IS/ガンダム00 crossing exceptioners 作:A.Tom
転入生が2名、公表された男子生徒1名が入ってきたその日の放課後。
「じゃ、宜しく」
「いや、何が?」
「何って、円花の練習相手」
俺、一夏、シャルルの男子3名と円花1名がピットに
議題は円花のISの特訓について、
「仕方ないだろ、円花の練習は引き受けたが、学年別トーナメントまで時間が無い。これから追加ユニット用の追加ユニットを調整しないといけないんだ。銀影は使えない、
「・・・わかったよ、約束は守らなきゃだもんな」
「恩にきる。円花、メニューは頭に入ってるな?」
「あ、はい大丈夫です」
普段なら『はいはいわかってますよ、舐めないで下さい』位は言ってくるが、流石にガードが堅いな。
正直、こう言う仮面の
(──ま、そう言うのは
深く突っ込んでも俺の理想を押し付けているだけだ。すり合わせが済むまでは付き合ってやった方が最善か。
「んじゃそう言う事で宜しく〜」
自作端末をひらひらと振って、背を向けてピットを去る。
・・・この際、なんの見返りも無しに依頼を引き受けてくれる友情に感謝すべきなんだろうか、それともその
「眩しいな」
分からないまま、どちらをするでもなく足だけが先に進んでいた。
「じゃ、着替えるとするか」
「あ、うん・・・どっち使う?」
両手で左右の更衣室を指し示す。
IS学園は元来は女性しかいないから、現在進行形で男女どっちが使うかと言うのも無くて、なので早い者勝ちか雰囲気で決めている所がある。
「んーまぁこっちかな、どっちでも変わらないと思うけど」
まぁ、確かにどっちにせよ機能的な変わりはないしそれでいっか。
「じゃ、着替えるか」
「そうだね」
「あ、ちょっと待ってもらっていいですか?」
更衣室に向かおうとする二人の背中に手をあげて引き留める。
何かと思って振り返ったシャルルさんの方まで歩き、手を差し出す。
「自己紹介、まだでしたよね。織斑先生、一夏兄の妹の織斑円花です。兄ともどもクラスメイトとしてこれからよろしくお願いします」
「あ、ありがとね。僕はシャルル・デュノア。よろしく」
にっこりと形のいい半月のような口元で微笑み返す彼は、差し出した手を取り、しっかりと握った。
(すごい綺麗な顔・・・人形みたい)
それだけじゃない、私の手を握る
「おぉー・・・すべすべですね・・・うらやましいです」
「あはは・・・そうかな?ハンドクリームとかはよく使うけど、それかな」
「へぇ、一夏兄は余りそう言うの気にしない人だから、良ければ教えてあげて下さい」
「いや良いってホントに・・・」
そんな軽い言葉を交わし、私と一夏兄達は別々の更衣室に向かった。
「~~~♪」
「・・・なんかご機嫌だなシャルル」
「ふぇっ!?そ、そうかな」
更衣室でシャルルと背中合わせで着替えながら話しかける。
まだ出会ってから1日も経っていないけど、鼻歌を歌っているのが珍しかったからそんなことを聞いてみたのだ。
「え~っと、一夏から見てさ、僕って女の子っぽい?」
「・・・いやそんな事ないぞ!俺はシャルルの事ちゃんと男だって思っているし」
本当は時々シャルルの行動にドキッとすることがあるけど、それでシャルルが傷つくのではないかと思って嘘をつくが、シャルルはそんな俺の心理を見透かしているかのように笑って話す。
「ありがとう。・・・でも気を使わなくても良いよ。言われなれてるし、僕も自分の事『男の子らしくないなー』て思うことあるからさ」
「・・・・・・いや、思わない。シャルルが傷つくならなおさら」
「・・・ありがとう」
心の底から驚いたような、複雑な心情を表した声音で呟くシャルルは、気を取り直して話を続けた。
「まぁ、だからね。そう言う事で褒められたりするのは珍しいから、ちょっと嬉しかっただけ」
その声から、シャルルが今どういう顔をしているのか、何となく分かった気がする。
「シャルル、目を
「え、あ、ちょ、ちょっと待ってね」
そう言って、シャルルの方から細かな布の擦れる音が
「え、と・・・いいよ」
「おう、じゃあ、向くぞ」
目を閉じて、何も見ないままに後ろに向く。
多分今目の前にはシャルルがいるんだろう、どんな顔をしてるのか、想像がつかないけれど、それでもシャルルに向けて頭を下げた。
「ごめん!さっき、そんな事情があったのに無理矢理一緒に着替えようとしてたの、無神経だった」
小鳥に言われてからずっと胸にチクチクしたものが突っかかっていた。ずっと謝らなきゃと思っていた。
ここを逃したら、まともな場面が用意されているとは思えなかった。
「い、いいよぜんぜんっ!僕みたいなのが珍しいだけだし!一夏が謝る筋合いなんてどこにも無いよ、むしろ僕の方が・・・!」
「いや!それは無い。悪い事された奴がどうして縮こまんなきゃいけないんだよ。シャルルが嫌なら嫌って言って良いんだからな」
