IS/ガンダム00 crossing exceptioners   作:A.Tom

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訳の解らぬ決闘

 面通し翌日の昼食時間、質問責めに()いながらも食堂に到着した小鳥(おどり)は、相席した一夏(いちか)と共に、彼の幼馴染(おさななじ)みに相談を持ち掛けていた。

 

「なぁ、(ほうき)。ISの事教えてくれないか?このままだと、何もできずにセシリアに負けそうだ」

 

うむ(うむ)おえ()かあも(からも)たのう(頼む)おおいえいっおいえ(大見得切っといて)あんあが(何だが)おえも(俺も)あい(I)えう(S)おおうゆうにういえ(操縦について)ようわあってえんあよ(良く解ってねぇんだよ)

 

「ええい貴様、口に食べ物を突っ込んで(しゃべ)るな!!それが人に物を頼む態度か!?」

 

 沖縄(おきなわ)そばを口に含んだまま喋る小鳥にキレている彼女の名は篠ノ之箒(しのののほうき)。一夏との会話から察するに剣道をしているようだが、その片手間で古流武術を修得しているようで、先程一夏が強引に昼食に誘った際何が琴線(きんせん)に触れたか、一夏を軽く投げ飛ばしていた。

 

(それでも付いて来たって事は・・・一夏に気でも有るのかね)

 

 適当に箒の叱責(しっせき)を聞き流し、彼女に対する軽い考察をしていく。

 取り()えず口の中のそばを飲み下し一言。

 

「うめぇな」

 

「人の話を聞けぇッ!!」

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 完全にキレた箒を一夏が(なだ)めて、会話を再開させる。

 

「ISの操縦か・・・教えられない事はないが、どうやって教える。お前達二人にはISが無い、この時期は訓練機の貸し出しは出来ないそうだから、私に出来る事は無いぞ」

 

「ま、マジかよ・・・じゃあどうすりゃ良いんだよ俺達」

 

「ぶっつけ本番で挑むしかないだろうな。まったくふざけていやがる」

 

 ハァ・・・。と溜め息を()く。

セシリアは国家代表候補生であると同時に彼女用のIS、所謂(いわゆる)『専用機』と言う物を所有しており、操縦経験の差は勿論(もちろん)の事、使用するISにさえ格差が有る。

小鳥は『ただ負けるつもりは無い』と言ったが、勝ち目は相当に薄い。

 

「あーもう。悩んでても仕方無い。小鳥、座学だけでも良いから教えてくれよ」

 

 右の席に座る小鳥に向き直り頭を下げる一夏。

 

「お、おい!私に教わるんじゃなかったのか!?」

 

「え、いやだって箒さっき『出来る事は無い』って言ってたじゃないか?」

 

「そ、それは実戦訓練とか、そう言った意味であって。私が何も出来ない訳ではない!!」

 

 小鳥の反応を待たずして勝手に盛り上がる二人。

小鳥としてはどっちでも良いのだが、会話に入る余地もなければ、最終的にそれを決めるのは一夏なので、空気化する事を選んだ小鳥は、二人の口論を無視して粛々(しゅくしゅく)とそばを食べる。

 

「それとも、私には荷が重いと言うのか!?」

 

 ・・・・・・汁物(しるもの)の命とも言える鰹出汁(かつおだし)ベースのスープは、旨味を多く保有し、塩味(えんみ)も付きすぎず、ちょうど良い。

 麺類(めんるい)の主役である麺は、歯切れ良く舌触りは割と粗めで、スープとの絡み方を良くしている。

 

(しかし、世界の郷土(きょうど)料理が一同に会しているとは・・・。素晴らしいなぁ?血税で出来た学園と言う物は)

 

「いやそうじゃなくて、先に小鳥が言ってたんだって!!」

 

 しかも素材ひとつひとつの完成度が高い、所謂(いわゆる)『お高めなやつ』を使用しているのだろう。柔らかい三枚肉や、噛み心地(ごこち)抜群(ばつぐん)蒲鉾(かまぼこ)は勿論の事、トッピングに付けられた、香り高く、しかして強すぎない(きざ)(ねぎ)や、酸味歯応え共々満足な紅生姜(べにしょうが)、どれを取っても一級品だろう。

 

「何をだ!!」

 

 

「俺の面倒を見るって!!」

 

