IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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憂鬱を変えるモノ(B l u e d a y s / R e d s w i t c h )1/2

「ええとね、二人がみんなに勝てないのは、射撃武器の特性を把握(はあく)しきれてないからだよ」

「そ、そうなのか?一応分かっているつもりなんだけどな・・・」

 

 シャルルさんが転校してきてから早五日。ISを展開した私と一夏(いちか)(にい)はシャルルさんのIS操縦(そうじゅう)講座(こうざ)を受けていた。

 

IS学園は土曜日もISづけで、午前中は理論に関する授業があった一方、午後は自由時間・・・なのだけれど。

生徒の皆さんモチベーションが結構高いらしく、アリーナ全部が開放されているのにも関わらず多くの人が訓練をしていた。

ちなみに、小鳥さんは例によって自分のISの調整らしい。

 

──それはそれとして。

 

「えーと、一夏兄はともかく、私が射撃武器の特性を理解していないと言うのは、どう言う事でしょうか?」

「あ、えっとそれは今から説明するからちょっと待ってね」

 

 そう言ってシャルルさんの話は続く。

 

「まずは一夏の方からなんだけど、一夏って何か、遠距離用の兵装使った事ある?」

「いや、無いぞ。白式(びゃくしき)には遠距離装備無いし、打鉄(うちがね)にはあったけど使うより先に勝負は終わってたから」

 

 まあそりゃそうだ。一夏兄がISに乗れると分かってまだ一年もたってない。

触ってきた時間で言うのなら私の方が長いし、その私ですらこの子(ゼフィルス)に触るまでは武装を(さわ)った事は無いから、一夏兄が剣以外を触る機会はずっと少ない。

 

「う~ん・・・じゃあ今度は円花(まどか)ちゃんは何かスポーツやってた?フェンシングとか、そう言う近距離で相手と対面するの」

「えーと・・・無いです」

 

 一夏兄は箒さんのところで剣道をやってたけど、束さんの起こした事が原因で、私が入門して3カ月少しで閉鎖(へいさ)してしまった。

結果として、2カ月もあれば調子を戻せるほど身に()()()()()一夏兄と違い。今の私は剣の構えはおろか、握る感覚さえ忘れている。

 

「うん・・・思った通りだ」

「「?」」

 

 一人頷くシャルルさんに私達は首をかしげた。

一夏兄の経験はともかく、私の経験がどうして遠距離武器の特性理解に繋がるんだろう。

 

そんな様子を見て小さく笑うシャルルさんは続ける。

 

「一夏は遠距離における射撃武器の()()を、円花ちゃんは近距離での射撃武器の()()を理解していないんだ。だから距離を詰められないし、どこが射撃武器の限界なのか分かってなくて戦い(づら)いんだ」

「射撃武器の遅さ・・・」

「うん、円花ちゃんは実体弾(じったいだん)じゃなくて、ビーム砲でしょ?ならもっと分かんないと思うんだ」

 

 ビーム砲、まぁ確かにゼフィルスの武装は一本のナイフ兼ベヨネッタを除けば全部射撃武器だしビーム兵装な訳だし、射撃武器の速さはわかるつもりではありますよ。

 

「たとえば・・・一夏、ちょっと僕に切り掛かってくれない?」

「え・・・?」

寸止(すんど)めでも良いから、ね?」

「お、おう」

 

 困惑(こんわく)気味(ぎみ)に答える一夏兄(いちかにい)、まぁ流石にいきなり斬りかかってと言われたら困惑しますよね。

そんなこんなで刀を呼び出した一夏兄と、アサルトライフルを手に持ったシャルルさんが向かい合う。

 

「えーっと、最初は3歩から・・・オッケー、一夏、良いよ」

「お、おう・・・いくぞ・・・!」

 

 一瞬、一夏兄の目つきが鋭くなり、剣が振り上げられる。

シャルルさんもアサルトライフルを構えるが、流石に3歩の距離は近すぎる。一瞬の内で近づかれて、首筋に刃が突きつけられた。

一夏兄のお腹には銃口が向けられているが、恐らくは間に合わないでしょう。

 

