IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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Next round

「ハァ・・・!ハァ・・・!」

 

 強敵と相対した肉体的疲労と言うより、至近距離でバルカンを滅多撃ちにした精神的疲労が原因で、深く、荒い呼吸を繰り返す。

 気を失ったパイロットを放置して、小鳥は銀影に語り掛ける。

 

「これで、円花を助けた後の心配は無くなった訳だ。銀影、外部との連絡を」

 

『無理、電波妨害用のジャマーがかけられてるみたい』

 

「やっぱか・・・。仕方無い、俺等だけで救出しなきゃなんねえか」

 

 とは言え、恐らく相手は生身の人間である、戦闘になったとしてもそこまでの問題はあるまい。

 問題は、連中(やつら)がこのショッピングモールから先に脱出することだ。そこで問題になってくるのは、連中のゴール、つまりは脱出口(だっしゅつこう)である。

ISの速度を持ってすれば先回りなど容易(たやす)い。しかし、それはルートが敵と同一である場合だ。

ショッピングモールのように分岐点の多い場所ではルートの特定は容易ではない。

 

「奴等・・・催眠ガスを使ってたな」

 

 ISの腕部装甲のみを解除し、唇を人差し指と薬指で挟み込むようにして下顎を覆う小鳥。

 

・・・・・・ガス等の空気を効率良く回すために、どのような手段を採るべきか。

 

「それに・・・。普通の手段で入ってくるとは思えない」

 

・・・・・・モール内もそうだが、モール外の人間にも気取られぬために、どのような侵入経路を採るか。

 

(このガスは上から下へ広がる性質。それに、ガスの発生装置も堂々とは置けまい・・・・・・)

 

 と、するならば。

空調施設のシステムに関与し、誰にも見られない場所が連中の侵入経路だ。

 ガラス張りの天井を見上げ、小鳥は叫ぶ。

 

「屋上の室外器・・・。なるほど・・・奴等の足はヘリか!」

 

 屋上を目指し飛翔した小鳥は、ガラスの天井を突き破って屋外に身を晒す。

 案の定、屋上には黒塗りの、恐らくはキャリアー系統のツインローター式ヘリが着陸していた。

 

「・・・・・・?」

 

 しかし、何か様子がおかしい。

こういった迅速さが求められる指令ならば、いつでも逃げおおせるよう、プロペラを止めることはない筈だが。黒塗りのそれは、プロペラを止めている。

 

「一体、何が・・・?」

 

 見れば、ヘリの中に居たであろう人員はヘリの外で昏睡(こんとう)している上、円花を(つか)まえていたガスマスク共もヘリに凭れ掛かるようにして意識を失っている。

その隣に円花が眠っていたので、その身を保護しようと歩み寄る。

 

『ちょっと待って』

 

「あん?どうした」

 

 銀影からの制止(せいし)の呼び掛けに、(いぶか)しむ表情をしながらも答える。

 

『円花と同じ座標からISネットワークの信号が出てる』

 

「何?それはつまり、円花がISを持ってるって事だぞ」

 

 そんな話は聞いていない。

がしかし、実際にネットワークを開いて各ISとの位置相関(いちそうかん)を見てみると、確かに円花の居る位置から信号が検知(けんち)されている。

 

「───ったく、聞くことが増えたな」

 

 とは言え、織斑円花と言う少女が誘拐(ゆうかい)()いかけたと言う事実に代わりは無い。足を動かし円花の(もと)まで近寄(ちかよ)って、片膝立(かたひざだ)ちで円花の肩を揺する。

 

「おーい、起きろ。寝てる場合じゃねえぞー」

 

「ん、んん・・・?」

 

 眠たそうに目を()きながら意識を覚醒(かくせい)させる円花。とは言えまだ()めきってない為か、寝ぼけた科白(せりふ)を出す。

 

「あれ・・・。さっきまで服屋さんに居た筈・・・。あれ?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 呆けている円花に安堵(あんど)とも(あき)れともとれる()め息を吐く。

 

「お前は誘拐(ゆうかい)されかけてたんだよ、それを俺が助けに来た。そう言う訳だ」

 

