IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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confession

 スターブレイカーの一撃、二人の敵を巻き込んだ光柱は、容易(たやす)くコンクリートの屋上を融解(ゆうかい)させるだけでは飽き足らず、天井を貫通してビルの壁までもをドロドロに溶かし切り、最終的に道路を跨いで向こう側のビルの外壁まで軽く溶けてしまった。

 

流石(さすが)にこれでやったでしょ・・・!」

 

 自分のやった事に軽く恐怖を覚えながらも、必殺の感覚に笑みを浮かべる。

天井が崩れ落ち、最早屋内である事さえ定かでないビルの屋内を(のぞ)き込む。

 

 だが、そこで見たのは自分の感覚を裏切る物だった。

 陽炎(かげろう)(のぼ)る廃ビルの中、一機のISが姿を表した。

 

「うそ・・・まだ動くの・・・!?」

 

 あれだけの威力の攻撃であれば、普通はどんなISでも動けなくなる。細かい事はよくわからないけれどこのISがそんな確信があった。

だというにも関わらず、目の前のISは動いている。

 どうして、と思ったが、その答えはすぐ目の前にあった。

 

 陽炎と瓦礫(がれき)の中にもう一機、ISが横たわっていた。

その装甲は黒焦げで、一部は溶けかかってすらいる。

 

「まさか、仲間を盾にしたっていうの!?」

 

 信じられない、仲間を盾にして自分だけでも生き残るだなんて。

 

 確かに、IS一機分のシールドバリヤーがあれば、あの一撃は避けられた。

だが、そんな行為はまともな人間なら思いついたとしてもやろうとはしないだろう。

 

 生理的嫌悪(せいりてきけんお)と、人としてやってはいけない行為(こうい)を前にして、何かが切れるような音がした。

敵はただこちらを見ているだけだが、円花の切れかけの堪忍袋(かんにんぶくろ)を破るにはその存在があるだけだけで十分だった。

 

「アンタ・・・今何をしたの?」

 

『──────』

 

 敵は答えない。

 

「何をしたか分かっているの!?」

 

『──────』

 

 何も言わない敵の存在が、怒りを(あお)り立てる。

 

「良いわ、そんなに死にたいんだったらお望み通り消してあげる・・・!!」

 

 怒髪天(どはつてん)()く様な語調で吐き捨てて、敵に向けてスターブレイカーの銃口を向ける。

 

「!?」

 

 だがその直後、ISの全長(ぜんちょう)ほどある巨大な剣の切っ先が、敵の胸を貫いた。

反射的に敵が切っ先を(つか)むが、そんな事はお構い無しに切っ先は前へ前へとその身を進める。

 

「な・・・に・・・?」

 

 呆然(ぼうぜん)としている最中(さいちゅう)にも敵の胸からその剣の切っ先が()びていて、平静(へいせい)を取り戻す頃には剣の三分の一くらいが視界に入っていた。

 

 と、状況を掴みきれていない円花に、敵の背後から聞いた事のある声が響いた。

 

「いい加減・・・()()()ォッ!!!!」

 

 低く、よく通る声。

小鳥遊が威勢(いせい)の良い掛け声と共に巨剣(きょけん)を振り上げる。

引き抜かれる事も無く振り上げられたアイアスは敵の腹から首へと移動し、上半身を縦方向(たてほうこう)に真っ二つにした。

 

唖然(あぜん)としている自分をよそに、小鳥はブレードをバックパックに預け、敵の左手を引きずってこちらに歩いて来る。

 

 ガリガリという音が近づくのに気付いて、ビルの屋上に降り立ち恐る恐る小鳥に(たず)ねた。

 

「お、小鳥・・・さん?あなた、今、何を、」

 

「トドメを刺した・・・あぁ、安心しろ、コイツは無人機だ」

 

