蒼き雷霆ガンヴォルト~のび太のヒーローアカデミア~ 作:じゃすてぃすり~ぐ
少女が選ぶ
それは『
最高のヒーローを目指す『無個性』だった『謡精』の少女は過去へと思いを馳せる。
― 出久SIDE
―人は生まれながらにして平等ではない。
それは
「うーん、諦めた方がいいね。今の世代には珍しい何の『個性』宿ってない型だよ」
オールマイトのようなヒーローになりたいと思っていた私に突きつけられた『無個性』と言う事実がそれだ。
『無個性』という事実を告げられても、私は諦めなかった。否、諦めきれなかった。
「『無個性』の癖にヒーロー気取りかよ、『デク』!」
「勉強だけじゃヒーローにはなれねーよ!」
例え、クラスメートや幼馴染にバカにされようとも私は必死に頑張った。
いつか、『無個性』でもヒーローになって・・・、
「出久・・・ごめんね、ごめんねぇ・・・」
4歳の頃から私に謝ってばかりのお母さんに、「『無個性』でも、ヒーローになれたよ!」って胸を張って言える様に。
そんな私に転機が訪れたのは9歳の頃。
「『個性研究所』・・・ですか?」
「はい、御宅のお嬢さんをウチでお預かりしていただければ、『無個性』だったお嬢さんがあっという間に『個性』を持つ事が出来るようになります」
『個性研究所』と名乗る白衣の人達、彼らの所に行けば『個性』を持つ事が出来る。もう、『無個性』だなんて言わせないし、『ヒーロー』になれる!度重なるいじめで精神的に追い詰められていた私は藁にも縋る思いで、お母さんを説得し、了承を得た後、彼らに連れられた。
そして、実験の末、手に入れたのは『
だけれど、待っていたのは更なる地獄。
家に帰ることも許されず、来る日も来る日も、かつての私と同じ『無個性』の人達をおびき出す為の『歌』を歌わされた。
連行され様々な実験を受けさせられる『無個性』の人々の苦痛の叫び声。大抵の人は過度の実験に耐え切れず、一人、また一人と死んでいった。
皆を救うヒーローになりたかったのに、皆を苦しめる歌を歌い続ける事になるなんて何と言う皮肉だろうか。
「そんなにヒーローになりてぇなら、効率いい方法があるぜ!
来世に『個性』が宿ると信じて、屋上からのワンチャンダイブ!」
幼馴染のかっちゃん。・・・『
こんな事になるんだったら、現実をみればよかった・・・。ヒーローを目指す事を諦めれば良かった。そうすれば、こんな事にならなかったのに。
「私を、殺して下さい・・・。
もう、この人達のための歌は、皆を苦しめるための歌は歌いたくない。
・・・だから、私を殺して下さい」
13歳の運命の日。後悔と罪悪感に苛まれ思いつめた末に、助けに来た人に私はこう言った。
これは『罰』なのだと。『無個性』の癖に一丁前にヒーローになりたかった私に対する、報いなのだと。そう死にたくないと叫ぶ私の本心に言い聞かせて。
だけれど、
「そう自分の命を、簡単に投げ出すな!君が自由を望むなら僕が
僕は君を助けたい・・・、だから教えてくれ!君の本当の願いは何?」
『彼』はそう言って、私に手を差し伸べてくれた。後の事は言うまでもないだろう。彼の活躍によって、私は助けられ、『自由』を得た。