「あ!一夏兄(いちかにい)以外の男のIS乗り!」

 

「あ ゛ぁ・・・お前ちとズレてんなぁ・・・・・・」

 

 発言が的はずれな上に知っているのならせめて名前も覚えていて欲しかった。

 疲労感(ひろうかん)がドッと押し寄せ、先程以上(さきぼどいじょう)(あき)れの強い溜め息を吐き出す。

 

「俺の名前は小鳥(おどり) (ゆう)、好きなように呼べ」

 

「あ、うん。私は織斑(おりむら) 円花(まどか)

 

 名前を知らないのなら、教える事に()した事はないだろう。

 

「知ってると思うけど織斑千冬の妹です」

 

「見りゃ解る、千冬先生にそっくりだ」

 

「あはは、よく言われます」

 

 他愛(たあい)ない冗談(じょうだん)と軽口を交わした後、本題に入る。

 

「で?このヘータイさん達はどうした?お前が()したのか?」

 

「いえ・・・。私、起こされるまで何かで眠らされてたみたいですし」

 

「・・・そ、か。・・・仕方無い。とりあえず、ここも安全とは言えない、IS学園に避難(ひなん)しよう」

 

「っ、後ろ!」

 

 唐突に円花が叫ぶ。なにかと思った次の瞬間、後ろから()びてきた手に頭を(つか)まれた。

 

「な・・・!」

 

 どうやらISに頭を鷲掴(わしづか)みされているようだ。

 

「この・・・っ、しつこいッ!」

 

 その状況を()むと同時にリアアーマーからビームサーベルを抜き放ち、手を振り払う様に(かぶり)を振りながら、己の頭を掴む者へ斬りかかる。

 

「っ・・・何!?」

 

 しかし、振り返って見たのは、先程のマッシヴなISとは別物の、(あお)い、獣の様なシルエットのISだった。

大きなマニュピレータに装備された爪、逆関節構造を有する脚部装甲(アームドフット)(おおかみ)の様な特異(とくい)体躯(たいく)は、読物(よみもの)に出てくるような人狼(じんろう)を思わせる。

 

・・・ただ、小鳥を驚かせたのは、その人間離れしたISの構造ではない。

 全身を包む『全身装甲(フルスキン)』そのの天辺(てっぺん)、つまりは頭部。

本来なら操縦者の顔が見れるそこには、剥き出しのセンサーが不規則(ふきそく)に並んでいた。

 そして、その特徴(とくちょう)に覚えがあった、三日前にそれを串刺(くしざ)しにしていた。小鳥には。

 

「無人機・・・!?昨日の今日で二機目だと!?」

 

 その特徴は、三日前にクラス代表対抗戦に乱入(らんにゅう)してきた無人機のものだった。

恐らくは篠ノ之束(しのののたばね)の造り上げたと思われる無人機と言う技術は、まだ安定している風に思えなかったが、どうやら史上最凶(しじょうさいきょう)天災(てんさい)の名は伊達(だて)ではないらしい。

 

『・・・・・・・・・』

 

 無言のまま━━そもそも話す必要も機能も無いのだが━━無人機は(りょう)(てのひら)を小鳥に向ける。

それを見た小鳥は、ゾッとした表情を浮かべバックパックから『アイアス』を抜剣(ばっけん)し、一つの(たて)とする。

即座にそれを構えると同時、その両手から次々と高威力のビームが乱射された。

 

「きゃあああッ!」

 

「ぐ・・・ッ!」

 

 円花を(かば)うように拡散(かくさん)フィールドを展開(てんかい)する。

 英雄(えいゆう)の名を(かん)する(たて)は、小鳥と円花を(おお)ってその身を守るが、それ以外は守られない。

 幸運にも特殊部隊(とくしゅぶたい)の人間には当たらなかったが、いなされたビームはヘリの外壁(がいへき)(やぶ)る。

 

「マズい・・・ッ!」

 

「わ、わわぁっ!?」

 

 逆手に楯を構えたまま振り向いた小鳥は、焦った様子で円花を片腕で抱え上げ飛び上がる。

 

