IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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Searching solution

 さて、『力を得るにはそれ相応の対価が()る。そう言ったのは誰だったろうか。

・・・その意見には大いに賛成(さんせい)だ。

力に限らず、モノを得るには価値に見合う対価が必要で、それは有限のこの世界において間違いない絶対の法則でもある。

 

「ただそりゃ手に入れる方の問題だろうがよ・・・」

 

 小鳥(おどり)が座り込むのは簡素なパイプ椅子、(あお)いだ目元(めもと)を右腕で覆いで愚痴(ぐち)を吐き出す。

 

ここはIS学園の地下施設(ちかしせつ)(おどろ)いた事にこのような地下施設(ちかしせつ)は学園に複数存在(ふくすうそんざい)してるらしく、ここに連行(れんこう)される前に、前回の無人機騒(むじんきさわ)ぎの時に連れられた時とは別の施設に続く、いくつかの隔壁(かくへき)が見えた。

 

(準軍事施設(じゅんぐんじしせつ)とは言えどんだけだよ)

 

 見ている分には面白かろうが、その施設にお世話になるのは面白くない。

 

 と言うのもこの施設は事情聴取(じじょうちょうしゅ)尋問用(じんもんよう)であり、真っ白い大きさの割には圧迫感(あっぱくかん)の強い部屋の中、目の前にはテーブルと鬼教師(織斑千冬)

ホントに俺が悪人だったら何も聞かずに沈黙(ちんもく)し続ける位しかやる事無いネ。

 

私語(しご)(つつし)め馬鹿者。下手な言葉を吐けばその分貴様に(くだ)される罰が重くなるだけだぞ」

 

 千冬(ちふゆ)(たしな)めて来る。が、そんな事は知ったものか。

 

「そんな事言われたってねぇ・・・愚痴(ぐち)も言いたくなりますって。円花(まどか)は優しい優しい麻耶(まや)先生(せんせい)が事務室で聴き取り調査でしょう?それに比べて何ですか俺の扱い、雲泥(うんでい)どころか砂と星レベルの差じゃないですか」

 

 無人機を回収し学園に帰投した数分後、俺と円花は先生に引っ張られ、着の身着のままそれぞれ別の人員と設備で聴き取りが始まった訳である。

 

 事態が事態である(ため)こちらに拒否権(きょひけん)がないのは重々承知(じゅうじゅうしょうち)しているつもりだが、この待遇差(たいぐうさ)では流石に何の不平不満(ふへいふまん)(こぼ)すなと言われても無理難題(むりなんだい)な話だろう。

 

「俺ァなぁーんにも悪い(こた)ぁしてませんぜー?円花の誘拐(ゆうかい)突然(とつぜん)ながら阻止(そし)して。そしたら(たばね)謹製(きんせい)無人機(ゴーレム)(おそ)われてぇ・・・全くもって正当防衛(せいとうぼうえい)ですよアレは」

 

「その割にはビル2(とう)と『駅前』に被害が出ているらしいが」

 

「人的被害が出るよりはマシですよ、物的被害に関してはまぁ必要な犠牲(コラテラルダメージ)って事で」

 

「今日は随分(ずいぶん)と舌の回りが良いな、良いことでもあったか?」

 

「逆ですよ逆。ストレスと肉体的疲労が俺のマウスピースの潤滑油(ワセリン)でしてね」

 

 あーあやってらんねー。と変わらぬトーンで放言する小鳥。

表情ひとつ変えない千冬は。そのまま尋問を続ける。

 

「それで、何か情報は無いか?」

 

「さっき話したでしょう、誘拐(ゆうかい)されかけた、撃退(げきたい)した、襲われた、破壊した、逃げられた。それだけですよ」

 

「違う、状況説明は聞き()きた・・・。(たばね)は何か言わなかったか?」

 

「ああ成る程。そう言う事ならいくつか」

 

