IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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幕間 I
Considerations(真実の見極め)


IS学園の地下深く、一部教員しか立ち入れないセクションで、1-1副担任(ふくたんにん)山田(やまだ)真耶(まや)教員がISの残骸(ざんがい)(にら)み合っていた。

 

(やっぱり、どれだけ探っても該当機体(がいとうきたい)はゼロ・・・。まぁ、無人機(ドローン)の時点で何となく(さっ)しは付いていましたけど)

 

 上半身と下半身で真っ二つになっている残骸(ざんがい)は、本日(ほんじつ)小鳥(おどり) (ゆう)と刹那・F・聖永が撃墜(げきつい)した、正体不明の無人機だった。

 

・・・サラッと言っているがメチャクチャである。

ISは人が乗らなければ稼動しない。()()()()()()()()()()()()()

ところが目の前のそれはそんな原則(げんそく)の存在を嘲笑(あざわら)うかのように実在している。

小鳥くんからの情報が正しければ、この機体はコア・ネットワークから独立し、その上で無人機の技術を搭載(とうさい)されていたと言う。

臨戦状態(りんせんじょうたい)でコア・ネットワークからの独立と言う技術は、今の所どの国も開発していない。

 

(ただ・・・そんな事が()()()()()()に思えてしまうのも問題ですよね)

 

 でもそれも仕方が無いのかもしれない。

 

この無人機に使用されていたISコアが未登録のコアだと知れば、誰もが同じような気分になるだろう。

 

 本人が製造方法(せいぞうほうほう)を発表していないために、ISコアは篠ノ之博士(しのののはかせ)しか作れない。その上全てのISコアは白騎士(しろきし)事件で注目を集めて以来ナンバリングされており、各国(かっこく)のISコアの現状(げんじょう)は国連のデータベースに報告、管理されている。

それは篠ノ之博士が最近まで所有(しょゆう)していた銀影(ぎんえい)ですら例外ではない。

 そのため、そのISコアに割り振られたナンバーを国連のデータベースに問い合わせれば、そのISコアが所属している国家や、管理している企業(きぎょう)が一目で分かる、と言う訳だ。

 

(まぁ・・・その全てが真実である確証は無いんですが・・・)

 

 恐らくはそのデータベースに報告されている情報の一部は(うそ)の情報だったり、不正(ふせい)変更(へんこう)されてたりするのだろう。けれどISコアの情報がある事に変わりは無い。

 

 だと言うのに、()()()()()()()()()()()()()()

ISコアが国連のデータベースに登録されていない、それはつまり登録以後に新造されたISコアという事になる

 そこから考えれる犯人は、ISコアを作れるたった1人の人間にまで(しぼ)られてくる。

言うまでもなく、篠ノ之博士の仕業(しわざ)だろう。

 

(よりにもよって篠ノ之博士がこんなことを・・・)

 

 彼女をよく知る先輩、織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)(いわ)く『変態』『迷惑以外(めいわくいがい)を掛けた事が無い』『理解しようとするより対処法(たいしょほう)を考えるより後始末(あとしまつ)を考えた方が建設的(けんせつてき)』・・・等々、散々な言われようだが、もしこれが篠ノ之博士の犯行だと言うのなら、そう言われる理由もわかる気がする。

 

 ストレス性の溜息を吐き出して資料作成を進める。

一応管轄(かんかつ)は国連なのだが、運営は日本がやっているので、同じ物を二つも書かなければならないと言う面倒な事が頭を悩ませるが、仕方ないと自分を納得させる。

 

 と、キーボードを叩き始めると、エアロックが解除される音がした。

振り返って見てみると、件の織斑先生と───

 

「お、小鳥くん!?」

 

 茶色の髪を後頭部で(まと)め、その影響で引っ張られて細長くなった半開きの目の青年、無人機と戦闘を行った小鳥遊が居た。

その服装はISスーツに医療用のガウン、どうやら意識を取り戻して直ぐに来ているらしい。

 

「って、何で居るんですか!?」

 

 ここは教師、生徒を問わず基本的に立ち入り禁止である。

そこに小鳥がいるのは流石にまずい。

 

「私が連れて来た」

 

「えっ、大丈夫なんですか!?」

 

「問題無いだろう、コイツは既にこの機体の事を知っているし。何よりこの機体の素性(すじょう)を調べるのに役立つ」

 

