今回は僕の大好きな東京喰種のssを書きました。
復讐と希望という一見真反対に位置するテーマを掲げましたが、この物語はどうなるんでしょうか。
是非、楽しんで頂けたらと思います。
楽しんで頂けなかった方は静かにbbして頂ければ。
痛みは無かった。
それは無数の弾丸に貫かれ、地に堕ちた。
捕食対象としてしか見ていなかった人間は案外強いみたいだ。
これまでの人生で蓄えてきた力はボロボロの身体でまるで意味を成さなかった。
地面の冷たさ、自分の身体を打ち付ける雨の音を感じながら眼を瞑る。
走馬灯すら見えない。
近付く足音に死を覚悟し、人間に殺されるくらいならばと赫子を出した。
しかし耳元に聞こえたのは同種の声だった。
「ねぇ。君、まだ生きたい?次は死なない力が欲しい?」
そう言っている様に聞こえ、自分は最後の力を振り絞って首を縦に動かした。
「良かった!ねぇタタラさん」
「そうだな。中々使えそうだ」
耳元での会話は遠ざかっていく。
鼓膜を震わす音、身体を包む布の感触、細く開いた瞼に眼に射し込む光、身体の感覚が戻り自分は瞼を開いた。
「ここ、は?」
純粋な疑問を口にする。
すると驚いたような女性の声が飛び込んできた。
「あっ!すみません!起こしてしまいましたか!えっと、ここはアオギリの樹のアジトです」
アオギリの樹、聞き覚えのあるフレーズだ。
「何故、ここに」
「アオギリの樹の幹部の方が連れてきたからです。酷い怪我を負っていて記憶が無いのでしょうか、、、」
女性の声は困った様に言う。
「そう、、、」
名前も知らない女性と話していると、部屋の扉が開いた。
「やぁ、喰種喰らいくん。起きたんだね!」
あの時に聞こえた少女の声。
目の前には包帯が巻かれた少女がいた。
「何故、知っている」
そう訪ねると少女はクスクスと笑いながら話した。
「だって君、喰種の中では有名人だよ。喰種喰らいの隻眼ってね。白鳩の方は業鬼とか呼んでいたっけ?」
そうだ。正体不明の喰種、業鬼。
それが自分だ。
そしてこの間、自分は自分を追い続けた捜査官に討ち取られた。
「それで昨日、君は捜査官に倒された。でも私達アオギリの樹が君に加勢して捜査官を退けて君をここに連れ帰った」
少女は話し続ける。それを黙って聞いた。
「君の意識が無くなる間際に私が言ったこと覚えているかな」
自分は記憶を探って答える。
「次は死なない力が欲しい?」
「そう!そして君は頷いたよね?」
自分は頷く。
すると少女は包帯に覆わていても分かるくらいの喜びを浮かべた。
「ならアオギリの樹にようこそ!」
その質問はアオギリの樹に入るかどうかを問うものだったらしい。
確かにアオギリの樹等の組織に入るのは有用である。
そして組織の援助を受けながら自分で力を着けていけばいい。
自分は古い記憶を呼び起こす。
妹を殺したあの隻腕の捜査官
自分を追い詰めた隻腕の捜査官。
あの捜査官を殺すまでは死ねない。