蒼き雷霆ガンヴォルト~のび太のヒーローアカデミア~ 作:じゃすてぃすり~ぐ
それを、『
彼女を次なる、『平和の象徴』とする為に。
今回は前後編となっております。
-SIDE のび太-
「5年前、私はある大物敵と戦って傷を負った」
俊典さんはそう言って、服をめくって
胸から腹にかけてある、見ていて痛々しい傷跡。正直僕自身や出久も目を背けてしまうほどの手術痕だ。それを見て爆豪君は息を呑んだ。
「これにより、呼吸器全壊、胃袋摘出・・・今、私がヒーローとして活動できる時間は1日3時間程なのさ」
「あー、言っておくけど5年前と言っても毒々チェーンソーとの戦い負ったわけじゃないからね」
「ンなのわぁっとるわ。オールマイトが、あんなチンピラヴィランに負ける訳無ェだろが」
横から割り込むように言って来た出久に、爆豪君はそう答える。
「って言うか毒々チェーンソーとの戦いを知ってるなんて、詳しいね緑谷少女」
「そりゃあ、オールマイトの大ファンですから。オールマイトの事は何でも知ってるんです。例えば・・・」
「ストップ。それ以上は話が脱線しちゃうからやめよう。いいね?」
「アッハイ」
俊典さんの言葉に、えっへん。と胸を張りながら出久は答える。そんでもって、オールマイト薀蓄を始めようとした為、僕は慌てて止めた。一度、出久がオールマイトの事を語りだせば止まらなくなるからだ。
酷い時には、夜が明けて朝になるまで話してしまうことだってあるのだ。・・・あの時はホント参ったよ。
「話を元に戻そう。先ほど見せた傷の所為で、私が『
・・・だが、このまま引退してしまえばこの日本に平和の象徴が完全に消え去ってしまう・・・」
だからこそ。と僕と出久を見ながら俊典さんは続ける。
「のび太少年と、緑谷少女。どちらか二人に私の『個性』を継がせようと提案を持ちかけたのさ。
・・・まぁ、のび太少年には見事に振られてしまったがね」
HAHAHA!と笑う俊典さんに爆豪君は一瞬呆気に取られ、困ったように言った。
「すまねぇ、話が全然見えてこねぇんだが・・・」
「世間には爆笑ジョークで筋力だのブーストだのと誤魔化してはいるが実際は違う。
この『個性』は聖火の如く受け継がれてきたものなんだ」
俊典さんのカミングアウトに、驚きのあまり声が出ない爆豪君。まぁ、無理もない。僕や出久もその事を知ったとき、同じだったから。・・・否、出久の場合はブツブツモードになってたっけ?
「それは『個性』を譲渡する『個性』。光差す
その名は『ワン・フォー・オール』!それが、私の『個性』さ」
「マジか・・・。ンで、それをデクの奴に継がせる・・・と?」
爆豪君の問いに、ああ。と俊典さんは答えた。
「彼女には、その素質があるからね。
『困っている人や助けを求めている人』を見ると身体が勝手に動いて助けてしまう。それが彼女の素質さ」
「そっか・・・、ならその『ワン・フォー・オール』をよ。デクに継がせてやってくんねぇか?」
「か、かっちゃん!?」
「勘違いすんな。今のお前じゃあ、どう逆立ちしたってオールマイトのようなヒーローになるにはザコすぎるから言っただけだ。別にお前の為じゃあねぇよ」
「ざ、ザコって酷い!?」
感謝の篭った眼差しで見る出久に、爆豪君はそっぽを向きながら答えた。上げた瞬間に落とされたような顔で、出久が叫ぶ。・・・あれ?これひょっとして・・・、
「爆豪君ってツンデレかい?」
「誰がツンデレだァ!?別にツンデレてねぇわ!!!」
しまった、ついつい口に出ちゃったか。BOOM!と爆豪君が僕の顔面目掛けて爆破の『個性』を使ったが、カゲロウのお陰でノーダメージ。
「ンなァ!?傷一つついちゃいねぇ!?」
「無駄だよ、『電磁結界カゲロウ』がある限り僕を傷つける事は出来ない」
「ムカツク能力だなァ!それも『アームドなんちゃら』って『
「『
そんなやり取りを爆豪君としていると、俊典さんがあの~・・・。と申し訳なさそうに声をかけた。
「そろそろ話を本筋に戻していいかい?思いっきり脱線しちゃってるんだけど」
「「あ」」
・・・すっかり忘れてたや。
―閑話休題。
「さてと、のび太少年と爆豪少年から君を後継者にしてくれ。と言われたが、君はどうしたいんだい?