目を瞑ったまま頭を上げて笑いかける。
そういえば、鈴を
「・・・ごめんね、そんなに気を使ってもらったら、そんなことしか言えないよ」
「そう言う時は『ありがとう』って言うんだぜ、そしたら俺も嬉しいからさ」
「・・・そうだね、今度からはそうするよ」
「おう」
そんな会話の後、俺たちはまた背中合わせに着替え始めた。
「・・・ごめんね」
言葉は届くこともなく消えていくだけだった。
IS学園第2アリーナから整備課2年生の共用
・・・いや、遭遇した、と言うよりすれ違い損ねた。と言うべきだろうか。
放課後とは言えまだ部活もある時間帯だ。人のほとんどが外にいる中、人通りの少ない──少なくとも俺とラウラ以外見当たらない道の上ですれ違う事など当然のように可能だっただろう。
「よう」
そんな言葉が口をついて出たのは、あるいは考え事をしていて
しまった、と思ってももう遅い。俺から話しかけられると思っていなかったラウラは、一瞬だけ目を見開き。
「────」
すれ違おうとした。
いや、そこで終わってしまえば
「無視するとは失礼な奴だな、一夏だって会釈の一つくらいできるぞ」
・・・
後悔先にも役にも立たず。そんな訳で安い挑発を受けたラウラは足を止めて
氷のような、しかし炎の
「・・・そんなに一夏が嫌いか?」
「・・・貴様には関係無い」
「一応友人だからな。味方する義務がある」
守り切る義務は無いがね、と
しかし、いや
「──下衆が」
「どうとでも。お前の勝手な
「──貴様ッ!」
「おおこわいこわい。──そう言う所は年相応なんだな」
両手を挙げて降参の意を示すと、踏み込んだ足がそこで止まる。
「優秀だな、無抵抗の人間を攻撃しないように教育されてるみたいで何よりだ・・・千冬先生の賜物だな」
「・・・ああ、貴様のような
「そりゃ何よりだ、ドイツの未来も明るかろう」
ラウラの腕前が
彼女の横を通り過ぎながら、背後の先に立つ彼女に告げる。
「最後に忠告だ。今のお前のままでは、軍人としてのお前と、個人としてのラウラ・ヴォーデヴィッヒ。そのどちらか、あるいはその両方で一夏に負けるぞ」
「・・・世迷言を、私はあの男を否定する為にここに居る」
「そうかい、結構な事だ」
鼻で笑って歩き去る。
彼女の足音の小ささが彼女自身の存在に比例しているようで、
「すまん、待たせたなせ、つ、な・・・何してんだ」
整備用の格納庫の扉を開けたオドリがそんな声を上げた。それもそうだろう。
「やーん刹那くんお人形さんみた〜い!」
「中東系ってがっしりしてるイメージあったけど、こんな可愛い子いるんだー!?」
「あ〜。オドリンだ〜」
「お化粧してみない!?きっともっと可愛くなるわよ!」
「良いねっ!」
整備科の面々に囲まれ身体全体を弄られている光景を目にすれば、オレも似たような事を言い出したに違いない。
オドリがこの格納庫にオレを連れてきて戻ってくるまでの間、今と対して変わらない調子で身体を触られ顔を褒められ質問攻めに遭っていた。
そんな中で動けずにいると、オドリが一切の無駄無く女子達を散らしていく。
「どいた退いた、それ以上刹那にお触りしたいなら俺の仕事を手伝ってからにしてもらうぞー」
「え!手伝ったら良いの!?」
「もちろん」
「待てオドリ」
唐突な身売りに驚きを隠せない。
オレがここに居るのは、整備科に匿ってもらう事で集まる注目の目を多少なりとも減らすためではなかったのか。
そのための交渉の引き換えに、オレがオドリの整備を手伝うと言う事ではなかったのか。
批判の目を受けたオドリは、歓喜の声を上げる女子を見ながら答える。
「すまんな、人足が足りない以上。こうなるのは必然だった」
「貴様、まさか初めからそのつもりで・・・!」
「半分は、まぁ悪く思うな。逃走の補助くらいはしてやる」
「よぉーっし、みんな頑張るぞー!」
「「「おぉ〜!」」」
「早めに終わらせて刹那君を可愛くするぞー!」
「「「おぉーッ!」」」
これほど士気の高まっている人間相手に何ができるか疑問だ。
「やぁ〜オドリンお疲れ様〜」
「ああ、
「うーうん、今日はお嬢様の方」
「お嬢様?」
首を傾げたオドリにノホトケホンネがあまる袖に隠れる指をさして応える。
腕の方向の先には、女子達の輪の外でディスプレイを見ている髪留めと眼鏡の女子がいた。
ネクタイの青色から1年であることがわかる眼鏡は、周囲には興味が無いらしく。一人忙しなくキーボードを叩き続けている。
「・・・もしかして
「おぉ〜!凄いねオドリン人の顔のことあんまり覚えて無さそうなのに〜」
「いや、楯無の方はいろいろあって忘れる事自体
遠い目をして頭を掻くオドリ。
タテナシとやらと何があったのか気になる所だが、それより先にオドリが話題を変えた。
「で、その楯無の妹とお前はどう言う関係なんだ?