 そう言って顎をしゃくる千冬、小鳥はそれに苦笑いしていた。

寝起(ねお)きに事情聴取(じじょうちょうしゅ)されて、首根(くびね)っこ(つか)まれて機密情報(きみつじょうほう)を取り扱う一般人立ち入り禁止の場所に連れてこられて・・・考えてみると中々散々(なかなかさんざん)な目に()ってるとも言えなくも無い。

 

「そら、自分から言い出したんだ。さっさと解析(かいせき)しろ」

 

 と、小鳥の肩を叩いて急かす千冬。

それを聞いた麻耶は驚いた表情を小鳥に見せる。

格好から勝手に連れてこられたと考えていたが、自分から希望してここに来たらしい。

 

「小鳥くん、自分で来たんですか?」

 

「ええまぁ。事情聴取の時に『無人機の情報が欲しい』と言ったらこのザマですよ」

 

 肩を(すく)めて皮肉気に口元(くちもと)(ゆが)める小鳥。

それまでに何があったかと言うと・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・で、そこまでしか話せないのか?肝心(かんじん)の無人機に関して(ほとん)(しゃべ)れないようだが?」

 

「だから言ったでしょう『無人機の確証については喋れない』って」

 

 小鳥への聴取(ちょうしゅ)が終わった頃、聴取を開始したのが夕焼けも沈み始めた頃だったと言うのもあって、辺りは少し暗くなっていた。

 千冬は椅子(いす)に座ったまま、俺は看護室(かんごしつ)のベットに胡座(あぐら)をかいて状況説明と質疑応答(しつぎおうとう)をしていたのだが。

 話せない事があると言ったとはいえ、聞かれた事の四割を企業秘密(きぎょうひみつ)にしてしまったのは流石の千冬でも見逃(みのが)せないらしい。

 とは言え、下手に話すと俺と銀影(ぎんえい)の間にある()()()()()をバラす事にもなりかねないので、詭弁(きべん)で納得して(もら)おう。

 

結局(けっきょく)の所、千冬先生が秘密にする事を了承(りょうしょう)して取調(とりしら)べを始めた時点で、秘密の責任は俺にはありませんよ。それに、原因究明(げんいんきゅうめい)にはあまり関係無いでしょう。答えられない質問の殆どが銀影発信(はっしん)の情報でしょうに、そんなの時間をかければいずれ分かるし、刹那の情報で補完(ほかん)出来るだr・・・でしょう?」

 

 思わず(うわ)(つら)だけの敬語(はが)(はが)がれそうになったが、まぁ、頭を殴打(おうだ)されてないのなら大丈夫だろう。

 

「俺がこれ以上の話をするなら、せめてあの無人機の情報が欲しい所ですね。情報次第(じょうほうしだい)ならアレを送り出した勢力まで(しぼ)れらすヨ?」

 

 (おど)けた口調(くちょう)話題転換(わだいてんかん)を持ちかける。

これ以上深掘(ふかぼ)りされたくないので、交渉(こうしょう)に気をとらせよう。

 

「ふむ、じゃあやってみせろ」

 

「へ?」

 

「情報が欲しいんだろう?なら来い。あの無人機のある所まで連れてってやる」

 

「え?良いんですか」

 

「当たり前だ、その気がなければ言いはしない」

 

 ・・・マジか、

本当は話題を逸らせられれば良かったのだが、まさかそれが了承(りょうしょう)されるとは思わなんだ。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・そんな訳で千冬先生の案内によって禁止区画に入ることになった───と言う訳です」

 

 んで、と一息置いて本題に入る。

 

「どこまでわかってるんです?アレについて」

 

「は、はい」

 

 無人機を送り出した勢力を洗い出してやる、と大見栄(おおみえ)切った手前(てまえ)解析(かいせき)(ため)の情報が欲しい。主に外殻(ハードウェア)面についての情報が。

 と、それを問われた麻耶はいつもと同じように緊張した様子で情報端末(じょうほうたんまつ)を差し出す。コレを見ろと言う事なのだろうか。

 それを受け取って画面に映る情報に目を通す。

 

(凄いな・・・。一人で良くここまで調べた)

 

 装甲素材、センサー方式、仮想ジェネレーター出力、仮想エネルギー回路、両腕部ビームキャノンの構造etc・・・。ISに関わる事だけでなく、測定出来るだけの無人機(ドローン)のシステムに関することまでもが事細かに記述(きじゅつ)されていた。

