蒼き雷霆ガンヴォルト~のび太のヒーローアカデミア~   作:じゃすてぃすり~ぐ

12 / 13
すすきが原―
 蒼き雷霆(のび太)の故郷。そして、親友達と少年時代をすごした場所。
 雄英合格の報告の為、そして、過去(ツミ)と向き合う為。
 少年は再び、その地に降り立つ。


チャプター10『帰郷』

−SIDE のび太

 

『すすきが原~、すすきが原です。お降りの際はお荷物をお忘れないようにご注意下さい』

「ふぅ・・・」

 

 電車のアナウンスを聞きながら、電車を降りる。

 視界の先には、生まれ育ったすすきが原の懐かしい街並みが広がっていた。

 

「あまり変わってないな、この街も」

 

 4年ぶりの故郷を見て、僕はポツリと呟く。

 今までは行こうと思ってもドラえもんを、家族を死なせてしまった罪悪感で行けなかったこの街。

 何故、僕がここに来たのかと言うと、ヘドロ事件にて迷いに踏ん切りがついたのと、ある事をパパやママ、ドラえもんの墓前に報告しに来たからだ。

 そう、『雄英高校入試合格』の報告に。

 

ー昨日、翼の家にて。

 

「のび太、結果通知が来たぞ」

「来たか・・・」

 

 蒼一郎さんから手渡された雄英高校から来た封筒を手に取りながら僕は呟いた。

 合格はしてはいるだろうが、やはり緊張はする。深呼吸しながら、僕は封を切り封筒の中身を取り出した。入っていたのは何かの機械。これで合否の報告をするのだろうか?そう思いながら、ボタンを押してみる。

 

『私が、投影されたッ!!!』

 

 映し出されたのは、マッスルフォーム姿の俊典さん。合否発表に彼が出るのはやっぱり、雄英のOBだからだろうか・・・?そんな僕の疑問に答えるように、映像の中の俊典さんは、こう答えた。

 

『何故、私がここに映っているのか?って顔をしているだろうね。何故なら、今年から雄英高校で教師を務めるからさ!』

「マジで!?」

「ええっ!?」

「ウッソだろォ!?オールマイトが教師やるのかよ!?」

 

 思わずそう呟いてしまった。俊典さん、そんな事一言も話してなかったしなぁ。いつの間に来ていたモニカさんとジーノも驚いている。ただ一人驚いていないのがいた。そう、蒼一郎さんだ。

 

「・・・あれ?何で、蒼一郎さん驚いてないの?」

「驚くもも何も、知っているからな。俊典がティーチャーをすると言うのは。

 何せ、私も雄英でティーチャーをやらないか?と『根津校長』からオファーが来たんだ」

「へぇー、リーダーも雄英で教師になるのか。・・・うわ、当たっちまった生徒が可愛そうだな

 

 僕の問いに、答える蒼一郎さんに思わず驚くジーノ。・・・最後、ボソリと呟いたみたいだけど聞こえてるよ。

 

「ジーノ、後でみっちりと鍛えてやろう」

「すいません許して下さい何でもしますから」

 

 勿論、蒼一郎さんにもばっちり聞こえていたようだ。それを聞いたジーノは顔面蒼白で即座に土下座した。

 そんな事は気にせず(映像なので当たり前だが)俊典さんは話を続ける。

 

『さて、いろいろ話したいところだけど時間が押しているからね。単刀直入に結果発表と行こうじゃないか!

 筆記試験は可も無く不可も無く合格点。実技は70Pこれも文句なしで合格点だ!』

 

 うーむ、70ポイントか・・・。爆豪君とかは、結構倒してそうだし・・・ちょっとこれは負けたかな・・・。

 そう思っていると、だがしかし!と俊典さんは続けざまにいう。

 

『先の試験で見ていたのはヴィランポイントのみならず!実は、レスキューポイントと言う救助活動をした事による審査制のポイントも加算されるという訳さ!ヒーローと言うのは、困っている人を助けるのが仕事だからね!