 

 ぴたり、と、止まった、心を無にしてやっていた食レポも、麺を(すす)る口の動きも。ついでに言えば、食堂中の空気もぴしりと凍りついた。

 

「ぶほっ!!あ゛っほっ!!え゛ほっ!!」

 

 その弾みで小鳥が()せ返り、苦しそうな(せき)を吐き出す。

そんな小鳥の状態など気にも止めず箒が問い詰める。

 

「おい!!本当なのかそれは!!」

 

否定(ひてい)したいけど否定出来(でき)ないッ!!」

 

 

 

・・・放課後・・・

 

 

 

 場所は武道場(ぶどうじょう)、そこに居るのは今IS学園で一番ホットな話題の一つ、織斑一夏と小鳥遊、篠ノ之箒の三人だった。

 

「・・・構えろ」

 

「イヤイヤイヤイヤイヤ」

 

 剣道着(けんどうぎ)(はかま)、その上からは防具一式と、完全に剣道部員のフルセットで(かま)える箒が、貸し出しの竹刀(しない)一本を右の片手に持つ小鳥に告げる。

 ちなみに、小鳥は道着はおろか、防具さえつけていない。自分がやるとは思ってなかったのだろう。

 

「いやさ、『腕が鈍ってないか見てやる』ってお前一夏に言ったんだろ?何で俺まで剣道やんなきゃいけないんだよ!?」

 

 困惑(こんわく)で胸いっぱいの小鳥は、(まく)し立てる様に箒に(たず)ねる。

 

「そ、それはお前が、一夏に物を教えるに足るかどうかを見る為だ!!」

 

「ったく・・・頑固オヤジかよ・・・」

 

 (つば)で頭を掻く小鳥は、仕方無いと言う風に溜め息を吐き。

箒を正面から見据えた。

 

「━━━来い・・・!!」

 

 その構えは剣道と言うより、フェンシングのそれに近い。しかし動きが肝要なフェンシングのそれとは違い、重心を揺らす為の動作すらない。これでは素人のそれにしか見えない。

だがしかし、その気迫は堅気(かたぎ)とは思えない。

 

「ッ・・・!!」

 

 その気迫に(おく)する事無く突撃する箒。

この際小鳥に防具が無い事など気にしない、それで怪我しても『重くて暑い』と脱ぎ捨てた彼の責任なのだから。

 

「フゥ・・・ッ」

 

 浅く呼吸を吐き出し、右足を踏み込む。

退()く、だなんて無粋(ぶすい)な事はしない。

むしろ()()()()()()()()()()()()

 

「ハァッ!!」

 

「ッ!!!」

 

 前に重心が移動した状態で箒の面が迫る、しかし小鳥に(あせ)りは無い。

踏み出した右足で地面を左に()り、強制的に(みずか)らの軌道を右に逸らす。

(かろ)うじて(きっさき)(かわ)し、箒と交差(こうさ)した小鳥は、崩れた体勢を立て直し、箒を正面から睨み付ける。

間合いから離れた小鳥は、箒と視線がかち合った事を確認すると、そのまま右腕を大きく振り上げた。

 

「ッ!?」

 

 慌てて防御の姿勢を取る箒、それもその筈。

スナップの効いたその動作で、()()()()()()()()()()()

 

「間合いから外れたからって安心すんじゃねぇぜッ!!」

 

 一直線に駆け出す小鳥。そう、投げた竹刀と自分自身で一人時間差攻撃をしようと言うのだ。最早(もはや)剣道ではない。

 

「ッ・・・舐めるな!!」

 

 小鳥の竹刀を上に弾き、流れるように上段の構えを取る。

人間の速力では到底(とうてい)投げられた竹刀のスピードには追い付けない、時間差が半秒(はんびょう)でも有れば(さば)けない訳がない。

 

(もらった・・・!!!)

 

そんな()を犯した小鳥を(あざけ)る様に、箒はタイミングを合わせて振り下ろし、

 

「・・・はン」

 

竹刀は空を切った。

 

「止まった・・・!?」

 

 一夏が驚愕(きょうがく)の声を()らす。

そう、止まったのだ。小鳥は、箒の竹刀が当たる瞬間を読み切って、急停止した。

 (きっさき)の部分に当たる筈だった小鳥の頭は、その軌道の(わず)かに後方、()()った姿勢で()()()()()()と言う風な()みを浮かべている。

 

「ラァ゛ッ!!」

 

 声を上げて箒の胴に殴り掛かる。

 

(タイミング完璧(かんぺき)!!人間の反応速度じゃ間に合わねぇ。貰った!!)

