IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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原作1巻
悪意式弁論大会


 教室の右列三番目、小鳥(おどり)は自己紹介をさせられていた。

「あー、ニュースで知ってる奴も多いと思うけど、俺の名前は小鳥(おどり)(ゆう)だ。趣味は機械(いじ)りにSF映画の鑑賞と、まぁ後は読書かな。色々と呼び方はあるだろうと思うけど、それぞれに任せる」

 割と丁寧だが、どこか突き放す様な口調でそう話した小鳥。

 女子の目線は、どこかポカンとしている。どうやらもう少し情報が欲しいようだ。

・・・まぁ、そんな期待をかけられたら裏切りたくなる物だ。

「━━━そんな訳だ、これから一年間、(よろ)しく」

半開きの目は誰を見るでもなく、面倒臭そうな態度で後ろ頭を()く。

 物欲しそうな目付きをしている割に何も質問してこない、()活動的(かつどうてき)な連中に舌打ちをしそうになりながらも、それを(かろ)うじて(おさ)え、着席する。

「え、えっと、次は織斑(おりむら)君ですよ?」

 先生に(うなが)され、(くだん)の織斑 一夏(いちか)登壇(とうだん)した。

かなり長い間が開く。どうやら、どの様にして自己紹介しようか迷っているようだ。

と、たっぷり30秒ほど経った(のち)、意を(けっ)して口を開いた。

「お、織斑一夏(おりむらいちか)です」

 最初に見つかった『ISを使える男性』の一人目、自分としても少しは気になる。

極力(きょくりょく)プレッシャーを与えないよう窓の外を見ながら耳を(かたむ)けていると。

「・・・以上です」

 何か、綺麗(きれい)拍子(ひょうし)()ける音が聞こえた気がした。

と、教室中の誰もが拍子抜(ひょうしぬ)けしている中、壇上からスパンッと何かを()(ぱた)くおとが(ひび)いた。

「お前は満足に自己紹介も出来んのか馬鹿(バカ)()れ」

 見ればその背後(はいご)で彼の実の姉である織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)教員が一夏に出席簿(しゅっせきぼ)を叩きつけていた。

 

 五十音の都合上、先に済まされた小鳥の自己紹介は簡潔(かんけつ)に過ぎたが、だが一夏の場合は下手くそなだけで、いたたまれない空気に屈して終わらせた感が(いな)めない。

痛そうにする一夏を他所(よそ)に空の雲は過ぎて行った。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 一人だけ長ったらしい事を除き、自己紹介も(つつが)()く全員終了し、次に始まる物は授業だった。

普通は入学式(エントランスセレモニー)の後は色々な要項(ようこう)を渡して解散(かいさん)するだけだと思うが・・・。

(確かに、ここ(IS学園)IS(一般教養以外)をメインに据えているし、時間割り(カリキュラム)が圧迫されるのは解るが・・・流石に無理が有りすぎじゃないか?)

「ハァ・・・」

 内心で呆れながらも、教科書のページをペラペラと適当に(めく)っては内容を見回し、失望のため息を漏らす。

(しかも、教科書さえこのザマか。一般に公開されているISの情報と大して変わらない・・・詰まらねぇな)

 教科書に書かれている事柄(ことがら)は、専門校で予習済み、更に言うのであれば情報の深度も桁違いに浅い。

(この程度の情報、調べようと思えばこんな所に居なくとも知れるだろうに)

 ぱらり、と退屈そうにページを捲る。

「ハァ・・・」

 小鳥が物憂(ものう)げにため息を()(たび)に、黒板に物を書いていた山田真耶(やまだまや)教師がビクッと肩を震わせていた。

「・・・?」

 軽く教科書全ページを読み漁った小鳥は、前方の山田教師と軽く目が合う、が、直ぐに山田教師側からいそいそとその視線が外される。

(流石IS学園、生徒は勿論、教師まで男性慣れしてないのか・・・千冬先生以外は)

 ちらり、と横目で元世界最強(ブリュンヒルデ)織斑千冬(おりむらちふゆ)を見やる。

 一夏と姉弟とあって、その面立ちは似通う所が多い、がしかし、その目付きはこの教室に居る誰よりも鋭利(えいり)だ。

(世界最強は伊達(だて)じゃない、か・・・)

 (ただ)(たたず)んで居るだけなのだが、周囲の人間を圧殺しかねないオーラの様な何かが漏れ出ている様にさえ見える。

 と、暇を持て余し教員の品定めをしているその真後ろの席で、今しがた織斑千冬との比較対象(ひかくたいしょう)にしていた織斑一夏が頭を抱えて奇声(きせい)を上げていた。

「んんんんん・・・?」

 何が在ったかは知らないが、ISの授業に付いて来れてないらしい。(となり)の女子は教えてくれないのだろうか。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

(だ、駄目だ・・・全ッ々解らん。何でみんな(すず)しい顔して授業受けてられるんだ・・・?)