 そう言って先程背中を刺し貫いたISの腕を持ち上げる。

言われて見れば、確かにその断面は機械で埋め尽くされ、搭乗(とうじょう)している人間がいない事を明確(めいかく)に表していた。

 

 思わず安堵(あんど)のため息が()れる

 

「び、ビックリした・・・。殺したのかと」

 

馬鹿(ばか)言え、人生のターンに差し掛かったばっかで殺人罪なんざ洒落(しゃれ)にならん」

 

 肩を(すく)めて(おど)ける小鳥。

オレンジのバイザー越しに見る目はどことなく自虐的(じぎゃくてき)で、何か違和感を抱かせる。

 どうかしたの、と声をかけようとした時、小鳥が先んじて言葉を投げた。

 

「それで、お前は大丈夫か?」

 

「え?あ、ああ!はい!どこも痛く無いです」

 

「ISに乗ってて違和感とかは無いか?」

 

「それも・・・問題無いです」

 

 特に異常は無いと思う。むしろこの機体は調子が良く、なんなら中学の実習で乗った機体よりもずっとフィット感がする。

 

「って、何この格好!?」

 

 服がどこかに消えて、代わりに競泳水着の様なハイレグのISを(まと)っていた。

 それに気付いた円花は、顔を真っ赤にしてしゃがみこむ。

 

「い、いやっそ、その、これは」

 

「解ってるよ、大凡(おおよそ)その機体・・・『サイレントゼフィルス』が勝手に展開したんだろ・・・。って言うかそんなに()じらう様なモンか?学園(ウチ)の連中なんざ平気でISスーツ姿を見せつけて来るぞ」

 

「ソレとコレとは話が別!・・・その、こう言う服は初めてで・・・」

 

 そう言って真っ赤な顔を(うつ)むかせる円花。

やれやれ、学園の女子連中もこれくらい羞恥心(しゅうちしん)があれば面白いのだがな。

 

 最近は改善されてきたようだが、ほんの一ヶ月前まで下着にパーカーと言う部屋着(へやぎ)すっ飛ばして寝間着姿(ねまきすがた)で寮内をほっつき回る女子が結構居た。

何と言うかあそこまで恥じらいが無いと、この世の猥褻罪(わいせつざい)の存在理由が分からなくなる気がしてならなかった。

 

・・・気を取り直して。

 

「まぁ兎に角異常が無いのなら何だって良い。千冬先生の妹に何かあったら事だからな」

 

 主に私怨(しえん)で千冬に殺さねかねない。ああ見えて千冬がブラコンシスコンの()があるし。

と、皮肉った笑顔で円花に告げると、急に彼女の顔が怒りに曇った。

 

「・・・やっぱりそうだよね」

 

「あん?」

 

「何でも無いです。聞き流して下さい」

 

「お、おう」

 

 何かは分からないが、急に円花の機嫌が悪くなっている。

何か機嫌をそこねる事をした覚えは無いのだが・・・

 

・・・気にしてる場合でもないか。IS学園に連絡して事後処理をしてもらうとしよう。

 

円花に背を向けて銀影の耳当て部分に触れたその時、円花が声を上げた。

 

「きゃあっ!?」

 

「っ、どうした!」

 

 振り返って見ると、円花の体を覆っていたサイレントゼフィルスの装甲がドロドロに溶けていた。

 

 慌てて駆け寄り、銀影の肩の『眼』からある程度の情報を確認して安堵(あんど)の溜め息を(こぼ)す。

 

「ああ何だ、形態移行(フォームシフト)か」

 

 どうやらサイレントゼフィルスの最適化(パーソナライズ)が終了したらしく、円花に合わせて一次移行(ファーストシフト)を行っている様だ。

 

「えっと、これ大丈夫なんですか!?」

 

「ああ大丈夫だ・・・・・・多分」

 

「おーい!?」

 

「問題ねえよ、一夏もそれを経験してる。変な事しなけりゃ変な事にはならん」

 

