IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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宛無き野望(Unidentified ambition) / 義務か責務か(Duty or obligation)

「んふふ・・・んふふふふふ・・・」

 

「どうされましたか(たばね)様」

 

 誰も知らない個人研究室(こじんけんきゅうじょ)篠ノ之(しののの)(たばね)立体映像(ホログラム)に映る白式(びゃくしき)のステータスを見てほくそ笑んでいた。

 その後ろから声をかける銀髪(ぎんぱつ)の少女、彼女の名はクロエ•クロニクル。束の養女(ようじょ)である。

問われた束は上機嫌(じょうきげん)様子(ようす)で答える。

 

「白式がねぇ、すっごく成長しているんだよぉー」

 

 演技(えんぎ)じみたその声音(こわね)を聞いて、クロエはほんの(わず)かにその口許(くちもと)(ゆる)め、

 

「それは何よりです、束様の思惑(おもわく)順調(じゅんちょう)成就(じょうじゅ)へと向かうのなら、これ以上の事はありません」

 

「んもぉークーちゃんったら、そんな(かた)くならなくても良いんだよ~?」

 

 そんなクロエに()きついて、その頭を()で回す束。

それは子に親が見せる愛情と言うよりも、動物に飼い主が見せるような愛玩(あいがん)に似ていた。

 だがクロエは、それでもそれを享受(きょうじゅ)していた。

束がクロエの頭をひときしり撫で終わると、クロエは一つ、束に質問を投げ掛ける。

 

「それで、次はどうなさいますか。私に出来ることがあれば、何なりと申し付け下さい」

 

「ん~、クーちゃんに活躍(かつやく)して貰うのはもうちょっと後かにゃ~」

 

「・・・そうですか」

 

「そんなに落ち込まないでよー。クーちゃんが(くら)いと私も暗くなっちゃうよ」

 

「申し訳ございません・・・」

 

 ニコニコと他人が見れば気味(きみ)が悪いと評価するような笑顔を浮かべながら、束はクロエに注文(ちゅうもん)する。

 

「わかったならヨシ!それはそうと、束さんはクーちゃんの()れたコーヒーが飲みたいな~?」

 

承知(しょうち)しました、今()れて来ます」

 

 その後ろ姿を見送った束は、今見ていた物とは別の、新たな立体映像(ホログラム)を呼び出す。

そこに(しる)されているのはアメリカ経由(けいゆ)でいただいたIS。そして、銀影(ぎんえい)に欠けている部位(ユニット)の一つ。

 

「さぁーて、これで面白くなるかな?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 (なぞ)のISがクラス代表対抗戦に乱入(らんにゅう)したその翌日(よくじつ)

 

「あ、お早う小鳥(おどり)くん」

 

「おう、お早う」

 

AM8:23

 SHRまで時間が空いているにも関わらず少し(さわ)がしいが、1ー1教室はいつもとほぼ変わり無く朝を(むか)えていた。

 

 少しばかり騒がしいと言うのも、昨日の乱入騒ぎが原因(げんいん)だろう。

 

『聞いた話だと・・・』

 

『でもそれっておかしくないか?』

 

中東(ちゅうとう)勢力(せいりょく)だって話もあるみたいよ?』

 

『まさかぁ、中東にそんなこと出来る国なんて無いでしょ・・・』

 

耳の端々(はしばし)から聞こえる言葉は、先日(せんじつ)のISの正体を探ろうとする噂話(うわさばなし)(たぐ)いだった。

 自分の席に向かいながらぼんやりと女子(じょし)連中(れんちゅう)(しゃべ)(ごえ)を聞いていると、女子生徒の一人(確か夜竹さゆかだったか)がこちらに(あゆ)みより俺に質問を投げて来た。

 

「あの、昨日の機体って何だったの?」

 

「──・・・」

 

 あのISが無人機だと言う事実に関して当面(とうめん)の内は箝口令(かんこうれい)()かれている。

 その正体を知る者は、直接戦闘(ちょくせつせんとう)を行った小鳥(おどり)(ゆう)刹那(せつな)・F・聖永(せいえい)、そして当時オペレーションルームに居た数名の教師(きょうし)(かぎ)られ、その情報を知る生徒(せいと)はほぼ居ない。

 だからこそ女子連中が俺からそれを聞き出そうとするのは、なんとなく予想はついていた。

 席へと向かいながら、軽くあしらう。

 

先生方(せんせいがた)から話すなって言われてる。言えなくもないが、その場合俺と聞いた(やつ)非道(ひど)い目に()う。他の面々(めんめん)にも伝えておくと良い」

 

 千冬(ちふゆ)(あた)える懲罰(ちょうばつ)災害(さいがい)のような(あつか)いにしても、クラスメイト全員の共通認識(きょうつうにんしき)だから大丈夫(だいじょうぶ)だろう。・・・多分(たぶん)

 ()()えず、無人機に関して話せないという事だけを伝えてさゆかを引き退(さが)らせる。

大人(おとな)しいさゆかが、俺の言う通りに他の面子(めんつ)にも同じ(むね)を伝えに行くのを眼の(はし)(とら)えつつ、無骨(ぶこつ)なカーキグリーンのショルダーバックの中からいつもの手乗(ての)りノートパソコンと、学園支給(がくえんしきゅう)のタブレットの二つを(つくえ)の上に取り出して、ショルダーバックを机の横に()ける。

 授業の準備(じゅんび)がおわり、席に()こうとした時、後ろから織斑(おりむら) 一夏(いちか)が声を掛けて来た。

 

「お早う小鳥」

 

「ああ・・・昨日は災難(さいなん)だったな」

 

