蒼き雷霆ガンヴォルト~のび太のヒーローアカデミア~   作:じゃすてぃすり~ぐ

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もう、あの時とは違う。
優しき少女を救うため少女(出久)は、謡精(モルフォ)と共に翔ける。
彼女の歌を(チカラ)にして。


チャプター9「入試 その4」

―SIDE 出久

 

「大丈夫!?」

「キミ、あの時の・・・!?あの時と逆になっちゃったね」

 

 女の子の側に駆け寄り、抱き起こす。

 私を見るなり罰が悪そうに、女の子はそう言った。そう言えばこけそうになったのを助けてもらったね私・・・。

 そんな事を思い出しながら私は問いかけた。

 

「歩ける?」

「うーん、歩けるのは歩けるけど早くは走れんかな。足挫いちゃってさ」

 

 速くは走れない・・・か。かと言って、0P敵は待ってくれない。

 今にも私達を押しつぶそうと迫ってきている。

 

『ブッコロス!!!』

 

 0P敵は、そう叫ぶと同時に右手を振り上げ、私達を叩き潰そうと思いっきり振り下ろした!

 逃げても間に合いそうにない・・・、ここで立ち向かうか!?そう思い、身構えたその時だった。

 

「させるかァッッ!!!」

 

 振り下ろされた0P敵の腕を、誰かが蹴り飛ばす。蹴られ、ポイントがずれた腕は、狙い済ました場所とは違う所に叩きつけられた。

 

「君達、怪我はないか?」

 

 そう言って、こちらを見るのは眼鏡をかけた男の子。ガイダンスの時に、私とGVに食って掛かった男の子だ。

 

「私は大丈夫だよ。だけど、この子が足を挫いちゃって」

「・・・成る程な。俺が、この子を安全な場所に連れて行こう。君はどうするんだ?」

 

 どうするかか、そんなのは決まっている。

 男の子の言葉に、私はまっすぐと0P敵を見ながら答えた。

 

「私は、あの0P敵を食い止める」

「そんなん無茶や!あれ、凄くデカイよ!」

 

 私の言葉に、女の子が驚きながら制止してきた。

 そんな彼女に、私は安心させるように笑顔で答えた。

 

「大丈夫!私には、奥の手があるから」

「奥の手・・・?それは一体・・・」

『それはアタシの事よ』

 

 男の子の問いに答えるように、私の背後からいきなりモルフォが現われる。

 

「な・・・あ・・・!?」

「モ、モモモモモモモルフォオ!?何で、モルフォがここにおるん!?

 ってアレ?モルフォって確か、2年前に誰かに破壊されたんじゃ・・・?って事はウチ、夢でも見とるんやろか・・・」

 

 男の子は驚きのあまり開いた口が塞がらず、女の子に至っては、目を瞬かせながら、頬をつねったりしていた。

 ・・・まぁ、それもそうだろう。何故ならば、モルフォは2年前までは当時をときめく『国民的アイドル』だったのだから。そして今現在、表向きでは何者かに『殺害』された。となっている。

 

『そりゃあ、アタシこの子の「個性」だもの。

 この子の想いが具現化した「電子の謡精(モルフォ)」と言う名の「個性(マボロシ)」、それがアタシよ』

「そ、それじゃあ・・・2年前、彼に・・・ガンヴォルトに殺されたって言うのは・・・」

『勿論、嘘ね。恐らく研究所(プロダクション)の連中が、GVをこき下ろす為に言ったガセ情報よ』

 

 しどろもどろに問いかける男の子に、モルフォはそう言った。

 そういえば、ネットニュースとかで『人気バーチャルアイドルモルフォを殺害したのは、ヴィジランテ「ガンヴォルト」である』ってあったっけ?

 ・・・あれ?って事は、GVに食って掛かったのはもしかして・・・。

 

『イズク、気持ちは分かるけど今は後。敵さん待ってるんだから、早く行くわよ』

 

 私の考えを察するように、モルフォがいう。そうだったね、忘れてた・・・。

 気をとり直し、モルフォに頷きながら答える。

 

「うん、モルフォ『謡精の歌(ソング・オブ・ディーヴァ)』よろしくね!」

『OK!今回は久々だから思いっきり歌っちゃうわよ!2年ぶりの新曲、「蒼の彼方」!