 軽く冗談を飛ばしながら、その様を眺める。

 実際自分の目前で形態移行(フォームシフト)を見るのは初めてで、まじまじとその様子を観察してしまう。

と、円花が胸元を隠し、慌てた様子で問う。

 

「ちょ、何見てるんですか!?」

 

「ISの形態移行(フォームシフト)。別にそれくらい良いだろ?滅多(めった)に無い機会(きかい)なんだから」

 

「布一枚の女の子を凝視(ぎょうし)しないで下さい!」

 

「おっとこれは失礼」

 

 半ギレの円花から顔を離し、(おど)けた表情を見せる。

半信半疑(はんしんはんぎ)の表情の円花は、こちらを睨みつけてきた。

 その顔付きは本当に千冬そっくりで、しかし本人にには無い可愛げが、こちらのささやかな嗜虐心(しぎゃくしん)(あお)って仕方が無い。

 

「おいおい、そんな恐い顔すんなよ。揶揄(からか)いたくなる」

 

「やめて下さい」

 

 クツクツと噛み殺し切れない笑を浮かべている内に形態移行(フォームシフト)が終わったらしく。あっと言う間にサイレントゼフィルスの装甲が硬質化した。

 

「っと・・・終わったか。どうだ、何か変わりはあるか?」

 

「えっと・・・。フィット感が上がりました!」

 

「そりゃ当たり前だ」

 

 そうい言った直後、俺達以外の声が会話に割り込んだ。

 

「じゃあ目的達成だね。うんうん、途中はどうなるかと思ったけど、やっぱり束さんは天才だね」

 

「・・・!」

 

 声は後方、少し高い場所からした。

振り返って見てみれば、階段に(つな)がる塔屋(とうや)腰掛(こしか)ける篠ノ之(しののの) (たばね)が居た。

 

「束さん・・・!?どうしてここに!」

 

「ふふふ、そんな質問は無粋(ぶすい)だよまーちゃん。ISある所に私あり!なのさ!」

 

 屋上に降り立ちビシィッ!とポーズを決める束。

白の前掛(まえか)け付き青いワンピースにウサ耳。ピンク色の髪色はさておいて、全体的に『1人不思議の国のアリス』に見える服装の束に、俺は質問を投げ掛ける。

 

「なるほど・・・無人機が居るからもしやと思ってたが、円花にサイレントゼフィルスを与えたのもお前だな」

 

「うん。で、どう?(もら)い物だけどそのISの乗り心地は」

 

「えっと・・・まあ、良い感じです」

 

「それは何より♪」

 

 ご機嫌に笑い続ける束。

 

その中に底知れない()()()を感じながら、それでも疑問を投げかける。

 

「一つ聞きたい・・・。無人機はお前が作ったのか?」

 

「ん?そうだよ。あれ?解ってなかったの?」

 

「三日前に大体のアタりはつけてたさ。まぁ、確証が欲しかっただけだよ」

 

 (おど)けた様な口調で束に応える。

これは確認ついでの質問だ、本題はここから。

 

「で?何で今回は円花にこんな物騒な代物(サイレントゼフィルス)を渡した?流石に遊興(ゆうきょう)一つで手放せる程ISは安くない」

 

 それ以上に、彼女のバックアップに付いている仮称『組織』の事もある。今しがた束の発した台詞を信じるなら、サイレントゼフィルスは貰い物だそうだ。

自分で開発(つくっ)た訳でも、()って来た訳でもないらしいのなら、()って来た奴が居るはずだ。

 

 大体の目星はついてるが、それもまた推測でしかないのだ。

正直に答えてくれるとは思わないが、言葉端(ことばはし)に足掛かりを見つけられるかも知れない。

 

 それがもし円花にサイレントゼフィルスを譲渡(じょうと)したことに繋がるのならば、それを逃す手は無い。情報は一つでも多い方が良い。

 

