IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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A new power and exchange terms

 

「・・・で、追加ユニットの話ですって?」

「は、はい。どうやら昨夜の時点で篠ノ之博士から送られてたみたいです」

 

 IS学園内、円花と分かれていた小鳥は、話を聞いて感心したように声を上げる。

 

「ほー。で、当の本人は?」

「い、居ません」

「でしょうね」

 

 あの目立ちたがりの事だ、この場に来ていれば麻耶(まや)先生が困り果てる事だろう。

時刻は午後3時。場所は一年専用の格納庫(ハンガー)。そこにいるのは俺こと小鳥(おどり) (ゆう)山田(やまだ) 麻耶(まや)教員だけだ。

 目的の物はどうやらこの格納庫の最奥にあるらしく、また、俺たち以外の何者も居ない室内では、足音がやけに大きく響いた。

 

「・・・・・・」

 

 きょろきょろと、周囲を見回す。

 アリーナの一階部分に相当するここでは、その壁面に沿うように多くの訓練機が鎮座(ちんざ)し、学園の準軍事施設の一面を、物騒極まりない雰囲気をひしひしと伝えてきた。

 

(ざっと見て二十機前後・・・その気になれば、すぐにでも国ひとつを陥落(かんらく)させられる戦力だな)

 

 いかに訓練機とあってもIS(兵器)IS(兵器)だ。まして、それが現代のどの兵器を凌駕(りょうが)する代物。

それがこの狭い教育機関の倉庫に(まと)めて格納されているなど、狂気(きょうき)沙汰(さた)とも言えるだろう。

 

・・・改めて見ると、遺伝子工学の実験動物(モルモット)になるよりも刺激的な生活を送っているのかもしれない。

 

「あ、ありました!これです、銀影の追加ユニット」

 

 と、皮肉に顔を歪めていると麻耶先生が声を上げた。

その視線に追従して目線を左に寄せる、するとそこにはいつぞやの銀影のようにカーキグリーンの布に覆われた構造物が放置されていた。

 

「・・・雑だなー」

「す、すいません」

 

 申し訳なさそうに謝罪する麻耶。

とは言え話では今日の深夜2時に、誰にも見られず警備システムにも触れずに、まるで出現したかのように届けられていたらしく、下手に手を着ける訳にも行かなかったのだろう。

 とりあえずその構造物に歩みより、布に手をかける。

 

「良いですよ。別に麻耶先生の責任じゃないし、本体が無いんじゃこの保管もままある話だし、なっ!」

 

 右の手で一気に布を引き払うと、そこには縦長の六角形が無造作に置かれていた。

 上方が引き伸ばされ、下方が詰まった形状の六角形。

その下端には巨大なスラスターノズルが見え、頂点には小さいが砲身が見てとれた。

 

「・・・これは、スラスターユニットか」

「はい、一緒に置かれてたデータ端末によると広域エネルギー拡散フィールド発生装置兼大出力ブーストスラスターユニット『霧幻(むげん)』だそうです」

「広域エネルギー拡散、ねぇ・・・その『広域』の意味とは?」

 

 少し気にかかる文言だったため確認を取る。

単純に拡散フィールドの領域拡大なら『エネルギー拡散フィールド広域発生装置』と表記するのが正しいだろう。

 

「おそらくですが、エネルギーの“波長”が広域なんだと思います。装備するのに合わせて銀影のセンサーの可観測領域(かんそくりょういき)を拡張しておくようにと記されているので」

「ふむ・・・エネルギーが問題になってくるし・・・それ以上にパワーウェイトレシオやウェイトバランスも変わってくるな」

 

 実を言うと拡散フィールドは多くのエネルギーを消費するもので、下手に使いすぎるとエネルギー切れでPICで動くだけのカカシ(サンドバッグ)に成り下がる。

 シールドエネルギーまで消費しない辺り零落白夜よりかは幾分(いくぶん)マシなのだが、それにしても扱いづらい特性である。

 