 

 そう言うと同時に、モルフォが歌を紡ぐ。それを聞くと、体中から自然と力が湧いて来る感覚がした。

 これが、私の・・・いや、()()の奥の手『謡精の歌(ソング・オブ・ディーヴァ)』。モルフォが歌を歌う事で、対象者の身体能力を限界まで引き出す事が出来る『SPスキル』

 これにより、身体能力が引きあがっている為、こう言った芸当が出来る。

 

「ワン・フォー・オール・・・フルカウル、100%!!!」

 

 通常では、10%が限界だった『ワン・フォー・オール』もこの通り、デメリットなく100%が使えるという訳だ。ただし、あくまでも、これはモルフォが歌っている間だけ。

 モルフォが歌い終わったり何らかの理由で中断されたりしたら、元に戻ってしまう。その前に一気にケリをつける!!!

 

「それじゃあ、彼女を安全な場所によろしく!」

 

―ダッ!!!

 

 私は彼らにそう言うと、返事を言う前に地を蹴って0P敵に向かっていく。

 

『死ネヤァ!!!』

 

 対する0P敵は、ストレートで私を迎えうつ。私は慌てずに、ジャンプして回避。

 そのまま肉薄して拳を叩き込もうとするが、それを読んでいたのか、左腕で私を握りつぶそうと迫る!

 

「くたばれェ!!!」

―BOOOOOOOOOM!!!

 

 その時だ。聞き慣れた声と爆音と共に突如0P敵の腕が吹き飛んだ。

 声と爆音がした方を見やると、ツンツン頭の凶悪そうな顔。・・・かっちゃんだ。

 

「かっちゃん!」

「ハッ、何だ?そのだらしねぇツラは?別に、お前を助けた訳じゃねぇよ。

 このクソッたれをぶっ倒そうとしたらたまたま、テメェを掴もうとしていたあの手に当たっただけだ。勘違いすんなやクソナード」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、私にそういうかっちゃん。そんなかっちゃんに私は笑い返して言った。

 

「分かってるよ、そんな事は。・・・だけど、かっちゃんが吹っ飛ばしてくれたお陰で・・・」

 

 そう言って、再度0P敵の顔面目掛けて拳を振り上げ迫る!

 

「このまま、まっすぐ・・・アイツをぶん殴れるッ!」

「そう言う事かよ・・・。

 だがなぁ、コイツをぶっ殺すんは俺だ!ジャマすんじゃねぇぞデクゥ!!!」

 

 かっちゃんも負けじと、掌から爆発を起こしその反動で0P敵に向かって進み私と並んだ。

 やがて、同時に拳が届く距離に近づき・・・そして、

 

「S・・・MAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!!!!」

「死・・・ねエェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」

 

―ドワオッッ ! ! ! ! 

 

 私は拳を、かっちゃんはその手を繰り出した。全てを虚無へと返すような轟音と共に、0P敵は沈黙。それと同時に・・・。

 

「終了ー!」

 

 プレゼント・マイクが終了を告げたのだった。

 

―SIDE OUT

 

 

 

―SIDE のび太

 

「って事があったんだよ」

 

 試験が終わり、出久と爆豪君と合流した後、二人の試験の顛末を聞いた。

 

「それでね、後でその女の子から『助けてくれてありがとう』って言われたんだ。嬉しかったなぁ〜」

「そっか」

 

 僕にそう言う出久の顔は、ニコニコと満面の笑顔だ。自分の力で、誰かを助けられた事がよっぽど嬉しかったのだろう。つられて僕も自然と笑みを浮かべていた。

 

「ケッ、何かほんわかした雰囲気出しやがって・・・見せつけてんじゃねぇぞクソビリにクソデク!

 試験終わったからって浮かれんな!周りの目も考えんかい!!!」

「いきなりなんだよ、爆豪君。僕はただ、出久と喋ってるだけなんだけど」

「ええっ!?見せ付けてるって、一体何なのかっちゃん!?そそそ、そんなんじゃないよ!」

 

 唐突に、爆豪君が突っかかってくる。見せ付けてるって一体なんだ・・・?あれ?何で、出久顔を真っ赤にして慌てた様子で言ってるんだろうか?

 

(オイラの目の前でイチャコラしやがってェェェェェェェェ・・・、リア充死ね!氏ねじゃなくて死ねッッ!!!)