 先日の乱入に()いて、自分の試合が中止してしまった一夏は、多分一番の被害者だろう。

飛ばされた挨拶(あいさつ)見舞(みま)いの言葉を返すと、一夏は思いもよらない言葉を()した。

 

「・・・大丈夫か?」

 

「あ?何が?」

 

「ああ、いや、何と言うか・・・顔?」

 

「あん?」

 

 要領(ようりょう)を得ないその回答に益々(ますます)首を(かし)げざるを得なくなる。

タブレットのカメラ機能を使い、インカメラで自分の顔を確認する。

 後ろ髪をゴムで(しば)っただけの乱雑(らんざつ)な髪型、その影響(えいきょう)で細長く()り上がった形の眼。

 

・・・我ながら(ひど)面構(つらがま)えだ、どうやっても善人には見えないだろう。

それはさておき、(いぶか)しげに一夏に返す。

 

「いつもこんな顔だろう?それとも何か?俺はいつも大丈夫じゃなさそうか?」

 

「い、いや。そんな訳じゃないんだけどな。何となくこう・・・暗いって言うかなぁ・・・まぁそんな感じだった」

 

「ああそうか・・・」

 

 もしかしたら昨日(きのう)のトラウマフラッシュバックが(いま)だに尾を引いているのかも知れない。

まさか顔に出ていたとは。『何も無いフリ』の自信はあったのだが・・・

 

「って言うかその(かん)(ほうき)とかに使えよ」

 

「え?何て?」

 

「何でもない。下らない事を口にしただけだ、気にするな」

 

 そう言ってあらぬ方向を向く、もうめんどくさいのでさっさと終わらせるに限る。

 

 一夏はこういう時こちらが切り上げてもしつこく食い下がる(きら)いがある。

他の話題でこのバカの注意を()らすとしよう。

 

「それはそうと、鈴音(リンイン)との決着(けっちゃく)はどうなった?中止になったんだろう?」

 

「え?あ、ああ・・・そういやどうなったんだろ」

 

「オイお前当事者(とうじしゃ)だろうが」

 

 思わずそっぽを向いた顔を一夏の方に向けるレベルでツッコんでしまった。

 

「当事者が事態(じたい)把握(はあく)してないでどうする。そんなんだとお前、将来(しょうらい)詐欺(さぎ)に引っかかるぞ」

 

「うっ、」

 

 (あき)れた様子を隠す事無く嘆息(たんそく)して一夏に忠告(ちゅうこく)する。

『詐欺はかける奴もかかる奴も悪い』と言うのがスタンスなのだが、何かさっき図星を言い当てられた事への意趣返(いしゅがえ)しがしたくて何となく反省(はんせい)(うなが)す(別に何の意味も無いのだが)。

 痛い所を(つつ)かれたか、一夏はバツの悪い顔をして居た。

 

「ちょっと良い?」

 

 『してやったり』と言う感情はさて置いて会話を続けようとした時、一夏の後ろから声が掛かった。

 

「なにやつ!」

 

「アンタの幼馴染(おさななじみ)よバカ」

 

「あ、(りん)

 

 勢い良く振り向く一夏。

声音と口調から察するに鈴音だろう。一夏にバカと正面切(しょうめんき)って言うのは千冬(ちふゆ)と鈴音、後は箒くらいしか居ないだろうし。(うわさ)をすればと言う所か。

 

「丁度良かったじゃないか。ホラ聞けばどうだ?」

 

「そうだな。なぁ鈴、昨日の決着だけどさ・・・」

 

 鈴音に直接聞く様に(うなが)して一夏と鈴音を話させる。

それを視界に収めつつ、俺は俺自身の席に着く。

 

 パソコンを開いて、世界のニュースに目を通す、フリをする。

 

(・・・まだ考えるべき事は山積(さんせき)している)

 

 昨日の無人機の解析で得た情報を頭の中で整理(せいり)しつつ、物思いに(ふけ)る。

 

・・・偶発的(ぐうはつてき)とは言え、俺は世界の裏側に触れてしまった。

 

 俺は知らなければならない。

この世界の裏側で一体誰が、どんな原理(げんり)で、どんな目的(もくてき)で、どうやって、何をしようとしているのか。

 

AEU、人革、ユニオン、三大勢力の事。その勢力内で跋扈(ばっこ)している者達の事。その勢力に立ち入れられない者達の事。

・・・そして何より、束の事。

 

(今の世界は間違い無くアイツを中心に回っている・・・)

 

 そう言った意味では束がその回転軸(かいてんじく)(ゆが)めるだけで、この世界は大きくバランスを(くず)羽目(はめ)になるだろう。

何とも迷惑な話だが、束はそれを容赦無(ようしゃな)実行(じっこう)する。今はまだそうする気は無いらしいが、それでも彼女の一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)がこの世界を瓦解(がかい)させる原因になるのは間違い無い。

 現状で満足しているつもりは無いが、コレより(ひど)くなっては目も当てられない。

 

(俺に何が出来(でき)るかは分からんが・・・)

 

 やれる事は少なからずある(はず)だ。

ちらり、と手元(てもと)に置かれた四角い端末(たんまつ)に目を向ける。

 

 銀影、これが持つ(モノ)

それが(たと)え束から与えられた物だとしても、銀影を使って何かを成すのは俺自身だ。

 

 やれる事を見逃(みのが)さぬよう、眼を()らす。今の俺がやるべき事だろう。

 

「・・・よーし、じゃあ来週の火曜日の放課後!覚悟してなさい!」

 

「おう!今度こそ決着つけるからな!」

 

・・・・・・見当違(けんとうちが)いな方向性でやるべき事が散石しているがな。







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