「・・・まぁ、こんな風に距離が近いと銃器の『攻撃』は間に合わないんだよね」

「うん?引き金を引くだけでいいんじゃないか?」

「うーん、それだと多分剣を振り抜く方が(はや)いと思うんだよね。一夏はわかりにくいと思うんだけど。射手型(シュートスタイル)で慣れてる人間だと反射的に後ろに退がる距離なんだよ」

 

 一歩後ろに退(さが)って説明するシャルルさん。心なしかちょっと顔が赤い。風邪気味なんですかね。

 そしたら今度はもう二歩退がってシャルルさんは五歩分の距離を取る。

 

「じゃあ今度は五歩分ね。一夏、良いよ」

「いくぞっ!」

 

 今度は勢いよく駆け出す一夏兄。

残り3歩の間合いでシャルルさんは両手でアサルトライフルを構えることに成功して、一夏兄の足元に3点バーストを叩き込んだ。

 

「・・・と、まぁこんなふうに、十分な距離さえあればちゃんと撃ったりして牽制(けんせい)することもできるけど・・・。今の距離はホントは対処できない距離なんだ」

「うぅん?できてるじゃないですか?」

 

 実演がうまくいった以上、実戦でも普通にできるとも思いますけど・・・。

 

「実践では相手はスラスターを使うし、直線的に向かってくるなら絶対に80キロぐらい初速が付くんだよ。それに、横方向の移動も含まれるから狙いがズレることも結構あるんだよね」

「なるほど・・・だからか・・・」

「うん?」

「いえ、いつもは小鳥さんと特訓してるんですけど、いつも後退しながらの攻撃を身につけるように言われてるんですよね。やっぱりそれって、足を止めたらすぐに距離を詰められるから、でしょうか」

「そうだね・・・でも意外だな・・・。どうしてそんな戦術に詳しいんだろ」

「・・・さぁ」

「わかりませんね」

 

 そういえばそうだ。初対面の時から作戦指揮(さくせんしき)をやってたから疑問に思わなかったけれど、あの人も一夏兄と同じようにISでの戦闘は素人同然のはずだし・・・。

 

「まぁ後で聞いてみるか」

「そうですね、今は特訓です!」

「うん、そうだね」

 

 今の私は今までに無いほどやる気がある。コーチがいつもやれ「千冬は目指さない方が良い」だの「ISを尊重してやれ」だの私のやる気を的確に(けず)る小鳥さんでない、と言うのはもちろんそうなんですが。

『こう、ばしゅっときたらばびゅーんという感じでだな』やたら擬音の多い箒さん、

『縦5m横3mなら相対速度+10km/hで後退しつつ偏差20°で狙うと良いですわ』指示の細かさすぎるセシリアさん、

『そうねぇ、相手がスライドする場所を狙えば良いのよ。え?分からない?カンでやりゃ良いのよ』感覚派が過ぎる鈴さん、

と、まぁみんな違ってみんな向いてない所があって控えめに言ってげんなりしていた所だったので、シャルルさんみたいにやる気を引き出してくれる教官を前に、私のやる気はこれまでに無くアップしているのです。

 

「じゃあ今度は一夏の方だね、円花ちゃん。手伝ってくれる?」

「わかりました!」

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「んぐ、ぐ・・・っ、ああ〜!」

 

 デスクの前で大きく背伸びをした俺は、確かな満足感と共に大きな息を吐き出し、その上で首を鳴らす。

ばきんっ!