「ふぅ〜ん。そんな事に興味を持つんだね、もうちょっと聞きたい事あるんじゃないの?」

 

「無論両の手では足りない程あるさ。だが、ここに居る人間として俺には後処理(あとしょり)の仕事が残ってる。優先順位が違うんだよ」

 

 肩を(すく)め、やれやれと言った風に応える。

その一方で、小鳥の細長い目は、鋭い眼差しで束を見据えた。

 

「むぅ~。じゃあかわいそうなオドくんに事のあらましを伝えまSHOW!」

 

 束は謎の球体を放り投げる。

何かと思ってそれを見ると、それから空中投影映像(ホログラム)が投射された。

 

 そこには気を失った円花の指に指輪を()めている束の姿が。

 

「いっくんやオドくんにISをあげてたから、前々からまーちゃんには何かISをプレゼントしようと思っててね?それでまーちゃんの事ずーっと見てたんだけど、なんか(さら)われそうになってたから、ゴーレムを使って助けたって訳」

 

 ゴーレム(泥人形)───恐らくは無人機の事だろう。飼い主(マスター)の言う事を聞くしか(のう)の無い無人機(操り人形)には良い渾名(あだな)だ。

 

 円花に攻撃を仕掛けなかったのはそう言う事だったらしい。詰まる所、奴等の目的は確かに円花だったが、標的は俺だけだった、と言う訳だ。

・・・何と言うか、お互い同じ人間を護衛対象にしていたと言うのはおかしな事態である。

 

 やっぱり言葉って大事だな。

どうやら、ここまで面倒臭くなったのはコミュニケーション能力の欠如(けつじょ)にあったらしい。

 

「成る程な・・・大体分かった」

 

「うんうん、物分かりの良い子は束さん大好きだよ?」

 

 そりゃどうも、と適当に言葉だけの返事を返して、頭を回転させる。

 

・・・()()()()()()()()()()()

束の事だ、まさかそれだけの事の為にIS(手駒)を手放すとは思えない。

 しかし、今の情報だけではその目的を(しぼ)り込めない。

それに、そこを深掘りしても剰り意味は無いだろう、これを考えるのは後に回して、また別の事を考える。束のスポンサーの事だ。

 

 円花を襲ったのは十中八九アメリカ、ないしアメリカの息がかかった連中だろう。

そう易々(やすやす)とISを、それも最新の第三世代機を入手できる組織などありはするまい。

 ならそれらの任務を邪魔した束はアメリカ以外のどこかにスポンサーを持っている可能性が浮上する。三日前のプロファイリングから意見を掌返(てのひらがえ)しするのは躊躇(ためら)われるが、今現在の状況から考えるのならそれがベターな可能性だろう。

 

「それはそうとお前、円花を(さら)おうとした連中について知っている事は無いか?少々、お礼参りがしたくてね」

 

 ある程度の状況整理を後に、改めて(たず)ねる。

 可能な限りその真意を悟られぬよう、最大限皮肉かつ性根の悪そうな笑顔で。

 

(知っていたらほぼ束は黒・・・知らなかったら・・・振り出しに戻るだけだ)

 

 アメリカとのパイプを持っているのなら、アメリカの最新鋭機を持つ組織を知っていてもおかしくはない。

 

 そして束の性格だ。ストレートに言うか(ほの)めかすかのどちらかだろう。

まして、こちらが教えを()うなら、その反応は

 

「ふっふ~ん、教えなーい」

 

(だろうな)

 

 予想通り、だと言うなら(あお)り立てよう。

ちょっとだけ間を置いて。

 

「“は、はは・・・オイオイ、俺は束も知らない組織にケンカ売ったってのかよ”」

 

 (ひたい)に手を当てて、“絶望した”頭を回す。

“束が知らない、と言う事は。相当隠密に特化した、秘匿(ひとく)のネットワークを持っているのか、それともネットワークを用いない組織という可能性を考慮(こうりょ)する必要があるだろう。”