私に自由をくれた『ヒーロー』、彼の名は・・・。
―現在。蒼炎中学校。
「皆さんはもう3年生。なので、将来の事を考える時期です。そう言う訳で、進路希望のプリントを配りますよ」
ホームルーム。私達の教室で、担任のライチ先生が、そう言ってプリントを配る。
全部配り終えると、わいわいガヤガヤとクラスメート達が、進路を何にするか話し合った。
「なぁ、お前進路何にする?」
「俺は○○高校のヒーロー科かな?」
「奇遇だなぁ、俺もだ」
この超人社会でヒーローは人気の職業だ、大体の人達がヒーロー科を希望する。かく言う私も、その一人だ。
「イズクは、何処のヒーロー科に行くの?」
そう問いかけてきたのはリス耳にリスの尻尾をした茶髪の女の子、『
「私は
「オールマイト好きだよねぇ、イズクって。・・・にしても雄英かぁ・・・。大丈夫?雄英って、結構難しいって聞くし」
雄英・・・国立雄英高等学校
ヒーロー養成校と名高い高校で、オールマイトを始めとした名だたるヒーロー達を輩出し、偉大なヒーローには雄英卒業が絶対条件と言われるほどヒーローになるための登竜門として認知されている。
特に、ヒーロー科は、入試倍率は300倍と超難関らしい。
以前の『無個性』だった私ならば、『「無個性」なのに雄英だなんて無理でしょ』と一笑されてただろうけど、今は違う。
『大丈夫よ、出久は模試A判定だったし』
そう言って、私の身体から蒼い蝶のような羽を生やし金髪のポニーテールをした、蒼い着物をアレンジしたような服を着た女性が現れる。若干私よりも大人っぽい。
彼女は『モルフォ』。私の『個性』である『電子の謡精』が自我をもった存在だ。
「A判定か、それなら大丈夫かもね」
「うん。実技の方も、トレーニングとか色々やってるし」
走りこみとか、筋トレとか。まぁ、そのお陰で体力とかはついてきているので実技の方も大丈夫だろう。
『背はあまり伸びてないけどね。アタシよりもちっちゃい』
「モルフォ!」
人が気にしている事を!
過去、研究所で行われた実験の所為で背が伸びにくい体質となったのだ。お陰で、今の身長は130cm。その事でモルフォやクラスメートに弄られる毎日だ。・・・まぁ、過去のいじめよりかはマシだが。
「それ、言うの止めてよ。気にしてるんだから」
『あはは、ゴメンゴメン。っと、これ以上外に出てると先生が五月蝿いから中に戻っておくわよ』
そう言って私の中に吸い込まれるようにして消えていくモルフォ。こう言う風に勝手に出てくるのは本当に止めて欲しい、自我を持っていても『個性』は『個性』なのだ。見つかって怒られるのは私の方なのだから。
運よくライチ先生に見つかっては・・・。
「緑谷さん、モルフォさんと随分仲良くお話してたみたいね」
・・・バレてた。ついてないなぁ、私。
「『個性』の発動は原則禁止よ。雄英志望なんだからしっかりモルフォさんの手綱は握っておくように、いいわね?」
「は、はい」
しかもしっかり、進路希望まで見てるよ。おまけに進路も言っちゃってるし!何で言っちゃうのかな!?