『悪かったわね扱いづらくて』

「じゃあ精々マシになる事を祈るばかりだな」

「へ?」

「今の銀影が使いづらいんで、追加装備で幾分マシになるのを期待してるだけですよ」

「は、はあ」

 

 銀影に言ったセリフが麻耶にも聞こえていたらしく言及(げんきゅう)されるが、(ひと)り言の(てい)ではぐらかす。

 

(──と言っても、現状では拡散フィールドの領域を拡大した所で効果はそう大きくないのだがな)

 

 機動力強化がついてくるのは普通に嬉しいのだが、拡散できるエネルギーが増えた所で応用性は低い。精々優秀なジャマーやステルスが関の山だろう。

後頭部を掻いて色々考えてみる。

 

(PICで誤魔化しが効くとは言え、上重心になるのはあまり喜べないな。そもそもPICで抑える事自体が非効率極まりない)

 

 銀影の強みはその防御力と、軽量かつ反応の良い加速制動(かそくせいどう)である。

いくら可動性の高いスラスターであったとしても、それが生み出すエネルギーの方向性は一方向しかなく、加速力が上昇すれども制動性は著しく低下するだろう。

 その上全体的な性能が低い代わりに本体しか無かった今までの銀影とは違い、エネルギーの割り振りに制限がついてくる。

この霧幻(むげん)に搭載されたフィールド発生装置をOFFにした所で、その質量が変わる事は基本あり得ない。PICのエネルギーを浪費(ろうひ)するだけである。

巧くやれば拡散フィールドを使って重力波を逸らし重量をゼロに近い数字にできるかもしれないが、それこそ消費するエネルギーが増え本末転倒(ほんまつてんとう)になりかねない。

 

 せめて、強力なバーニア(姿勢制御エンジン)があれば話は別なのだが、絶妙な所で(かゆ)いところに手が届かない仕様である。

 

「・・・──」

「ど、どうかしましたか?さっきから黙りこくってますけど・・・」

 

 そこまで愚痴(ぐち)をこぼしてから気がついた。

確か、現状の銀影は完成度60%と言う大破一歩手前のような状態だったはず、今回のユニット追加で完成。という事なのだろうか。

 

「麻耶先生今仮に銀影にこれを装備したとして、銀影の完成度っていくらになります?」

「え〜と・・・。80パー・・・だ、そうです・・・」

「やっぱそうか・・・・・・・・・チッ、どうして二度手間三度手間を取るんだ非効率極まりない」

「す、すいません」

「だから謝る必要麻耶先生には無いでしょうが。コイツは束への文句だ、アンタが抱え込む必要は無い」

 

 ため息を吐き出すように言って、霧幻に歩み寄ってそれに触れられるようしゃがみ込む。

 

「──とりあえず、そのタブレット貸して下さい。少し考えたい事あるんで」

「あ、はい、どうぞ」

 

 情報端末を受け取って流し見る。

装備部位、重量、稼働に必要なエネルギー、スラスター出力、拡散可能範囲、拡散可能出力、搭載ビームライフルの威力、範囲など、様々な項目が画面の上を滑って行く。

 

(肩部ジョイントに搭載・・・アレか。実質重量としては銀影の1/5、総合スラスター出力は60%上昇・・・イカれてんな。拡散範囲は広いがその出力は『アイアス』未満・・・本当にステルス専門か。ビームライフルの威力は非連結時のアイアスと同等、有効射程距離は60m、秒間12発の発射が可能・・・牽制が精々だな)

 

 霧幻自体の性質を(つか)み、どう帳尻を合わせる(セッティングする)かを考える。

 

(肩の横につくならバックパックの推力を下げるか足のを上げるかでカウンターを当てれば推力バランスはなどうにかなるか・・・?いや、そうなると加速力が落ちるし、直進安定性が落ちるな・・・)

 

