手の方に軍配(くんばい)が上がるだろう。

 遅れて小鳥も追跡し始めるが、その距離は遠い。

 

(水中ならこっちの方がまだ速いが━━━。クソッ、出遅れた!このままでは・・・ッ!)

 

 焦る小鳥。

水面まで後8m、瞬きをする間に相手は海面を突破するだろう。

 そうなればヤツはIS学園に向かい、一夏や鈴音とまた事を起こす事になる。

 

(まだ五分しか稼げてねえってのに!)

 

 千冬はハックを解くのに数十分はかかると言っていた。

 エネルギーを吸収する特性上、瞬時加速は水中では使えない。

奇形のISが海上に出る。 万事(ばんじ)(きゅう)すかと思ったその時。

 

 奇形のISが海中に飛び込んだ。

 

「!?」

 

 何事かと思うが、全速力で相手を追っていた勢いはそう簡単には殺せない。海上に出た小鳥は、そこにもう一機のISを目にする。

 

「大丈夫か、オドリ」

 

「刹那・・・。何でここに」

 

 そこには、白と灰色の専用機『エクシア』を纏う刹那・F・聖永が居た。

無表情なまま、刹那は小鳥からの問いかけに答える。

 

「チフユから加勢に向かえと指示があった」

 

「・・・・・・成る程。学生寮にカンヅメのお前なら比較的簡単に外に出られるって訳だ」

 

 右手のソードが展開されている所を見るに、奇形のISは刹那に叩き落とされたのだろう。

 しかし、奴はまだ倒れていない。焦った風な口調で小鳥は刹那に指示を出す。

 

「っと、駄弁(だべ)ってる場合じゃねえ。刹那!ヤツが海中から出ないように」

 

 牽制射撃(けんせいしゃげき)を、とは続かなかった。

 

「ぐぁッ!?」

 

 もう(すで)に敵は海上に居て刹那にその主砲を撃ち込んでいたからだ。

 

「刹那ッ!?クソ!」

 

 右の持ち手だけを折り曲げ、射撃モードで迎撃(げいげき)を行う。

剣の左右から交互(こうご)光弾(こうだん)が発射され、そして予想していた事ではあるが、奇形のISは小鳥の光弾を容易(たやす)(かわ)す。

 

(せめてセシリアの半分でも命中率があれば・・・!)

 

 敵の機動力もさることながら、それ以上に小鳥の射撃センスが壊滅的な事が回避を容易(ようい)にしている。

 焦り顔の小鳥は巨剣を二振りに分割するこで、連射数が向上する。

命中数が上がった事で、奇形のISは右腕で身体を(かば)う。

 

「刹那!無事か!?」

 

『大丈夫だ・・・。オドリ、指示を』

 

 落ち着き払った声で返答する刹那に取り敢えずの指示を出そうとした瞬間。

 

「ッ・・・!?」

 

 敵機がコマの様に回転し、その主砲を乱射し始めたのだ。

刹那、小鳥はともに右へ左へビームを躱す。

 

「クソッ・・・これじゃ近付けねぇ・・・!!」

 

『オドリ、オレが接近する』

 

「行けんのか!?」

 

『恐らく。問題は、搭乗者に致命傷を与えかねない』

 

 刹那の言う通りに行かせようかと考えるが、相手の弾幕が激しすぎて考えてる暇さえ無い。

 迷う時間さえ惜しい小鳥は、一つ深呼吸してヤケクソ気味にそれを了承する。

 

「刹那、()()()()()()()!手加減無しでやれ!!」

 

『了解!エクシア、刹那・F・聖永。目標を駆逐(くちく)するッ!』

 

 宣言と共に空を駆ける刹那は、小鳥に告げた通り、先程以上の機動で光弾を躱し5秒足らずで3m程の距離にたどり着く。

 

「あああッ!」

 

 右の剣を大振りで振り上げる刹那、一気に距離を詰めて奇形のISを切り付けるようだ。

だが、相手もそれを見抜き回転を止め刹那を狙い撃つ為に右手を(かざ)す。

 刹那はそれを分かっていながら止まらない。

 