 一時間目の授業も終え、二時間目も終えた頃には織斑一夏の状態は悲惨な物になっていた。

 先程、小鳥から『勉学(べんがく)の面倒見ようか?』と(さそ)いがあったので()(がた)く受けたのだが、今のこの状態では、授業を受ける事さえままならない。

(最初にISに乗った時みたいな、あんな感覚が嘘みたいだ)

 そんな彼が思い出していたのは今年の三月頃の話。

・・・親も()らず、()()()()()だけで暮らしていた織斑家。

諸事情あり、学生生活を姉の(かせ)いだ金で謳歌(おうか)していた一夏は、その罪悪感と『誰かを助けたい』という義務感(ぎむかん)から、自分も出来るだけ早く金を稼げるよう、就職率の高い藍越(あいえつ)高校に入学しようとしていた。

 が、(なん)の勘違いかIS(アイエス)学園の入試会場に(あし)(はこ)び、何の間違いか試験場に口頭(こうとう)だけで案内され、何の気の迷いかISに触れたのだ。

 その結果は、本来なら『動かない』の一言で()む筈だったのだろう。

だが違った、『動いた』のだ『インフィニット・ストラトス(男性には使えない兵器)』が。

 そんな事も有り、ISが使える事が判明した彼は、トントン拍子で学園への入学が決まり、今に至る。

(・・・あの時の()()()()は何だったんだろう)

 あのISに触れた右の手の平を見つめる。思い出すのはある一つの感覚。

言い表すのも難しい、例えるのならば、『前から知っていた』様な、でも『生まれ変わった』様な、矛盾する感覚。

でも何より、彼が一番引っ掛かりを感じているのは、『こう在る事の方が自然』で、自分と世界がISを介して()()()()()合わさった様な感覚だった。

 直感的に言語化してみせても、どうも不思議で仕方がない。彼はISに乗った事なんて一度たりとも無かった筈なのだが、()()()()()()()()事がとても不思議でならない。

 そんな疑問に駆られ、何度も思い返してみても、自分がISを操縦した事に思い当たる(ふし)の無い一夏は、(かか)えた頭を持ち上げた。

(悩んでいてもしょうが無い、今からでも遅くはない筈だ・・・!!)

 と、気合いを入れて教科書を凝視(ぎょうし)している一夏と、その前の席で一夏の様子を見ている小鳥の元に一人(ひとり)の女子が立ち構えた。

「ちょっと、よろしくて?」

「ん?」

「んぁ?」

 自分の世界に入り込んでいた中、唐突(とうとつ)に声を()けられた二人は変な返答(へんとう)をしてしまった。

「まぁ、何ですの!?この(わたくし)に対してその腑抜(ふぬ)けた返事は!?」

 一方的に話し掛けて置いて、勝手に怒り出す女子。

その目付きは他者を(あざけ)る様に吊り上がり、その声音でさえ一々(いちいち)鼻に付く。

(・・・あー、何だったかコイツは)

 小鳥がその少女の名前を思い出そうとする。

確か、やけに長ったらしい自己紹介をしていたのがこの女子だったのは覚えているのだが、如何(いかん)せんその話に興味が無かったので内容は覚えてないし、そもそも(ほとん)どの人の話を聞いていない。

 そんな小鳥の無関心を知らず、金髪ロールの髪型をたなびかせ、少女はさらに続ける。

「この(わたくし)、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットが直々に話し掛けていると言うのに、何ですのその態度は!?」

(あ、セシリアって言うんだ。ふーん)

 小鳥と同じく、少女の名前を思い出せてなかった一夏は、彼女が自分から名乗った事で、その名を記憶に留める。

(━━━この手の女子は苦手なんだよなぁ)