 “そうなると俺や学園の調査ではその素性を洗い出すことは困難(こんなん)(きわ)め、円花の身に降り掛かる危険に対して対処もままならない。”

“まさかまさかと思っていたが、ここまで世界が広いとは。”

 

「あの・・・小鳥さん?」

 

 恐る恐る円花がこちらに尋ねる、“それにハッとして”、俺は円花の方を向く。

 

 “どうにも『敵』が何者なのかはわからないが(の正体には目星はついているし)“、彼女が危険な状況に立たされているのは間違いないだろう。

 

「“・・・状況提供ありがとう。じゃあこれで”」

 

「え?ちょちょちょ、まった!本気で言ってる(きみ)!?」

 

「“当たり前だ。答えられないって事は解らないって事だろ?(お前は知っている筈だ)それなら四の五の言ってられない(さっさと喋りな)後片付けを放置してでも(お前が喋るのは勝手だが)学園に向かって対策を練った方が良い(自慢話は聞き手が居なけりゃ意味も無い)だろ”」

 

 “ほら円花、行くぞ。”と円花に付いてくるよう指示する。

“束は超自己中心的な性格だ(かなり自己顕示欲が強い)。となればバックに付いている組織の(知らないんだろ?)事など知った事じゃないと(と煽り立てれば)話し出すに決まっている。”

 

円花が着いて来ている事を確認して、スタスタスタと壊れたビルの上を歩いていく。

 

 と、今までに無い程の慌てっぷりでこちらがを引き留めた。

 

「待って待って、束さんはその組織について知ってるよ〜!?」

 

「“大丈夫大丈夫、知らない事を無理して言う必要は無いって(知ってる情報喋れば待ってやるよ)”」

 

 “出任(でまか)せの話には興味が無いので”彼女に背を向けながら手を横にヒラヒラと振り、歩みを止める事は無い。

と、束が大声でこちらを呼び止めた。

 

「組織は君にも縁がある!」

 

 ピタリ、足を止める。

 

─── かかった。

 

 思わず上がりそうになる口角を(おさ)え、いかにも驚いているような表情で振り向く。

 

「“・・・どう言う、意味だ(そんな事知ってるよ)・・・!”」

 

 “秘密組織に縁を持った覚えは無い(アメリカという国に縁はあるが)無自覚に縁を結んだのなら話は別だが(俺の中でそれはさしたる問題ではない)それはそれで(そんなことよりも)どうやったら無自覚に秘密組織にか(そんな事を束が知っている)縁を持てると言うのか(ことの方が問題だ)”。

 

 その反応に気を良くしたのか、束は意気揚々(いきようよう)と話を始めた。

 

「ふふ~ん、でもこれはとっておきの秘密だしぃー、教えるかどうかは別だけどねぇ?」

 

“・・・!そう言う訳にも行かない”。“正体不明の”組織の正体を知るためにも情報を(しゃべ)って(もら)わねばならない。

 

「“・・・てめぇ、人を()(くさ)るのも大概(たいがい)にしろ!”」

 

 円花の身辺が掛かって来る以上早い事束から情報を引き出さなければならない。

“はぐらかされた事に対する怒りと、そんな焦りから、(がら)にも無く激昂(げきこう)一喝(いっかつ)を上げてしまう”。

 

「へえ?珍しいね、オドくんがそんなに他人(ひと)の事を気にするなんてね」

 

「当然だ。分かりきった災厄を見過ごせる程俺はロクでなしじゃない“・・・!”」

 

 睨み付けた視線はそのままに、“激昂(げきこう)を抑えながら”冷静に言葉を(つら)ねる。

 

「それに俺に縁がある組織なら尚更(なおさら)知らなきゃならん・・・“どんな手段(しゅだん)を使っても”」

 