 

 特に目を引くのはISコアの(らん)

『未登録』と記されたそれには、視線を注がずにはいられなかった。

 

「『未登録』て・・・。これ犯人殆(はんにんほとん)ど絞れたのと同義(どうぎ)じゃないですか」

 

 未登録のコアを所有出来るとすれば、心当りは一人しか居ない。

と同時に、(ぼう)篠ノ之束に襲われかけた人間として、今回の件を引き起こしそうなのもアイツしか居ないな、と得心(とくしん)せざるを得なかった。

 

・・・と言うか、

 

「参ったな・・・ここまで状況証拠(じょうきょうしょうこ)()がってたら俺の出番無いですよ」

 

 犯人が一人に限られた今、俺に出来ることなど無いに(ひと)しい。

 一応この場に置いて俺の役割(やくわり)プロファイリング(分析と推測)だ、まだ色々と出来る事は無いことも無いだろうが、その犯人が判っている時点で最早(もはや)(はら)(ばこ)である。

 

「良いからさっさとやれ」

 

 千冬からの無慈悲(むじひ)一言(ひとこと)

まぁ彼女の言う通りこんな所で出来る出来ないとゴネていても仕方(しかた)が無い。肩を(すく)めて先に断っておく。

 

「・・・まぁ、一応やると言った手前(てまえ)やることはやりますけど、情報量少なくても文句は言わないで下さいね」

 

 言って、集まった情報、特にハードウェアの情報に注力して解析を始める。

 

「・・・・・・───」

 

 端末に表示される情報を、先程まで麻耶の座っていた椅子(いす)にドカリと腰を下ろして目を通しつつ。その手を動かして別の資料を呼び出す。

ホログラフィ(空中投影映像)に表示するのは三種の第二世代型IS。

ラファール・リヴァイヴ、虎龍、ブラック•ハウンド

それぞれがAEU、人革連、ユニオンを代表する機体だった。

 現在無関係な筈の機体三機を並べる事に首を傾げる千冬と麻耶だったが、こちらとしてはいたって真面目である。

そんな疑問に耐えかねてか、麻耶が質問を投げて来た。

 

「・・・何してるんです?」

 

「援助組織の痕跡探し」

 

 画面から目を離す事なく、淡々(たんたん)と告げる。

 

「・・・ISは、コア(ソフトウェア)があって、筐体(ハードウェア)があって・・・まぁ、色々な物を扱って成り立つ代物(しろもの)。例え、相手が天才だろうが天災だろうが()()が必要になる。よしんば仮に何かの交渉(こうしょう)(おこな)って、どこかの勢力から物資を援助されたとしよう」

 

・・・だとしたら。

 

「だとしたら、何を材料にした?タダで物貸しをする奴はどこにも居るまい、だとしたら何かしらの材料が必要だろう」

 

 三つの機体、それぞれのエネルギー回路の透過模式図を、無人機のそれに照応(しょうおう)させる。

 

「物資、情報、技術・・・。考えられるのはこの三つ。物資・・・はまぁまず無理だろうな、今回はその物資を貰い受けてる訳だしな」

 

 物を欲しがってる者が物を持つとは思えない。

 

「じゃあ、情報と技術と言うことに・・・?」

 

「情報って線も(うす)い。相手は特A級はおろかS級指名手配の人物だ、三つに一つって事は無いだろうが、あの束が言う事をまともに信用する奴はマトモじゃない」

 

 装甲素材、フレーム素材、その構成を見比べ、類似点(るいじてん)相違点(そういてん)(はじ)き出す。

 

「それに、束が世界から注目されているのは、誰も届かない技術力にある。なら十中八九交渉材料は束の技術の一部だろうな」

 

「っでも、それがどうして援助組織の痕跡に(つな)がるんです?」

 

 その仮説に納得しながらも、同時に疑問にぶつかって首を傾げる麻耶。

そのまま言っても面白くないので、一つ問題をふっかけるとしよう。

 

「さぁて、どうしてでしょうか?」

 

「え?ええっと、なんででしょうか・・・?」

 

 当惑(とうわく)する麻耶に()わって、千冬が口を開いた。

 

「・・・()()I()S()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()。という事だな」

 

「大正解。・・・まったく、そんな早く答えないでくれ、麻耶先生が困ってて面白いトコだってのに」

 

