IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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Sudden rendezvous

「えぇーっと、次は目覚まし時計・・・」

 

 クラス代表対抗戦(だいひょうたいこうせん)終了(しゅうりょう)して早三日(はやみっか)、週末土曜の大型ショッピングモール、通称(つうしょう)『駅前』の100円均一コーナーに小鳥(おどり) (ゆう)()た。

黒のスキニージーンズに薄くクリームがかった白のTシャツを着け、その上から青磁(せいじ)色の半袖(はんそで)シャツを羽織(はお)っている小鳥は、便利(べんり)グッズコーナーを()()って次なる目標物(もくひょうぶつ)をカゴにいれるべくズカズカと歩き続ける

購買意欲(こうばいいよく)(さそ)わせる便利商品は意識の外にあるため、あれこれ無闇(むやみ)に手を伸ばす事はしない。

 

 ・・・ちなみに、元来(がんらい)こういったショッピングをしない小鳥がなぜここに居るかと言うと。

 

刹那(せつな)の生活用品ねぇ・・・わざわざ俺を使わなくても良いだろう。轡木(くつわぎ)(じじい)とか居るだろうに」

 

 ぶつくさと文句を言いながらカゴに目覚(めざ)まし時計(どけい)を入れる。

 そう、理由は刹那の生活用品である。

記憶喪失(きおくそうしつ)の少年“刹那・F・聖永”との奇妙(きみょう)半同居生活(はんどうきょせいかつ)が始まってから、(すで)に二ヶ月半が経過(けいか)している。

最近刹那の転入手続(てんにゅうてつづ)きが(ようや)()んだらしく。来週にも三組に転入する事になっているらしい。

が、しかし最近まで生徒というより実験動物(モルモット)に近い環境だったため、普通の服やら日用品の(たぐい)が無かったのだ。

それを見かねたのか、先日(せんじつ)我らが鬼教師、織斑(おりむら)千冬(ちふゆ)先生から『刹那の生活用品を買ってこい』との一言を頂戴(ちょうだい)し、今現在に(いた)ると言う訳である。

 

「ったく・・・。えー、次は歯ブラシと歯磨(はみが)き粉・・・」

 

 文句(もんく)は口にするが、行動を()めるといった事はしない(あた)り、彼がどれ程ゲンナリしてるかが解ると言ったものだろう。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 紫外線分解性(しがいせんぶんかいせい)のレジ袋に購入(こうにゅう)した物を詰め込み、モールの中央をぶち抜くエスカレーターの乗り口(そば)に在るベンチにドカリと座り込んだ小鳥は、目の前の服飾店(ふくしょくてん)に背中にを向けてモールの中を見やる。

 

「平和なモンだなぁ・・・」

 

 IS学園から最寄(もよ)りの巨大施設(きょだいしせつ)であるこの駅前は、小鳥から見れば学園を攻めるとしたら活動拠点(かつどうきょてん)としてはこれ以上無いほど好都合(こうつごう)である。

実際そうなるかは分からないが、切れ長の目にはそう(うつ)るものだった。

 

「実際にこの平穏があって、それを保つ為にどれ程の努力が必要なんだか」

 

 そう溜め息を()いて前方に向き直った小鳥の視線(しせん)の先に、

 

 

ミニマム千冬が現れた。

 

 

「・・・・・・・・・は?」

 

 黒の五分丈Tシャツに明るい青のデニムショートパンツを着こなし、向かい側の服飾店(ふくしょくてん)寒気(さむけ)のするにこやかな表情で鏡のにらめっこしている少女が居た。

どうやらこちらには気が付いておらず、服を見て回っているその姿は年相応の少女のそれに見える。

 

「・・・・・・!!(ブンッ」

 

 見ている事がバレてしまえば、何か凄まじく凄まじい事をされそうな予感がして、思わず視線を背中の向こう側に戻した。

 

(え?何がどうなって、何で千冬先生が小さく・・・え?)

 

 必死になって頭を回す。あの千冬が、()()千冬があんなに可愛いげのある少女になっている理由を。

 

「・・・・・・・・あー、そういや言ってたな『妹が居る』とか何とか」

 

 数秒考え、前に一夏と交わした会話を想起(そうき)し、一人勝手に得心する。

確か名前は織斑円花(まどか)、身内の一夏から見ても千冬にそっくりだとか。

まさかこんな所で目にするとは思わなかった。

 とは言え彼女がここに居ようとも、当面の目的に何の影響があるわけでもない。

 

「と言うことは、俺には余り関係の無いことか・・・」

 

 そう言って立ち上がり、別の場所へ向かう。

いや。正確には、向かおうとしたとしたその時。

 

「ッ・・・!?」

 

