蒼き雷霆ガンヴォルト~のび太のヒーローアカデミア~   作:じゃすてぃすり~ぐ

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 家に帰った出久を待っていたのは母親だけではなかった。
 かつて一緒にいた幼馴染『爆豪 勝己(ばくごう かつき)』。
 無個性だと蔑まれ、虐められた過去が『謡精(出久)』にもあったように、勝己にも心の傷は存在した。
 少女の悲壮な決意に、少年の秘められた『本音()』が爆発する。


チャプター2『旧友』

―SIDE 出久

 

「ただいまー」

「お帰り、出久」

 

 家に帰ると、私の母さんである『緑谷 引子(みどりや いんこ)』が出迎えてくれた。

 昔はやせてたけど、暴飲暴食が祟って一時期太ってしまっていた。

 だけれどあの事件の後、私に個性が宿った事を知り一念発起。ダイエットを始めて少しずつだけど、やせてはいる。

 

「よぉ、今帰ったんかデク」

「うわっ!?かっちゃん!?」

 

 ぬっと、母さんに続いて現れたツンツン頭の金髪に、赤い瞳の男の子に私は驚いた。

 かっちゃんこと、『爆豪 勝己(ばくごう かつき)』それが彼の名前。私の幼馴染だ。・・・色々あって、通っている中学校は違うけれど、まぁ休みとかはこうしてちょくちょく家に遊びに来ている。

 

「そこまで驚く事か?」

「いや、そう言う事じゃ・・・。ところで、学校はどうしたの?かっちゃんの通ってる折寺中学も今日、休みじゃないはずだよ?」

 

 ギロリと睨むかっちゃんに私は、すこしたじろきながらも答え、問いかける。

 昔は、よく『無個性』だなんだとかっちゃんに虐められていたから、すこし彼の事が苦手だ。今は、虐めなくなったけれど、やはりこういう威圧感は警戒を禁じえない。

 

「今日は、早く終わったから帰って来たんだよ。

 んでもって、帰り道にたまたまお前んちが見えたからお邪魔しただけだ。ベツにお前に会いにきたって訳じゃねぇわ」

 

 フン!と鼻を鳴らしながらかっちゃんはそう答えた。

 そして、ぶっきらぼうに私に問いかける。

 

「ところで、デク。お前、最近学校のほうはどうだよ?」

「普通だよ。今日、授業で進路希望があったんだ。もう、3年だからね」

「進路・・・なぁ、俺の学校でもあったよ」

 

 かっちゃんの学校でもあったのか。・・・多分、かっちゃんも雄英かな?昔っから、『オールマイトを超えるヒーローになるんだ』って言ってたし。

 そう思っていると、かっちゃんが問いかけてきた。

 

「お前、進路どうすんだ?まさか、ヒーロー目指すとか抜かしてんじゃねぇだろうな?」

 

 ギロリと、鋭い眼光で睨む。その気迫に、私はうっと怯むけれど、引き下がるわけにはいかない。

 だって、なんと言われようとヒーローになりたいのだから。オールマイトのようなヒーローになって、この色鮮やかな世界を守っていきたいから。

 ただならぬ雰囲気に心配そうにこっちを見る母さんに大丈夫。とアイコンタクトを取り、私はかっちゃんに言った。

 

「そのまさかだよ、かっちゃん。私は雄英のヒーロー科を受けるつもり」

「んで、オールマイトのようなヒーローになりてぇってか?・・・笑わせんじゃねぇぞ、クソナードが!!

 ちょいとばかり『個性』が発現したからって調子のんなや!」

 

 怒声を上げ、私を睨むかっちゃん。

 すぐにでも、『爆破』の『個性』を使わんばかりの勢いだ。

 その勢いのまま、かっちゃんは続ける。

 

「確かにお前の『個性』は特殊だろうけど、使いこなせてねぇだろうが!

 それをつけ込まれて、1年前まで『奴ら』に捕まってたのを忘れたんか!?ア”ァ!?」

 

 かっちゃんの言うとおりだ。9歳の時に実験で『電子の謡精』が発現してからずっと『無個性』の人をおびき寄せる為の歌を無理矢理歌わされていた。

 だけれど・・・、いやだからこそ・・・・。

 

「それでも・・・、私はヒーローになりたいの!ううん、ならなくちゃいけないの!」

 

 自分の思いをかっちゃんに打ち明ける。

 

「あの日、私に自由をくれたGVに報いる為にも!そしてなにより、私が歌った所為で捕まって殺された『無個性』の人達に報いる為にも!それに・・・」

「・・・ッ!・・・ふざけんな!!!」

 