その直後、ヘリが爆音を上げた。

爆風に煽られ、ヒリヒリと熱線が肌を刺す。

 

「ちょ、ちょっと!あれなんなんです!?何で私達を狙って・・・きゃあ!?」

 

 あられも無い声を上げる円花、右腕で彼女を抱える小鳥が緊急回避を行ったからである。

見れば無人機もまた飛び上がり、二人に向けて光弾を放って来ていた。

 

「しっかり掴まれ!それと不用意(ふようい)(しゃべ)るな!舌噛(したか)むぞ!!」

 

 出しうる限りの速度で街の上を右へ左へ飛び回り、大きなバレルロールを交えながら敵の弾幕を(かわ)し続ける。

 

(クソ!振り切れねえ!)

 

 円花に身体的負担がかからないように気を使っての飛行であるのも理由だが、単純に無人機の機動性が高い。恐らくは一人であっても振り切るのは困難だろう。

 

「銀影!通信はできるか!?」

 

『ええ!もうジャマーの範囲外に居る!』

 

 ならIS学園に助けを求められる。そう思い通信へと意識が向いた時、

 

「前ッ!」

 

「なッ・・・!?」

 

 数瞬前まで後方に居たはずの無人機が、目の前に出現したのだ。

その両の(てのひら)(すで)に小鳥に向けて開かれている。

 

━━ヤバい

咄嗟(とっさ)に左手の(たて)を構える。

 

「グッ・・・!」

 

 その一瞬(のち)楯越しにビームのぶつかる衝撃が伝わる。

だが小鳥や円花にダメージが行くことはない。やはりこの楯は優秀だ。

衝撃を殺す様にビルの屋上に降りて頭上(ずじょう)の敵を睨む。

 ビルの下では、先程のビーム砲の音が原因で騒ぎ起きていた。

 

(ちと不味いな・・・。(すき)を見つけて連絡を入れようにも、こっちの隙を見逃(みのが)してくれそうにもない)

 

 無傷で(しの)いだとは言え、足を止められてしまった。これでは(なお)の事逃げ切りは難しいだろう。

 どうやら無人機のOSも発展(アップデート)しているらしい。外界(がいかい)からの情報に機敏(きびん)に反応してくるようだ。唐突(とうとつ)なバトル展開に苦笑いが込み上げてくる。

 

 ・・・しかし、その笑みは敵の爪に()き消えた。

 

「ガッ・・・!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()

死角(しかく)からの攻撃、真後(まうし)ろから小鳥を(ねら)ったそれは銀影のバックパックを直撃(ちょくげき)し、その背面(はいめん)爪痕(つめあと)(きざ)む。

後ろから小鳥を切り刻んだ『それ』は、小鳥の横を通り過ぎて行く。

 

「っ、何が・・・!」

 

 背中からの衝撃に顔を(しか)めながら、通り過ぎて行った『それ』を片膝立(かたひざだ)ちで見上(みあ)げる。

今の攻撃方法、それにこの状況でこちらに攻撃を仕掛けると言う事は・・・

 

「クソ・・・!()()()()()()()()()()()()()ッ!!」

 

 その眼前には(くだん)の人狼の様なISが二機、空中から小鳥と円花の二人を見下ろしていた。

背中に攻撃を仕掛けた方が先に現れた方、前に回って砲撃を加えた方が新参(しんざん)だったのだろう。

 

(・・・っ、この状況じゃ逃げ切りはほぼ不可能だな・・・)

 

 そもそも、機動力(きどうりょく)にあまり差はなく、戦闘能力では明らかにあちらの方が上だった。

現状(げんじょう)、銀影のバックパックは(つぶ)され、その機動力は10%ダウン。単独でもあの二機の追跡(ついせき)を振り切るのは困難を極めるだろう。

かといって戦闘を行おうにも、射撃戦(しゃげきせん)しか出来ないであろう今の状態で、遮蔽物(しゃへいぶつ)の少ないこの屋上で、射撃戦を行えば確実に負けが()む。

 一応、あらゆるエネルギーの波長を乱せる〝アイアス〟をジャマーとして扱えば、隠れのびる事は出来なくもないだろうが、そもそもの話最初に奴らの視界から逃れなければ、レーダー云々(うんぬん)の話にすらならない。