 ぐらりと揺れる視界、力の入らない足、薄れ行く意識、妙な脱力感が全身を襲う。

その中でジーンズのポケットに手を突っ込めたのは僥倖(ぎょうこう)だとしか言いようがなかった。

 急速に意識を取り戻した小鳥は、急ぎ右足を踏み出してその場で踏み止まる。

 武装やセンサー類の外装は展開していないが、銀影を起動させ生命保護機能を利用したのだ。

 

(っ、悪い銀影。急に呼び出して)

 

『別にいいわよ。どうあっても私はアンタがアンタである限り、アンタの夢を叶える為に居るんだから』

 

(なら遠慮無(えんりょな)く使わせてもらう)

 

 しっかりと(りょう)(あし)で立ち上がっる。

(あた)りを見回(みまわ)せば、近場(ちかば)の人間は皆深(みなふか)い眠りに落ちていた。

 状況把握(じょうきょうはあく)の為に銀影のヘッドギアのみを展開(てんかい)した小鳥は、オレンジ色のバイザーに(おど)る文字を見て、舌打(したう)ちせざるをえなかった。

 

催眠(さいみん)ガス・・・。相当強(そうとうつよ)いヤツだな」

 

 空気中に(ただよ)う成分の中には、立てこもり等の鎮圧(ちんあつ)使われるような睡眠誘発剤(すいみんゆうはつざい)(ふく)無味無臭(むみむしゅう)無色透明(むしょくとうめい)のガスが(ふく)まれていた。

ガスの広がりから見るにどうやら空調(くうちょう)から回ってきているらしい。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 と、状況を(なか)(つか)みかけた小鳥の右側。つまりは先程まで向かい側であった服飾店の中で声が上がった。

 驚いてそちらを見れば、急に倒れたのであろう店員の安否を問いかける織斑円花がそこに居た。

 

「オイオイオイ。嘘だろ・・・」

 

 この催眠ガスは相当強力な代物(しろもの)で、人間であれば一嗅ぎしただけで昏倒してしまうのだが、それが充満している空間に()いてなお意識を失わず、むしろ明瞭さを保っているのである。驚かずにはいられない。

 

(どんなに超人的な千冬先生の妹だっつっても無茶苦茶すぎるだろ!?)

 

「ちょっと待ってて下さい!他の人を呼んできます!」

 

「ちょ、おい待て!」

 

 だが、驚くのも束の間。しゃがんでいた円花が立ち上がり、他の人間を呼ぶ為に走り出したのだ。

無闇に動いては危険だと、後を()おうとするが、彼女には届かない。

 だが、こちらに(とど)く物はあった。

 

「フン!」

 

バキィッ!!

 

「がぁッ!?」

 

 後方から接近に気付けず、何某(なにがし)かの拳をモロに()らってしまった

 

「ぐぅ、ッ!」

 

 銀影を完全に展開し、空中で身を(ひるがえ)して体勢を立て直す。

 

「・・・何者だ!」

 

 睨み付ける前方には、灰色のISが居た。

ヘルメット型デバイスユニット、大型の腕部装甲(アームド・アーマー)、肩の上のスラスターには何本かナイフが掛けられ、その機体が近接戦を主に考えられている事が明確に現れている。

 

 あれは・・・確か、〝ファングクエイク〟だったか。

 アメリカの第三世代機、量産と安定性を重視したコンセプトを持つ最新鋭機。

頭の中でカタログを広げる小鳥は、じっと敵を見つめる。

 

「・・・・・・・・・」

 

 操縦者はこちらからの問い掛けに答える事はない。答える気が無い、あるいは答えられない質問だったようだ。

だが、何の情報も無しに会話を終わらせる気は無い。

 

「質問を変えるぞ、何が目的だ」

 

「・・・すぐに解る」

 

 意外にも口に出された返答、その不明(ふめい)さに首をかしげた小鳥だが、その意図は確かにすぐに解った。

 

「きゃあっ!?」

 

 円花の悲鳴(ひめい)が上がった。

驚いてそちらを見れば、白と灰色の都市(とし)迷彩(めいさい)を着用した幾人かのガスマスクの人間が円花を羽交(はが)()めにして連れ去ろうとしていたのだ。

 

「ッ、何してんだお前ら!!」

 

 ガスマスク達に飛び込もうとした小鳥。

だがしかし、正体不明のISがその前に立ちはだかった。

 その瞬間『ヤバイな』そう直感した小鳥は反射的に後ろに()退()いて距離を取り、バックパックの大剣に手を伸ばす。

 相手からは、対話を行おうとする積もりは無い。ただ目標を達成するのみ、それ以外は何も感じなかった。

 緊張に浅くなる呼吸が、自分が劣位(れつい)に立たされた事を自覚する心臓が、被食者の感触を想起(そうき)した古皮質(こひしつ)が、その主に克明(こくめい)に危険を告げる。

 

「ふー・・・」

 

 その主人は小さく息を吐いて、その全てを無視した。

 

剣に伸ばした手を更に伸ばし、勢い良く抜剣(ばっけん)し、臨戦体勢(りんせんたいせい)に入る。

 