そのビームが放たれるのを眼前で捉え。

 

右手に握られた剣で()()()()()()()()()

 

 そして、返す刀で横に剣を振るう。

その剣は腰部(ようぶ)の傷に接触し。

 

「うぉおああ!」

 

 その()()()()()()()()()()()()

 切り裂かれた断面からは機械の部品がボロボロと溢れ落ち、その操縦者が人間でないことを物語る。

それを見ていた小鳥も、剣の威力に驚きの声を上げる。

 

「凄ぇ・・・一刀両断かよ」

 

 もう勝負はついたと見た小鳥は、剣をバックパックのラックに預け刹那のもとへと飛ぶ。

 刹那は剣を折り畳み。戦闘状態を解く。

 

「凄いな。一刀両断と来たか」

 

「ああ、オレも驚いている」

 

「だろうな」

 

 フッ、と笑う小鳥。

肩のセンサーを使って刹那が無傷であることを一通り確認して、海上に(ただ)う奇形のISに視線を落とし千冬に連絡を入れる。

 

「千冬先生、こちら小鳥(ゆう)。所属不明機との戦闘を終了しました。これより不明機の残骸(ざんがい)の回収と学園への帰投を開始します」

 

『・・・勝ったのか?』

 

「ええ。俺がと言うより刹那が、ですが」

 

『そうか。搭乗者が何者かわかるか?』

 

「それが・・・。あの機体は無人機でした」

 

 小鳥の報告に千冬が無言になり、アリーナの指揮室が騒然としているのが聞こえる。

(つと)めて冷静な声で小鳥に問う。

 

『証拠はあるか?』

 

「傷付けた時、武装が暴発した時の反応が異様に薄かった事くらいしかありませんでしたが・・・。あ、あと事後証拠になりますが、両断された敵機の中身が機械でした」

 

『お前・・・確証無しに()(ぷた)つにさせたのか』

 

 はぁ、とため息を吐いて小鳥に苦言を呈す千冬。小鳥は悪びれもしないが、それでも少なからず胆は冷えていた。

 もし、アレが無人機でなかったらと考えると恐ろしいことこの上ない。

 

「まぁ兎に角、この事は箝口令(かんこうれい)を敷くんでしょう?ならアレの回収も俺達がしますよ」

 

『ああ、任せる』

 

 了解、と言って通信を切った小鳥。

 

「刹那、下半部の方の回収は任せる。俺は上半身の方を回収する」

 

「了解」

 

刹那に下半身の方を任せ、海面に浮く残骸の上半身に手を伸ばしたその時。

 

「がッ!?」

 

 奇形のISが再起動し、小鳥の首を(つか)んだのだ。

 

「オドリッ!?」

 

(クソッ・・・!油断した!まだ機動出来たのかよ・・・!?)

 

 もしこのISが独立稼働(スタンドアローン)ではなく通常と同じ様にネットワークに接続した上での起動であれば少なからず気付けた筈だ。

小鳥の首を掴み、上半身だけとなった奇形のISは小鳥ともども陸地へと飛び込む。

 (きょ)を突かれ思考が上手(うま)く出来ない小鳥は、コンクリートの岩礁(がんしょう)に背中を(したた)かに打ち付ける。

 

「ぐッ!・・・ぅ」

 

 ブレードはラックに(あず)けたままだ、どうやっても取り出せない。

左手で首を()める腕を握る。

 

「て・・・めぇ・・・!何がしてぇんだ、お前は・・・!」

 

 答える声が無いと分かっていても問わずには居られない。それは、目の前のISの頭部に4つあるセンサーが憤怒(ふんぬ)に狂った様に(かがや)き、まるで殺意を(たたえ)えているかのように見えたからだ。

 だが、小鳥の予想は裏切(うらぎ)られる。途切(とぎ)途切(とぎ)れの音声メッセージが届いたのだ。

 

『これ・・ハ・・・・・カツて、あなタガ・・・さセテ ・・・イタこと、でショウ?』

 

 その声を聞いた瞬間、小鳥の眼は見開かれ。その心は怒りに支配された。

 