 私の言葉を遮って、かっちゃんが叫ぶ!立ち上がって、今にも泣きそうな顔で私に言った。

 

「それは・・・、テメェの所為じゃねぇだろうが・・・!何で、お前はそうやって・・・」

 

 クソナードが!と吐き捨て、かっちゃんは家を飛び出していった。

 

「かっちゃん!」

 

 それを見た私は思わず、家を出て彼の後を追いかけた。勿論、母さんに一言断って行った。

 どれ位、追いかけたのだろう・・・気がついたら、路地裏に来ていた。そこで、息を切らせているかっちゃんを見つけた。

 

「かっちゃん・・・」

「・・・デク!?何でついて来た!?」

 

 振り返ったかっちゃんの顔は涙で濡れていた。泣いていたのだろう。

 ひょっとしたら、私は知らない間にかっちゃんを傷付けてしまったのだろうか?

 

「・・・ごめん」

「・・・なんで、お前が謝ンだよ・・・」

 

 私の謝罪の言葉に、かっちゃんは俯いたままそう返した。

 

「俺が勝手にキレて出てっただけだ。それなのに、何でお前が謝ンだよ!

 テメェは昔っからいつもそうだ!全部自分が悪いって背負い込んで!あの時だって・・・」

 

 ポロポロとかっちゃんの瞳から涙が溢れる。

 

「あの時、お前が『奴ら』に『個性』を植えつけられて利用されたのは俺の所為なんだ!!

 俺がお前を追い込んじまったから!実験にされて死んだ『無個性』の連中だって俺が殺したようなモンなのに・・・!何でお前もおばさんも皆、俺を責めねぇんだよ!!!」

 

 そう言って、かっちゃんは私に食って掛かる。まるで、今まで押し殺してきた自分の心をさらけ出すように。

 

「お前が、俺を責めてくれれば楽になるのに・・・!

 言えよ、デク!全部お前が悪いんだって!お前の所為で私は辛い目にあってきたんだって言ってくれよォ!」

 

 涙でグシャグシャの顔で、私に言うかっちゃん。

 あの時の事がここまでかっちゃんを追い詰めていたんだ・・・。いつも、皆を引っ張っていた時とは違う、弱弱しいかっちゃんに私は何も言えなくなった。

 何て言葉をかけてやればいいんだろう。そう思っているとふと、かっちゃんの背後に蠢く何かがいた。それはまるでヘドロのような・・・。

 

「いい感じの・・・隠れ蓑・・・」

 

 それは品定めするように呟く。・・・これはヴィランだ!ハッとかっちゃんが気づくより先に取り込もうとするヘドロヴィラン。

 

「かっちゃん!!!」

 

 私は考えるよりも早く、かっちゃんを押しのけた。目の前にはヘドロのヴィランが。

 

「このチビちゃんも、いい隠れ蓑になりそうだァ・・・。大丈夫、ちょっと体を借りるだけさ・・・」

 

 そう言って、私に向かって体を広げ、襲い掛かった。

 

 

―のび太SIDE。出久が、自宅に帰ってきた頃に遡る。

 

「ただいま」

「分かった、ちょうど今からのび太が帰って来たみたいだから彼をそちらに向かわせよう」

 

 僕が、翼の家に帰ってくると、蒼一郎さんが誰かと電話で話していた。

 話の内容からするに、急の任務だろうか?

 僕を一瞥し、電話を切ると蒼一郎さんは僕に向かってこういった。

 

「のび太、帰って来てすまないが頼みがある」

「何?ひょっとして急な任務?」

「いや、そう言う訳じゃない。俊典(としのり)の迎えに行ってもらいたいだけだ」

 

 どうやら、蒼一郎さんの弟でありヒーローをやっている俊典さんこと八木 俊典(やぎ としのり)の迎えだったようだ。

 でも、一つ疑問が残る。あの人が迷子になったとしてもヒーローなのだから『個性』を使って跳んで行けば問題ないと思うんだけど・・・。そんな疑問は蒼一郎さんの次の言葉で霧散した。

 

「町を散々駆け回った挙句に『限界』が来た上に子供たちのプレゼントに(マネー)を使いすぎてタクシーは愚か、バスにも乗れないらしい」

「・・・あの人らしいや」

 

 理由を聞いて、深くため息をつく。あの人の悪い癖・・・、何でも他人を優先する性格はどうにかならないものか・・・。

 まぁ、ヒーローと言う職業柄、人を助けるのは仕事なのだが、彼の場合は度が過ぎてるのだ。ある戦いで、重傷を負い、『個性』があまり使えない体となってもそれは変わらない。