 と言う訳で、野比のび太!レスキューポイントは90P!合計で130P、おめでとう!文句なしの合格、しかも主席合格者・・・その3人のうちの一人だ!』

 

 それを聞いてすぐさま察した、残りの二人は出久と爆豪君なのだと。・・・爆豪君、今頃悔しがってるだろうなぁ・・・。

 

『さぁ、来いよのび太少年!雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!!』

 

「合格おめでとう!」

おめでとう(コングラッツレーション)、のび太」

「首席合格ってやるじゃねぇか!」

 

 モニカさん、蒼一郎さん、ジーノが合格発表を聞き、そう言って祝福した。これから始まるんだ、僕のヒーローになる為の長い道のりが・・・。でも、その前にやらなきゃならないことがある。

 

「ありがとう。・・・あのさ、明日なんだけど」

 

 僕がヒーローとしての道を歩むのに眼を背けてはいけない事。そう・・・、

 

「僕が前にいた街に行ってもいいかな?すすきが原に」

 

 ドラえもん達に報告をしに・・・。蒼一郎さんは、合点がいった感じで答えた。

 

「・・・成る程。自分の中の罪悪感と、決着をつけに行くのか」

「・・・うん。そうじゃないと、前に進めないって思うからね」

 

 頷きながら、僕はそう答えた。蒼一郎さんは、フッと短く笑い続けた。

 

「ならば、旅費は私達が持とう。のび太、明日は久々の帰郷を楽しみたまえ」

「・・・ありがとう、蒼一郎さん」

 

 

~そして、現在へと至る。

 

 子供の頃歩いていた街並みを歩く。

 お菓子屋、本屋、八百屋・・・エトセトラエトセトラ、どれも僕がこの町を出てからというものあまり変わっていないようだった。

 ふと、とあるお店が目に入り立ち止まる。少々古ぼけたお店だ。

 

「ここもまだあったんだな・・・『剛田雑貨店』」

 

 僕の昔なじみの友達、剛田タケシ。通称『ジャイアン』が住んでいる家である。

 新横崎市(こっち)に引っ越してから4年間も音沙汰無しだったから、怒ってるだろうなぁ・・・。鉢合わせでもしたら、拳の一発も貰いそう・・・。カゲロウがあるから痛くもないが。あの一発は今でもトラウマだ。でもまぁ・・・。

 

「仕方ないか、連絡も寄越さなかった僕が悪いし。当たって砕けろだな」

 

 ため息をつきながら、僕は4年ぶりの再会をするべく雑貨店の中へと入る。

 

「こんにちは〜・・・」

「いらっしゃい、何をお探し・・・あら?」

 

 出迎えたのは何処となくジャイアンに瓜二つなジャイアンママ。僕を見て訝しげな表情を浮かべた。

 ・・・やはり、変装しないで来たのは間違いだったかなぁ・・・。

 ジャイアンママを見ながら、そう思っていると懐かしそうに手を合わせ、こう言った。

 

「ひょっとして、野比さんの所ののび太ちゃんかい!?久しぶりだねぇ!」

「は、はい」

 

 僕がのび太だと、気づいたようだ。・・・と言うか何で、分かったんだろうか。金髪だし、眼鏡かけてないしで結構、原型留めてないと思うんだけど・・・。

 まぁ、そんな事はさておきだ。ジャイアンは何処にいるのか聞かないと。

 

「僕、ジャイア・・・じゃないや、タケシ君に用があって来たんですが、タケシ君は何処ですか?」

「タケシかい?タケシはこの時間帯だと・・・『あそこ』だねぇ」

 

 僕の問いに、ジャイアンママは時計を見ながら僕に言う。

 

「あそこ?」

「のび太ちゃん家の跡地だよ。

 のび太ちゃんは知らないだろうけどあそこに、ドラえもんちゃんのお墓を建てて、今の時間帯に、友達と一緒に花やマンガとかをお供えするのさ」

 

 ・・・皆そんな事をしてたのか。それを聞いて、僕は自分が情けなくなった。

 僕が罪悪感を理由に、逃げ続けていた間にも皆はドラえもんのお墓を建てて、お墓参りをしていたんだ・・・。

 

「皆に謝らなきゃな・・・。おばさん、ありがとうございました」

 

 僕は、そう小さく呟くとジャイアンママにそう言って、雑貨店を出た。

 しばらく歩くと、見慣れた塀があるのが見えた。昔ならば、僕の家がある所。・・・でも、今は焼け落ちてしまって、塀を遺して何もない場所だ。

 その場所に、三人の男女がいるのが見えた。体の大きい少年、キツネのような少年、そして、どこか優しそうな少女。・・・言うまでもない、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんの三人だ。

 

「久しぶりだね、皆」

 

 僕の声で、3人が僕のほうを振り返る。

 

「「「の、のび太(さん)!!!」」」

 

 驚きながら、僕を見る三人。何故、僕の事が分かったのかと言うと、4年前のあの事件でオールマイトに救出された後、病院に入院していた時に見舞いに来たことがあったからだ。

 その時に、変わり果てた僕の姿を見ている為、僕だと分かったのである。

 暫くしてから、僕は3人に頭を下げた。

 