「ふざっ、けんなァァッ!!」

 

 空いていた右手を腰にまわし、コードに繋がれた棒を手に取ると、その棒からは桃色の光の(たば)顕出(けんしゅつ)する。

 そして、小鳥は躊躇(ためら)うことなく光の剣で相手の胸を貫いた。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 コンクリートの上に置かれただけの半分の身体、左胸から右の背へと熱で一直線に穴を開けられたそれの側で、ISを収納(クローズ)し、(みずか)らの足で立つ小鳥はそれを見ていた。

 

「・・・・・・・・・・ぁ」

 

 それで分かった、()()()()()()()

このISが伝えたかった事が何だったのかを。

 

「ぅ・・・・・・ぁあ」

 

 呼吸は(みだ)れ、世界から眼を背けるように右手で右目を(おお)う。

 

「あぁ・・・っ・・・!」

 

 その顔は苦痛に歪み、身体は()の字に曲がる。

 それは彼自身の過去、もうするまいと(ちか)った()まわしき(あやま)ち。

繰り返された現実(かこ)が彼の頭の(うち)(よみがえ)反響(はんきょう)する。

 

「はぁっ。はぁ・・・・・・っ!」

 

 泣き出しそうな顔になる。呼吸が荒くなる。

右目に当てていた手を離し、恐る恐るその手のひらを眺める。

 

「!?」

 

 海水にびしょ()れの右手が、一瞬血に濡れた様に見えた。

4年前の過去(いま)が、()める様に小鳥に押し寄せる。

 

 下半身を無くしてブルーシートの上で横たわっている黒髪の女性。

 

 後ろでは見知った顔の人間がISに乗り、金髪の女性が乗ったISに切り付けられている。

 

 周りは機銃や突撃銃を構え、金髪のISに撃ちまくっている。

 

「ぁ・・・・・・ッ。ぁあ・・!」

 

 息が出来ない。

 

涙をボロボロと(こぼ)して、(はらわた)の血で染まった両手で顔を(おお)い泣き(むせ)(ゆう)

 

 ISを装着したままの刹那が、心配そうな顔をして小鳥の許へ駆け寄る。

 そんな景色を見る余裕(よゆう)も無い小鳥は、記憶に押し潰される感覚を抱いて。

 

「・・・・・・オドリ!」

 

 小鳥遊は奇形のISに覆い被さる様に倒れた。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 夕日が白いカーテンを(あかね)色に染め、同じように部屋中の無機質(むきしつ)な白を赤く照らしている。

 小鳥はそこで眼を覚ました。

 

「・・・・・・ここは」

 

 茜色を溶かすシーツをどかし、上半身を起こした小鳥は、胡乱(うろん)な頭で周囲を見回す。

 空気に(ただよ)う無機質な殺菌剤(さっきんざい)の匂い。手摺(てすり)の付いたベッド。それを(かこ-)む様に天井に配置されたカーテンレール。開かれたカーテンの奥に見えるスライド式のドア。

 

「・・・学園の救護室、かな?」

 

 ダイバーの様なISスーツの上から医療用の衣服を(まと)っていると言う事は、運び込まれてからそれなりに時間が経っているらしい。

 身体のどこにも痛みを感じない事を確認した小鳥は、これまでの事を確認する。

 

「・・・確か、クラス代表対抗戦の時に高機動砲撃型のISが乱入してきて、俺がそのISをアリーナの外に追い出して、刹那がそれを真っ二つにして・・・」

 

 そこで言葉が止まる。

 

「トラウマがフラッシュバックして倒れちゃった、か・・・」

 

 はぁ、と()め息を()いて、片手で(うつむ)く頭を抱える。

と、頭が下を向いた事でうなじに髪がかかり、いつもはヘアゴムで纏めている筈の後ろの髪が纏められていない事に気がつく。

 

「っと・・・。ゴムゴム」

 

 辺りを見回してヘアゴムを探す。

左に備え付けられた(たな)の上には見当たらない。

中にあるのかと引き出しに手を伸ばそうとしたその時、スライドドアが音を立てずに開けられた。

 

