最初の訓練が始まり丁度5週間が経った。
1日16時間。5週間、35日で560時間。
それだけの時間を積んだ為、仙は飛躍的に強くなった。
しかしまだまだ強くなれる。
仙の頭に浮かぶのはあの可憐な少女だ。
今はどうしているんだろうか。
きっと怯えているんだろう。
アオギリの樹に入ってからずっと一緒に居たから分からなかったが、自分の中であの少女の存在は大きいらしい。
沢山のことを考えるが自分は一度すべてを無くす。
この広場に相手がやって来た。
「あっ。もう来てたんだー」
三女、景。
第二の訓練の合格を貰うための初戦だ。
「じゃあ始めよう!」
「殺す気で行くから!」
景の両目が赤く染まる。
合わせて仙の片目も赤く染まった。
景の赫子は尾赫。
太く一本だけ伸びた尾赫の攻撃は一つ一つが重い。
「逃げて防ぐだけじゃ倒せないよっ!」
それでいて隙は無い。
相手に呑まれそうになるが、一度落ち着き冷静に観察をする。
そして攻撃と攻撃の間に赫子を突いていく。
仙の攻撃は景のペースを崩した。
そうすれば此方が有利に立てる。
徐々に攻撃回数を増やし、自分のペースに持っていく。
「良いじゃん!」
景は楽しそうに笑う。
景は戦闘までをも楽しむ。
多分それが景の強さの秘訣何だろう。
陣だって強い相手と戦っているときは口元が緩んでいる。
楽しんで戦うことも必要なのかも知れない。
一気に間合いを詰めてくる景を蹴って防ぐ。
「うーん!攻めにくい!」
鱗赫を分散させて多方向から攻撃する。
そして同時に羽赫を展開する。
「仙は全部の赫子を使えるの忘れてた!」
後ろに退く景。
そして景は笑う。
「じゃあ私も奥の手だしちゃうよ!」
一本だけの尾赫は増えて三本になる。
どの尾赫も太く、素早い。
羽赫の弾幕で牽制しつつ鱗赫で攻撃。
そして隙ができたら甲赫を展開し間合いを詰める。
しかし、三本の尾赫は別々の動きをして仙の攻撃の全てを防ぐ。
「それ!今の仙!とっても楽しそう!」
そう言う景もまた楽しそうだ。
一進一退、ほんの気の緩みが負けになるこの試合は楽しい。
「そろそろ自傷ダメージもキツいんじゃない?!」
確かに赫子に喰われた傷は小さくは無い。
訓練でこの特性について気付いたことがある。
この赫子は血と肉を確かな力に変えて相手を打ち砕く。
今までは呪いだと思っていたこれは霞が仙に与えた力だ。
身体の傷は一定量を越した。
すると赫子は今までに無いほど膨らみ白く光った。
そしてそれは景へと向かっていく。
速く、強く。
「不味いっ!!」
景は尾赫を重ねて盾をつくる。
そして盾に仙の赫子がぶつかった。
仙の赫子の勢いは衰えない。
そしてそれは盾を砕いた。
仙の赫子を受けて吹き飛ぶ景。
駆け寄り、景の状態を確認すると景の腹には大きな穴が空いていた。
段々と穴は塞がり、景は眼を開く。
「凄く強くなったね」
「もうあの頃の仙じゃないんだね」
「懐かしいなぁ。しょっちゅう私達と喧嘩してさ、仙は弱くていつも私達に負けて霞ちゃんに慰められてたよね」
景は満足げで、どこか寂しそうに言う。
「遠くに行っちゃったんだね」
「それは。違う」
「強くはなった。でも遠くに行ったわけじゃない」
「ずっとここにいる」
「ずっと景の弟」
そう言うと景は嬉しそうに笑う。
「そうだね」
「その強さが有れば暦にも勝てるよ!」
「頑張ってね」
景の手を引き、起こすと仙は歩いていく。
かつて無いほどの赫子を出したからか、身体の節々が痛む。
自分が受け取った霞の力はとてつもないものだったと、この日、初めて知るのだった。
「sssレート喰種業鬼。あれから目撃情報は無しか」
「一度大きな被害を起こして行方を眩ます。そして忘れた頃にまた大きな被害を起こす。昔と変わらないな」
「」
長女は憐(レン)
次女は暦(レキ)
三女は景(ケイ)
憐はおっとり。セリフに伸ばし棒が多いです。
暦は無気力。セリフに句読点が多かったり、「、、、。」が多いです。
景は元気。セリフにビックリマークが多いです。
この三人は本当の姉妹ですが、親である陣(ジン)との血は繋がっていません。