 多少演技クサいところもあるが、小鳥は(うなが)されるままに口を開いた。

 

「一つ、サイレントゼフィルスは他者から貰い受けた事。二つ、円花を(さら)おうとした連中を知っている事。三つ、円花にはいずれサイレントゼフィルスを渡すつもりだった事。本人が口にしたのはここら辺ですかね。後は推理(プロファイリング)の時間ですよ」

 

「───・・・・・・そうか」

 

「・・・?」

 

 簡素(かんそ)な返事を返す千冬。

だがその顔はどこか安心したような、下手な嘘を吐いた子供のような、そんな安堵(あんど)のため息が混ざったような表情(ひょうじょう)をしていた。

 

 しかし、そんな表情の変化はほんの数瞬(すうしゅん)の出来事であり、秒と()たずに眼光鋭(がんこうするど)いいつも通りの顔に戻っていった。

 

 彼女の秘密とやらに興味は()きないが、これ以上の追求(ついきゅう)は難しいだろう。

意識を切り()えて自らの解析(かいせき)と、そこからなる推理を口にする。

 

「・・・んで、俺の個人的な考えだが。今回の一件は束にとって半分以上偶発的(ぐうはつてき)な物であり、そして、円花を攫おうとした連中と束には何らかの関わりがあるものと考えられる」

 

「ほう?その理由(わけ)は?」

 

 束との会話を思い出し、もう一度その内容を精査(せいさ)して口を開く。

 

「どうやって聞き出したのかは端折(はしょ)るが、束自身が言ったんだ『円花を攫おうとした組織を知っている』とな。・・・そしてその組織がアメリカの試験機のISを使ってたんだよ」

 

 千冬の頭の良さなら、ここまでの情報でも十分に理解できるだろう。

そう思って話を振ったつもりなのだが。

 

「・・・で?」

 

「え?」

 

・・・・・・・・・。

 

「・・・あんたそんな言わないとわかんない人だったか・・・?」

 

 何か異様なレベルで千冬のIQ(知能指数)が下がっている気がする。

やはり何か気になっている事があるのだろうか。

 

 とは言え気にしても仕方ないので、話を続ける。

 

「つまりアメリカのISを使うことから襲撃者をアメリカの手の者だと仮定(かてい)すると、アメリカ内の秘密機関に対して何か知っていると言う事になる、違うか?」

 

「成る程。前回のプロファイリングの事を(かんが)みれば、それも頷ける」

 

 その返答に(うなず)(かえ)す。

 

「そう、それも含めて考えると。束のバックに居るのはアメリカでほぼ間違いない」

 

 これまで仮説止まりだった物が現実味を()びてくる。

 

(もう一押しの所で丁度良(ちょうどよ)証拠(しょうこ)(あらわ)れてくれた)

 

 だからと言ってどうこうなる話でもないが、それでも束の目的に近付く一歩だ。

 

 泥縄式(どろなわしき)に、確実(かくじつ)で現実的な(こたえ)を。

尋問(じんもん)そっちのけで考察(こうさつ)を深めようとしたその直後、千冬が口を開いた。

 

「そんな事より」

 

「あん?」

 

 (いぶか)るような声音(こわね)で聞き返す。

束対策(たばねたいさく)以上の事柄(ことがら)が今あるのだろうか。

 

 首を(かし)げる小鳥に千冬が話を切り出した。

 

「円花を・・・どうするべきだと思う?」

 

「──あ〜・・・」

 

 成る程そう言う事か、前々から千冬には一夏に対してのみ当たりが強く、立派(りっぱ)(そだ)って()しいと言う系統(けいとう)のブラコン()を感じていたが、やはり円花に対しても少なからずシスコンであった、と言うワケだ。

 どうやら考え事とやらは円花の処遇(しょぐう)についてらしい。

 

 思わず顔面に浮かぶ趣味(しゅみ)の悪い笑みが浮んだ。

 