「せ〜か〜い!凄いねぇオドリン」
ノホトケホンネは眠たくなるほど遅い語り口調で言葉を紡ぐ。
「わたしとねぇ、わたしのお姉ちゃんはねぇ〜?更識家に代々
タテナシお嬢さまにはお姉ちゃんが仕えてるよ〜、とどこまでも間延びした言い回しの彼女に、オドリは少し意外そうな顔をしていた。
「お前・・・そう言う仕事出来るのか?」
「えへへ~、やったら増えるんだよねぇ~」
「あぁ・・・そうだと思った」
「えへへへ〜」
誇らしげに頭を掻いているノホトケホンネ、それは誇るべき部分なのか疑問だが、誇らしいのだろう。
二年整備科の女子たちの喧騒に紛れるようにオドリは問う。
「・・・で、そんなポンコツ
「ん~ん~。かんちゃんはねぇ、日本の代表候補生なの」
「・・・ん?」
「でもねぇ・・・ないんだよねぇ〜専用機」
「・・・待て、色々と問題点が出てきたんだが・・・」
頭を抱えたオドリが会話を止めて質問する。
「まず名前だ・・・かんちゃんじゃ分からない」
「う〜ん?
「簪ね・・・。なんで専用機が無いんだ?」
「おりむーの白式があるじゃない?アレを作ったせいで〜開発がストップしちゃったの〜」
「用意はされてるんだな・・・まさか・・・造ってるのか?」
「うん、建造途中のISをひとりでやるって」
「・・・できるのか、そんな事」
「無理とは言わないが、
オレの問いに答えるオドリは電子機器用のペンを口に咥えていた。
コレがオドリのルーティンなのだろう。
「やっぱそれくらいかかるよねぇ〜」
「なんでひとりでんな事を・・・」
「手助けされたら意味無いから」
「!?」
誰にも気づかれずに彼女はそこにいた。恐らくはオドリが原因だろう。
サラシキカンザシ、だったか──彼女は眉を顰め、無感情な声音でこちらに告げた。
「私は一人でいい・・・手を借りたら意味が無いの」
「・・・楯無が原因か?」
「!・・・知ってるの?」
「アイツの腕前は少々。・・・
「・・・・・・あなたには関係ない」
元々熱の無かったサラシキカンザシの声音が低くなる。
それが拒絶なのだと直感したのだろうか、こちらの理解が追いつくよりも先にオドリは話を切り上げた。
「っと、そうだな。この話はここまでにしておこう。俺もお前もそう
「そう、あなたみたいに余計な事をするような暇はない」
「左様で。そら、二人とも手伝え。今日中に
本音借りるぞ、と。そう言いながらオドリはオレたちの背中を押して彼のISに向かうのだった。
作業も
「オドリン今日どうかしたの〜?」
いつも通り
多分にいつもより攻撃的な俺に対して疑問を覚えたのだろう。それにしてはいつも通りの表情のせいで
「・・・別に、少しばかり気が立ってるだけだ。やるべき事が
十数名で出力と組み上げ、組み付けまで済ませたバーニア。
シャルルに関する違和感、一夏を
今日終わらせた作業量に対して今日得た課題が余りにも多い。比にして0.8:4だ、5倍もある。
・・・勿論、
「ま、そう言う訳だ、気にするなよ。むしろお前は自分の主人に
「えへへ・・・言われちゃった」
笑って頭を掻く本音。
ふと、彼女、もとい彼女の主人である更識家に思考の腕を伸ばす。
代々使えるような家が今もあるような家柄で、次期当主候補であろう楯無の戦闘能力の高さが必要となるような家柄・・・か。
・・・分かる訳無いな。
目の前に関係者がいるのだが、流石に口を割ってくれるとは思わない。
・・・もしかしたら割ってくれるかもしれないが。
(・・・やめだ
良家のお嬢様の個人情報を探って良い事があるとは思えない。
「・・・まぁ、今日はありがとな。お陰で大分楽になった」
「いえいえ〜私だけじゃないからねぇ〜みんなにも言ってあげてよ〜」
「そうだな・・・でもま、俺が見た範囲だったらお前が1番動けてた。良い腕をしてるぞ」
「えへへ〜」
本音の動き自体はひどく
あるいは
「刹那くんまつげ長いわね~!マスカラ要らずだうらやましいわ~」
「オレは、化粧は、しない・・・!」
「まぁまぁそんなこと言わずに、チークだけでも良いから!」
「やめっ、やめろ!」
女子連中に
自分より3~4歳年上の異性に
流石に