「教師で遊ぶな教師にタメ口を聞くな」

 

「あいてっ」

 

 バシンッと、端末の面で(はた)かれる。その後ろでは(さき)発言(はつげん)に『あはは・・・』と麻耶が引き笑いしていた。

気を取り直して、

 

「技術だったら何だって良い訳じゃない。最終的な目的は取得した技術を自分の技術へと転用(てんよう)する事・・・まあ、束が持つ先端技術も魅力的(みりょくてき)だろうが、モノにできなきゃ無意味だ・・・ですし。そう考えると、すでに実用の目処(めど)が立っているか、転用しやすい技術を注文するでしょうね」

 

 口に出すことは無いが、その考察(こうさつ)に少なからず(きも)が冷えていた。

そう言う注文(オーダー)があると言うことは、束を援助している組織はそう言うテクノロジーを確立させている、(ある)いは確立させようとしている可能性が高い

正直言って余りに危険な思想だ。

 

(()()()()()()()()()()()()()、『組織』とやらは)

 

 仮称(かしょう)として『組織』と呼ぶが、この『組織』は兵士が死ぬ意味を戦場から奪おうとしているらしい。

反吐(へど)が出る。

怒りを通り()して(あき)れの溜息(ためいき)まで出て来そうだ。

 

─── その上で、その組織にアタリが付きそうな事が、俺にとってストレスを増加させる事だった。

 

「はあああぁぁぁぁ・・・?」

 

 クソほど大きな溜息を誰にでも聞こえるレベルで吐き出す。

理解は出来るが、同調(どうちょう)は出来ないその思想が嫌悪(けんお)()(あふ)れた溜息を生み出させた。

 怒りに駆られたまま、口を開く。

 

「・・・多分だが、援助組織が(わか)った」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 ああ、と、その結果にうんざりしながらも、力無く返答する。

少しばかり言うか迷ったが、千冬の刺す様な視線に急かされ、溜息混じりの声で絞り出すように結論を出す。

 

「・・・結論から言うと、束のバックにはユニオン、少なくともアメリカがついてる・・・!クソ、最悪だ・・・!よりにもよってあの国と組んでいるだと!?」

 

 自分の出した結論が間違いであって欲しい心を躊躇(ためら)い無く吐露(とろ)する。

見れば、信じられないと言う風に麻耶は絶句し、千冬は鋭い瞳のままこちらを見ていた。

 その千冬が問う。

 

根拠(こんきょ)は?」

 

「この無人機の腕部内蔵式(わんぶないぞうしき)ビームキャノンの存在そのものが根拠だ」

 

 言って、情報端末のパネルを叩く。

そこには完全状態の無人機の透過模式図、その腕部の拡大図があった。

 

「AEU、ユニオン、人革連のISのコンセプトは、それぞれの勢力で分かれてる」

 

 一度閉じた三機の量産型のホログラフィーをもう一度開く。

一機一機に指を刺しながら説明を始める。

 

「人革連はスペックより量産性。AEUは汎用性(はんようせい)の高い本体。ユニオンは本体より武器・・・と言った風にな」

 

 細長い目が愉悦(ゆえつ)に歪んでいるのは、久方ぶりにISの構造を詳しく見ることが出来たからだろう。

三機の量産機の図を仕舞(しま)い、続けて無人機の構造図を大きく投影した。

 骨子、エネルギー系、センサー系、そのどれもが複雑(ふくざつ)(から)みあって出来たそれは、専門知識(せんもんちしき)の無い麻耶や千冬にも、その特別さをわからせるだろう。

 

「コイツのコンセプトは(おおよ)そ『高機動砲撃型(こうきどうほうげきがた)』しかもスラスターてんこ盛りのエネルギー回路が超複雑で、コスト度外視(どがいし)も良い所だ。こんなゲテモノを人革連が作るとは思えない」

 

 残るは二つ。しかし、その特性ではアメリカを黒幕だと(にら)む小鳥の予想では矛盾(むじゅん)が起きる。

 

「それじゃあ、AEUが関わってるって事になりませんか?」

 

 確かに、先程の説明だと、機体の汎用性を求めるのはAEUの特徴だった(はず)だ、それではAEUが怪しくなり、ユニオンを怪しむ見立てが立たなくなる。

だが、そう判断したのは別の理由があったからだ。

 