 

 周りと聞いて気づいたけど、何か突き刺すような視線を感じる・・・。なんと言うか、嫉妬とかそう言ったドス黒い感情が渦巻くそんな視線だ。本当に・・・一体何なんだ?

 

「ちょっといいだろうか?」

 

 そう思っていると、試験の説明で僕と出久に注意してきた眼鏡の少年がやってきた。

 

「あ?ンだテメェ、またビリビリに突っかかろうってか?あ?」

「ちょ、ちょっとかっちゃん」

 

 ドスの効いた声で、少年にすごむ爆豪君。それを止めようとする出久。・・・一触即発の空気だ。その時である。

 

「すまなかった、ガンヴォルト!!!」

「「えっ?」」

「あ?」

 

 突如、頭を下げて謝りだしたのだ。これには、僕も、爆豪君も、出久も、呆気にとられていた。

 

「ネットでの出任せを鵜呑みにして、君を『ヴィジランテ』だの『この雄英を受ける資格はない』だのと糾弾してすまなかった!」

「やっぱり、あの時モルフォを見て驚いたのはそう言う事だったんだ」

 

 少年の言葉に、出久が合点がいった感じに言った。

 

「君って、モルフォの大ファンなんでしょ?

 そのネットニュースで、GVがモルフォを殺したって思ってGVを敵視していたんじゃない?」

「・・・そうだ。ぼ・・・じゃないや俺は、彼女の・・・モルフォの歌が好きだった。

 ヒーローとしての勉強に勤しむ手前、ライブにも欠かさず行っていたんだ。2年前、ニュースでモルフォが何者かに殺害された。と知ったときは嘆き悲しんだんだよ。

 それで、ネットニュースで知って君を憎み、あの時あんな事を言ってしまったんだ」

 

 少年は再び、頭を下げ、続けた。

 

「許してもらえないとは思うが、本当にすまなかった!この通りだ!」

「もういいよ、別に気にしてないし、過ぎた事だから頭をあげてくれ」

 

 ヴィジランテだから。と糾弾されるのは慣れているが、こうやって謝罪されるとなんだか変な感じだ・・・。

 僕の言葉に、少年はパッと顔を上げると、おずおずと問いかける。

 

「ゆ、許してくれるのか?」

 

 コクリ。と頷く。少年は感無量。と言った感じで、僕にまくし立てた。

 

「君って奴は何て優しいんだ・・・!君もまたこの雄英に相応しい人間だ!

 よければ名前を教えてもらってもいいだろうか?ガンヴォルトではない本当の名前を!」

「・・・のび太。野比のび太って言うんだ」

 

 ズイっと寄ってくる彼に僕は若干引きながらも、自分の名前を教える。

 

「野比君か!いい名前だな。俺の名前は、飯田 天哉(いいだ てんや)!お互い受かってるといいな!それじゃあ!」

 

 少年、飯田君は僕にそう言うと、足早に去っていった。悪い人みたいだが・・・、何ともとっつきづらいな。

 

「でもまぁ・・・、何はともあれ後は試験結果を待つだけだな」

「うん・・・」

 

 僕の言葉に、出久が頷く。確か諺では『人事を尽くして天命を待つ』って言うんだっけか・・・。

 

「ハッ、決まってらぁ。俺が1位、お前らが2と3だ」

「さぁ?それはどうだろうね。ひょっとしたら僕が1位だったりするかもよ?」

 

 爆豪君の言葉を軽く笑いながら、そう返す。

 ムキになった爆豪君と口論になりながら家への帰路へと向かうのであった・・・。

 

続く・・・。




気づいたらゴールデンウィークも最終日。
だけれど、コロナの所為で何処もいけず・・・これも全てコロナが悪いんや・・・(血涙)
さて、今回は本作初の謡精の歌(ソング・オブ・ディーヴァ)発動回。ヒロアカ原作では、壊理ちゃん無しでは出来なかったワン・フォー・オール・フルカウル100%がソロで出来ちゃったりと結構なチート能力となっております。歌は今回歌った『蒼の彼方』だけでなく、何パターンもあります。勿論、水没のテーマもありますよw
そして、メガネ少年の名前が明らかに・・・まぁ、飯田君ですけどね。・・・キャラあってるかなぁ、不安である。
さて、試験結果はどうなのか・・・?それは作者()のみぞしる。
次回もお楽しみに、それでは~。

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