刹那(せつな)のヤツと同じようにIS学園(ソッチ)に転入させりゃ良いんじゃないか?中学の授業内容くらいなら十分(じゅうぶん)できるだろう」

 

「それはそうだが・・・。強制に転入させても良いものかと思ってな」

 

 アイツにもアイツなりの生活がある、そう言って千冬が小鳥に向き直ると、小鳥の口が空いたままだった。

まるで、信じられない物を見たかのように、驚愕(きょうがく)の表情を浮かべている。

 

「・・・どうした、何だその顔は」

 

「──イヤこっちの台詞(せりふ)だ。何か悪いモンでも食ったのか」

 

「おい待て貴様私を何だと思っているんだ」

 

「冷血と鉄血の流れる血も涙も無い執行者(ターミネータ)

 

 ゴチィン!

千冬の鉄拳制裁(てっけんせいさい)が小鳥に飛んだ。

『いたたた・・・』と(ひたい)(おさ)えた小鳥は、その手をそのままにして言葉を(つら)ねる。

 

「本人の意思が大切なら本人に聞けば良いだろまどろっこしい」

 

「それが出来れば問題無いのだがな」

 

「・・・?」

 

 (みょう)に引っ掛かる台詞。

それはまるで円花が本音を話さない(他人に気を遣う)性格であるように聞こえる。

 

(はて、円花の性格を考えたらそう難しい話でもなさそうだが)

 

 千冬ほどとは言わないが、円花も結構気骨のある性格だ。あんな危機的状況に(おちい)ってなお、俺に向けて反論(はんろん)喧嘩腰(けんかごし)での会話が出来るような奴が自分の本音(ほんね)を隠すとは思えない。

 

 小鳥が小首を傾げていると、千冬が話を続けた。

 

「アイツは自分の本音を話さない節がある。私が聞いても一夏が聞いても、それが本音なのか気を使っての嘘なのか・・・ハッキリと分かった試しが(ほとん)どない」

 

「あ〜。いるなそういう奴」

 

 適当に返答しながら心中(しんちゅう)で呟く『ああ、外と(いえ)での差が激しいんだな、円花の奴』と。

どうやら千冬との間にあった認識の齟齬(そご)の正体は、そもそも円花自身の切り替えが面白い程大きい事から来ているようだ。

・・・まぁ、目の前の情け知らずの織斑千冬(鬼教師)同居(どうきょ)してりゃそうもなるか。

 

 とは言え、それを話すというのも野暮(やぼ)な話だろう。

心中で小さく呟いた小鳥は、解決策を提示する。

 

「ならその件、俺が引き受けてやろうか?」

 

「ほう?円花の真偽が見抜けると?」

 

 千冬の目が(するど)い光を()びる。どうやら家族の事を一番理解していると言う自負(じふ)でもあったのだろう、琴線(きんせん)に触れられて機嫌を悪くしているらしい。

 

 だからと言って退()く気は無いがな。

 

「本音を見抜くと言うより、本音を引き出す、と言った方が正確だな。家族に対して何かしらの引け目があるなら(他人)が聞けば問題ないし、そうでなくとも俺の口の上手さはアンタも知る所だろ?」

 

 半開きの眼の内に、鋭く、しかし生暖かい光が見え隠れする。

 

(“小鳥”などとはよく言えた物だ。・・・これは最早(もはや)蛇蝎(だかつ)(たぐい)だ)

 

 束が時折(ときおり)見せる背筋(せすじ)の冷えるそれとはまた別の眼差(まなざ)し。

油断すれば足を取られてしまいそうな、そんな不気味な眼が笑って告げる。

 

「それに円花にゃもう一つ問題が残ってる、それを解決する為にもそこら辺(IS学園に入学するか)の意思があるかは確認した方が良い。んでもって円花の意思の確認の難度(なんど)が俺の方が低いなら、そっちの方がいいんじゃないかな?」

 