「言っただろう?この機体のミソは腕部ビームキャノンだって。・・・これを見ろ」

 

 そう言ってホログラフィーを移動させ、腕部アーマー内のビームキャノンのエネルギーパスを(しめ)す。

全身装甲(フルスキン)(ゆえ)に実体を持ってラインを繋ぐ事ができるその機体には、分かり易くエネルギーコードが・・・

 無かった。

 

「この機体のビームキャノンは、エネルギー供給を実体コードではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「接触式のパス・・・?」

 

「ああ、普通ならあんな大出力を使うなら実体のコードを使うだろうに、この機体は基本的に普通のISと変わらない無線式どころか、本体装備なら使う筈も無い接触式のエネルギーパスなんかを使っていやがる」

 

 接触式での供給は無線式よりは効率は良いものの、それなら直接ラインを切らずに制御した方が効率は(はる)かに高い。

だと言うのに、わざわざ接触式のエネルギーパスを使用しているその理由。それに一つ心当たりがあった。

 

「恐らくだが、この機体の腕は腕にビームキャノンが付いている訳では無くて無理矢理ビームキャノンに腕としての機能をはっつけてると言った方が正確だな」

 

 そう、接触式のパスを使うとしたら、マニュピレータを(かい)して取り扱うビーム兵器といった所だ。

それならば援助組織は携行(けいこう)ビーム兵器の技術を欲しがっている事になる。

 

成程(なるほど)・・・連中の求めている技術は携行兵器。だから兵装に力を入れるアメリカの可能性が高い、と言う事か」

 

「そう言う事・・・。正直言ってまだAEUや人革(じんかく)と組んでた方が収拾(しゅうしゅう)はつきそうなんだがねぇ」

 

 背もたれに深く背を(あず)けて溜息混じりに言葉を(つむ)ぐ。

 

「アメリカは─── 建国以来負けを知らない。第一次ではほぼほぼ裏方、第二次では本国へ誰も足を踏み入れられず、100年前の中国との大戦でも結局(けっきょく)ワシントン、ニューヨークにまで被害が及ぶ事なく痛み分け。敗北も痛みも知らない奴等が束の技術(ちから)を手にしたら何をしでかすか・・・。正直言って分かったモンじゃない」

 

 吐き捨てるように、そうあって欲しくない未来を想像する。

と、千冬から視線を外すと、血色の悪い顔をしている麻耶が居た。どうやらショックの大き過ぎる話題だったらしい。

それもそうだ、そんな血みどろな話題が現実味を帯びることなそうそうあるまい。

 皮肉気に口を歪めて今までの言葉を茶化(ちゃか)す。

 

「ま、気にしなくても良いですよ。コイツは元専門学生の戯言(たわごと)だとでも思っていただければ」

 

 実際、アメリカと束がつるんでいる確証(かくしょう)は無い。身も蓋もない言い方をすればこれはまだ憶測(おくそく)でしかない、結論づけるにはまだ早ように思える。

 

「───」

 

 それでも気休めにはならない、麻耶も千冬も浮かない顔を浮かべ、そう言う茶化しを入れた俺ですら、その心中(しんちゅう)(おだ)やかではなかった。

 

「どちらにせよ、可能性の範囲(はんい)を出ないのであれば、報告書(ほうこくしょ)()せる必要は無いな?」

 

「・・・まぁ、でしょうね。こんなのは書類に書くべきじゃない」

 

 千冬が口にした台詞に同意する。

この仮説がたとえ真実に届いていたとしてもそうでなくても、外に()らせばアメリカとの軋轢(あつれき)(まぬが)れない。

真実の所在はどうであれ、ひた隠しにした方がよっぽど建設的(けんせつてき)だろう。

ここに居る三名の内二人が隠蔽(いんぺい)に前向きなのを知ったからか、麻耶はホッとしたような顔をして、その提案に同意した。

 

「そう・・・ですね。この事は報告書には書かないでおきましょう」

 

 どんなにIS学園が中立地点だとしても、運営しているのは日本だ。直接的でなくても圧のかけようはいくらでもある。

各国との関係が重要なIS学園、その中でもアメリカは重要な一国である。

 

─── 正直に言うとこういった重要な事は公表したいが、かと言って公表の後の事を考えられない程向こう見ずでもない。

 

「それに、事を明るみに出すのはいつでも出来る」

 

 蛇の様な目が、怪しく光った。





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