「今まで、4年間連絡を寄越さないでゴメン」

 

 僕に出来る精一杯の謝罪、謝って済む問題では無いのはわかってる。でも言わずにはいられなかった。

 

「・・・のび太」

 

 長い沈黙の後、口を開いたのはジャイアンだった。顔を上げると、無表情でこちらを見ていた。

 

「4年間、今まで何してた?」

「・・・ちょっと色々とね。新横崎市に引っ越したんだよ」

「そうか・・・」

 

 再びの沈黙、次の瞬間には拳が飛んでくるのだろうか・・・?などと思っていると、ジャイアンは静かに僕に告げた。

 

「本当なら、退院後にいきなり行方をくらまして、4年間もろくすっぽ連絡を寄越さなかったお前をギッタンギッタンにしてやろうかな。・・・って思ってた」

 

 ・・・やっぱりそう思ってたのか。

 そう思って顔をこわばらせている僕とは裏腹に、ジャイアンはだけど・・・。と小さく言葉を紡いで続けた。

 

「何でかな、お前の元気そうな顔を見てたらそんな気持ちも失せちまったよ。・・・お帰り、のび太」

「―――」

 

 そう言って、肩に手をポンと置きながらニッカリと笑顔を見せるジャイアン。僕はそれを見て、何か胸に熱いものがこみ上げてくるのが分かった。

 それと同時に、視界が歪み、何かが頬を伝って落ちていくのが分かった。・・・どうやら僕は泣いているらしい。ヘドロ事件後で泣いたときと同じように今まで、抑えていた感情が制御できない。

 ありがとう、そしてゴメン・・・。そう言葉を紡ごうにも出てくるのは嗚咽だけだった。

 

「・・・ったく、4年経ってものび太はのび太だなぁ」

「ホントにね」

 

 苦笑交じりに、僕の背中をさすりながらジャイアンは言う。それに同意するスネ夫。・・・うーん、反論出来ないのが辛い・・・。

 

「でも、元気そうで良かったわ。のび太さん」

 

 そんな僕を見ながら、しずかちゃんはウフフっと笑った。そして、その笑顔で僕に言った。

 

「おかえりなさい、のび太さん」

「うん、ただいま・・・皆」

 

 こうして、僕は旧友達と4年越しの再会を果たしたのであった。

 

―そして、暫くして・・・。

 

 僕は、一人墓前の前に立っている。ジャイアン達は帰る頃だったらしく、暫く昔話に花を咲かせた後帰って行った。雄英に合格した。と僕が話したときは凄く驚かれたものの、頑張れよとエールを貰ったのは嬉しかった。

 

「ドラえもん、パパ、ママ・・・久しぶりだね」

 

 墓前に手を合わせながら、僕は語りかける。

 

「4年間も連絡に来なくてごめん。・・・4年前、僕の所為でこうなってしまったから皆に会わせる顔がないって思ってたんだ。その事実に耐えられなかったんだ。

 だから、蒼一郎さんの申し出を二つ返事で答えて、引越しと言う形で、すすきが原から逃げ出した」

 

 そして贖罪を口実に、ヴィジランテ『蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト』として戦い続けた。表舞台には姿を見せず、隠れるように、逃げるように。

 

「僕はずっと、あの日からヒーローになる資格なんかないって思ってた。

 だけど、出久や俊典さんが言ってくれたんだ・・・、『君はヒーローになれる』って。だから僕は決めたんだ、ヒーローになるって」

 

 そう言って、微笑みを浮かべながら、僕は続けた。

 

「それで、僕雄英を受験して合格したんだ。

 これからもっと頑張ってヒーローになって、多くの人を救ってみせる。ドラえもん達の分まで・・・、それが僕に出来る償いなんだ。・・・だから、見守っててくれよ・・・ドラえもん、パパ、ママ・・・」

 

 誓いを立てるようにそう言って、僕はその場を去った。その去り際に、

 

『のび太君』

 

 と、ドラえもんの声が聞こえたような気がした・・・。

 

 そして、時は流れ・・・。僕達の雄英高校入学式が始まろうとしていた。 

 

続く・・・。




ようやく、ドラえもんキャラを出せたなと思っております。
だけど、あまり喋れてなかったのは少し反省。彼らがヒロアカサイドとどう絡んでいくのかは・・・、まだ未定ですね。
さて、次回から漸く雄英高校入学・・・となりますが、ちょっとオリジナル展解とかも考えております。(ヒント、蒼一郎さんのセリフに伏線がはっております)
では、また次回お会いしましょう。ではでは~。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。