 円花に付きまとう問題、それはブルーティアーズ3号機“サイレントゼフィルス”を無断使用(むだんしよう)し、()()()てに最適化処理(フィッティング)までやってしまったのだ。

これはある意味では円花の所属云々(しょぞくうんぬん)よりも根が深く、厄介な話だ。

 

「ま、別に俺としてはどうでも良い話でもある。あまり他所(よそ)()事情(じじょう)口突(くちつ)()むのも何だしな」

 

 (おど)けたように肩を(すく)める小鳥。

別に何か問題があるわけではない、しかし小鳥に頼むと言うのは何か(しゃく)

 

(・・・まぁ、やるだけやらせてみるか)

 

 断る理由も無し、成功率が高いのならそれに越した事は無い。

 

「・・・ならやって見せろ、小鳥」

 

「はいはい、なんとでもして見せますよ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「よう」

 

「あ、小鳥さん!」

 

 IS学園の先生(山田先生と言うらしい)からの事情聴取(じじょうちょうしゅ)が一通り終わり、とりあえずと言う事で待合室(まちあいしつ)で待たされていたのだが、そこに小鳥さんもやって来た。

 

「小鳥さんも終わったの?」

 

「まあな」

 

 そう言って小鳥さんは少し離れた(せき)腰掛(こしか)けた。

 

「それで、これからどうする?」

 

「どうって・・・何を、」

 

 いきなりの問い掛けに言葉を返す。

ため息を吐き出して小鳥さんは答える。

 

「お前の所属についてだよ。お前がどうも何かしらの組織に狙われてるのは疑いようの無い事実だ。その上、サイレントゼフィルスの一件もある。お前はもう一般人じゃない」

 

 お前の意思に関わらずな。そう言って頬杖(ほおづえ)を突く小鳥さんは、ひどく不機嫌だ。

 

 とは言え、そんなに心配する必要は無いんだよねぇー。

 

「それについてはもう決まってるんですよねぇ~」

 

「・・・え、マジで?」

 

「うん、山田先生にはもう言ったんだけど、私は狙われてるみたいだし、安全の為に学園に入学することにした」

 

「・・・そうか。まぁ妥当(だとう)だな」

 

 そっけなく切り返す小鳥さん。もうちょっと驚くと思ってたんだけどな。

でもそれが目的ではないし、がっかりしていても仕方無いか。

 

「・・・ったく、苦労しないな」

 

「え、何か言いました?」

 

「何も・・・空耳だろ」

 

 ───なんか怪しい、根拠は無いけど。

 

そう思って追及しようとしたら、小鳥さんの方が口を開いた。

 

「で、IS学園に所属するのは良いとして、そっから先は?」

 

「先?」

 

「ああ、お前の知る由も無い話だろうが、お前の乗ったIS、“サイレントゼフィルス”はどうやらイギリス軍から強奪(ごうだつ)されてるモンらしくてな・・・。それを使った織斑円花(お前さん)はユーザー登録されてるんだよ」

 

「え゛、そんな物だったんですかアレ」

 

 それは知らなかった、だったら最適化(パーソナライズ)なんてするべきじゃなかったかな。

 

 そう軽い後悔を浮かべていると、待合室の扉から山田先生がやって来た。

 

「転入用の資料持ってきましたよ織斑(おりむら)さーん・・・って小鳥さん!?」

 

 両手で持つにしても多すぎる量の資料を抱えている山田先生は、小鳥さんの姿を見て驚いた声を上げる。

 

「そんなに驚きますかね・・・っと、半分持ちますよ」

 

「そこは全部もってあげましょうよ」

 

 言葉通り資料の半分だけを持ち、近場のテーブルに置いた。

遅れてもう半分の資料を置いた山田先生が背筋を伸ばす。

と、たわわに()れるおっぱいが目を引いた。

 

・・・千冬姉(ちふゆねぇ)よりも胸が大きいんじゃないかなこの人。

 