 誰かが助けを呼ぶ声を聞けば、真っ先に駆けつけ人を助ける。それが彼なのだ。

 

「彼のああいう性格は、永遠(フォーエバー)に直らんよ。そう言うわけだから、迎えに行ってやってくれ、のび太」

「了解。んで、俊典さんは何処にいるの?」

「GPSの反応はここを指していた」

 

 そう言って、蒼一郎さんはスマホの画面を見せる。僕達が住んでいる町『新横崎市』の地図が描かれており、そこのある場所から俊典さんの持っているスマホの信号が出ていた。

 

「横崎公園か、了解。今から迎えに行ってくるよ」

「ああ、グッドラックのび太」

 

 僕は蒼一郎さんにそう言うと、俊典さんのいる横崎公園へと向かった。

 

~30分後~

 

 横崎公園は、『翼の家』を出て30分ぐらいかかる距離にある。

 遊具はブラんこに滑り台と言ったスタンダードなものが置いてあるなんの変哲もない公園だ。

 

「ここに俊典さんがいる筈だけど・・・」

 

 そんな公園に僕は俊典さんを探してやって来ていた。ふと、ベンチを見やると、何かVの文字を前に折ったような2本の前髪が特徴的な金髪のやせ細った男がベンチに座っていた。

 そう、彼が俊典さんだ。一見、お世辞にもヒーローっぽくない外見ではあるが、こう見えてもヒーローである。

 

「迎えに来たよ、俊典さん」

「ん?」

 

 俊典さんに声をかける。その声に、俯いていた俊典さんは顔を上げ、僕を見ると・・・、

 

「のび太少年がァ!来てくれたァ!!!」

 

 やせ細った身体が膨れ上がり、筋肉ムキムキマッチョマンのような姿となった。折れ曲がった2本の前髪はピン。とリッパなVの字となり、その顔はアメコミヒーローのように逞しい。

 一応、説明しておこう。俊典さんのヒーローネームは『オールマイト』、No.1ヒーローであり、『平和の象徴』と呼ばれているヒーローだ。

 

「ゴフッ!?」

 

 だけれど、すぐさま元のやせ細った姿になり、吐血する。全く、『限界』が来てるのに無理してマッスルフォームになるからだよ。

 

 おっと、ちょっと説明しておいた方がいいかな?

 俊典さんは5年前のあるヴィランとの戦いで、呼吸器官半壊、胃の全摘出をしなければならない重傷を負った。本来ならば、そこでヒーローは引退しなければならないのだが、俊典さんはヒーローを続けた。俊典さん曰く、「私は平和の象徴なのだから」だそうだ。

 その為、度重なる手術と後遺症によって、現在のやせ細った姿となっている。この時の姿は『トゥルーフォーム』、んで、今さっき僕と会ったときにムキムキマッチョマンの姿になったのが『マッスルフォーム』だ。ちなみにマッスルフォームになれるのは今の時点で3時間にしかなれない。

 

「大丈夫ですか?『活動限界』とっくにオーバーしてるのに無茶しないで下さいよ」

「あー、ゴメンね。何か、無理してでもマッスルフォームにならなきゃいけない衝動に駆られちゃったのさ」

「何ですか、それ?」

 

 そんな理由で、ただでさえ少ない活動時間がさらに減ったら元も子もなかろうに・・・。

 意味不明な言い訳にジト目になりながらも、僕は俊典さんに言う。彼と共に『翼の家』に帰れば、それでミッションクリアだ。・・・ミッションって程でもないけど。

 

「兎に角、『翼の家』に行きますよ。蒼一郎さんも待ってますし」

「その事だけれど、のび太少年。『翼の家』に行くのは待ってくれないか?」

「・・・理由を聞かせてもらっても?」

 

 いつになく真剣そうな表情で、俊典さんが僕に言う。若干嫌な予感を感じつつ、僕は俊典さんに問いかけた。

 

「『翼の家』の子供達にプレゼントを買って、『翼の家』に直行しようとした時、悲鳴を聞いたんだ。駆けつけてみたら、ヘドロのようなヴィランが通行人を襲っていた」

「ヘドロ・・・」

 

 何だろう・・・、それを聞いて妙に引っ掛かるような気がするが・・・。

 

「どうかしたかい?のび太少年」

「いえ、何でも。続けて下さい」

「わかった。それでいつもの如く『私が来た!』って言って、そのヴィランを退治した後、ペットボトルにそのヴィランを詰め込んで、警察署に寄ったんだ。

 そしたら・・・、飛んでいた拍子にそのペットボトルを落としてしまったようでね。気がついたのは警察署についてからだったんだ。」

「成る程、それでそのペットボトルを探し回ってたら『活動限界』が来て今に至る、と・・・。この事蒼一郎さんに言った?」

「ニイサンニハイッテナイデス」

 