「ウッソ、マジで・・・」
「雄英って難しいんじゃねぇの?」
「だけど、勉強とかできるから大丈夫なんじゃない?」
ざわざわとざわめきと共に、一斉に視線が私に向く。ううう、先生がバラした瞬間から覚悟はしてたけど恥ずかしい・・・。
「ま、まぁ模試もA判定だったから受けるつもりだよ。・・・それに、ヒーローになって多くの人を助けたいし」
そんな気持ちを抑えながらも、私は皆にそう言った。オールマイトのようなヒーローになって、私の歌と想いで、人々に
それが、私の『償い』でもあるし、あの時、助けてくれた『彼』に対する恩返しでもあるから。
「偉いぞ、緑谷!」
「流石、我が蒼炎中学希望の星!」
私の言葉に、皆がそう称賛の声を漏らす。・・・ううう、この蒼炎中学校に転校してきて1年・・・、やっぱりこうやって称賛されるのは慣れないなぁ。今まで『無個性』だからとバカにされてきたから、尚更だ。
ふと、先生がある男の子を見ながら口を開いた。
「そう言えば、貴方も雄英だったわよね?野比君」
「・・・んあ?ええ、まぁ・・・」
ついさっきまで寝ていたのだろう、眠そうに眼を擦りながら先生に返答したのはメガネをかけた黒髪の男の子、『野比のび太』。そんな野比君に、先生は呆れたように口を開いた。
「はぁ・・・また、居眠りかしら野比君」
「すいません、ちょっと昨日、バイトだったもので寝てなくて・・・」
ふぁぁ・・・と欠伸をしながら、野比君は続ける。
「さっきの話ですけど、雄英は雄英ですけど僕は普通科を受けるつもりですよ」
「そ、そう?でも、貴方の『個性』なら充分ヒーロー科でもやっていけると思うけど・・・」
「流石に、買いかぶりすぎですよ。ろくに『個性』を使いこなせてないし、そんな僕がヒーロー科に入ってもたかが知れてます・・・それに・・・」
「?」
「いえ、何でもありません。兎に角、僕は普通科を受けるつもりなので」
「そう・・・先生も無理強いはするつもりはないわ」
残念そうに先生はそう言うと、教壇へと戻っていく。
「こんなご時勢なのに、ヒーロー目指さないなんて変わってるよなぁ・・・野比の奴」
「無理も無いよ。小学5年の時、ヴィランが家に押し入ってきて家族が殺されたんだって」
「それって、『すすきが原一家惨殺事件』の事か?ヤな事件だったよなぁアレ」
「噂じゃあ、ヒーローが何人かそのヴィランに加担してたんだって?そりゃあ、ヒーロー嫌っちまうよなぁ。信じてたヒーローに裏切られりゃあ嫌いもするわ」
それと同時に、ざわざわと周りがざわめきだす。
―すすきが原一家惨殺事件
東京都練馬区すすきが原にて、野比家にヴィランが押し入り家主である『野比 のび助』、妻の『野比 玉子』を殺害。その後、彼らが住んでいた家屋に火を放った事件である。
当初、野比君も放火に巻き込まれ死亡したと思われていたが、警察とヒーローの捜査の元、生存していると判明。収容されている研究施設にオールマイトらが突入し、救出した。と言うのが一連の顛末だ。
皆は、野比君がヒーローを目指さないのはヒーローに裏切られたからだ。と言っているけど、本当は違う。先生に理由を話すとき、彼は一瞬悲しそうな顔で、
「僕に、ヒーローを目指す資格なんてないから・・・」
とかすかに呟いたのだから・・・。
それに私は知っている。何故、彼がヒーローを目指したがらないのかも・・・。
―時間は流れ、放課後。
「ねぇ、野比君」
「どうしたの?緑谷さん」
みんなが帰路に着いたり、それぞれの部活動を行ったりしている放課後。私は野比君に声をかけた。
「今日、さ。一緒に帰らない?」
「いいけど、七夜さんは一緒じゃないの?」
「真琴は部活だよ」
ちなみに彼女が所属しているのはラクロス部。ちなみに彼女の趣味でもある。
「それに、話したい事もあるから・・・。良いかな?」
私の言葉に、野比君はしばらく考えた後。
「分かった」
そう頷いた。
―少年、少女帰宅中・・・。
「ねぇ、『GV』」
校舎から出て、暫く歩いた後、周囲に誰もいないことを見計らって私は野比君を『もう一つの名前』で呼んだ。