 もう既に欲しい情報(束とアメリカの繋がり)には大凡(おおよそ)見当(けんとう)がついたが、もう少し欲張(よくば)ってみるか。

 

「ふぅ〜ん?どんな手段を使っても・・・ねぇ?」

 

「・・・“出来る事だけだぞ”」

 

 “まずい(よし)なんか余計なこと言ったかも(食いついた)”。

束はロクな性格をしていない(このまま食らい付かせろ)台詞の揚げ足取り(言葉端にヤツの)などたやすいだろうし(食指をそそる台詞を混ぜろ)”。

 

(これまでの発言は多分本当・・・。束とアメリカには何らかの繋がりがあると見て間違い無い・・・()()()()()()()()()()()()())

 

 上手く行けば束のバックにいる組織を複数リストアップ出来るかも知れない。──もし勘づかれて黙られても最低限の成果(せいか)は得た、痛む(はら)は無い。

 

「じゃあどうしよっかな・・・」

 

 たわわな胸を左腕に(あず)け右の手で(あご)をつまみ、考える素振りを見せる束。

好機(こうき)だ、アイタッチで操作し、秘匿通信(プライベートチャンネル)をサイレントゼフィルスの間に結ぶ。

 

 

(円花!)

 

「えっ、あっハイ!」

 

 驚いてこちらを向く円花。その肩を押さえ、口許(くちもと)に人差し指を立て『静かに』とハンドシグナルを送る。

 

(プライベートチャンネルだ。返事はしなくて良い)

 

 目を束に向ける。どうやら気づかれてはいないらしいので、心の言葉を円花に送り続ける。

 

(色々とあって俺はもうちょっと束から話を聞き出したい。でだ、もしそれがアイツにバレたら面倒な事になる)

 

『だから?』

 

 返事はしなくて良いと言ったつもりなのだが、円花は言葉を返して来た。しかもちゃんとプライベートチャンネルで。

 

(お前・・・凄いな)

 

『え、何が?』

 

(・・・今は良いや。話を続けるぞ)

 

 俺はプライベートチャンネルを使うのに5日かかった上手動(マニュアル)で使うのがやっとである。

基本ISの操縦は感覚に()る所が大きく、その成長の速さはIS適正の高さに比例する。

一般に何を以ってしてIS適正が測られるかは篠ノ之束(目の前の厄介極まりないヤツ)とIS本人(人?)がしか知らないが、(うわさ)によると、姉妹揃(しまいそろ)って代表候補と言うのもあるらしいし、遺伝する何かなのだろう。

 この分だと円花もまたIS適正において高い数値を叩き出しそうだ。

 

 

閑話休題(かんわきゅうだい)

 

 気を取り直して円花に説明を続ける。

 

(俺が『逃げさせてもらう』と言ったら俺について来い、IS学園までひとっ飛びだ)

 

『追い付かれる可能性は?』

 

(無い、周囲に俺達以外のIS反応は無いし。人の足でISに追い付くのはまず無理だろ。いかに束と言えども人間だ、ISの機動力に付いてこれる訳が・・・無い・・・筈だ)

 

『大丈夫ですか・・・?』

 

 いかん、根拠は無いが束ならやれそうな気がしてきた。

急激に自信が減速し始めるのを他所(よそ)に、束が声を上げた。

 

「うーん、残念。お話しの時間はおしまいみたい」

 

 あらぬ方を見つめた束は、そう言って俺達に向けて微笑む。

 

「オドくんへの無茶振りはお預けになるけど、またその時まで期待して待っててね?」

 

「おい待て、どう言う・・・ッ!?」

 

 一方的な言葉に詰め寄ろうとした直後、束の姿が(くう)()き消えた。

しかもそれはただの光学迷彩ではなく、銀影のレーダーからも束の生体反応が消失(ロスト)したのだ。

 

「──チッ、これじゃ終えねえか」

 