後継者にするには君の意見も聞かないとね」
話を元に戻し、出久と向き合った状態で俊典さんはそう言った。出久は、暫く考えた後しっかりと強い眼差しで口を開いた。
「私、今回の事件でモルフォに頼りっぱなしだなって思いました。
あのヘドロヴィランに捕まった時、引き剥がす時にモルフォの歌だけが頼りで、私は何も出来ない木偶の棒だった・・・。私、変わりたいです!だから・・・、『ワン・フォー・オール』を継ぎます!」
「いい返事だ!君はこれより『ワン・フォー・オール』の9代目継承者となる。ちょっと失礼」
そう言って、出久の腕をポンポンと触る俊典さん。ふむ。と満足そうに頷いた。
「しっかりと鍛えてるな!その割にはちっちゃいけどね!」
「オールマイト、気にしてるんですけど・・・」
「・・・あ、ゴメンね?だけど、まだまだ『ワン・フォー・オール』を受け継ぐレベルじゃない。だからもっと鍛えなきゃいけないぜ」
「う~ん、やっぱりそうですかぁ・・・」
俊典さんの言葉に、はぁ~・・・。とがっくりうなだれる出久。その傍らで・・・、
「なぁ、ビリビリ」
「・・・ビリビリって僕の事?」
「テメェ以外に誰がいんだよ」
爆豪君が僕を小声で呼ぶ。・・・ビリビリと言う変な仇名で。まぁ、『蒼き雷霆』使う時ビリビリしてるけどさ・・・。だけど解せぬ。
「オールマイトがさっきから身体鍛えてるだのどーのこーの言ってるけど、どう言う意味なんだ?」
「俊典さん曰く、身体鍛えてないと四肢が爆発四散するらしいんだって」
「俊典?・・・ああ、オールマイトの本名な。・・・それマジなんか?」
「マジ」
「何それこわい」
僕らがそんなやり取りをしている最中、俊典さんは出久にある提案を出す。
「そこでだ、君にとっておきのトレーニングプランを考えているんだがやってみるかい?」
「トレーニングプランですか?」
出久の言葉に、そうだ。と俊典さんは答えた。
「地域の為になって、『ワン・フォー・オール』を受け継げるレベルにまで身体が鍛えられる。実質アブハチトラズなトレーニングプランさ」
『それを言うなら、一石二鳥じゃない?』
「そ、そうとも言うね」
ツッコミを入れるモルフォに、震え声で答える俊典さん。とにかく!と出久を見やり、続けた。
「このトレーニングを受けてみるかい、緑谷少女?」
「お願いします!」
元気よく、答える出久に俊典さんはうむ!と満足そうに答える。
「いい返事だぜ、緑谷少女。・・・さて、そろそろ親が心配する時間だから二人ともそろそろ帰りたまえ」
「あ・・・もうそんな時間か」
「だな。ババァが心配してら」
俊典さんに言われて、出久と爆豪君は時計を見てそう溢した。
「それじゃあ今日はこれで解散だ!トレーニングの詳細は明日教えるぜ!それと集合場所は市内の海浜公園、遅刻しないようにね!」
そんなこんなで、解散となり出久と爆豪君は家に帰宅。こうして、僕達の長い一日は終わりを告げたのであった・・・。
SIDE OUT
SIDE 出久
―その翌日。
「来たね、3人とも!」
「おはようございます、オールマイト!皆!」
「おはよう」
「はよ。・・・んでよぉ、ここで何すんだオールマイト?」
市内の海浜公園。見渡す限りのゴミの山であるここにオールマイト(ちなみにマッスルフォームだ)、私、GV、かっちゃんが来ていた。かっちゃんの問いかけにオールマイトは答える。
「今から緑谷少女にはここの掃除をしてもらおうと思うんだ、モルフォ少女の『歌』の力を使わずにね」
「掃除・・・ですか?」
「Yes!だが、ただ掃除するだけじゃあない。この区一帯の水平線を蘇らせる、それが君のヒーローへの第一歩だ!」
『成る程ね。確かに地域の為にもなるし、イズクの身体も鍛えられる。一石二鳥のトレーニングプランね』
「だろ?それが終われば、君に『ワン・フォー・オール』を渡そう。出来るかい?」
モルフォの歌を使わずに、自分の力でここを掃除する。・・・上手く出来るだろうか?
不安が、私を襲う。・・・だけれど、決めたんだ!絶対にヒーローになるんだって!弱気になる心を奮い立たせ、私は笑顔でオールマイトに言った。
「出来ます!」
「その意気だ、緑谷少女!入り口に兄さんの部下がトラックを持ってきてるからそれにゴミを運んでくれ」
「はい!」
オールマイトの言葉に、大きく頷きながらゴミの山へと向かう。
―よーし!頑張るぞ!
続く・・・。
前書きでバレバレですが、アンケートの結果、出久ちゃんに決まりました!
最初はそのまま『個性』を引き継がせようかと思いましたが、色々考えた結果オールマイト式トレーニング(ゴミ拾い)をやってから『個性』を継がせる事にしました。
その結果、長くなってしまうため前後編に分ける事に・・・。
次回は、トレーニング終了からの『個性』譲渡となります!お楽しみに!
それでは~。