 と、同時に密かに一夏はそう思う。

女性しか乗れない(男性が扱えない)ISがこの世界に生まれてからと言うもの、女性は男性に比べ優遇される機会が多くなり、男女のパワーバランスは崩れ、今では女尊男婢(じょそんだんひ)暗黙(あんもく)了解(りょうかい)となっている。

 だが、(おく)する事無く一夏はそのセシリアに問う。

「あ、質問良いか?」

「ふふふ、下々の求めに応えないほど薄情ではなくてよ」

 良い、と言う意味なのだろうか、一夏が質問の是非(ぜひ)を問うと、若干(じゃっかん)気を良くしてセシリアは答える。

 

「代表候補生って何だ?」

 

 が、それも束の間。一夏のその発言を引き金に、教室中の時間が止まった。

信じられない物を見る様な目で見られる一夏は、初めてISに乗った時、彼の第一発見者となった女性もこんな顔をしていた事をぼんやりと思い出していた。

「・・・あー、何だ。『国家代表候補生』ってのは、読んで字の如く『国家』を『代表』するIS操縦者、その『候補生』・・・つまり、お前の姉、千冬先生が数年前までなっていた物に、これから()()()()()()()()人間の事を指す。基本的にISを所有する国家ひとつにつき、必ず一人は居る・・・。まぁ、()(てい)に言えば『エリート』と言った所だな」

 目も当てられないと言った様子で、小鳥が解説を入れた為に、自信を取り戻したのか、セシリアは胸を張って堂々と宣言する。

「そう、エリートなのですわ!!」

「ふーん」

 思った以上に反応の(うす)い一夏にムッとしながらも、セシリアは演説を続ける。

「そんな選ばれた人間とクラスを同じにした幸運を噛み締めて頂きたい物ですわね」

「・・・・・・フッ」

 その話の鼻先を、『エリート』だとセシリアを持ち上げた筈の小鳥が鼻で(わら)い、叩き折った。

「何ですの、その笑いは?」

「いや失礼、余りにも身の程知らずな発言だと思ってな。思わず失笑(しっしょう)(きん)じ得なかった」

 クツクツと陰鬱(いんうつ)な笑い声を上げ、(わら)い続ける小鳥。

「どういう、意味ですの・・・?」

「だってなぁ、『国家代表候補生と同じクラスになる確率』なんざ、そう低くねぇんだよ」

 小鳥は立ち上がり、ボタンを開けっぱなしにした制服のブレザーを(なび)かせ、セシリアに()()り、(こと)()(つむ)ぐ。

「現在世界に在る国は統合なんかのせいで150ヶ国程だ、その上ISを軍事力として保有している国家は精々四十が良い所だ。つまり、単純に考えて四十分の一。それに比べて『世界で二人しか確認されていない、ISを使える男性の二人と同じクラスになる確率』を考えてみろ、今現在スペースコロニー(宇宙植民地)の人間を含め、人類総数は百億の大台を越そうとしている。単純に半分の人数を男性だと仮定した時、その確率は五十億の二乗倍、つまり2500京分の一。まぁ?イギリス国民分の一だとしても大凡(おおよそ)一億分の一程度しかない訳だけど・・・なぁ、この場合、俺等とお前のどっちが幸運なんだろうなぁ?」

 演技ぶった、わざとらしい台詞回しで小鳥はセシリアに問う。

当のセシリアは、ぐうの音も出ないような正論に顔を真っ赤にしていた。

「ッ・・・貴方は・・・!!自分を何だと思っているのですか!?」

「さぁな、だが少なくとも、俺は俺自身がそこまで特別だとは思っていない、正直ISが乗れる以外は只の男だからな。だが、()()()()()()()()()、お前のその、あから様に自分が『特別』だって言う態度が」

 セシリアの精一杯の感情的な反論でさえ、それ以上の感情論と正論で封殺する。

「ひとつだけ言って置こうか・・・。下らない自慢(じまん)なら他所(よそ)でやれ、少なくとも俺の前でするな、鬱陶(うっとう)しいんだよ」

 ギラつく目付きでセシリアを威圧し、そう忠告する小鳥。

その光景に一夏は少し引き、周囲の女子達も軽く引いている。

 その直後、小鳥の勝利を示す休憩時間(きゅうそくじかん)終了(しゅうりょう)のチャイムが、まるでゴングの如く鳴り響いた。







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