「休ませるって言ったってどうすっかな…」
俺は屋上で悩んでいた。悩みの種はもちろん、彼女今井リサを休ませようとする事。
普通に言ったって彼女は聞かないだろう。
「…授業サボって何してんの?」
「お前もだろ。蘭」
独り言を聞かれていたようだ。
髪に一部赤いメッシュが入った少女は美竹蘭。
一応、俺が先輩のはずなんだが、敬語のけの字もない。
「響に敬語使う価値ないし。」
「…心を読むな。」
よく、屋上でサボっている俺と蘭はある時ばったりと会い、そこから軽口が言い合える仲へとなった。
「蘭。例えば、お前のお母さんとかに休んで欲しいと思ったら何する?」
「……なに?突然。頭でも打った?」
「…うっせ。」
「まぁ、家事とかを変わってあげるとかかなぁ。」
「やっぱりそれか。」
「やっぱりって?」
「…別に何でもねぇよ。気にすんな。ただの戯言だ。」
屋上の出口へと向かい、錆びた扉を開け、階段を下る。
「もう行くの?いつもより早いね。」
「ちょっとやる事があるんでな。」
* * *
家に戻り、いつも通りリサは、鼻歌を歌いながら、夕飯の準備をしている。
「…あのな、リサ」
「ふふふ~ん、ん?なに☆?」
味噌汁の味を確かめながら、こちらを向く。
「もう、俺の世話しなくて、いいぞ。」
ガシャーン!と皿が割れた音が、急に静かになった部屋に鳴り響いた。
「……アタシ何か響の気に障る事した?」
「…してないな。」
「いつも飛び込んで起こすのが嫌だった…?なら明日から直すから!」
「別にいつもの事だから気にしてねぇよ。」
「なら!何でそんな事言うの……?」
縋るようにこちらに問う彼女
その瞳には絶望というのが映っているのが、ハッキリと分かった。
ただ、世話を出来ないだけで、これだけの深く絶望するだろうか?
例えるならば、今、リサはおもちゃを盗られて泣いている子供だ。
しかし、その瞳はその比じゃない程の闇。
闇という名の絶望だった。
「お前いっつも俺に割く時間多いだろ。
それで俺の世話とバンドの練習、バイトを入れたら、お前の休む時間は何処だ?
幸いある程度なら、俺も家事出来るしな。」
「休む時間は…響といる時間だから…」
弱々しく答える彼女。
「そんなのは休みにならねぇよ。俺はお前に休んで欲しいんだ。」
そうすれば、もっと練習が出来たり、自分の趣味に費やす事が出来るだろう。
「分かった……でも!これだけは準備させて!」
「分かった。」
なら、いつもより腕によりを掛けないとね。とボソリと呟いた。
俺はこの時は達観して居たのだ。
この後の事なんて、何も考えずに。
☆9 平和なしらす。さん
☆8 ももちるさん
その他お気に入り登録、感想等ありがとうございます!
次は早く出せるようにしたい……
と言うか、1話だけ出して、放置してる他のシリーズをどうにかしたい……