自分以外に誰もいない格納庫(ハンガー)に自分以外の音がする訳も無く、二度の破裂音は硬い壁に跳ね返って2秒程尾を引いた。

 

「・・・まぁ、誰もいない、と言う訳でもないが」

『呼んだ?』

「一応」

 

 ひとりごち、契約を結んだ相手と言葉を交わす。

一応、銀影の存在は周囲に知られてはならないのだが、盗聴盗撮機具の無い事を確認した以上誰かが急に入ってこない限り特に注意する必要は無く、人目を憚らずに彼女と話せる状況は好ましい事だった。

 

『それにしても、良かったの?ゼフィルスの相手しなくて』

「ん?ああ円花か・・・偶には良いだろ。俺も作業があって、シャルルって言う優等生もいるんだ、息抜きにはなるだろ」

『どうかねぇ、案外リヴァイヴのコと仲良くなっちゃうかもよ』

「それならそれで構わんよ。俺は楽できる」

『・・・はいはい』

「それよりもだ」

 

 チェアを立った俺は、話し相手の身体に向けて声をかける。

 

「何か気になる所は?」

『それ、メカマンの名が泣くわよ・・・』

「便利な機材は利用しまくるのがメカニックだ、こっちの方が楽なんだよ。それに、今はお前の方が信頼できる」

『ま、自分の身体だしね』

 

 銀影はそう言って言葉を切った後、数秒沈黙して問いに答えた。

 

『特に問題は無いわ、接続出力は要求通り。強度も申し分ない』

「それは何より。流石に整備科の連中も(あなど)れない物だな」

 

 IS学園に籍を置く人間は、一部の例外を除いて基本的に天才の集いである。

それはある意味一夏や円花ですら例外ではない。銀影とのシュミレートで経験時間を稼げる俺と違い、一夏の時間は額面通り2ヶ月弱で俺と同じかそれ以上に戦績を伸ばしている上、円花に至ってはそれ以上の成長速度を見せている。

 

──ゼフィルスに合わせた戦闘方を身につければもう少し勝率は上がると思うんだけどな。

閑話休題

 

整備科はつまり整備の分野に対する天才がエリート教育を受けている訳なのだから、それと同じ事が起きるのは当然の帰結(きけつ)だろう。

 

『天才ね・・・・・・アンタが言えた義理かしら?』

「凡人だよ俺は。紙よりも薄い経験を積み重ね、小さな羽でバタバタ羽ばたくしかない凡人だ。(たばね)楯無(たてなし)と比べるのも烏滸(おこ)がましい」

「あら、嬉しい事言ってくれるわね」

 

 不意に投げかけられた声、聞かれてはならない物を聞かれた焦りで振り向くと、そこには更識楯無がいた。

 

「お前何時(いつ)から!」

「さっき来たばっかりよ。ドアを開けたら小鳥クンが私を誉め殺しにしてたから、つい声をかけちゃった♪」

「・・・」

「そう身構えなくても良いわよ、それとも、追求(ついきゅう)されたい?」

「───今日は何の様だ」

「冷たいわねー。そんなに信用ならないかしら」

「初対面に殴りかかる奴に信用もへったくれも無いだろ・・・」

「それもそうね、まぁいいじゃないそんな事」

 

 良い訳は無いのだが、それは喉に押し込む。

楯無に関しては、反論するとむしろ厄介な事態になる。黙って無視した方が余程マシだ。

 

「・・・で、今日は何の用だ。こっちは調整がやっと終わってさっさと帰りたいんだ。手短に頼むぞ」

「ふーん・・・へぇ、一週間で終わらせたんだ」

「何度か、建造計画(プラン)を変更したがな」

 

 どうやら、銀影を(いじ)っているのは本音(ほんね)から聞いていたらしく、特にこれと言った驚きは無いようだ。

 しかし、楯無は何かを考えた様子で銀影の事を見つめる。

 

『・・・私に勘づかれた、とかは無いわよね』

(そうなったらそれまでだろ)

『もうちょっと自分の役割に責任持ってくれないかしらね!?』

 

 銀影の小言を聞き流し、楯無の発言を待つ。

ギャングかマフィアかは知らないが、侍女(じじょ)がつくような家柄のお嬢様がどうして構ってくるのか、皆目見当(かいもくけんとう)も・・・つかないと言う訳では無いが、それにしても不審極まりない。

 