 僕の問いかけに、顔面蒼白となり片言で答える俊典さん。蒼一郎さんは俊典さんが頭の上がらない人の一人であるからだ。

 

「そう言うわけだから、あのヘドロヴィランの入ったペットボトルを探してくれないか?頼む、この通りだ!」

 

 両手を合わせて僕に頼む俊典さん。・・・正直、そんなのお構い無しに俊典さんの願いを断っても良かったのだが、ヘドロと言う単語に妙な気がかりを覚えた。そう言えば、昨日の令嬢救出ミッションでヴィラングループの中にそのヘドロのヴィランがいたような・・・。

 もし、そのヴィランがソイツならば・・・、取り逃がした僕の責任だ。ひょっとしたらヴィラン違いかもしれないが、憂いは取っておきたい。

 

「分かりました、一緒に探しましょう」

 

 僕はそれを二つ返事で受けた。パァっと俊典さんの顔が明るくなる。

 

「受けてくれるのかい!?助かるよ!」

「ただし、報酬(お駄賃)下さいね。危険手当込みで14万8000円ほど」

「ファッ!?金取るの!?」

「冗談ですよ」

 

 茶目っ気たっぷりに俊典さんにそう言って、そのヘドロヴィランの入ったペットボトルを探す事にした。さりげなく、俊典さんが目が本気だったよ!?と抗議していたが、気にしていない。

 まぁ、それは兎も角、どうやって探すか俊典さんと話し合おうと思ったその時だった。

 

『Laaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』

「うわっ!?びっくりした!?」

「なんだ、この声は!?」

 

 突如耳を劈くような声が聞こえてくる。それと共に、窓ガラスの割れる音、人々の悲鳴が聞こえてきた。

 発信源は、新横崎市の中心部だ!

 そして、再び響く歌のような声。・・・この声はまさか!?

 

「行きましょう、俊典さん!」

「ああ、分かった!」

 

 嫌な予感を覚えつつも、新横崎市の中心へと向かった。

 そこで見たのは地獄だった。割れた窓ガラス、吹き飛ばされた車。そこからガソリンが漏れ出し、炎が噴出す。怪我をした人達をヒーロー『シンリンカムイ』や『マウントレディ』などのヒーローが救助していた。

 その地獄に野次馬が群がりその光景を見ている。

 

「ちょっとすいません!失礼します!」

 

 俊典さんと一緒に野次馬を押しのけて、一体誰がこの地獄を作り上げたのかを見る。そこにいたのはヘドロのような姿をしたヴィランだった。

 

「Holy Shit!やはり逃げ出していたか!」

「それに、見たことあると思っていたら・・・昨日の連中の一人だ」

 

 嫌な予感的中だ・・・。だけれど、アイツにはここ一帯を地獄に変える力は無かったはずだが・・・、ひょっとして、アイツの中に取り込まれている誰かの『個性』か?

 そう思っていると、

 

『Laaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』

 

 再び歌が響き、そのヘドロが一瞬だけ引き剥がされ、その人物の顔が露になる。

 

―ドクン!

 

 その人物の顔を見た瞬間、僕の心臓が跳ね上がった。なぜならば、その人物は・・・。

 

「出久・・・ッ!?モルフォ・・・!?」

 

 出久と彼女の『個性』であるモルフォだったのだから。

 

 続く・・・。




 今回は、かっちゃんとオールマイトこと、八木 俊典=サンが登場。
 かっちゃん、結構丸くしすぎィ!と言われそうだけど、実際に原作でもデク君がシアンデクちゃんと同じ事になったら、こうなりそうじゃね?と思ったり。
 原作でも、オールマイト終わらせたのは自分の所為だって責めてましたからねぇ。
 本作のオリ設定である蒼一郎さんことアシモフと、オールマイトの兄弟関係。プロローグで複線張ってました(アシモフの本名が『八木 蒼一郎』である事)
 ちなみに、今回のび太申したとおり、アシモフはオールマイトが頭の上がらない人物の一人であります。
 それと、今回、のび太たちの住んでいる町が判明。『新横崎市』の元ネタは『BLAZBLUE』の流を組んだアドベンチャーゲーム『XBLAZE』の舞台となっている同名の町です。まぁ、これもまた『蒼』つながりでございます。
 さて、次回はデクちゃん救出大作戦!
 お楽しみに!
 それでは~。
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