「ああ、眼が覚めたか」

 

「千冬先生」

 

 ドアを開けたのは、小鳥の担任である織斑千冬その人であった。

いつも通りの鋭い目付きで小鳥を見つめる千冬は、部屋の(すみ)に置かれた椅子を持ち運び小鳥のベッドの(かたわ)らに着席する。

 

「意外ですね。まさか一番に見舞いに来るのが千冬先生だとは」

 

「偶然だ。それに、私はお前を見舞いに来たのではなく、お前から敵の話を聞きに来ただけだ」

 

「それでもですよ。流石に誰も来なかったらそれはそれで寂しいですからね」

 

 はははっ。と笑ってはにかむ小鳥。

珍しく可愛げのある回答に調子を狂わされる千冬。

 

「あ、一夏達は無事ですか?観客に被害は?」

 

「待て。いっぺんに話すな。・・・一応あの緊急事態で人的被害は出ていない」

 

「あぁ・・・よかったぁ」

 

 本当にあの小鳥遊なのか。その台詞はいつもの探るような口調も、虚飾も見られない。

何かと釈然としない千冬に小鳥が問いかける。

 

「そうだ、話の前にヘアゴムありませんか?その。アレがないと落ち着かないんです」

 

「ああ、一段目の引き出しにある筈だ」

 

「ありがとうございます」

 

 言って、小鳥は引き出しからヘアゴムを取り出し髪を纏め上げ、いつもの髪型に戻す。

 

「やっぱりこれだな。で、話と言うと何を聞くんです?大体は刹那と状況証拠でカタが付く筈ですよ」

 

 いつもの調子に戻った小鳥は、千冬の用件を先回りした問いかけを行う。

 小鳥の調子が戻った事に引かれ、千冬も調子を取り戻す。

 

「単刀直入に言えばお前がアレを無人機だと気付けた理由を聞きたい。それと、なぜあの場で気絶していたんだ?」

 

「答えるのは(やぶさ)かじゃありませんが、その(こたえ)をどうするつもりです?その返答の如何次第で俺は秘密を一つ二つ抱えることになりますよ?」

 

 冗談と(ほの)めかす様な台詞(せりふ)回し、本格的に調子を取り戻しているようだ。

 食えない男だと溜め息を吐いた千冬は、気を取り直して問う。

 

「何について秘密にする気だ?」

 

「俺のIS・・・銀影について秘密にする気です。それと、倒れていた理由は・・・。まぁ、察して下さいとしか言えませんな」

 

 皮肉気に唇を歪めて千冬に笑いかける小鳥。

つられて口角が上がった千冬は、小鳥への事情聴取を始めたのだった。

 






銀影の個性(パーソナリティ)について
銀影のコアは元々とある企業に預けられていたが、どんなに初期化しようとも人格を形成するレベルで強烈(きょうれつ)個性(パーソナリティ)が原因で、ありとあらゆる筐体(ハードウェア)拒否反応(きょひはんのう)を示し続け、(たばね)返還(へんかん)された上でも銀影以外を拒否し続けた経歴を持つ。

 セシリア戦の時点で(すで)に小鳥に接触していて、彼が試合中に銀影に語りかける様な独り言を言っていたのは、本当に銀影に語りかけていたからである。

 どうやら銀影の筐体(ハードウェア)その物に関係がある様だが・・・?



機体解説
機体名:エクシア
型式番号:■■-001
仕様:不明
所属:不明
武装:右腕部専用ライフル兼大型ソード
   両腕部内蔵ビームバルカン×2
   両肩部/リアスカート搭載ビームサーベル

 刹那・F・聖永専用の機体。
篠ノ之(しののの) (たばね)(いわ)く『ISのようなもの』であり、解析結果(かいせきけっか)によりISコアが存在しない事が判明している。
 上記の理由により厳密にはISですらなく、現状どの国家も持ち得ない未知のテクノロジーを搭載(とうさい)した謎の動力源や内部構造が原因で、ほぼ全ての情報が謎に包まれたままになっており、今回の無人機との戦闘でやっと機動性や大型ソードの威力が判明した。
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