 さてどうしたものか。あまり切り落とす事を考えられない己は貧乏性なんじゃなかろうか。

 

『じゃあ貧乏性なんじゃない?』

(───・・・・・・)

 

 心中で呟いた軽口に乗ってくる銀影。麻耶に見えない角度で角を擦り付けてやろうかとも考えたが、それで拗ねられても面倒なので止めておこう。

 

 それはさて置き、現在取れる手段は3つ。

1、全てのスラスター推力を調整して帳尻を合わせる

2、そもそも受け取らない、更なる追加ユニットが来て完成度100%になるまで保留にする

3、個人で下半部の何処かにカウンターのスラスターを着ける

 

 無論、選択するのは3だ。

1では面白味に欠けるし、2 では学園側に持ち主不在で接収されかねない。

元より自分の専門分野は外装(ハードウェア)電子制御系(ソフトウェア)門外漢(もんがいかん)、良くて門前の小僧。

ちまちまと設定(もくひょう)をいじるより、目標(せってい)を決めて手段を整える方が向いている。

 

(銀影。お前のハードポイントって後どこにある)

『腰の両サイド、それと後ろの方にバインダー用のソケットがあるわ。どうする?』

(・・・小型のウィングスラスターユニットだな、ただし両サイドにのみ。これ以上エネルギー消費が激しくなっては敵わん)

『オーケー任せた』

 

 ・・・もっとも。80%の時点で無視できないエネルギー消費量だ。100%になった日にはどうなることやら。

半分諦観から来るため息と嘲笑を噛み殺して、それでも考える。

前回のように2年の格納庫が使えるとも限らない。

 

「──とりあえず、図面引くか」

「え゛!?」

 

 話の要点をすっ飛ばして設計図を書く(何かを作る)事を決めた小鳥に驚きの声を以って反応する麻耶。

それもそうだろう。彼女かしてみれば新装備の情報を見ている最中に別の装備の話をしようとしているのだ。説明が欲しくなるのも納得だろう。

 とは言え。銀影との『契約』の話もあるし、そうでなくとも『ISと話して決めました』など言えるはずもない。

 

「カウンターですよカウンター。こんなデカいスラスターを単品で扱えるわけがないでしょう?なので、銀影の腰の両側にバーニアみたいなモンをつけようかなと。どうせ余り物の品が2年の格納庫に転がっているでしょうし、いくらか改良して改造して調整してやれば使い物にはなるでしょう」

「あー・・・なるほど、そういう事ですか」

 

 一度納得する麻耶だが、すぐに疑問にぶつかったらしくこちらに質問を投げる。

 

「でも、それなら内部数値を変えてバランスを取った方が良いんじゃないですか」

「それも考えましたが、いかんせん俺には不向きでしてね。単純に減らすだけなら簡単なんですが、こうも重くて大きい部位の帳尻を合わせるとなるとその労力もバカになりませんし、帳尻の帳尻の帳尻を合わせるとかバカバカしくてやってられんのですよ。まぁ身も蓋も無い話趣味嗜好なんですけどね」

「趣味・・・ですか・・・?」

 

 一方的に捲し立てた話に、いまいち理解しきれてない風な麻耶の傾げた顔。

それに呆れて、ため息混じりに要約して伝える。

 

「調理の好みみたいなモンだよ、目玉焼きの黄身の好みが半熟か固焼きか。俺は固焼きが好きなだけだ。労力が同じなら好みのが良い」

 

 その説明に麻耶はポンと手を打つ。

 

「あー!成る程、分かりましたよ!ちなみに私は半熟が好きです!」

「──・・・・・・まぁわかったのなら良いです」

 

 好きな目玉焼きの事など聞いてないのだがな。

面倒臭くなって話を切り上げる。元々少々ズレた部分のある麻耶だが、ここまで天然だと頭を抱える他ない。

これの先輩だと言う千冬は束と併せて相当な心労をしていた事だろう。

 