「つまりはお前の、お前達の目的は中学三年生の女の子をよってたかって多人数で拉致(らち)る事ってか?」

 

 相手の尊厳を最大限(なじ)るように挑発する。

 だが、相手はそんな事を意に介する事無く、ガスマスク達との連絡を取り合う。

 

『お、おい。大丈夫なのか!?』

 

「問題無い、お前達はお前達の任務(にんむ)優先(ゆうせん)しろ。私の任務はユウ・オドリの足止めだ」

 

 そう言った彼女はラックからナイフを取りだし大きなマニュピレーターで握る。

 (たが)いが戦闘体勢に入ったことを確信した二人は、言葉無く睨み合って相剋(そうこく)する円を(えが)き、通路に一直線に位置取った直後。

 

「ふ・・・ッ!」

 

「ラァッ!」

 

 二人は己の敵へと突撃した。

 小鳥は右の剣を振り下ろし、謎のISは右のナイフを地を這うような軌道で突き上げる。

敵は左のナイフでそれを止め鋭い突きで小鳥の首を狙うが、小鳥は両足のスラスターを吹かしバク宙のような形で跳び上がる事で躱すと同時に天井に足を着ける。

 結果的に敵に背を向けることになった小鳥は、振り向きつつ足を踏み込んで背後の敵へと両の剣を振り下ろす。

防御する謎のISのナイフと銀影の剣がぶつかり、火花が散った。

 

「・・・ッ!」

 

 刃が衝突した衝撃を無理に殺さず、逆に利用して距離を取った敵は、驚いたような表情で小鳥を見る。どうやら素人だと舐められていたらしい。

通路に降りた小鳥は、右の剣を肩に乗せ左の剣を前に出す構えを取る。

 

(まだ周りに人が居る以上、火器は使えねえ・・・近距離戦が目的なら嬉しいんだけどな)

 

 周りには催眠ガスで眠らされた人々が数多くいる。もし遠距離用の兵装が生身の人間に当たれば死を免れない。

最低出力でも致命傷になるビーム兵器しか遠距離兵装を持ち得ない銀影の装備と、(ねら)って撃っても当てられない小鳥の射撃センスでは、今ここでアイアスのビームライフルも腕部ビームバルカンも使えたものではない。

 

(銀影・・・奴の武装、分かるか?)

 

『遠距離兵装は積んでないみたいね。量子変換(インストール)している代物(しろもの)は全部近距離用のブレード。収納してる物の中に火薬の臭いはしないわね』

 

「・・・そうか、サンキュ」

 

 こちらが遠距離戦に応じる必要は無いと解った小鳥は、小さく安堵して銀影に感謝の意を示す。

 

(さ、て。奴のやりたい事は解ったが、スペックは如何程(いかほど)か・・・)

 

 相手の能力値を見計らう。

筋骨隆々のも言えるマッシヴさからは機動性を感じられない、どちらかと言うなら瞬間的な速度で距離を詰め、インファイトに持ち込む戦法を得意としているのだろう。記憶の中のスペックと照応させながら、考察を深める。

 

(それなら、わざわざ相手の得意分野に乗ってやる必要は無いか)

 

 と言うより、そもそもこの敵との戦いに興ずる事自体に意味がない。

どう言った目的であれ、奴等が円花を(さら)うと言うのであれば、円花を追うのが先決である。

 

「ったく、どうしてこうなってん、だっ!!」

 

 言うが早いか、通路からホールを貫く空間へと身を投げる。

 

「こっから先は速いもの勝ちだ!お先に失礼!」

 

 更に飛んで一階上に行き姿を消す。

 小鳥の目的が織斑円花の奪還にあることを察知した敵も慌てて上に向かって、

 

 

「・・・なんてなァ?」

 

 

「ッ!?」

 

 ニヒャア、と邪悪な笑みを浮かべる小鳥を見た。

 

(っ、待ち伏せ!?)

 

 もう遅い、ラックにアイアスを戻した小鳥が、灰色のISへとタックルし、ホール中央へと瞬時加速(イグニッショブースト)で己ごと敵を()とす。

 

「うオオオオオアァ!」

 

「ぐ・・・ぅ!」

 

 敵は抗おうと試みるが、それより先に地面が二人に衝撃を与えた。

 

「グッ・・・!」

 

 衝撃に軽く(もだ)える二人、しかし敵の腹を踏みつけ立ち上がった小鳥は、矢継(やつ)(ばや)にバックパックから“アイアス”を抜剣し逆手に持ち替え、敵のマニュピレーターを地面と()い止め、両の拳を突きつける。

その手は(くう)だが、その籠手(こて)には銀影の遠距離兵装の一つ、ビームバルカンが在った。

 

「うらァアア!!」

 

 狙いは付けない、最早付ける必要も無い。目と鼻の先に居る敵が行動不能になるまで小鳥はバルカンを打ち続けた。







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