「私ね、小鳥君の事を調べて見たのよ」

「おう」

「それこそ、全国(ぜんこく)津々浦々(つつうらうら)、あなたに関連がありそうな各庁にまで探りをいれたわ」

「・・・おん?」

「それでも情報が出なかったのよねぇ~」

「待て待て待て。結果はまぁ当然だとして、お前どう言うネットワーク持ってんだよ?」

 

 政府にまでパイプを持っている17歳女子学生など荒唐無稽(こうとうむけい)に過ぎる。

 

そんな俺の質問に対し、楯無は首を傾げた。

 

「あら、本音ちゃんから聞いてないの?私の家って結構歴史ある隠密活動を生業(なりわい)とする家なんだけど」

「なっ・・・あぁ・・・なるほど。そりゃ情報戦得意にもなるわけだ。ロシア代表になったのもそこら辺が理由か」

「お、せーかい。KGB(カーゲーベー)(しき)諜報(ちょうほう)(じゅつ)を学びたくてね」

 

 何と言う化け物だ。(じつ)が伴うかは未知数だが、少なくとも『ロシア最強』の肩書きを持っているのが、半分副業じみた理由だとは。

天才だと持ち上げはしたが、完全に想定外だ。

 

KGB(ケージービー)て・・・。もう何世紀前に解散された組織だよ」

「ざっと3世紀前ね。でも、そこで培われた物はそう易々と消えるものではないわ。古今(ここん)を、東西(とうざい)を問わず、情報は何よりも価値のある物だもの」

 

 それは疑いようの無い事実だ。情報一つでテロリストが旅団基地を壊滅手前までに追いやった、と言う事例もある。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

「・・・で?そんな家の人がどうして俺を?(ひと)(ごと)でも言ったが。俺は凡人だぞ?」

「でも、一般人でもないんじゃない?」

「それは一夏でも変わらんだろうに」

「そうかしら」

 

 正直に言ってしまうのなら、楯無との会話は相応に疲れる物がある。

俺よりずっと情報戦に(ひい)でた彼女と話していると、一言一言に気を使わねばならなくなる。

 

「俺は語る所など一つだって有りはしない。探るな、とまでは言わないが、このまま調べても大山鳴動(たいざんめいどう)して鼠一匹(ねずみいっぴき)が関の山だぞ」

「ふーん?表で公開されている情報くらいしか情報の無い小鳥君が?」

「そうだ。少なくとも日本の国益(こくえき)寄与(きよ)しうる事は何一つない」

「そう」

 

 一段低い声音に警戒が高まる。

と、次の瞬間

 

デーデン!デーデン!デーデーデーデー!デデデデデデ!!

 

 ポケットの携帯が呼び出し音を鳴動させた。

 

「げ・・・!」

 

 この鮫が出てきそうな着信音は・・・!

対面するのは十中八九あの人だろう。

 

(っ、どの件だ・・・!?)

 

 校内でISを起動したあれだろうか、それとも学園情報を切り売りしてるのがバレたか、思い当たる節が色々とありすぎて仕方がない。

ともあれ冷や汗を(たら)しながら、迅速(じんそく)に応答する。

 

「・・・はい、何でしょうか千冬先生」

『お前今何をしている』

「・・・二年の格納庫で銀影の調整を」

『今すぐ第三アリーナに行け、刹那が戦ってる』

「な・・・っ、ああもうこんな時に限って・・・ッ!」

 

 苦虫を噛み潰し、左のポケットから薄長い(はこ)を取り出す。

 

「戻れ銀影!」

『えちょ、取り込み完了してない!』

「速く!」

『ああもう!』

 

 粒子に変換された銀影が筐に収められたのを確認して走り出す。

楯無の事も、どっごん、という落下音など気にならない。頭の中は、既に刹那の事でいっぱいだった。

 

 刹那のIS──厳密にはISではないが──『エクシア』は無人機を真っ二つにするなど、絶対防御を貫通して余りある攻撃力を有している。

正直刹那の事が心配と言うよりも、戦っている相手が死なないかどうかだけが気がかりだった。

 







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