 ちらり、と小鳥さんを見やる。反応次第(はんのうしだい)ではからかう材料(ざいりょう)になるかもしれない。

 

「──・・・・・・(ペラリ」

 

 生憎(あいにく)と資料の一部をめくっていた。

──ちぇ、面白くない。

 

 そんな不機嫌な私の顔を見た小鳥さんが不思議そうに首を(かし)げた後、意地の悪そうな笑顔を見せた。

弱みを見せる訳が無いだろ、と言いたげな笑顔。

 

『──千冬先生の妹に何かあったら事だからな』

 

・・・どこまでも『大人』な人だな、心配は私の為じゃなくて自分の為で、(こども)をどこまでも()(くさ)ってる。

 

 嫌悪感(けんおかん)に顔を歪めている私は忌々(いまいま)しげに顔を(そむ)ける。今もきっと小鳥さんの顔は性根(しょうね)の悪い顔をしているのだろう。

 

「おい、お前の事なんだ。少しは目を通しておけ」

 

「はーい」

 

 不承不承(ふしょうぶしょう)な心を隠さない返事をして、手渡(てわた)された書類を流し見る。

 

 スゴい、禁則事項(きんそくじこう)だけで(かみ)辞書(じしょ)くらい分厚(ぶあつ)い。

一夏兄(いちかにぃ)もこれを読んでいたのだろうか。だとしたらよく入学までの短期間で頭に入れたなぁ、と思いながらも、ふとした疑問を山田先生に投げかける。

 

「あの、私サイレントゼフィルスにユーザー登録されてるらしいんですけど。それって解除出来たりします?」

 

「あん?どうした?」

 

 小鳥さんが答える。いや、山田先生に(たず)ねたんだけどなぁ・・・。

山田先生も反応してくれてるし、あんまり支障はないけど。

 

 右手人差し指の指輪を擦りながら続ける。

 

専用機持(せんようきも)ちはほとんどが国家代表候補生って話になってるけど。代表候補生じゃないし、そもそもサイレントゼフィルスに乗ったのも偶然ですし・・・。できるならこのままが良いんですけど、これどう言う処理になるんです?」

 

「あ、えっと・・・どうなるんです?」

 

「そこで俺を頼りにするなよ・・・」

 

 小鳥さんが肩を落とす、確かになぜ小鳥さんを頼るのか。

と、山田先生に対する評価を落としていると、小鳥さんが口を開いた。

 

「円花、腕部だけ展開できるか?」

 

 その片手には電子辞書(でんしじしょ)らしき何か。

どうするつもりかはわからないが、とりあえず左手だけ展開させる。

 と、山田先生が驚きの声を上げた。

 

「え!?もうそんな細かい操作が出来るんですか!?」

 

「ええ、プライベートチャンネルでの通信も出来ますし、円花のIS適正結構高いと思いますよ」

 

「え、これってそんなにスゴい事なんですか?」

 

「はい!私が部分展開できるようになるまで大体一ヶ月(だいたいいっかげつ)かかったので三十倍くらい早いですよ!」

 

 流石千冬先生の妹さんですー!と、一人舞い上がっている山田先生を無視して電子辞書のような物を机の上に置いた小鳥さんは、(ふところ)から四角い端末(たんまつ)を取り出す。

次の瞬間に、小鳥さんの頭にISのヘッドギアが現れた。

 

「さて・・・と」

 

 ヘッドギアのブイアンテナをバイザーに引き下ろした小鳥さんは、私の手を取ってまじまじとサイレントゼフィルスの装甲を観察する。

何をする気なんだろうと思っていると、次の瞬間、小鳥さんが爪を立ててサイレントゼフィルスの装甲を()()いた。

 

「ちょおおお!何するんですかぁ!?」

 

 思わず飛び退いてその意図を問いただす。

小鳥さんは素っ気無く答える。

 