―GV・・・正式なコードネームは『
今、世間でまことしなやかに語られている都市伝説。
蒼き雷を纏い、ヴィランを屠り、人を助ける謎多きヒーロー。
そして、あの時、私を助け、自由をくれた『
「GVはさ・・・、本当にヒーロー科を受けないの?」
「うん。出久も知ってるだろ?世間じゃ、僕はどう言われてるかって」
彼の言う事は尤もだ。
GVは、『フェザー』と言う政府直属の暗部に身を置いている。
その上、ヒーロー登録もされていないので『ヴィジランテ』であると世間では認識されているのだ。ヒーロー界でのルール上では違反者である為、公式なヒーロー達は快く思っていない。
「雄英のヒーロー科だと、僕がガンヴォルトだってバレてクラスメイトになるであろう皆に迷惑がかかる可能性がある。だから、普通科に行った方がいいのさ」
「でも、このままだとずっとヴィジランテ呼ばわりされちゃうよ」
「高校卒業してからひっそりと免許は取るつもりだから大丈夫だよ」
3年間ガマンすれば、いいだけの事さ。と自嘲気味に笑うGV。
「それに、償わなきゃいけないから・・・『あの時』の事を」
あの時、と言うのはすすきが原一家殺害事件の事だろう。そう確信していると、分かれ道に差し掛かった。私の家に続く道と、GVが住んでいる『翼の家』に続く道である。
「じゃあ、僕は家こっちだから、じゃあね出久」
GVがそう言って、『翼の家』へと帰ろうとしている。そんな彼を、
「待って!GV!」
私は勇気を振り絞って引き止めた。振り返るGVに私は言葉を考えながら口を開いた。
「GVは・・・自分の事をヒーローじゃないって言うけど・・・私はGVの事をヒーローだと思ってるよ!だって、あの時私を助けてくれたのは紛れもない貴方だから・・・!」
気休めにもならないかもしれない、余計なお世話かも知れない。だけれど言わずにはいられなかった。どうにかしなきゃって思ったから。
そんな私に、GVはニッコリと微笑むと、
「ありがとう。・・・そう言ってくれると僕は凄く嬉しい」
そう言って、踵を返すと翼の家に帰っていった。
―SIDE のび太
「・・・ヒーロー・・・か」
出久と別れ、翼の家へと向かう最中僕は出久の言葉を思い返していた。
確かに、彼女にしてみれば僕はヒーローなのかもしれない、だけれど・・・、
「僕は・・・そんな綺麗な人間じゃないよ・・・」
自分勝手な願いで、両親を・・・ドラえもんを死に追いやったのだから。
映画で見たヒーローに憧れドラえもんに無理を言って『もしもボックス』で『この世界』に来なければ、来ていても、僕が『無個性』だと分かった時点で、元の世界に戻れば、死なずに済んだんだ。
僕は・・・人殺しだ。自分が手を下した訳じゃないけど、僕が殺したようなものだ。
だから、僕はヒーローになる資格は無い・・・なっちゃいけないんだ僕は・・・。
・・・でも、その反面『ヒーローになりたい!』と叫ぶ自分がいる。・・・僕は、
「どうすればいいんだろうね・・・。ドラえもん」
懐のポケットから親友の形見である鈴を取り出し、それを見詰めながら僕は呟いた。
鈴は何も答えず、ただ・・・チリン。と音を鳴らすだけだった・・・。
続く・・・。
はい、と言うことで。
今回、登場したヒロアカ主人公こと緑谷 出久君を・・・TSさせちゃいました。
しかもポジションはガンヴォルトほんへのヒロイン、シアンちゃんポジ。・・・初期のプロットでは、シアンちゃんを出久君の妹として出すつもりだったのですが、色々と考えた挙句、出久君をTSさせてシアンちゃんポジにしようと言う暴挙に・・・。ヤメテ!石投げないで!
ちなみにTS出久ちゃんの外見はシアンちゃんの髪の色、眼等を出久君風にした感じです。そばかすも勿論ありますよ。
ちなみにこの小説でのGVのび太君とシアン出久ちゃんの出身校、蒼炎中学やクラスメートの真琴ちゃん、担任のライチ先生の元ネタは格闘ゲームの『ブレイブルー』から、所謂『蒼』つながりです。
次回も楽しみに!
それでは~。