 追跡もしようにも見え無い上に足掛かりも無いのでは仕方がない。諦めて撤退(てったい)の準備を始める。

 

 しかし、束が唐突(とうとつ)なのはいつもの事だが、どうしてこうもいきなり話を切り上げたのやら。

 

ふと気になって束が見ていた方の空を見上げる。

 

「・・・成る程な」

 

「おーい、小鳥ー!」

 

 視線の先、IS学園方向の空から級友(きゅうゆう)織斑一夏(おりむらいちか)が飛んできた。

おそらく市民からの通報でやってきたのだろう。

 

 そしてどうやら、束は一夏の接近に気がついて撤退したらしい。

しかし何故一夏の接近が撤退に繋がるのか。そもそもどうやってそれを察知(さっち)したのか。

色々と気にはなる事は多いが、それは後回しだ。

 

「・・・・・・。」

 

 ちらり、と、円花の方を見やる。

 

 ノリで共闘(きょうとう)していた訳だが、彼女が(まと)うISは(経緯(けいい)はどうあれ)盗難品(とうなんひん)である。

 映像記録から盗難に関しての罪の所在(しょざい)は何とかなると思うが、今現在(いまげんざい)彼女はそれを使用し、まして最適化(フィッティング)までしてしまった。

 

 どうしたものか。刑罰に問われる事は避けられそうだが、それでも厄介な事になるのは間違い無い。

刹那の様にひた隠しにする・・・のは無理だろう。彼と違って使っている物の由緒が明らかな上、どうもキナ臭い。サイレントゼフィルスを使った以上AEU、特にイギリスから利権だの国家代表候補だのと吹っ掛けられるのは間違いないし、アメリカのIS(ファング・クエイク)を使った連中の事もあるし、アメリカも何らかの形で動きを強める事だろう。

 

「面倒極まりないなホント・・・」

 

 あの国は中国に並ぶレベルの傲慢(ごうまん)さと横暴(おうぼう)さを兼ね備えている上に国連での発言力も強い。

これからの事に頭を抱えていると降り立った一夏が話しかけてきた。

 

「どうしたんだ小鳥・・・って円花!どうしたんだそのIS!?」

 

「今頃ぉ・・・?ホント一夏兄は鈍いわね」

 

 鈍い云々(うんぬん)の話でもない気がするが、それはさておき話を進める。

 

「・・・で?お前は何しに来たんだ?」

 

「ああ、そうだった。街中でIS2機が暴れてるって通報があったから、なんとかしてこいって事で来させられたんだった」

 

 だろうな、それ以外の理由が考え付かん。

事情聴取は学園で出来るだろうし、警察にも通報が行っている筈だ。さっさと無人機を回収してトンズラするべきか。

 

「と言う事は、お前に課された目標は『暴れてるISの鎮圧(ちんあつ)』と『最大限の情報収集(じょうほうしゅうしゅう)』って感じか」

 

「そうそう・・・で、コレはどう言う状況なんだ?」

 

「色々あった・・・死ぬ程色々あった。ここで端的に伝えられるとしたら、襲われた、撃退した、襲われた、破壊した、逃げられたって事だ」

 

 投げやりに乱暴な説明をして、肩を(すく)める。

 

「詳しい話は後だ。この機体どもを一般人に見せる訳にはいかん」

 

 そう言って足元に転がる一機の無人機を担ぎ上げた。

一夏はまだ知らない事だが、現在最も有効(非人道的)に活用されそうな『ISの無人機化』と言う技術がこの機体には使われている。

早いとこ撤収せねば、面倒な事になるのは間違いない。

 

 もう一機、瓦礫(がれき)の中で黒焦(くろこ)げになった無人機を顎で示し、円花に回収を依頼する。

 

「円花、もう一機の方任せて良いか?」

 

「あ、はい」

 

 途方もない嫌な予感と、後処理の事に頭を抱えながら、織斑兄妹と共に学園への帰路についた。







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