 

「・・・潮時(しおどき)、か・・・」

 

 小さく溜息(ためいき)をついて、逃げ切りを(あきら)めた。

 敵対象を注意深く睨みつけながら、円花に問いかける。

 

「円花、お前今()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「え?えーと・・・あっ、この指輪、つけた覚え無いです」

 

 差し出した右手の人差し指には、ミッドナイトブルーの指輪が、(にぶ)く輝いていた。

 逃げ切り(プランA)がダメなら別の策(プランB)だ。

少し微笑(ほほ)えんで円花を腕から降ろし、その目を真正面(ましょうめん)から見つめる。

 

「良いか円花、その指輪は()()()()()()()I()S()()。どうして持ってるかは俺にもわからんが。()(かく)『それ』がお前を守ってくれる(はず)だ」

 

「は、はぁ・・・。はぁ!?」

 

「詳しい話は後だ!兎に角逃げろ!そしてIS学園に向かえ、良いな」

 

 緊張(きんちょう)し切った面持(おもも)ちで()げる小鳥の表情は、反論(はんろん)(ゆる)さない。

 しかし、それでうんと(うなず)けるのなら、織斑千冬の妹なぞやってられないのだろう。円花は言葉を返した。

 

「あなたはどうするんですか!?私に逃げろって言ったって、それじゃあまるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「だからそう言ってんだよ、()めるなよ、この俺を」

 

 もう悠長(ゆうちょう)に話している(ひま)は無い。こうなれば()()の言わずに行動を起こした方が早いだろう。

 

「へ?」

 

 銀影のマニュピレータで円花の襟首(えりくび)(つか)んで、

 

「さっさと・・・行けぇ!」

 

「いやぁぁぁあああ!?」

 

 隣のビルに向かってブン投げた。

 

「わわわわわわわわわぁーーー!?」

 

 隣のビルの屋上とは5階分程の高低差があるだろうが、それだけの危険性があればISの操縦者保護機能(そうじゅうしゃほごきのう)くらいは働くだろう。

 

「さ、て」

 

 問題はここからだ。奴らの目的がわからない以上、俺の勝利条件はこの無人機共(むじんきども)撃退(げきたい)する事に限定される。

 

(状況的に考えて、奴等の目的は俺か円花か・・・。どちらにしても俺が残って迎え撃つのが最善解だろ・・・それに)

 

 どちらにせよ俺は逃げきれない。円花に着けられたISが何なのかはさっぱりだが、今の銀影で円花を抱えて逃げ回るよりかは(はる)かにマシだろう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「わわわわわわわわわぁーーー!?」

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバい、死んじゃう!

 

小鳥が私を隣のビル目掛けて投げたのは良いが、そのビルは15m以上の高低差がある。このままじゃ直下死(らっかし)間違(まちが)い無し!

 

 兎にも角にも何とかしなければいけない、小鳥が言っていた言葉を思い出す。

 

『その指輪はまず間違いなくISだ、どうして持っているかは俺にも分からんが。兎に角それがお前を守ってくれる筈だ』

 

 頭から落ちゆく中、必死になって手を伸ばす。

 

「っ・・・!お願い、来て!」

 

 指輪から放たれる光、その光は全身を覆い一瞬で晴れた。

見れば腕や頭の上に何か機械的な物が身に付いている。

───皮膜装甲(スキンバリアー)展開(オープン)・・・完了

───推進機(スラスター)正常起動・・・確認

───ハイパーセンサー最適化・・・終了

───BT -02『鋭風(サイレントゼフィルス)』起動します

 

 

「・・・・・・・・・これが」

 

 IS。史上最強の兵器。

たった数日で世界のパワーバランスを崩壊(ほうかい)させ、今もなお最前線を張り続ける、最も分かりやすい『(ちから)

それが自らに従っているのが、理論や数字などではなく、直感で理解できた。

 

「───これなら、アイツらを・・・!」

 

───だからなのかもしれない、さっきまでこんな力を持ってる私を襲ってきたあのISにイラッと来たのは。

 







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