「カバーの展開(てんかい)だよ。工具探すのが面倒(めんどう)な時はこうやって代用(だいよう)したもんだ」

 

「へ・・・おお、凄ぉ」

 

 見れば腕の装甲が開いていて、小鳥さんの言っている事が本当の事だと理解できた。

 

「ってこんなに簡単に開けれて良いんですか?」

 

「問題ねぇよ。そう簡単に開く物ではないし、ISにはシールドバリアがある。戦闘中に開く事態には一千億(いっせんおく)に一つくらいしか無いだろうよ」

 

「あ、そうか・・・物知りですね」

 

「安心しろ、二週間で叩き込まれる」

 

 褒められても小鳥さんは手を止めない、もう一度私の手を握り、展開されたカバーの中身を物色(ぶっしょく)する。

 

コードのソケットの型式を確認して、電子辞書ライクな端末を机から取り上げたかと思うと、液晶の収められた(はこ)から10cm程のシリアルバスコードを引き出してサイレントゼフィルスのソケットに()し込んだ。

 

 そしてキーボードを叩いて小鳥さんは告げた。

 

「あ、ダメだコレ」

 

「「はい?」」

 

 唐突(とうとつ)(あきら)めのセリフを吐いた小鳥さんは、山田先生に画面を見せた。

 

「特殊な設定が(ほどこ)されてる。細かい事は調べて見ない事には解らんが、ユーザー情報が(いじ)れない」

 

 間違い無く(たばね)さんの仕業(しわざ)だろう。

しかも『消去できない』ではなく『いじれない』と言う事は他のユーザーを追加する事もできない、と言う事だ。

 それが意味する所はつまり、

 

(こま)ったなぁ・・・。私がIS学園に入学するにあたって『一般生徒にも関わらず専用機持ち』っていう前例(ぜんれい)の無い事を通さなきゃならなくなったー、って事ですよね」

 

「だな・・・」

 

「織斑さんの転入は保障の為にもなるだけ早くする必要があるんですけども・・・どうしましょうか・・・」

 

 山田先生の(つぶや)きに小鳥さんは困った風に茶色い頭をかく。その顔は騒がしい諦観(ていかん)(たた)えているように見えた。

少しの沈黙の時間が過ぎた後、小鳥さんが何か思いついたように呟いた。

 

「・・・仕様(しょう)が無い・・・か?」

 

「!、何か思いついたんですか!?」

 

「──まぁ、一応。ただ幾分変則的(いくぶんへんそくてき)手段(しゅだん)だからな。折合(おりあ)いをどう付けるか、だな」

 

 そう言って小鳥さんは唇を(つま)んだ。

これが小鳥さんのルーティーンなんだろうなと思いながらも、その手段について言及(げんきゅう)する。

 

「じゃあその手段って言うのは?」

 

「円花を企業代表(きぎょうだいひょう)としてねじ込む」

 

「え?」

 

「そ、そんなシステムありましたっけ!?」

 

「無い」

 

「はぁ!?」

 

 何を言ってるんだこの人は。

私と山田先生が困惑したのを見ながら、真顔で小鳥さんは説明を始める。

 

「IS学園の管轄は国連だが、まぁその運営はほぼ学園の気随(きずい)だろう?多少の無理は通せる」

 

 半開きの目が悪趣味(あくしゅみ)に歪む。

どうやら、新しい仕組みを作り上げるつもりらしい。

 だがそう上手く行くものだろうか、と言うかそれなら国家代表候補の方が良いような気もする。

 

「そう上手くいきますかね・・・」

 

「俺が大丈夫だと言っているんだ、大丈夫に決まっている。勝算(しょうさん)の無い賭け事はしない主義なんでな」

 

「は、はぁ。根拠があるなら良いんですけど」

 

「そんな訳で俺は学長に話を着けに行ってくる。円花はそのクソ程多い書類を書いておくんだな」

 

 そう言って小鳥さんは待合室から歩いて出て行った。







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