 

振り下ろされた両腕の隙間を縫って小鳥の右の拳が突き立つ。

 

(いや)、突き立とうとしたその時

 

「ハァッ!!」

 

箒の気合い一閃、竹刀を振り上げたのだ。

 ゴンッ!!と鈍い音が胴の防具と拳から鳴ったと同時に、バシンッ!!と鋭い音が小鳥の脇腹と竹刀から響いた。

(したた)かに左脇腹を打ち付けられた小鳥(おどり)は、その場所を抱えて悶絶(もんぜつ)する。

 

「・・・っ、だァーっがァーっ!!」

 

「男が痛いだけで騒ぐな!!」

 

 その横では(ほうき)が小鳥を叱責(しっせき)していた。

 小鳥の拳もかなりの威力(いりょく)を持っていた(はず)なのだが、防具を装備しなかった上、箒が放った改心の一撃を、神経の集まる脇腹に思いっきり受けたのだ、ダメージは小鳥の方が(はるか)に上だろう。

 

無茶(むちゃ)言うな!!あんなん受けりゃ誰だってこんなんなるわ!!」

 

 理不尽(りふじん)なお(しか)りを前に、小鳥も語調を荒くして対応する。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「大丈夫に見えるか・・・?」

 

 一夏(いちか)が心配しているが小鳥は(いま)だ立つ事すらままならない。

箒にボッコボコにされた一夏よりは精神的には問題無いが、胸部に(はし)る痛みは相当な物だ。

 

「しかし驚いたな、箒。お前また腕上げたんじゃないか」

 

「ふん、どうせお前達が軟弱(なんじゃく)なだけだ。私はそれほど強くはない」

 

 イヤイヤイヤ、と小鳥と一夏が心中(しんちゅう)でそうツッコミを入れる。特に小鳥がより強く否定しているが、それには理由があった。

 

(面を外した直後に振り上げたあの反射神経、人間のそれじゃねぇぞ)

 

 小鳥自身、人体の限界を知る様な人間ではないが、それでもあのパターンに初見(しょけん)で対応されるとは思わなかった。

 箒がこちらを見て射程距離外(しゃていきょりがい)だと判断(はんだん)した瞬間に投げた竹刀も。

 それを防御する(ため)に振り上げた腕で視界から外れたのを見計らって走りだし、剣の間合いにギリギリ入らない距離まで近付いたのも。

 振り下ろされた竹刀(しない)を前に、全力でブレーキをかけ()()り、後方に(かわ)したのも。

 そして、その仰け反りの戻りを利用して(ボディ)に向けて放った右ストレートも。

正直(しょうじき)、全てが完璧(かんぺき)で、パターンを知らなければ攻略は不可能(ふかのう)だろうとさえ思っていた。

 しかし破られたのだ、こうなると小鳥の作戦不足としか言いようが無い。

 

「それでもこれはやりすぎでは・・・?」

 

「いや、卑怯(ひきょう)な手を使ってこのザマだ。文句は言えん」

 

 そう言う意味なら俺も手段としては大分(だいぶ)やり過ぎたしな。と左脇腹を抱えて上体を起こす小鳥。

 

「まぁでも、痛いではある。後から言うのもなんだが、もうちょっと手加減(てかげん)してもバチは当たらんぞ?」

 

 あははと引き笑い混ざりの台詞(せりふ)だが、さっきまでの痛がり方からは考えられない程ピンピンしている。

 

「防具を脱いでいたお前が悪い、私に手加減を期待する方がどうかと思うぞ」

 

 そう返した箒に、ですよねー。と小鳥が引き笑う。

 

「な、何にせよ、だ。小鳥、私はお前に勝ったのだ。だから、その。い、一夏の面倒は、私が見て良いんだな!?」

 

「・・・まぁ、構わんが」

 

 ━━━はたしてこの決闘で勉学面(べんがくめん)優劣(ゆうれつ)(はか)れるかは疑問だが、箒の剣幕(けんまく)に折れ、その座を(ゆず)る事にした。







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