「とにかく、コレは5日程保管してもらいたい。俺はその内に物を作っておきます」

「わかりました、では、それまでは私の方で預かっています」

「お願いします」

 

 一礼して、踵を返す。

さて、どうしたものか。まずは原材料を2、3年の格納庫から拝借するとして、その外装は個人で作るとして、接合部を自分で作るとして。

色々とやるべき事が多いが、まずは材料を頂戴するとしよう。でなければそれに合わせた設計図も引けない。IS学園の広大な敷地を歩き回り、目的地を探す。

アリーナの方角からは生徒達の賑やかな声が聞こえてくることから、ISの訓練を行っているのだろう。殊勝な事だ。

 

『あたし達もする?』

「忙しいんでパス。お前でシミュレーションをするにしても、その時間さえ惜しいんでな」

 

 自分で決めた期日まで5日後。

材料を探し、図面を引いて、調整する。

頑張れば一応できないことはないが、余裕があるか無いかと言われるとあまり無い。

 

「・・・ふむ」

 

少しばかり頭を回す。

どうせやるなら完璧に仕上げたい。

完成度100%と同程度の戦闘力、など贅沢は言わないが、多少なりとも使える機体にしておかねば今後に支障をきたしかねない。

 

「円花周りのこともあるしなぁ」

 

 何とは言わないが、最近はどうにも物騒だし。

それとは別に、自由参加のリーグ戦の話もある。

特にこれと言った目標は無いが、自分の位置を知るにはもってこいの機会で、叶うことなら全力で挑みたいものである。

 と考えていたら、聞き覚えのある声が背後から飛んできた。

 

「あ、小鳥さん。話終わったんですか?」

 

 その声の主は先程話に上がった織斑円花だった。

元気のある声はどこか犬じみていて、その愛嬌は確かに兄姉(きょうだい)を釘付けにするのに足るものだった。

 

「まぁな。・・・で、なんでお前はここに?」

 

 別にそれで不都合がある訳でも無いが、しかし円花がここに来る必要も無い。

率直な疑問を投げる。

帰ってきた答えはこう。

 

「それがー・・・さっき優勝宣言したのは良いんですけど、練習相手が考え付かなくて・・・」

 

 あはは、と気まずそうに笑って誤魔化す円花。

まあ、だとすればその意図は明白で。

 

「で、リーグ戦の練習相手を頼みにきた。と言う訳か」

「はい!」

 

 まぁ素直な事だ。

が、それに付き合っている暇は持ち合わせていない。

 

「残念ながら俺にも俺なりの事情がある。一夏辺りを頼れ」

「えぇー!なんで!?」

 

 やたらと大きな声で抗議する円花。

 

「やかましい。俺も忙しいんだ。何も差し出さずに何かやってもらおうと考えているのなら浅ましいだけだぞ」

「浅ましいって・・・そこまで言いますかね!?」

 

 少しばかり怒っている様な表情で食い下がる円花。少し言い過ぎたかとも思ったが、多分に事実なので訂正はしない。

それにどうあっても練習に付き合わないとも言っていない。

 

「事実だろうが。それが許されるのは何一つ持ち合わせない乞食(こじき)にしか許されない。それに頭を使え、俺は対価(リザーブ)無しでは動かないと言っただけだぞ」

「え、あ、そう言う事、えーと、じゃあ何をあげたら良いんだろ」

「それは自分で考えるんだな」

 

 不服そうに頬を膨らませる円花に背を向けて、歩き始める。

彼女の視線を心地良いものとして背に受けながら、ぶっきらぼうに手を振ってヒントを投げ捨てた。

 

「とりあえず俺は2年の格納庫に宝探しに行くんでね、何か思いつけば伝えに来れば良い」

「あっ、」

 

 小鳥の意図に気が付いた円花はニヤリと笑った。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・最終的に、円花は小鳥の資材集めに協力し、小鳥は円花との練習に付き合うことで交渉は成立した。







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